トンボ歳時記
No.317. オオルリボシヤンマの観察. 2011.10.1.

この初夏にオオルリボシヤンマの幼虫がたくさん採れた県東部の池に出かけました.現地ではほとんど陽が射さず,時々太陽が雲間から顔を出す程度でした.農道を歩いていると,まだオニヤンマのオスが複数,溝川の上を飛び回り,残された短い命を,メスを探すのに精一杯使っているようでした.

▼オニヤンマのパトロール(上)
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▲2段目:今日の観察池.3,4段目:ネキトンボの産卵.

池に到着しました.雲間から陽が射すと,ネキトンボがたくさん池面を飛び,そこそこの数のペアが,産卵にも訪れました.ただ今日は,疲れがたまっているのか集中力を欠いていて,ピントが今ひとつ来ませんでした.

さて,オオルリボシヤンマの産卵を目当てにやってきているのですけれども,オスが1頭パトロールしているだけで,メスの姿はありません.ただ嬉しいことに,時々,タカネトンボが入ってきました.残念なのは,池に踏み込んだ瞬間,タカネトンボのメスが産卵をしていたのを驚かせて,逃げられてしまったことでした.タカネトンボとオオルリボシヤンマといった,普通山にいるトンボが,ほとんど平地に近いこの池で見られるので,ここはなかなか面白い場所です.

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▲オオルリボシヤンマの闘争.

この池になわばりを持っているオスは,1頭で池全部をなわばりにしているようで,他のオスが入ってくると,激しく闘争を行い,追尾して追い出すといった行動を繰り返していました.そんな中の一つが,上の写真です.最初は空中戦(上)をやっていましたが,なわばりオスが侵入オスにつかみかかるようにして池に落ちました.どうやらメスと勘違いしたのか,タンデムを形成しようとしています(2段目左).そして一度はオスどうしのタンデムになり飛び立ちました(2段目右)が,すぐにまた池に落ちました(3段目).なわばりオスの方はその後すぐに飛び去りました.一方,侵入オスの方は,負傷したのか水面でばたばたやって,いっこうに飛び立ちません.カエルが飛びついて,一度は水中に引きずり込みました.少しすると浮かんできて,ヒルムシロにつかまりながら,またばたばたやっていました.

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▲水面でばたばたやっている侵入オス.

しばらくすると頭を水中に没し,動かなくなりました(下).私は様子を見ていましたが,長い木の枝を探してきて,岸の方にたぐり寄せてみました.取り上げてみると,肢が硬直し,動きません.もうだめかと思い乾かせて標本にしようと考えました.持ち帰る途中,手の中でかすかに動きます.息を吹きかけて暖めてやると,肢を動かし始めました.試しに木に止まらせてみると,ぶら下がることができました.ということで風の当たらない暖かそうなところに置いてきました.このオスに運があって飛び立つことを願いながら....

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▲岸にたぐり寄せた.最後のあがきのように体をくねらせた(上).
 最後は少し元気を取り戻し木にぶら下がることができた(下).

オオルリボシヤンマの産卵は見ることができませんでしたが,オスどうしの激しい戦いを目にし,トンボも命がけで毎日を過ごしていると感じました.


さて,帰りに,ムカシヤンマの幼虫を探しにいってみることにしました.これがずばり的中し,初めてムカシヤンマ幼虫の生態写真を撮ることができました.といっても,自然状態では顔だけしか見えませんので,取り出して現場に置き,1時間ほど自由にさせてから落ち着いたところも撮影しました.

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▲ムカシヤンマの幼虫.生態写真(上)と,取り出して撮ったもの(下3枚).

今日は気温が低く曇っていたのでトンボの活動は概して不活発でした.