<分類学的位置>
トンボ目 Order Odonata
イトトンボ科 Family Coenagrionidae
アオモンイトトンボ属 Genus Ischnura
<分布>
北海道に分布する.青森県に記録がある.海外ではヨーロッパからロシア,中国,朝鮮半島など,高緯度地域に広く分布している.
<特記事項>
海外にはマンシュウイトトンボの亜種が分布している.北海道のものは原名亜種とされている.アオモンイトトンボとよく似ているが,アオモンイトトンボは北海道・青森県には分布しない.マンシュウイトトンボは前胸背面の後縁部に小さな突出部がありアオモンイトトンボにはそれがないので区別ができるという(尾園ら,2012).またオスについては,アオモンイトトンボと違って,腹部第7節腹面にも青色斑が広がっている.
マンシュウイトトンボのメスは5種類の多型現象を示し,成熟にともなって色彩が変化するので,複雑な印象を受ける.Askew (1988) などを引用した SANCHEZ-GUILLEN, et.al. (2005)によると,次のように整理される.

5種類の多型とは,図の forma で示した4つと,オスと同色型 androchrome の1つである.実際のところ色味が微妙で,紫と青の区別も難しく,頻繁に観察できる状況にない者にとっては区別に迷うことがある.このうちのいくつかを生体写真で紹介する.なお,マンシュウイトトンボの多型については,生方氏のブログに詳しく紹介されている.
<生体写真>
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



R. A. SANCHEZ-GUILLEN, H. VAN GOSSUM, A. CORDERO RIVERA, 2005. Hybridization and the inheritance of female colour polymorphism in two ischnurid damselflies (Odonata: Coenagrionidae). Biological Journal of the Linnean Society, 85:471-481.
Askew R.R. 1988. The dragonflies of Europe. Brill Academic Pub..