新 トンボ歳時記
No.404. アキアカネの観察.2012.10.20.

秋本番.高原はススキの穂が満開です.今日は西日本の上空に移動性高気圧の中心が居座っていて,一日中穏やかな快晴.ということで,冬が近くなると天気が崩れやすい兵庫県北部のルリボシヤンマの生息する湿地に出かけてきました.

ところで,今日のタイトルは,本当は「ルリボシヤンマの観察(2)」とする予定でした.でも,ルリボシヤンマは,入っては来るものの,落ち着いてこの湿地にとどまらず,オスもメスも,少しようすを確かめると,すぐに湿地を出て行ってしまいます.ここは,20年ほど前は池状の水たまりがあって,ルリボシヤンマがたくさん集まってきていましたが,今では写真のように陸地化寸前です.まあ,自然の遷移が進んでいるということで,こればかりは致し方ありません.

現地には朝の9:20ころに到着しました.9:42,メスのルリボシヤンマが入ってきましたので,とりあえず撮った写真が次のものです.今日は写真はこれだけで,メスは午後にも1頭入ってきましたが,これは本当にすぐに出て行ってしまいました.

さて,このルリボシヤンマが入る前,9:30ころに,アキアカネの交尾カップルが見られました.

アキアカネは,湿地のまわりに広がるススキの原に散らばって,繁殖時間帯以外を過ごしているようで,個体数が多そうです.交尾のペアに混じって,単独のオスも入ってきました.

そんな感じで,ルリボシヤンマはやって来たら観察すると決め,しばらくアキアカネの産卵の観察をすることにしました.でもこれが結局唯一の観察になってしまいましたけれども...

産卵が始まったのは10:00ころです.最初は2ペアだけでしたが,だんだんと数が増えて,多いときは数ペアが同時に産卵をするようになりました.また,次々にペアが産卵に入ってきて,しばらくの間アキアカネの産卵が途切れることがありませんでした.

アキアカネは兵庫県南部では個体数が少なくなってしまいましたが,ここには昔を彷彿とさせるくらいの個体数がいました.まだまだ兵庫県北部にはアキアカネが健在ですね.ただここの個体群は,高原からこの時期にも低地へ降りていないので,いわゆる高地残留の繁殖個体群でしょうね.

さて,お昼の間,別のルリボシヤンマの生息地に出かけてみましたが,そこも大同小異,オスも飛んでいません.兵庫県ではルリボシヤンマのピークはもっと早いのでしょうか? あまり観察に行かないトンボですので,どうもルリボシヤンマとは相性が悪いようです.ということで,昼下がりにまたここに帰ってきました.アキアカネはもうほとんど産卵をしていません.が,そんな時,アキアカネのペアが入ってきて,交尾態になりました.

このペアはその後産卵を始めました.この産卵が終わったのが14:51で,その後は産卵のペアはやってこなかったようです.ということで,今日はアキアカネの観察になってしまいました.兵庫県南部ではあまり見られない光景になってしまったので,懐かしい感じがしました.これが20年前なら,これほど記録を撮り続けることはなかったでしょうね.この湿地には,アキアカネ以外には,ヒメアカネ,ノシメトンボ,ナツアカネなどが見られました.

帰り道で大きなバッタが飛び立ちましたので確かめてみると,トノサマバッタでした.トノサマバッタも最近は見なくなったような気がします.まあ,トンボばかりが中心だからかもしれません.これを今日のゲストにしたいと思います.

秋の高原は満喫できましたが,ルリボシヤンマはぱっとしませんでした.オスをのべ4回,メスをのべ2回目撃しただけでした.採集調査なら成果ありというところでしたね.