兵庫県のトンボ幼虫ガイド
幼虫を調べる前に
<幼虫の採集に関する注意>
 幼虫を採集するときに,池や川に入ることがあるかもしれません.池や川に入ることには,大きな危険がともないます.ため池や自然の川など,危険なところへは絶対に入らないようにしてください.入ることが許されている池や川に入るときでも,できれば大人の人と出かけましょう.トンボの幼虫を採ることより,安全が大切なことをくれぐれも忘れないでください.ここをクリックして,そこの記事を参考に読んでください.


<つかまえた幼虫は体を洗うこと>
 つかまえた幼虫の体には,たいがい泥(どろ)がついています.使い古しの歯ブラシか,絵の具の筆で,水道の流水で洗いながら,頭から腹の方向に向かってこすって,泥をとってください.洗うことで,腹の横のとげや,背中のとげがはっきりと見えるようになります.また,幼虫には,それぞれに特有なもようがあります.それもはっきりと見えるようになります.

写真1.左:採集したばかりのキイロサナエの幼虫.泥をかぶっています.右:歯ブラシで泥(どろ)を洗い流したキイロサナエの幼虫.
 ただし,幼虫の体の色は,生活していた場所の状態によって,白っぽくなったり,黒っぽくなったりすることがあります(写真2).この場合は,体のもようははっきりとせず,あてにできません.

写真2.左:白っぽい泥の中で暮らしていたマダラナニワトンボ幼虫.右:黒っぽい泥の中で暮らしていたショウジョウトンボ幼虫.
<終齢幼虫(しゅうれいようちゅう)で調べよう>
 卵からかえった幼虫は,脱皮(だっぴ)といって,皮をぬいで大きくなっていきます.次に脱皮すると親になる幼虫を,終齢幼虫とよびます.終齢幼虫は,幼虫の特ちょうがはっきりとしていて,名前を調べるのに都合がいいのです.終齢幼虫かどうかを知るには,成虫の翅(はね)がおさめられている翅芽(しが)の先の位置を見ます.この位置が,ヤンマやサナエトンボのなかまでは腹部の第4節にとどくかこえるくらい(写真3),トンボやエゾトンボのなかまでは第7節にとどくくらい(写真4)になっていると,終齢幼虫と考えてよいでしょう.なお腹部の節の数えかたは,先のほうから10から逆に数えていくとよいでしょう.

写真3.マルタンヤンマ幼虫.左:終齢幼虫になっていない幼虫(一つ手前の亜終齢幼虫).右:終齢幼虫.数字は腹部の節の番号.
写真4.左:終齢幼虫になっていないタカネトンボ幼虫(一つ手前の亜終齢幼虫).右:ハネビロエゾトンボ終齢幼虫.
 このホームページでは,終齢幼虫の特ちょうを書いています.終齢幼虫でない幼虫でも,名前を調べることができますが,いろいろな特ちょうが,このホームページに書かれている内容とちがってくる場合がありますので,注意してください.
 終齢幼虫は,羽化が近くなってくると,翅芽(しが)がふくらんできます.目もすきとおってきます.こうなると,エサをやらなくても,羽化が観察できます.そんな幼虫が採れたら,ぜひ羽化させてみましょう.ビンに水道水を入れ,かれ枝を立てかけておくと,それにつかまって羽化をします.羽化させることができれば,自分の調べた名前が正しかったかどうかが分かります.また名前が分からなかった幼虫も,名前が分かるかもしれません.

写真5.左:翅芽がふくらんでいるアオモンイトトンボ終齢幼虫幼虫.右:クロイトトンボの羽化.
<用意するもの>
 幼虫の名前を調べるために必要な道具を,あげておきましょう.まず,先の細いピンセット.幼虫の下唇(かしん)を引き出したりするのに必要です.次にルーペまたは虫めがね.幼虫の,細かな毛の数とか,とげの数とかを,まちがいなく数えるためには,ルーペか虫めがねが必要です.双眼実体顕微鏡(そうがんじったいけんびきょう)という器具があればいうことはありません.
 もし,つかまえた幼虫が死んでしまったりして,標本にするならば,薬局へ行って95%のエタノール(アルコール)を買ってきて,小さなビンに入れ,それに幼虫をつけるといいでしょう.幼虫の名前,幼虫を採った場所,日付,採集した人の名前を,鉛筆(えんぴつ)で書いた紙をいっしょに入れておきましょう.