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続 トンボ歳時記
No.657. 晩秋のトンボたち(5) 平地・丘陵地の池めぐり.2018.11.18.

今日も朝から雲一つない快晴.今日は行く予定はしていなかったのですが,この晴天がもったいない気がして,「日当たりのよい平地や丘陵地の池のトンボ観察」ということで,池巡りをしてきました.全部で7つの池をほぼ午前中に回ってきました.家を出たのは9:00過ぎで,最初の池に着いたのが9:30くらいです.気温は14度でしたが,日差しと弱い風のおかげで暖かく感じます.この池は,夏に,アオモンイトトンボのカニバリズムを観察した池です.池を一周しましたが,トンボの姿をまったく見かけませんでした.ということで気にせず次の池に行きました.この池はほぼ完全に水を落としていました.

▲本日2番目の池.過去にはよく来たが,今年は初めて来た.水がほぼ完全に落とされている.

最近秋にほぼ完全に水落をするため池が増えました.でもこれだけ水が落ちていてもオオキトンボなら来ていると予想して池に入ってみました.案の定オオキトンボがいました.ただ,秋の朝のトンボは敏感で,なかなか近寄れませんでした.それ以外には,マユタテアカネ,ナツアカネが,水のない池の中にいました.タンデムのペアが来て産卵したそうに飛び回っていましたが,結局出て行きました.アキアカネかタイリクアカネのような感じです.写真にはありませんが,この池の外でタイリクアカネを見ています.

▲水の落とされた池の縁に止まるオオキトンボのオス.

▲干からびた池の底に止まるマユタテアカネのオス.

▲池の護岸に止まるナツアカネのオス.

次の池は,この池のすぐ隣にある池です.先の池がほぼ完全に水が落とされているのに,この池は満水状態でした.

▲本日3番目の池.コンクリート護岸されている.満水状態.

上の写真の左側の堰堤の上を歩くと,オオキトンボ,ナツアカネ,タイリクアカネ,マユタテアカネなどが飛び立ちました.オオキトンボが飛んで池の方に入っていくと,それを追い回す別のオスのオオキトンボがいました.他にも池の上をオオキトンボが複数飛んでいました.この池はコンクリート護岸した何の変哲もない池なのですが,オオキトンボが活動しているんですね.これの一体どこが絶滅危惧I類なんでしょう? 唯一いえるのは,この池は丘陵の麓にあって,これより上に農地がないということです.つまり薬剤が流れ込まないわけです.

▲堰堤の草地で休むナツアカネのオス.

▲オオキトンボのオス.この池にはオオキトンボがそこそこの数集まっていた.

▲人が近づくとこのようにすぐに飛び上がる.

▲腹部の色が鯛分赤茶色になってきている.オオキトンボのオス.

▲タイリクアカネのオス.本当にタイリクアカネはどこにでもいるという感じ.

次は,水が落とされているもっと大きな池をのぞいてみました.しかしこの池,トンボの姿をまったく見かけませんでした.池によってトンボの濃さがまったく違いますね.ただこの池のそばには,オオキトンボのメスが止まっていました.腹部先端に泥がついており,打泥産卵していたんでしょうね.ここは,さっさと引き上げることにしました.

▲本日4番目の池.管理が行き届いたコンクリート護岸の大きなため池.

▲池の中にはトンボがいなかったが,近くにオオキトンボのメスが止まっていた.

次に目指したのは,例年オオキトンボを観察に行く池です.今年も10月8日にオオキトンボを見に行ってきました.そのときはオオキトンボが来ていました.最近この池は水を落とさなくなりましたので,今日はどうでしょう.池の周りを一周しましたが,オオキトンボを見ることはできませんでした.ただ,池の片隅に抽水植物が茂っているところがあって,そこにマイコアカネが生き残っていて活動をしていました.4頭のオスを見かけました.マイコアカネ君も頑張っているようです.

▲マイコアカネが活動していた,本日5番目の池の片隅にある茂み.

▲マイコアカネのオス.顔面が青みがうすくなってもう白くなってしまっている.

▲日差しを受けて止まっているマイコアカネのオス.

次の池は,上の池の近くにあって,オオキトンボしかいないことがよくある池です.ここもコンクリート護岸されていて水も落とされておらず,なんでこの池にオオキトンボが来るのかよく分かりません.今日はオオキトンボは池の外の道路上に止まっていました.これは写真にはならず,代わりといっては何ですが,タイリクアカネが交尾をしているのを記録に撮ることができました.また別のタイリクアカネのメスが,単独で数回打水するのを見かけました.本当にオオキトンボとタイリクアカネはセットになっています.上の池でも2014年の観察では,オオキトンボとタイリクアカネがたくさん集まって産卵していました.

▲タイリクアカネの交尾.この本日6番目の池ではほとんどトンボを見かけずだった.

時刻は12:00になりました.もう一つだけ池を回ってみることにしました.この11月2日に出かけていった池で,オオキトンボやタイリクアカネがたくさん活動していました.池に着くと,早速打水産卵するペアが目に入りました.タイリクアカネかとも思いましたが,打水後の上昇が小さく,例のアキアカネのチョンチョン産卵に似ています.写真を撮って確認してみましたら,どうやらアキアカネのようです.先日はアキアカネの姿が見られなかったのですが,やっとアキアカネが姿を現しました.アキアカネは,兵庫県南部では,本当に時期的に遅く出現するトンボになりました.

▲池に着いたとき打水産卵をしていたアキアカネのペア.

池の周囲を歩いてみますと,タイリクアカネ,オオキトンボが飛んでいました.ここは,以前来たときには,11:00ころが産卵のピークでしたので,もう繁殖活動は終わっているような感じでした.そんなとき目の前で,オオキトンボのオスがメスを捕まえました.池の上を飛びながら移精行動をしています.そして幸いなことに,すぐ近くの池岸に止まりました.そしてもう一度飛んで再び移精行動をしてから,交尾に移行しました.これもすぐ近くに止まってくれました.

▲メスを捕まえたオオキトンボのオスが移精行動に移行しようとしている.

▲移精行動を終えた止まったオオキトンボのタンデム.オスに比べてメスがでかい!.

▲オオキトンボの交尾.オス・メスの体色は赤茶色になって,渋い感じがする.

オオキトンボのペアが飛び去った後,池岸でまたアキアカネが産卵していました.動きの小さなチョンチョン産卵です.間違いなくアキアカネがやって来ていることが確認できました.この池には,キトンボも姿を見せていました.

▲アキアカネが水際で打泥産卵を行っている.

▲打泥後もあまり高く上がらないで飛ぶ.

▲アキアカネの打泥産卵.打泥の瞬間.

▲キトンボのオス.

今日は,晴天についついつられて,平地や丘陵に集うトンボたちを観察に行ってきました.全部で7種類のトンボたちに出会いました.その中でオオキトンボは7つ中5つの池で姿を見かけました.他のトンボに比べて最も多くなっています.オオキトンボは平地の池で普通に見かけるトンボになっていると言えるような感じです.

まだ11月の中旬,アカトンボたちは元気にしていました.しかし,夏のトンボの姿はすっかり消えてしまいました.今日これらに出会うことをちょっとだけ期待していたのですが,やはりもうほとんど出会うことはないんでしょうね.今日はここまで.




続 トンボ歳時記
No.656. 晩秋のトンボたち(4) 小春日和のトンボたち.2018.11.15.

今日のNHKの天気予報では,午後から少し曇るものの,小春日和の一日とのこと.小春とは旧暦の10月のことだそうで,太陽暦では11月上旬から12月上旬にかけての時期に当たります.ですから小春日和とは今の時期の暖かい晴天の日のことをいうそうです.先日田園地帯へ出かけたとき,まったくといっていいほどトンボの姿が見られなかったので,今日は確実にトンボが見られる場所へ行くことにしました.

▲今日の観察池.水落がかなり前になされていたようで,露出した池底には湿性の草がいっぱい茂っている.

池は写真のように底が露出していて,湿性の草が茂り,流れ込む水が小さな水路をつくって,全体が湿地状になっています.まさにこの時期のアカトンボにとって好適な環境といえるでしょう.しかもかなり前から水が落とされていたようで,アカトンボが集まってくる時間も十分にあったと考えられます.期待ができそうです.

池に着いてまず目についたのはマユタテアカネでした.池岸の石の上などに止まって,他のオスが近づいたら飛ぶなどして,あちこちで活動しています.普通なら産卵も見られるところでしょうが,今日は結果的にマユタテアカネの産卵にはお目にかかれませんでした.帰り際に歩いた農道で見つけたメスもあわせて,まず最初に紹介しておきましょう.

▲マユタテアカネのオス.オスは池畔でたくさん活動をしていた.

▲マユタテアカネのメス.池畔で見ることはなかったが,少し離れた農道で見つけた.

現地到着は10:20でしたが,水面上をホバリングしているアカトンボがいました.目を凝らしてみると,どうやらタイリクアカネのようです.もうタイリクアカネが内陸部にいるのは当たり前になっています.そしてさらによく見ると,露出した池底でアキアカネが産卵していました.近づいて行くと,数ペアがチョンチョンと小さな水たまりや泥状のところで打泥しています.兵庫県南部のアキアカネは減少傾向にあるといつも言っていますが,11月に入ると,環境が整った場所にはそれなりの数が集結しているようです.20世紀の末頃よりは明らかに出現時期が遅くなっていると思います.ということで,まずはアキアカネと時間をともにしました.

▲湿地状になった露出した池底で打泥産卵をしているアキアカネたち.

前にも書きましたが,この時期のアキアカネの打泥動作は最小限の動きという感じで,打泥した後も,ほんのちょっとしか飛び上がりません.10cm位の高さで上下動しています.動きが小さいので,記録に撮りやすいトンボです.さて,アキアカネと戯れているときに,キトンボが産卵に訪れました.最近キトンボはどこの池でも見るようになりました.20世紀末ころには結構珍しいトンボだったような気がするのですが....

▲湿地状の水際で打泥産卵をするキトンボのペア.2枚上の写真は打泥前の打水の瞬間である.

キトンボはその後も産卵にやって来て,少なくとも3ペアは産卵していたようです.途中でタイリクアカネの方に気をとられたので,正確な産卵数はつかめていません.キトンボは,上のような水際での打泥産卵の他に,池の中央や岸近くで打水産卵するペアもいました.

▲もっぱら打水産卵を行うキトンボのペア.同じ池なのに産卵戦術が異なるのはなぜだろう?.

キトンボを追いかけているときに,タイリクアカネが産卵を始めました.開水面の中程で打水産卵をしています.タイリクアカネは神経質なトンボで,なかなか近づかせてもらえません.今日のこのペアも同じでした.粘り強く近づくのを待ってみましたが,なかなか思うようにはいきませんでした.また打水後高く飛び上がるので,せっかく近づいてくれてもファインダーから出てしまうため,カメラで追いにくいトンボでもあります.このペアの打水産卵中,一度だけ,オオクチバスがジャンプして食いつこうとしました.しかし,うまく飛び上がりかわしました.こういうことがよくあるので,池の中央で打水産卵するトンボは打水後すぐに高く飛び上がるのだと私は考えています.オオキトンボもよく似ています.

▲打水産卵するタイリクアカネのペア.

トンボたちと遊んでいると,時間がすぐに経ってしまいます.気がつくと12時を過ぎていました.トンボたちの産卵活動も一段落したようです.晩秋のトンボたちの産卵は一時に行われ,あとは何もなかったように池は静まります.そしてオスたちが翅を陽に輝かせ,飛び回るだけの風景になります.私も,産卵活動を追いかけるのは止めにして,池周辺に止まっているトンボを探してみることにしました.

▲マユタテアカネとキトンボが同じ石に止まっている.

▲岸辺に沿ってキトンボのオスがホバリングして飛んでいる.

▲産卵を終えたメスを捕まえたのだろうか,キトンボのオスがメスを掴んで,交尾を始めた.

▲ネキトンボのオス.アスファルトの上に止まって暖をとっている.

▲ノシメトンボのオス.今年はこのアカトンボだけ繁殖活動を記録できなかった..

▲コノシメトンボのオス.アスファルトの上で暖をとっているが,よく飛ぶ.

これらのトンボを探して歩いているとき,ミツバチの巣箱を置いているところがあり,そこで面白いものを見ました.ミツバチの天敵はオオスズメバチです.以前のテレビ番組では,たった1匹のオオスズメバチが巣箱一つのミツバチを全滅させるというのを放送していました.巣箱のすぐそばにオオスズメバチがいたので,これは,と思ってい近づくと,なんと,養蜂家の方が仕掛けたトラップに捕まったオオスズメバチだったのです.オオスズメバチは10匹トラップにかかっており,1匹がまだ生きていて,粘ついた粘着剤の中でもがいていたのでした.他に,キタテハをはじめたくさんの昆虫も捕まっていました.ミツバチたちはそのすぐ横で悠々と飛んでいました.いや,すごい.

▲トラップにかかったオオスズメバチが粘着剤の中でもがいている.

ということで,昼過ぎに観察を終えました.空は予報通り雲が広がり始めました.やはり確実にいるところにやって来ると,まだまだこの時期,トンボたちは活発に活動しているものですね.今日は7種類のトンボを見ることができました.まだまだトンボたちは頑張っています.




続 トンボ歳時記
No.655. 晩秋のトンボたち(3) トンボがとても少ない. 2018.11.11.

今日は昼下がりにオオアオイトトンボとカトリヤンマを見に行きました.結果は惨憺たるもので,まったく見かけずでした.オオアオイトトンボには出会えるだろうと,近くの森林公園へ行きましたが,単独オスが1頭飛ぶのを見ただけで,まったくいる気配がありませんでした.それどころか,トンボ自体の姿がなく,森林公園ではヒメアカネらしいのが1頭だけ,そしてカトリヤンマを探しに水田地帯を歩きましたけれども,アキアカネが2,3頭とナツアカネが2頭ほどいたのを,やっと見つけただけでした.

▲アキアカネのオス.

▲ナツアカネのオス.

どういうわけか水田地帯というのはどこも,トンボがまったくいない感じで,不気味な廃墟をイメージさせられます.まさに「沈黙の秋」ですね.下の写真は,今日出かけた2つ目の,3年前までカトリヤンマを確認していた谷スジの田園地帯です.今日はホシホウジャクが飛んでいただけで,アキアカネ1匹いませんでした.天候といい,時期といい,アカトンボの一つや二つはいてもいいのに....トンボ歳時記では報告していませんが,実はここへは今年の10月20日にもカトリヤンマを探しに来ています.その日もまったくカトリヤンマの姿はありませんでした.この生息地からはカトリヤンマは完全に消えたように思えます.

▲かつてカトリヤンマが産卵していた谷スジの田園地帯.今日はまったくトンボが何もいない.

▲ホシホウジャクが飛んでいただけ.

▲以前この谷で撮影したカトリヤンマ.2012.10.27.

オオアオイトトンボにしてもカトリヤンマにしても,かつて生息していたところへ出かけても,ほとんどその痕跡さえ見つけられないのはさみしい限りです.今日はここまでにします.




続 トンボ歳時記
No.654. 晩秋のトンボたち(2) まだまだ元気なアキアカネ.2018.11.10.

今日は兵庫県は全域で晴れ模様.先月末にアジアイトトンボがまだまだ頑張って繁殖活動をしていたので,まだやっているかと,様子を見に行きました.

▲アジアイトトンボのオス.オスが単独で飛んでいるだけであった.

残念ながら,オスがポツポツと飛んでいただけで,2週間前とは打って変わった状況でした.しかし,アジアイトトンボというトンボは,4月にはもう羽化をして成虫が姿を見せていますし,産卵活動さえ見ることがありますから,足かけ8ヶ月間も成虫を見続けることができるトンボです.多分,もっとも長期間成虫が出現しているトンボの一つでしょうね.

さて,アジアイトトンボの観察地ではアキアカネたちがまだまだ元気に産卵を行っていました.

▲水位の下がった泥地で元気に産卵する茶色メスのアキアカネ.

日向を翅を輝かせて飛び回るオスやメスのアキアカネが唯一のアカトンボという感じで,他のアカトンボはまったく姿を見せませんでした.アキアカネの産卵の動きもペタペタという感じの打泥で,動きが小さくなっている気がしました.写真でも分かりますが,太陽の高度が低くなって,斜めから日が差している感じがします.これ11:00ころなのです.

▲アキアカネ赤色メスの産卵.体色もだいぶんくすんできて日齢が進んでいることが分かる.

別のアカトンボも見たかったので少し移動してみましたが,アキアカネばかりです.そんな中にキトンボがいました.いずれも晩秋のトンボです.

▲キトンボのオス.

今日歩いてみて,いよいよシーズンも終わりに近づいたなという感じがしました.今年は今までになく徹底的にトンボを追いかけたシーズンでしたが,それも終わりに近づいてきた感じがしました.また一年過ぎようとしています.




続 トンボ歳時記
No.653. 晩秋のトンボたち(1) タイリクアカネ,オオキトンボ.2018.11.2.

11月になりました.11月の上旬くらいまでは,いろいろなアカネ属やアオイトトンボ属のトンボたちはまだまだ活動を続けていくと思います.その後は,だんだんと生き残りが少なくなり,やがて,一種一種と姿を消していきます.これからはそういったトンボたちの姿を記録していくことになりますので,タイトルは「晩秋のトンボたち」として紹介をしていきたいと思います.

今日はノシメトンボを見に行くつもりで出て行きました.しかし,目指していた場所ではほとんどトンボが飛ばず,ここはダメだと判断し,別の池に向かいました.いちおう池岸に草地があってひょっとしたらノシメトンボが来るかもしれないということは考えましたが,特にねらう種はないといってもいい感じです.池に着いたのは11:00ころででした.気温は17度で,太陽が照っているので暖かかったです.池に入ると目の前にタイリクアカネが3ペア産卵していました.

▲到着時,池の水面で打水産卵を続けるタイリクアカネ.

タイリクアカネは,写真のように岸から離れた水面で打水産卵するペアとともに,岸辺で水際に打水・打泥産卵するペアもいました.

▲水際の草の生えている岸辺で産卵するタイリクアカネ.

▲わずかに出ている水際の泥面に産卵するときもある.

▲岸近くの水面を打水することもある.腹部先端から水滴が出ている.

▲連結打水産卵をするタイリクアカネのペア.

▲次に打水する場所を見定めているのであろうか.打水した後の水紋が見える.

タイリクアカネは比較的遅い時期まで繁殖活動を続けているトンボですので,これから後もしばらくあちこちの池で産卵している姿が見られることと思います.今後の歳時記に何度も登場してきそうです.産卵を終えると,オスはメスを放し,メスは上空へと飛んでいきます.タイリクアカネの産卵は一時に集中する傾向が強く,その後しばらく産卵に来ませんでした.オスたちは次のメスを待って,池面をホバリングしてパトロールをしています.

▲池面でホバリングしながらパトロールするタイリクアカネのオス.

そんな中,単独で産卵していたメスをオスが見つけました.私も見つけましたが,オスの方がちょっと早かった.メスは一気に上空へ逃げ,オスはそれを追いかけ,さらにそれを見た別のオスが追いかけました.

▲単独産卵していたメス(左下)を見つけ追いかけるオス(左上)と,さらにそれを見て追いかけるオス(右下).

このタイリクアカネの一時の産卵が終わるのと入れ替わるように産卵を始めたのが,オオキトンボでした.タイリクアカネとオオキトンボは同じ池で同じ時期に産卵しているのをよく見かけるようになりました.20年くらい前にはまったく見られなかった光景です.長期間観察していると,トンボ群集が変化していくのを感じます.ともにため池の生活者で,未熟時には分散して羽化した池から大きく離れ,繁殖時期には広い範囲を飛び回って繁殖場所を探し,産卵方法は打水・打泥どちらもできるというトンボです.考えてみれば,この2種は非常によく似た生活行動を行っています.

▲オオキトンボも,基本的には岸から離れた水面で,連結打水産卵を行う.

▲打水の瞬間..

▲複数のオオキトンボが産卵をする.

▲もう一方のペアの産卵.

▲遠くで連結打水産卵の瞬間.

産卵が終わるとオスはメスを放します.このとき,メスが上空へ飛び上がらずに池岸の草に止まりました.近づいてよく見ると,かなり色がくすんできています.オオキトンボは若いうちはきれいな黄色をしていますが,メスは成熟が進むと黄褐色になります.オスは茶褐色になりますが,これはもう少し季節が進んでからでしょう.

▲産卵を終えて止まったオオキトンボのメス.黄褐色にくすんだ色をしている.

オオキトンボも池から離れた水面で産卵するペアが多く,なかなか岸に近づいてくれません.追いかけるようにして近づくと,ますます逃げる始末です.こちらが動かずにいると,様子を見るように少し距離を詰めてくれます.

▲じっと待っているとやや近づいてくるが,距離はまだある.

この産卵が終わった後,いつも通り,メスが上空へ飛んで逃げました.これも毎度のことで,そのメスを追いかけて上空へ飛び上がるオスがいました.メスは捕まりたくないのでしょう.単に逃げるだけでなく,メスがオスの方につかみかかって,抵抗しているように見えます.

▲メス(左)がオスの翅につかみかかっている.

▲上がメスで下がオスである.

▲メス(下)がオスとつかみ合いをしている.

時刻は12:00近くになりました.産卵にやって来るのはオオキトンボばかりで,タイリクアカネはやって来ません.今度も2ペアが産卵しています.池の中に入らず,岸辺の草むらを通って近づきましたら,割合に近づくことができました.ただ曇ってきて,空一面に灰色の雲が広がって日差しを遮ってしまいました.薄暗い水面を逆光気味の位置で飛ぶオオキトンボは見えにくい.近づいたのになかなかうまく記録が撮れませんでした.

▲12:00近くに産卵にやって来たオオキトンボ.2ペアが混じっている.雲って水面もねずみ色になった.

このオオキトンボの産卵が終わってから,まだ産卵を続けているペアがありました.その観察を終えてから,池を後にしました.この池では,オオキトンボとタイリクアカネ以外のトンボを目にしませんでした.

天気のよい日に,また,晩秋のトンボたちを見に来ることにしましょう.




続 トンボ歳時記
No.652. 続コバネアオイトトンボの観察.2018.10.30.

「チャンスは徹底的に」ということで,今日もコバネアオイトトンボの観察に出かけてきました.実は10月28日にも今日と同じ目的で出かけています.目的とは,コバネアオイトトンボの繁殖活動をビデオに収めることです.絶滅危惧I類の共通の特徴として,ある年に突然姿を消すというのがあります.ここのコバネアオイトトンボもどうなるかまったく予断を許しません.そこで,記録だけはきっちりと撮っておこうということで,実に3回連続になりますが,出かけることにしました.

朝10:00過ぎに現地に入りました.周辺の草地には,今日はメスばかりが見つかりました.今までメスの姿を見ることがなかったので,今日は幸先がいいと感じました.

▲茶色型のコバネアオイトトンボのメス.

▲腹部が微妙に曲がっている.この個体群は遺伝的多様性が失われている可能性がある.

▲緑色型のコバネアオイトトンボのメス.

天気は晴れでいいのですが,今日は風がやや強いようです.到着してから1時間ほどは,トンボたちの動きがほとんどありませんでした.タイリクアカネやキトンボもポツポツといった感じです.実はコバネアオイトトンボ以外にタイリクアカネの打泥産卵の写真を必要としていたので,それもねらおうと思っていましたが,11:21にやっと産卵にやって来ました.今日初めてのアカネ属の産卵です.コバネアオイトトンボはもう少し遅いと踏んでいるので,その後入ってきたキトンボなど,しばらくはアカネ属の記録を撮っていました.

コバネアオイトトンボの方は,オスやメスがヒメガマの根際や,池の畔にやって来てはいますが,産卵の気配はありません.

▲わずかに生えているカンガレイの植生内でメスを待つコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの根際に止まる金色型のコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの根際に止まる緑色型のコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの枯れ茎に止まるコバネアオイトトンボのオス.やはり腹部が曲がってしまっている.

▲池の周辺のスゲに止まる金色型のコバネアオイトトンボのメス.

時刻が12時を回りました.28日は12:30くらいに産卵を見つけたので,もう少し待たねばならないと思い待ち続けました.しかし,12:30になっても産卵が始まらず,ヒメガマが秋の暖かい日差しの下で風に揺られているだけです.風が強いのでダメかな...などと考えながら,諦めては何も手に入らないという言葉を思い出し,待ち続けました.そして,12:59,やっと,産卵しているペアを見つけることができました.

▲ヒメガマに産卵するコバネアオイトトンボのペアを見つけた.12:59.

▲上の写真で寄ったもの.

このペアの産卵を観察しているとき,もう1ペアがタンデムになって飛んできました.はっきりと確認はできなかったのですが,足下でオスがメスを捕まえた直後のペアだったようです.だとすると,移精行動から交尾を行うはずです.コバネアオイトトンボの交尾はまだお目にかかったことがありません.産卵中のペアは一時お預けにして,こちらの観察に切り替えました.移精行動,交尾は,予想通り行われました.交尾が始まった時刻は13:15です.

▲移精行動.2回ほど失敗して3回目に成功.継続時間は約1分.ビデオからの切り出し.

▲交尾.途中でカメラを動かしたため,交尾を中断して移動した.

▲中断時間も含めて約25分間継続した.

交尾の観察中,先ほどの産卵ペアが移動し,とても近くで産卵をしてくれるようになりました.3回目になって慣れたせいではないでしょうが,ものすごく神経質でなかなか近寄れなかったここのコバネアオイトトンボに,今日は割合簡単に近づくことができました.しばらくするとこのペアのオスはやがてメスを放して飛び去り,メスは単独で産卵するようになりました.

▲交尾の観察中に移動して産卵を再開したペア.

▲単独産卵をするコバネアオイトトンボのメス.

交尾ペアの方は,交尾後移動して,産卵を始めました.この基質が気に入ったのか,長い時間産卵を続けていました.最後まで見ずに,観察を終えました.

▲交尾後産卵を始めたコバネアオイトトンボ.

▲上の写真の裏側から撮ったもの.

コバネアオイトトンボは,アオイトトンボやオオアオイトトンボに比べて産卵管が頑丈でなく,柔らかい組織を持つカンガレイとかクログワイにもっぱら産卵すると言われています.ここの個体群は,それと異なりヒメガマに産卵しています.本当に産卵できているのか,産卵後のヒメガマの葉を持ち帰り,実体顕微鏡で観察してみました.すると,10個足らずの産卵痕が見つかりました.さらに,葉を切り開いてみたところ,中にきちんと卵がありました.ヒメガマの葉の中は空洞になっており,表面さえ突き抜ければ,卵は中にきちんと収められるようです.

▲産卵痕:顕微鏡で見た,コバネアオイトトンボが産卵していたヒメガマの葉の表面に穴が開いている.

▲コバネアオイトトンボの卵.葉を切り開いて,卵の存在を確かめてみた.

こうやって切り開いてみると,ヒメガマの葉の内部組織は決して固いわけではないことが分かります.もしコバネアオイトトンボにとって固いのであるとすれば表皮組織が固いということになるでしょう.実際ビデオを見ると,ノコギリを引くようにゴシゴシと何度も産卵管で表皮組織を切りつけています.写真で確かめても,産卵管は確かに表皮を突き破っています.ビデオもリンクしておきますので,よければ一度見てください.

▲産卵管が確かに表皮を突き抜けて入っているのを写真で確かめてみた.

▲ビデオ:コバネアオイトトンボの繁殖活動.

さて,14:30ころ帰途につきました.帰りに周辺の草むらを歩くと,西に傾きかけた陽を受けて,コバネアオイトトンボのメスが止まっていました.摂食をしているようです.それにしても今日はよくメスに出会いました.

▲昼下がり,ねぐらで摂食をしながら憩うコバネアオイトトンボのメス.

帰りに車を止めているところで,地元の農家の方に会いました.連日来ているので,「また来ました」と会釈すると,にやっと笑って返してくれました.先日話の中で,「池の下の方は農薬を使っているからトンボはおらんやろ」と言っていたのが印象的で,地元の人もトンボ減少が農薬と結びついているのを感じているのかな,と思ったりしました.

▲先日28日に見た,腹部が曲がったメス.カンガレイの中に止まっていた.2018.10.28.撮影.

ここのコバネアオイトトンボの個体群には,今日紹介したように腹部が曲がった障がいを持った個体がいます.もはや他の個体群とは交流のない分断された個体群であることは間違いないでしょう.しかも,主な産卵植物がヒメガマです.悪条件が重なっていますので,なんかの環境変動があれば突然姿を消すことはあり得ると思います.見守っていきたいです.


最後に今日見かけたアカネ属のトンボを紹介しておきましょう.今後の観察はこんな感じで,ポツポツ止まっているアカネ属をあちこちで記録するといった感じになります.

▲まずはキトンボのダブル産卵.キトンボは本当に一時に産卵にやって来る.

▲タイリクアカネの産卵.打泥産卵はうまく撮れなかったが,岸辺にたまる凹地の水に産卵していた.

▲ナツアカネの交尾.ナツアカネの交尾を近くて見ることはあまりないように思う.

▲マユタテアカネのオス.このトンボも12月後半まで見ることができる長寿のトンボだ.

▲コノシメトンボのオス.みんなこのように白い石に止まっている.今日はちょっと気温が低いからか....

▲リスアカネのオス.翅の先端に褐色部がかなりうすくなって,老熟を思わせる.




続 トンボ歳時記
No.651. コバネアオイトトンボの産卵観察.2018.10.26.

今日は午前中晴れ,夕方から下り坂,という予報です.最近になって,やっと秋らしい晴れの日が続くようになってきました.朝起きて空を見ると,一面快晴の青空.これからは,まだ時期的に見ることが可能で,観察が不十分なトンボたちを見ていこうと思っています.その中で今日はコバネアオイトトンボの産卵観察を行うことにしました.

コバネアオイトトンボは,先日のブログで発見したことをお伝えしましたが,その後の探索も含めて,まだ産卵を観察していません.コバネアオイトトンボは,カンガレイやクログワイなどの,組織が柔らかい植物に産卵すると言われています.この生息地にはカンガレイがあるのですが,わずか二株しか見当たりません.あとは,ヒメガマがいっぱい茂っているというような池です.そこで今日は,そのカンガレイの生えている付近に陣取り,観察をすることにしました.

▲池岸に止まっているタイリクアカネのオス.

ここに来る途中から目についていましたが,この池にはタイリクアカネがたくさんやって来ているようです.海岸近い池ではありません.海岸からは数km離れたかなり内陸部の池です.本当にタイリクアカネは,普通に見つかるようになりました.1960年ころはどこにいるかよく分からなかったトンボで,1969年に海岸近くにいることが報告されてから,観察方法が分かったというトンボです.でも今なら,普通に見られるトンボの一つであると言ってもよい状態になっています.

さて,コバネアオイトトンボですが,地岸の日当たりのよいところに止まっているオスを最初に見つけました.しかしその後なかなか姿を見せません.池周囲の草むらにもぐっているかもしれないと思い,周辺も調べてみました.そこでは,オスが,2頭ほど見つかりました.しかしメスの姿やタンデムの個体はまったく見られません.

▲最初に見つけた,日当たりのよい地岸に止まっていたコバネアオイトトンボのオス.

▲周囲の草むらの中に潜んでいたコバネアオイトトンボのオス.体色が茶金色になっている.

▲同じく草むらにもぐり込んでいたコバネアオイトトンボのオス.

草むらで見つけた,体色が茶色っぽい金属光沢に薄緑色の淡色部を持つ個体は,他に類を見ないコバネアオイトトンボ独特の色彩です.体色が鮮やかな緑の金属光沢の個体も気品を感じますが,こちらの方が渋い感じです.ところで,コバネアオイトトンボの産卵の方ですが,まったくやって来る気配さえありません.待っている間にマユタテアカネが目の前で産卵を始めました.このメスはノシメ斑がないメスです.

▲マユタテアカネの産卵.メスはノシメ斑がないタイプ.

▲打泥(打水)の瞬間.

1時間ほど経って,11時が近くなりました.この個体数では,やはり産卵を見るのは難しいかな?,と思い始めたときでした.知人の出した本に,ヒメガマに産卵するコバネアオイトトンボの写真が掲載されているのを思い出しました.ここはあまりにもカンガレイが少ないので,もしや,と思って,ヒメガマの群落の方に入ってみました.するとどうでしょう,コバネアオイトトンボがヒメガマに産卵をしていたのです.ここでもまた先入観に左右されてしまっていました.

▲ヒメガマの群落に近づいて行って最初に見つけた産卵ペア.メスは茶金色のタイプ.

▲私の動きに反応して少し移動して産卵を再開した.

この後,このペアを見失ってしまいました.すると,池岸の方で,アカトンボたちの産卵が始まりました.まずはキトンボが水際で打泥産卵しています.上下動の少ないふわふわ動くような感じの産卵です.コバネアオイトトンボは今日のテーマですが,キトンボは好きなのでどうしてもこちらに気を奪われます.どうせコバネアオイトトンボは長時間産卵しているはずですから,また後で探せばいい.

▲水際で連続打泥産卵をするキトンボ.

▲1秒に1回くらいのリズムで,トントンと連続打泥する.

キトンボの産卵が終わり,コバネアオイトトンボを探そうとしたら,今度はタイリクアカネやコノシメトンボが産卵に来る始末.タイリクアカネは連結産卵が今年うまく記録に撮れていないので,またこちらに気をとられてしまいました.コノシメトンボも,以前キトンボを見に行ったときにいちおう観察できましたが,あまり十分な感じではありませんでした.そういうことで,コバネアオイトトンボはまた後回し.

▲ヒメガマの生えた水際で産卵するタイリクアカネのペア.

▲タイリクアカネの産卵は3組,どのペアも非常に神経質で,結局寄ることができなかった.

▲やはり,ヒメガマ群落の水際で産卵するコノシメトンボのペア.

▲ここのトンボはいずれも神経質,コノシメトンボにも近づけなかった.

アカトンボの産卵の写真を撮っていても,やはりコバネアオイトトンボが気になります.このあたりでアカトンボを追いかけるのは止めて,再びコバネアオイトトンボの産卵ペアの探索に向かいました.ペアは意外とすぐに見つかりました.この産卵ペアは,先のペアとは違う個体のようです.メスが先の個体よりは緑っぽい色をしています.

▲最初のペアとは異なるペア.メスの体色から分かる.典型的なコバネアオイトトンボの連結植物内産卵.

▲上の写真を少し角度を変えて撮ってみた.産卵管を突き立てているのが分かる.

▲写真が横に向いているわけではなく,斜めの葉に載るように止まって産卵をしている..

▲枯れた葉のつけ根あたりで産卵をしているペア.

▲メスの拡大.メスの腹部を折りたたむように曲げ,オオアオイトトンボのように力が入るようにしている.

コバネアオイトトンボのペアは,確かにヒメガマの葉に産卵をしていました.しかし今日観察した限りでは,枯れた葉にだけ産卵をしていました.緑色の葉はやはり固いのかもしれません.また上の一番下の写真のように,コバネアオイトトンボは腹部を折りたたむようにして曲げ,6本の足でしっかりと基質をつかんで,産卵管に力が入りやすいような姿勢で産卵しているのが分かります.これは固い樹皮に産卵するオオアオイトトンボがよくやる姿勢です.

ヒメガマの群落内に入ってよく探すと,単独オスたちがヒメガマの間を飛んでメスを探しているようです.オスの個体数もこちらの方に多く集まっているように思われました.

▲ヒメガマの群落内で活動するコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマ群落内のオスたち.

これで観察を終えて,12時ごろに現地を離れました.もっといてもよかったのですが,今日の空模様にいささか裏切られた感じで,このころには肌寒い風が吹き出したからです.実は朝現地に着くまでは雲一つない快晴.ところが,現地に着くやいなや雲が出現.みるみる全天を覆って,30分もすると曇りに変わりました.太陽は雲の間からときどき顔を出す程度だったのです.ですから,見ての通り,今日の写真は多くがストロボの力を借りたものになっています.そして,家に帰ったら,また快晴に戻っていました.なんとまあ嫌みな天気なんでしょうね.

最後に,前も紹介しましたが,コバネアオイトトンボの顔拡大写真.目のブルーの輝きがどことなく地球を見ているように思えます.

▲コバネアオイトトンボオスの顔拡大写真.




続 トンボ歳時記
No.650. 今年最後の兵庫北部.2018.10.25.

秋も深まってきました.もう11月も目の前です.キトンボの年越しを今年の観察終了と考えている私的にはまだトンボシーズンは2ヶ月くらいあるのですが,通常の成虫観察は,そろそろ終わりに近づく時期です.今日は全国的に晴れるとのことですので,今シーズン最後の兵庫県北部への観察行に出かけました.最後にするのは,これ以降新たに観察できる種が現れないからです.

今日のねらいは,ほぼ不可能と思われる,飛来種オナガアカネの産卵観察ということにしました.すでに2回の歳時記で紹介しているように,今年はオナガサナエの飛来数がやや多く,メスも観察されています.そこで,最後を飾って,無理を承知で,行ってみることにしました.「虎穴には入らずんば虎児を得ず」というのはちょっと大げさすぎますが,まあ片道3時間もかけて出かけていくので,これくらいの気持ちでないと,このねらいではなかなか行けません.ついでに,カトリヤンマ,ノシメトンボの産卵もプランBで用意しました.

▲ノシメトンボのオス.今年はノシメトンボの産卵を本当に見かけない.結局オスがいただけ.

ノシメトンボは,この生息地では,今年は非常に数が少ないです.もっと時期が早いのでしょうか.今年はここで産卵を記録することができませんでした.兵庫南部で仕切り直しです.カトリヤンマも,結果として,今日は飛ばず.プランBは,全くの役立たずで終わりました.相変わらず活発に活動していたのはアキアカネでした.

▲アキアカネの交尾.赤い茎のオオイヌタデの中で赤いオスと赤いメスが交尾中.

▲アキアカネの産卵.ここでは泥面が少ないので,打水産卵をしている.

予定にはありませんでしたが,ノシメトンボの代わりに,ナツアカネが草地で産卵をしていました.2ペアが隣り合わせで産卵をしていましたが,一方に焦点を当てました.

▲草地で産卵をするナツアカネ.

さて,肝心のオナガアカネの産卵ですが,「想定通り」観察はできませんでした.しかしながら,メスは姿を見せました.湿地の水辺を,オスを誘うようにひらひらと飛んでいました.しかし警戒心は非常に強く,容易に近づくことができませんでした.そして短時間で姿を消してしまいました.なかなか産卵してくれませんね.

▲短時間姿を現したオナガアカネのメス.

このオナガアカネのメスは前回観察したものとは違う個体です.前回の個体は左前翅の先が欠けていましたが,これはきれいな状態です.すぐそばをオスが飛んでいたのに,このオスはこのメスを見つけることができなかったんですね.見つけて捕まえれば,交尾態が見られたかもしれません.残念です.「オス君しっかりしたまえ」と心の中でさけんでいました.今日はオスは3,4頭いたと思います.いちおう,違うポイントで撮った4個体を載せておきます.

▲今日見つけたオナガアカネのオスたち.同じ個体が入っているかもしれない.

現地では5時間ほど粘っていました.天気予報どおり晴れではありましたが,晴れの定義は「雲量が2から8」です.たしかに雲は全天の8割以下でした.でも,太陽が雲に隠れる時間が結構多く,トンボ観察にはあまりいい条件とはいえない一日でした.来春,オナガアカネの幼虫探索に来ることにしましょう.メスが少なくとも2頭はいたわけですから...




続 トンボ歳時記
No.649. オナガアカネとタイリクアキアカネ.2018.10.21.

先日オナガアカネがそこそこの数飛来していたので,今日はさらに徹底的に捜索して,オナガアカネのメスを探すことにしました.メスは,場合によっては繁殖場所にじっと止まっているときもありますが,普通は姿を見せません.メスに出会うには,周辺のねぐらを見つけるか,産卵に来るのを見つけるしかありません.もっとも,飛来種ですから,飛来していなかったらまったくお話にはなりません.今日はこの10月きっての快晴の一日.今日出会えなければ飛来していないということで諦めようと考えて,出かけました.

10:00ころに着きました.今朝は気温が低く,まだ15度です.アキアカネはちらほら飛んでいましたが,トンボの動きはやや鈍い感じです.しかし少しすると,あちこちトンボが飛び始めました.オナガアカネのオスは簡単に見つかりました.ただ,朝のトンボはたいがいそうなのですが,敏捷で近寄れません.

▲私に気づいて,湿地の草の上を飛んで距離をとるオナガアカネのオス.

▲なかなか近づけないので,遠くから....オナガアカネのオス.

▲だんだんと近づいていけるようになった.オナガアカネのオス.

▲そしてやっと近距離に.

そっと近づいても,2mほどのところで,さっと飛び立ってしまいます.先日来たときにオスの写真はだいぶん撮れましたので,こちらもなんか集中力の欠けた雑な動きになってしまいます.だから余計にすぐに気づかれてしまうのでしょう.集中力を奮い起こして慎重に近づき,なんとか近くで大きく撮れました.数は多くて,まあ10頭はいたと思います.

▲成熟したオスのオナガアカネ.非常に敏捷に飛び回る.

▲まだ若いオスのオナガアカネ.腹部の側縁が黄色い色をしている.

▲翅がやや白くなっている成熟オス.

▲これは,3枚上の写真と同じ個体かもしれない.オナガアカネのオス.

さて,1時間30分ほど捜索を行いましたが,メスの姿はありません.なかなかメスを探すのは難しい.気温も十分高くなり,汗ばむようになってきた11:30過ぎ,そろそろここを引き上げようかと思って,湿地を出ようとしたとき,淡褐色をした小型のアカトンボが,単独で打水産卵をしているのを見つけました.いました,オナガアカネのメスです.近づいてカメラを向けようとしたときに産卵を終え,草に止まりました.数枚記録したとき,ファインダーから姿が消え,どこへ行ったか分からなくなりました.

▲オナガアカネのメスを見つけた.しかし,産卵をやめて止まってしまった.

▲近づいて確認したら,オナガアカネのメスだった.

そのあと,周辺をくまなく探し回りましたが,この個体を見つけることはできませんでした.カメラのファインダーを覗いているきに飛び去ると,どの方向へ行ったのかがまったく分からないときがあります.まあ,仕方がありません.

ところが,この逃げたメスの探索中に,オナガアカネとは感じが違う小型のアカネ属のトンボを見つけました.オナガアカネは腹部の先の方が少し太くなっている感じに見えるのですが,このトンボはほっそりと伸びています.もしや,タイリクアキアカネでは? と思って,慎重に,かつ粘り強く,接近を試みました.この個体も,オナガアカネ同様,なかなか近づかせてくれません.やっとのことで何枚か記録を撮りましたら,やはり,タイリクアキアカネでした.

▲タイリクアキアカネらしい個体.腹部が全体的にほっそりとしている.

▲なんとか確認できる距離に近づき,タイリクアキアカネであることが判明.

▲しばらく追いかけたが,やがて一気に遠くへ飛んだので見失った.

ここでオナガアカネとタイリクアキアカネの違いを紹介しておきましょう.いちばんはっきりと分かるのは,腹部第7節の後縁の腹部側が下方に突き出ているのがオナガアカネです.タイリクアキアカネにはそれがありません.また,腹部の斑紋にも違いがあります.さらに両者を比較すると,腹部が太くやや短いのがオナガアカネでほっそりとして細長いのがタイリクアキアカネです.

▲オナガアカネのオスとタイリクアキアカネのオスの比較.

タイリクアキアカネは,21世紀に入って少ししたあたりから飛来数が極端に減少し,代わってオナガアカネが多く飛来するようになりました.20世紀末ころには,飛来するのはほとんどがタイリクアキアカネで,オナガアカネの方が珍品と言ってよい状態でした.ですから,本当に久しぶりにタイリクアキアカネに出会うことができ嬉しく思っています.ちょっと思い出す意味で,古い写真を載せておきます.

▲タイリクアキアカネのオス.21世紀初めには,瀬戸内側にまで多く飛来してきたことがある.

今年は,私にとっては飛来種の当たり年で,スナアカネ,オナガアカネ,タイリクアキアカネと3種に出会うことができました.あと,記録としては,マンシュウアカネというのがあるのですが,これは難しいでしょう.ということで,今日は午前中の2時間半ほどでしたが,面白い観察になりました.写真にはなりませんでしたが,オナガアカネの産卵を始めて観察できたのも大きかったです.




続 トンボ歳時記
No.648. たくさんのアキアカネ,そしてオナガアカネ.2018.10.18.

今日は兵庫県北部へ行ってきました.複数の天気予報で,午前から昼にかけて晴れマークがついており,晴れる可能性が高そうだからです.ただ午後遅くから雨らしい.アカトンボは午前中だけ晴れればいいので,雲が厚くなってきたら帰ることにして,出かけました.

今日のねらいはアキアカネです.アキアカネを見に車で3時間近く走っていくのですから,時代は変わったものです.もちろん悪い方にですけど... 今日のねらいは,アキアカネの産卵観察というよりは,朝,産卵にやって来る連結個体を記録しようというのです.兵庫県北部では,かつてのように,群れになって水田にやって来るアキアカネが見られるのです.青空をバックに次々と飛来するアキアカネ.なんとも幻想的です.

まずは,目的の場所から少し離れた,広く開けた水田地帯の道路上に車を止めて観察をしました.ここで気づいたことは,みな北を目指して飛んでいるということです.写真は朝日をバックに西を向いて撮影しています.写真を見てお気づきと思いますが,全てトンボは右向き,つまり北に向かって飛んでいます.たぶん,産卵場に何らかの記憶があるのでしょうね.そちらを目指して移動しているといった感じに見えます.また飛んでいる高度も高いものが多く,その多くは10m以上の高度を飛んでいるようです.アキアカネのペアは時間差で次々にやって来るので写真は1回に1ペアしか撮れませんから,沢山の写真を掲げました.

▲次々に頭上を通り過ぎるアキアカネ.すべての個体は右側面に日を受けて,つまり北向きに飛んでいる.

▲これは東向きに撮った写真で,左が北になる.

この開けた場所には,稲刈り後に水がたまった水田があり,そこを産卵場にしようと,降りてくる個体も少数いました.しかし,だいたいは北の方に飛び去ってしまい,やはりどこかを目指しているように見えます.

次に私の目的地である休耕田や稲刈り後の湿地状の水田で,同様にタンデムで飛ぶアキアカネを観察してみました.やはり,谷の入り口から奥の方に向かって,同じ向きに飛ぶ個体は多かったですが,ややランダムになってきていました.また,より低空を飛ぶ個体が多く,中には水田に向かって降りていく個体もありました.おそらくここを産卵場と認識しての行動なのでしょう.

▲目的地の谷筋に入っていくと,飛ぶ高度が低くなってきた.

▲高度を下げ,すぐ頭上を通り過ぎるアキアカネ.

足下の休耕田の草地では,たくさんのオスがメスを見つけて交尾態になって飛び回っていました.交尾が終われば上空へ上がって飛び,産卵場所を探すのです.この谷もアキアカネのねぐらになっているようです.

▲休耕田の草地で交尾するペア.

▲農道の横の草に止まって交尾するペア.

▲交尾したまま飛び上がるペアもいた.

産卵場所を見つけると,ペアは下降してきて,産卵を始めます.今日は休耕田の湿地で撮影する予定でした.しかし,休耕田は草が茂りすぎていて,アキアカネは産卵はしていましたが,草にもぐり込むような感じで,写真の記録が難しいと感じました.

▲休耕田湿地の草の上を飛んで,産卵場所を探すペア.

▲草の間にわずかに見える水面に向かって,草の間に入って産卵するペア..

▲打水が終わって草の間から出てくるペア.

そこで,いい記録場所はないかと少し歩いてみましたら,稲刈り後の水田の一つが,コンバインの轍が残っていて水がたまり,アキアカネのちょうどよい産卵場所になっていました.すぐ横の畑で農家の方が仕事をされていましたので,許可を得て,水田に入らせてもらいました.とにかく個体数が多いので,轍跡の狭い産卵場所には,複数のペアが群れて産卵をしています.まずはそういった風景を記録しました.

▲2ペアの同時産卵.

▲3ペアの同時産卵.

▲4ペアの同時産卵.

アキアカネのメスには,腹部背面が褐色のものと,赤くなるものがあります.沢山のペアの中から,そういった個体を見つけて記録しました.まずは,褐色のタイプの産卵です.といっても,特に何かがあるわけではありませんが...

▲メスの腹部背面が褐色のタイプの産卵.

次はメスの腹部背面が赤くなるタイプです.ややくすんだ赤だった個体と,鮮やかな赤だった個体を選んでみました.沢山いると選び放題です.

▲メスの腹部背面がややくすんだ赤色のタイプ.

▲メスの腹部背面が鮮やかな赤のタイプ.

産卵は10:00過ぎに始まって,11:00になってもまだまだ続いているようでした.産卵を終えたアキアカネたちは摂食飛翔を始めます.もちろん朝からやっている個体もたくさんあるのですが,産卵時刻が終わったころに特にまとまった群飛が見られます.

▲4頭のアキアカネのオスが上空を摂食飛翔している.産卵が始まるころの時間帯.

▲アキアカネの群飛.白いゴミのような点は全てアキアカネである.産卵が終わったころの時間帯.

▲産卵を終えたメスであろうか,日に当たってゆっくりと休んでいる.

ご覧の通り,よく晴れていて気持ちのいい観察になりました.この晴れは,予報では午前中までのようです.アキアカネは十分観察ができましたので,あと,ノシメトンボとオナガアカネの観察に行くことにしました.この秋のアカトンボ観察で残っているのは,ノシメトンボだけになりましたので,一気に観察できればという魂胆です.ノシメトンボを見に行く場所には,ときどきオナガアカネが飛来するので,それもうまくいけばゲットしようというプランです.

現地に着くと,友人がやって来ていて,オナガアカネがいると教えてくれました.よく観察すると,オナガアカネが飛んでいました.少し小さくて,よくホバリングするので,それと分かります.

▲オナガアカネのオス.全部で6頭はいたと思われる.

オナガアカネの動きははっきりとしていて,日が照るとさーっと活動を始めるのですが,日が陰ると,止まったまま動かなくなってどこにいるか分からなくなります.友人が4頭採集したようなので,全部で10頭くらいは飛来していたでしょうか.ここにこんなにたくさん来ているのを見るのは初めてです.最後にいちばん人なつっこく,逃げなかった個体の顔アップです.オナガアカネの顔面は本当に真っ白です.

▲オナガアカネ顔の拡大.ややクリーム色がかっているが,額が真っ白である.

さて,目的のノシメトンボですが,オスが1頭飛んでいただけで,産卵にはやってきませんでした.ナツアカネは複数産卵をしていました.

▲ナツアカネの連結打空産卵.

▲途中でメスを放し,警護産卵に移行した.

オナガアカネのメスがいないかと,さらに隅々まで探し回りますと,リスアカネが林縁の陽が当たるところで産卵をしていました.10月も後半になると,リスアカネやナニワトンボのような日陰で産卵していたアカトンボも,日向で産卵するようになります.

▲林縁の陽が当たるところで産卵していたリスアカネ.

季節はどんどんと進んでいきます.あと一月もすると,老熟したアカトンボたちが,ときどき産卵するのを見るだけとなるでしょう.キトンボだけは多分その頃も元気です.この週末から来週にかけては晴れの天気が続きそうです.それにしても今日の天気予報はよい方に外れました.帰途につくまでずっと晴れていました.よかった.