No. 851. 水田で羽化するアキアカネ.2022.6.25.

今日は,兵庫県北部に晴れマーク.今年まだアカトンボの羽化を見ていないので,アキアカネの羽化状況を見に行きました.わざわざ兵庫県北部にまで出かけるのは,「コウノトリ育む農法」をやっている水田は無農薬または減農薬で,ここからはアキアカネが多数羽化するからです.アキアカネが水田をすみかにして全国的な普通種となったとはよく言われますが,実際に水田から羽化するところというのは,もう最近では私の身の回りでほとんど見られなくなりました.


▲無農薬で稲作が行われている水田にはこのような旗が立てられている.2021年.▲

今日はついていて,まさに羽化しているところに出くわしました.稲に羽化殻と羽化した成虫があちこちに付いていました.


▲伸び始めた稲の葉に羽化殻や羽化した成虫が付いている.アキアカネ.▲


▲まだ羽化してから飛び立っていないと思われるアキアカネたち.▲


▲飛び立って,水田の柵に止まっているオス.▲

これはだいたい10:30ぐらいに訪れた水田で撮影したものです.まだまわりに分散していなくて水田の稲にくっついている状態です.一方14:00頃に別の水田をのぞいてみました.こちらはもう羽化殻からは離れていましたが,周辺に分散せず,水田の中をあちこち飛び回っていました.


▲水田の中を未熟個体が飛び回るのはちょっと不思議な気がした.▲

こちらの水田はまわりが道路や駐車場になっているので,隠れるような草地がないせいかもしれません.羽化した個体は普通水辺を離れるものなので,珍しい行動を観察したと思います.

ではこれ以外のトンボたちを紹介していきましょう.まずはハラビロトンボです.アキアカネの羽化を見たいので休耕湿地に行ったのですが,アキアカネはいず,ハラビロトンボたちが活動していました.


▲メスを捕まえて交尾したオス.▲


▲メスは続けて産卵に入った.▲


▲産卵途中でまた別のオスに交尾を強制されたハラビロトンボのメス.▲

この時期はトンボの端境期で,最盛期を迎えるトンボは数少ないのです.その一つがハッチョウトンボです.今日は繁殖活動は見ることができませんでした.ただ,お昼頃で暑かったので,オスはみんな腹部挙上姿勢をしていました.


▲腹部挙上姿勢をしているハッチョウトンボのオス.▲


▲メスも草地で腹部挙上姿勢をしていた.▲

あと,春季種・夏季種のいろいろなトンボたちに出会いました.あとは写真だけで紹介していきます.


▲キイロサナエのオス.キイロサナエはまだ今がシーズンであちこちにいた.▲


▲ヤマサナエのメス.まだヤマサナエも生き残っていた.▲


▲老熟したシオヤトンボ.ここの湿地にはまだ結構たくさん生き残っていた.▲


▲アサヒナカワトンボの交尾.まだまだ頑張っていますな.▲


▲ショウジョウトンボはこの時期に一番数が多い.▲


▲シオカラトンボもそろそろ二化目が始まる時期かもしれない.▲


▲モートンイトトンボもこの時期が一番盛りである.▲


▲クロイトトンボの交尾.▲


▲オオイトトンボの産卵.▲


▲キイトトンボもたくさん産卵していた.以前は7月頃がピークだったように思う.▲


▲ホソミオツネントンボの羽化.6月に羽化したのは初めて見た.▲


▲ホソミオツネントンボの羽化殻.尾鰓がきれいに残っているきれいな状態.▲

あと,チョウトンボが飛んでいたし,クロスジギンヤンマ,オオシオカラトンボ,ウスバキトンボ,コヤマトンボ,コフキトンボ,ウチワヤンマ,コオニヤンマなど,さすが6月という感じの一日でした.

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No. 850. クロイトトンボの産卵と….2022.6.24.

今日はムスジイトトンボのビデオ撮影に行ってきたのですが,なんと,記録したSDカードがクラッシュ.すべて水の泡となりました.復元ソフトを使うと復活できるかもしれないので,いろいろとネットを調べて,一番安全そうなフリーソフトを使ってみました.なんとかほとんどのファイルが復活しました.

実は同じメーカーのSDカードが以前にもクラッシュして,ついこの間新品交換してもらったのです.なんと,このカードにもムスジイトトンボの潜水産卵という貴重な記録が入っていました.なんか「ムスジイトトンボのビデオ」というのが,呪いになっているみたいです.そのときは復元ということが頭に浮かばなかったので,交換に出してしまいました.もうこのメーカーのSDカードカードは使わない.特に大容量記録のSDカードにトラブルが多いです.32GBぐらいが一番安定しているように思えます.

さて,愚痴はこれくらいにして,ビデオ撮影の後,ムスジイトトンボばかり見ているので,セスジイトトンボを見に行くことにしました.セスジイトトンボはいましたが,クロイトトンボもたくさんいて,なんか,青色メスが輝いていたので,これをしばらく追いかけました.


▲クロイトトンボの産卵.青色メスの水色が輝いて見えた.▲


▲コカナダモに産卵するクロイトトンボ.▲

クロイトトンボはコカナダモが集まっているところで産卵をしていました.コカナダモは外来種ですが,イトトンボの産卵基質としてはとても役立っているように思えます.青色メス以外に,通常の緑型のメスはたくさんいました.


▲緑型のメスの産卵と交尾.▲

さて,ちょっと寄り道しました.目的のセスジイトトンボもたくさん飛んでいました.多くがタンデムになっていました.メスの胸部の色が,やたら黄緑色のものと,少し橙色が混じっているものとがいました.


▲メスの胸部や腹部背面が橙色に色づいている.▲


▲このメスは胸部は黄緑色.腹部背面は橙色に色づいている.▲


▲多分,上の2組が一緒に産卵しているのだと思う.▲


▲岸の草むらでは交尾している個体もいた.▲

セスジイトトンボとムスジイトトンボのメスでは,やはり腹部のコバルト色がある分,ムスジイトトンボの方がエキゾチックです.しかしセスジイトトンボも本当に見るのが難しくなってきました.


▲ムスジイトトンボの交尾.復元ソフトで復元したビデオからのリッピング.▲

さて,ここは川なのですが,驚いたことに,オナガサナエがもう川に戻ってきていました.オナガサナエは,私は8月に見に行くトンボです.結構早くから出てきているんですね.ちょっと意外でした.


▲まだ若いオナガサナエのオス.2頭見られた.▲

オナガサナエとセットのコオニヤンマも4頭ほど見かけました.これから2ヶ月近く活動するトンボたちです.春季種に比べると長いです.


▲コオニヤンマのオス.▲

さて,これで観察を終えたのですが,最初のムスジイトトンボの動画撮影の合間に見かけたトンボたちを載せておきます.まずはタイワンウチワヤンマの羽化殻.タイワンウチワヤンマが羽化を始めました.もうトンボの季節も終盤に入った感じがしてしまいます.


▲タイワンウチワヤンマの羽化殻.▲

それから,新鮮なコフキトンボがそこそこ飛んでいました.羽化殻も付いていたので,まだ羽化が続いているのでしょう.ウチワヤンマもだんだんと数が増え,交尾態が1つ飛びました.産卵はどこか遠いところでやっていたのでしょうね.


▲コフキトンボの新鮮なメス.▲


▲ウチワヤンマの交尾態.ちょっとシャッター速度が遅かったか…▲

今日はポロシャツに汗の染みができるくらい暑かったです.それにしても残念な動画撮影でした.

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No. 849. 夏至.2022.6.21.

今日は夏至の日です.夏至といえば一年で一番太陽が出ている時間が長い日ということで有名です.確かにその通りですが,私はトンボ,特に生活史の季節的制御,に興味がある者として,まったく別の印象を持っています.夏至というのは不思議な力を持っているように感じるのです.

日本のトンボのおそらく全部は,この夏至の日までに羽化が始まってしまうか,または幼虫が羽化を運命づけられています.春季種のように早春に羽化したトンボの幼虫は,逆にその後の羽化が抑制されます.以下これらをまとめて「(夏至までに)羽化が運命づけられている」と表現することにします.

ヤンマやエゾトンボなど夏によく見かけるトンボもだいたいこの時期には羽化が運命づけられています.秋に現れるアカトンボやアオイトトンボの仲間も羽化が運命づけられていて,その後は生殖休眠に入るという生活史を営みます.カトリヤンマ,マダラヤンマ,キトンボなど,一部の遅く羽化するトンボは,通常この時期を終齢幼虫で過ごしていますが,これらの終齢幼虫は,やはりその年に羽化することが運命づけられています.

これから外れるかもしれないものの一つが,年に二化以上する種です.ただしそれらの一化目はまず間違いなく夏至までに羽化します.ただ二化目は,夏至の後産卵された卵から発生した個体が,かなり遅い時期に羽化してくる場合もあるかもしれないので,夏至とは関係がない生活史を送っているといえるかもしれません.ただ年二化するトンボは,多くが南方に分布中心を持つトンボで,厳密な生活史の季節的制御を行わなくても生存に大きな問題が生じない種であるようです.

もう一つは成虫越冬性のトンボです.オツネントンボやホソミイトトンボの夏世代は6月終わり頃に羽化してきますが,ホソミオツネントンボやホソミイトトンボの冬世代は夏の終わりから秋にかけての羽化になるようです.

話を整理しますと,成虫越冬性の種を除く,日本に産する一年一化,多年一化の種,そして一年多化の種の一化目は,全部が夏至までに羽化が運命づけられている,ということです.「そんなの,6月は春に暖かくなって十分時間が経っているので,温度が高くなっていて羽化して当たり前」,という考え方もできるでしょう.有効積算温度の法則というよく知られたしくみからもこれは妥当な考え方です.

でもヤマサナエやタベサナエなどの春季種は,この時期すでに終齢幼虫になっていたりしますが,(おそらく)長日休眠によって来春まで羽化が延期されます.逆にアカトンボやアオイトトンボなどは,盛夏に生殖休眠するなどという難しい生活史を枠組みを身につけてまで,夏至前後に羽化が運命づけられています.これらは休眠によって有効積算温度の法則をキャンセルしています.有効積算温度の法則に則って生活史を営んでいるトンボは,夏季種とおそらく南方に分布中心を持つ一年多化のトンボたちでしょう.

トンボは熱帯で誕生し,高緯度地方へ分布が広がっていったと考えられています.高緯度地方は冬が厳しく,冬をどう乗り切るかということが重要な生存戦略となります.一方で季節を知る環境合図として日長を使うということは,広く生物界で知られている事実です.気温等の実際の気象現象は,天体の運動より遅れて地上に現れてきます.7~8月の気温が一番高いというのはそのよい例です.つまり最大日長の夏至というのを生活史の基準として使えば,その後しばらくは(成虫にとって活動しにくい)気温が低くなる季節の到来がないことが保証されます.

ただ,この枠組みでものが言えないのが,あえて成虫で冬に突入する,成虫越冬性のトンボたちです.考えてみれば,成虫で冬の到来を待つ必要があるので,当然といえば当然でしょう.

トンボたちは自然選択の試行錯誤の中で,この夏至の日を利用することが繁殖成功率を高めるもっとも安定した基準になることを見いだし,夏至に羽化を運命づけるという進化を成し遂げたのではないかと考えています.

夏至というのは,トンボにとって,重要な季節のターニングポイントです.トンボ観察を続けている私にとっても,夏至は一年の観察の折り返し点になっています.以後は,新しく出現するトンボに出会うのではなく,すでに出ているトンボを見つけるモードになるからです.

参考:もっとも多くのトンボに出会える6月

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No. 848. ヒロシマサナエ.2022.6.20.

この土日はよく晴れましたが,外出していてトンボ観察にはいけませんでした.その代わりといっては何ですが,外出の帰途広島県に寄って,ヒロシマサナエを見に行ってきました.この時期はもうヒロシマサナエも終わりに近い時期ではないかと思います.ただわざわざ神戸から見に出かけるというのも少し躊躇するトンボなので,ついでに見に行くのが経済的で一番です.天気が危うかったのですがかろうじて持ちました.

現地の湿原に着いたのが10:00ごろ.そのあと2時間ぐらいかけて探し回りました.初めのうちは全く見つからず,やはり時期的に遅かったかなどと思ってしまいました.1時間以上探し回って,やっと集まっているところに出くわしました.まず見つけたのがメスでした.湿原の木道の際に止まっていました.全部で3頭見つけました.水の流れのあるところから離れていますし集まっていますので,一種のねぐら的な場所なのでしょう.こういうポイントを見つけられるかどうかが,発見成功の鍵になるようです.


▲木道を歩いていて最初に発見したメスの最初のショット.▲


▲少しずつ移動してパフォーマンスを見せてくれる.▲

ついでとはいえ,とにかく遠く離れたところにやってきているので,いろいろな角度から写真を撮りました.経験から,だいたい1頭いるとかたまっていることからまわりを探すと,すぐに2頭目が見つかりました.


▲腹部横の淡色斑の違いから,別個体であることが分かる.▲


▲これも腹部横の淡色斑の違いから別個体だと分かる.▲

メスを見つけたので,次はオスを探しに行きました.実はこの少し前に,湿地の細流のところで1頭のサナエトンボが樹上に飛び立ったのを見ていたので,オスは流れのそばでメスを待っている可能性が高いと判断し,その場所で少し待ちました.しかしオスは現れず,もう諦めて帰り道に着きましたら,明るい広場のようなところにオスが休んでいました.空が大分曇ってきましたので,こういう明るいところに集まっていたのかもしれません.


▲散策路の際に止まっていたヒロシマサナエのオス.▲


▲写真を撮ると,うっとしいのか,ちょっとずつ移動して止まり場所を変える.▲

写真を撮っていると,妻が少し先のところでもう1頭のオスを見つけました.オスも集まっているんですね.ただ,オスとメスは別の場所に集まっているところが面白いです.近縁のヒラサナエは,ほとんど隣り同士になるくらい一緒に過ごしています.ただ,ここの生息地はやたら広いので,狭い生息場所のヒラサナエとは行動が違うのかもしれません.


▲2頭目のオス.翅が破れているので,別個体だと分かる.▲

ヒロシマサナエとヒラサナエはとてもよく似ています.淡色斑がヒラサナエに比べて小さいせいで,若干ヒロシマサナエの方が黒っぽい感じが強いです.オスの場合は,尾部付属器の形が違います.メスは産卵弁を見るようですが,これは写真には撮れませんので,顔のアップを載せておきます.


▲ヒロシマサナエとヒラサナエのオスの尾部付属器の形態の相違.▲


▲尾部上付属器はヒロシマサナエの方がより上部に反り,淡色斑はより小さい.▲


▲ヒロシマサナエのメスの頭部と胸部.▲

今日は朝のうちは日が射していたのですがすぐに曇り空になり,トンボの活動も不活発で,繁殖活動は見られませんでした.

その他のトンボとしては,アサヒナカワトンボのオスで,橙色翅型で不透明斑のあるタイプが活動していました.これは兵庫県では見られないタイプです.


▲不透明斑のある橙色翅型のアサヒナカワトンボのオス.▲

こういう個体をみると,兵庫県ではすぐにニホンカワトンボとしてしまいそうです.そこで,兵庫県のニホンカワトンボと並べて比べてみました.写真だけ見ると,絶望的なほどよく似ています.ただアサヒナカワトンボの方が翅脈が粗く感じられますので,前翅の基部から結節までの,前縁脈と亜前縁脈の間の横脈数(結節前横脈)を数えてみますと(写真からはそこしか数えられないので),ニホンカワトンボでは29本,ここのアサヒナカワトンボでは22本と,後者の方が少ないことが分かります.ただ,この翅脈の粗さの違いは,全日本的には成立しない個体群もいるという報告を受けていますので確実なものではありません.しかし,各地で出されている図鑑の写真で調べてもかなりよく成立しているように見えますので,いちおう参考として掲げておきます.


▲ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボの橙色不透明斑オス.横脈数の違い.▲

なお透明翅型のオスもいて,橙色翅のオスがそれを追いかけ回していました.ちなみにこの個体の,前翅の前縁脈と亜前縁脈の間の基部から結節までの横脈数も22本です.


▲透明翅型のオス.腹部の白粉が基部と先端部にしか出ないタイプ.▲

あとはシオヤトンボがいただけで,静かな湿原でした.


▲シオヤトンボのオス.▲

観光を兼ねた観察で,2時間ほどの散策でした.

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No. 847. イトトンボたちの活動.2022.6.12.

今日は,ムスジイトトンボの日周活動をちょっと気合いを入れて調査しました.これについては別途まとめたいと考えています.ここでは,その他のイトトンボたちの活動と,ムスジイトトンボのメスを記録しておくことにします.ムスジイトトンボのメスは,他のイトトンボのメスにはないエキゾチックな色彩をしており,私の好みだからです.まずはアオモンイトトンボからです.


▲8:54.午前はアオモンイトトンボの交尾の時間だ.▲

最近はアオモンイトトンボの観察にも場所を選ぶ必要が出てくるくらい,たくさんいるところが減ってきました.この池はアプローチがしやすく,写真撮影には向いています.上の写真のオスは水色をしていますが,別の若いオスは薄緑色をしています.周辺の草地にはこの色をしたオスが,摂食などの活動していました.メスの体色変化についてはよく語られますが,オスの違いについてはあまり語られないようです.この薄緑と水色は,多型現象なのでしょうか,それとも成熟による変化なのでしょうか.


▲胸部の淡色部が薄緑色をしているやや若いアオモンイトトンボのオス.▲

アオモンイトトンボの産卵時刻は午後です.午後になると単独で産卵する姿が見られますが,オスが近づくと腹部を下に曲げ,交尾拒否をします.今日はオスと同色型のメスも産卵していました.そういえば,この同色型のメスにも,写真のような水色タイプと薄緑のタイプがあります.

▲アオモンイトトンボ同色型メスの産卵.▲


▲普通のアオモンイトトンボのメスの産卵.▲

近くでアジアイトトンボも産卵をしていました.アジアイトトンボとアオモンイトトンボのメスは非常によく似ていて,いつも同定に迷ってしまいます.特にこの時期のアジアイトトンボは前肩あたりにオレンジの筋が出るのでアオモンイトトンボとそっくりです.夏頃の個体ではこのオレンジの筋はあまりはっきりしません.慎重に同定する必要がありますね.


▲アジアイトトンボの産卵.この2枚は同じ個体である.▲

次はクロイトトンボです.クロイトトンボも最近は減少傾向が見られます.でもたいがい他のクロイトトンボ属と一緒に見られるので,どうしてもそちらに気をとられ,観察がおろそかになります.この池はどちらかといえば平地池なので,クロイトトンボは数が少なく,産卵活動を見ることはありませんでした.


▲クロイトトンボの交尾.他のオスがやたらと干渉している.▲


▲このカップル,交尾がうまくいかないようで,すぐに外れてしまう.▲


▲ムスジイトトンボの移精行動にも干渉するクロイトトンボのオス.▲

最後は主役のムスジイトトンボのメスたちです.今日のムスジイトトンボのメスは,すべて成熟した色彩をしていました.ここの個体群全体が一つの成熟期を迎えているようなかんじです.ただ,今日羽化している個体も見ました.


▲羽化直後のテネラルなムスジイトトンボのメス.▲

過去3回の観察に比べて,今日は草むらでくつろぐメスが多く目につきました.草の緑の中にオレンジの胸部とコバルト色の腹部のコントラストが,やはり他のトンボには見られない色調をしています.


▲草むらで憩うムスジイトトンボの成熟メスたち.▲

池面では,やはり数多くいる他のオスにすぐに見つかってしまうようで,大概がタンデムか交尾態です.ここの生息地ではほとんど例外なく潜水産卵するので,産卵中のペアには滅多にお目にかかれません.


▲交尾中のメスは腹部の腹面が上を向くので,コバルト色がよく目立つ.▲

池の中ではあまり単独メスには出会いませんが,潜水産卵を終えた後のような,若干翅が曇って疲れたような様子のメスを見ました.


▲池の中で見た,珍しく単独でいるムスジイトトンボのメス.潜水産卵の後か?.▲

潜水産卵は遠くの方で1ペアを発見しました.またかわいそうにアメンボにやられたオスを見ました.写真にはなりませんでしたが,ウチワヤンマやギンヤンマもムスジイトトンボを狩っているようです.


▲ヒルムシロ類の葉柄に産卵しつつ潜水するムスジイトトンボ.矢印は水面下のメス.▲


▲止まっているときにやられたのだろうか,アメンボの餌食になったオス.▲


今日はイトトンボばかりの登場でした.最後にその他のトンボの記録をしておきます.今日はコフキトンボの産卵を見ました.そしてウチワヤンマの羽化殻がいっぱい付いていました.


▲ムスジイトトンボの羽化殻と,コフキトンボの成熟オス.▲


▲コフキトンボの産卵.やはり水面下の茎に卵を貼り付けている.▲


▲久しぶりにウチワヤンマの羽化殻の「群れ」に出会った.▲

というところで,今日は終わりです.

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