No.806. まだ秋には少し早かった.2021.9.19.

台風が通り過ぎ,久しぶりの天気です.兵庫北部に秋を探しに行きました.しかしちょっと早すぎたようです.夏のトンボたちの生き残りがちらほら飛んでいて,オニヤンマやオオルリボシヤンマは元気でした.この2種は,この時期が一番繁殖活動が盛んに行われるシーズンです.

▲夏のサナエトンボ,オナガサナエ.この場所で見るのは初めてだ.▲

▲悠然と飛ぶオニヤンマが,ときどき止まる.▲

▲ハグロトンボもまだまだ元気だ.▲

▲ちょうどこの時期がピークのオオルリボシヤンマ.▲

ナツアカネやアキアカネは,少しだけ下りてきて,木々の枝先などに止まっているのが見られました.まだ繁殖活動は始めていない感じです.

▲ナツアカネ.十分成熟しているように見えるが,まだ産卵は始めていないようだ.▲

▲アキアカネも少数下りてきていたが,まだ活動を始めそうもなかった.▲

今の季節一番元気に繁殖活動をしている秋のトンボは,アオイトトンボとリスアカネです.兵庫県南部でしたら,これにナニワトンボが加わります.

▲アオイトトンボの産卵.▲

リスアカネは特に数が多く,あちこちで産卵をしていました.昨日まで台風で,産卵意欲のあったメスが,一斉に出てきているような感じでした.

▲水のない池岸で産卵をするリスアカネのペア.▲

▲連結産卵するリスアカネ.▲

例によって,初めのうち連結産卵をしていたペアは,最後の方でメスを放し,メスは単独産卵に移行します.

▲後半オスから解放されたメスは単独で打空産卵を続ける.▲

本格的に秋のトンボたちが活動を盛んに行うのには,まだあと2週間ぐらいかかる気がしました.北の方も秋の到来が遅くなっているのかな?

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No.805. 日本のトンボの記録種数が204種に.2021.9.9.

だいぶんお知らせが遅くなりましたが,この春に一つの報告と,一つの書籍の改訂版が出されました.

一つは「月刊むし」の2021年3月号(通巻601号)に掲載された,「日本初記録のサイジョウチョウトンボ(和名新称)を与那国島で採集」という小浜継男氏による報告です.これによって,日本で記録されたトンボの種数が204種になりました.

サイジョウチョウトンボ Rhyothemis regia regia は,2020年9月2日に,西条実氏によって,1オス1メスが,与那国島で採集されたのが初記録となります.台湾から飛来したと推測されています.オキナワチョウトンボの翅の黄色の部分をほとんど濃褐色にしたような色彩のチョウトンボで,10頭ぐらいはいたそうです.和名は,第一発見者の西条氏にちなんで付けられました.

もう一つは,尾園氏らの著作「日本のトンボ」の改訂版が出たことです.細かい点が改訂されているようですが,私にとって一番インパクトがあったのが,分類体系の見直しで,旧版ではムカシトンボが不均翅亜目に分類されていたのが,ムカシトンボ亜目を復活させたことでした.これは世界的な流れのようで,World Odonata List でも,かなり以前からムカシトンボ亜目 Suborder Anysizygoptera を導入していました.当サイトでもどうしようかと迷っていましたが,このたび「日本のトンボ」の改訂版が出たのを機に(といってもかなり遅れましたが),書き換えをすることにしました.

必要なところは直したつもりですが,まだ書き換えが残っているところがあるかも知れません.適時校正していきますので,間違いがありましたらご容赦ください.

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No.804. ベニイトトンボ.2021.8.26.

一月ほど前,「神戸のトンボ広場」にベニイトトンボの報告がありました.その生息池は私の以前からの観察地だと思われ,今日生息を確認しに行きました.この池は2018年の羽化が始まる直前に,幼虫の生息場所の藻がすべて取り除かれてしまい,その日から姿が見られなくなっていました.そしてその後は確認に出かけていなかったのです.今日という時期は,ちょっとベニイトトンボには遅いのですが,せっかくご報告をいただいたので,確認に行ってきました.結果2オスを目撃しました.

▲ベニイトトンボのオス.▲

今年は,ナゴヤサナエの再発見,コシボソヤンマの再来,ベニイトトンボの再発見と続き,ある意味いいことが続きました.今年姿が見られなかったアオヤンマも,来年の復活を期待したいものです.ここのベニイトトンボも,来年もう一度きちんと観察に来ることにします.

これ以外にも夏のトンボがたくさん飛んでいましたが,タイワンウチワヤンマとオオシオカラトンボを載せておきます.

▲タイワンウチワヤンマのオス.▲

▲オオシオカラトンボのオス.▲

ほんの1時間ほどの観察でした.やっと晴れの日が続きそうです.明日あたりからまた人のいない野外へ出ることにします.

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No.803. ダイサギがリスアカネを喰う.2021.8.16.

今日は,連日の雨の中,前線が南へ下がったので,北の方にトンボを見に行きました.やはり曇っていたせいでしょうか,成果はなし.といっても,ちょっとだけ日が射す時間帯があって,その瞬間にトンボたちがすがたを現しました.ウスバキトンボが縄張り活動をしたり,シオカラトンボが産卵したり,リスアカネも産卵していました.そしてヤブヤンマのオスが何度も目の前を行きすぎたり,ギンヤンマが産卵に来たりと,見ている分には退屈しない時間帯がありました.

▲ちょっと日が射したときに産卵にやって来たギンヤンマ.▲

そんなトンボたちをながめていると,ひょっこりダイサギが現れました.私の前方10mぐらいの所を忍び足で歩いて,キョロキョロしています.餌を探しているのでしょう.枯れ枝のところで立ち止まり,首を上に向けたとき何かを捕らえました.リスアカネです.枝先に止まっていたリスアカネを捕らえました.人間だとなかなか手づかみは難しいですが,いとも簡単にパクリとやったのには驚きました.

▲リスアカネを捕食するダイサギ.▲

あまりに突然だったので,カメラの準備が整わずうまく撮れませんでしたが,アカトンボがくわえられているのは分かると思います.さらに餌を探す仕草を続けましたので,ゆっくりと後を追いかけました.止まっているシオカラトンボなどを捕るかも知れません.このダイサギ私のことを無視するかのように,気にせず餌を探しています.そのとき何かをパクリとやりました.口先で何かが暴れています.写真を撮って確かめると,トカゲでした.

▲トカゲを補食するダイサギ.▲

残念ながら,その後もトンボを補食する場面には出会えませんでした.鳥専門にねらっているわけではないので,トンボを補食するシーンには意外と出会いません.そういう意味では,珍しいシーンに出会った気がしました.

短いレポートでしたが,今日はここまでです.

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No.802. コシボソヤンマが帰ってきた.2021.8.11.

昨日・今日と,エゾトンボ系の姿を探しに行きました.昨日は,例年見られるハネビロエゾトンボの姿がなく,今日はタカネトンボを見に,山の池に行くことにしました.結果からいうと,まだタカネトンボには早かったのか,まったく飛びませんでした.池にいたのは,モノサシトンボ,オオアオイトトンボ(周辺),オオシオカラトンボ,そしてオオルリボシヤンマでした.

▲モノサシトンボのタンデム.メスはまだ赤い色をしている.▲

▲モノサシトンボの交尾2連.▲

▲池の周辺のササ原に潜り込んでいるオオアオイトトンボのメス.▲

池では,ネキトンボが羽化をしていました.別の所からもネキトンボの処女飛行個体が飛び出し,合計2頭見つけました.

▲ネキトンボの羽化.▲

オオルリボシヤンマは,1頭が池の上をすばしこく飛んで,摂食をしていました.さらに別の1頭は,産卵にやって来たメスを追いかけていました.まだ8月前半ですが,もうオオルリボシヤンマは産卵をしているのですね.早い感じです.

▲池の上を飛ぶオオルリボシヤンマのオス.▲

▲コウホネの中に潜りこんだメスの上でホバリングする,オオルリボシのオス.▲

▲コウホネの茂みの中でオオルリボシヤンマのメスに接近しているオス.▲

▲産卵するオオルリボシヤンマのメス.翅が傷んでいる.▲

ということで,目的のタカネトンボは今日はあきらめることにしました.11:00に池を離れ,帰りにコシボソヤンマの姿がないか,以前毎年行っていたポイントへ行ってみることにしました.この場所ではこの3年ほどコシボソヤンマの姿を見ていません.以前川が渇水によって干上がり,その次の年から姿がまったく見られなくなったのです.最後の確認は2018年でした.もう帰ってこないかなと思っていたのですが,今日産卵メスに出会いました.

流れをジャブジャブ上がっていくと,その水音で驚いたのか,メスが木の上に方に飛び上がりました.「あっ,いたっ」と,とても嬉しかったです.久しぶりのご対面です.

▲驚かせて飛び上がった産卵していたコシボソヤンマのメス.▲

でも,慌てることはありません.このコシボソヤンマのメスは,20分もすれば,必ず下りてきて産卵を再開します.過去の観察からその確率が非常に高いことを経験しています.

飛び上がってしばらくは.完全に静止した状態でじっとして止まっていました.そして約15分ほど経ったとき,翅を小刻みに震わせ始めました.体を温めているのでしょうか? もう間もなく飛び立つはずです.そして17分後,パッと飛び立ち,左右に行ったり来たりしながら下りてきて,初めに産卵していた木の切り株に止まり,産卵を再開しました.

▲木の切り株に止まって産卵を再開したコシボソヤンマのメス.▲

少しずつ後ずさりしながら,産卵を続けます.一度再開すると,ストロボを焚こうが近づこうが,お構いなしに産卵を続けるから不思議です.2度ほど飛び立ち,産卵場所を変えました.

▲産卵場所を変えながら産卵を続けるコシボソヤンマのメス.▲

このまま彼女に付き合うと,たぶん2時間以上になると思いますので,20分ほどで切り上げることにしました.「あとはだれにも邪魔されず,頑張って産卵を続けてください.そしてその子孫が,またこの場所を飛び回る日が来ることを祈っています.」なんてちょっとキザな言葉を思い浮かべながら,産卵をあとにしました.

▲これから1,2時間は産卵を続けるだろう.頑張ってください.▲

毎年一回は顔を見たくなる兵庫県のトンボたち.コシボソヤンマとは,来年以降もまた出会えることができそうです.

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