No. 856. オジロサナエのロケハン.2022.7.7.

先日ヒメサナエの産卵場所を探り当てたので,今日はオジロサナエの産卵場所探しに行きました.ただし,まだ時期的にオジロサナエはちょっと早いので,産卵には出会えないかもしれませんが,オスたちがたくさん集まっておれば,そこが繁殖場所になる可能性が高いので,そういった場所のロケーション・ハンティングに行くことにしました.

少し歩き回りました.そして最終的にいい感じのところを見いだしました.そこにはヒメサナエのオスが,2,3頭止まっていました.あとオジロサナエが来てくれればいいので,しばらくその場所で待機することにしました.


▲まだ川面に出ていないヒメサナエのオス.▲

現地に腰を落ち着けたのが,9:00少し過ぎていました.9:48,ヒメサナエのメスが産卵に入りました.ここにもヒメサナエが産卵に来ることを知り,これで2カ所目だと思わずラッキーと(心の中で)叫びました.


▲9:48,ヒメサナエの産卵.いつものことだが,この態勢で停止飛翔するばかり.▲

その後も続けてヒメサナエが産卵にやってきて,目的が違うのですが,退屈せずにオジロサナエを待つことができました.そういえば,今はヒメサナエの盛りの時期,7月上旬ですからさもありなんです.


▲10:05,2頭目のメスが産卵に入ってきた.ほぼ同じ場所である.▲

今日はヒメサナエがねらいではないし,前回写真も撮りましたので,落ち着いて狙うことができました.特に突然行う打水の瞬間を狙うことにしました.


▲10:10,ホバリングしながら卵塊を形成するヒメサナエのメス.▲

カメラを低く構えてホバリングと打水のフォーカス面がずれないように工夫しましたが,打水時にどうしてもフォーカスアウトしてしまい,うまくいきません.なかなか難しいものです.が,低いアングルで撮ったので,ホバリング中に形成されているオレンジ色の卵塊が見えています.

これらのメスの産卵場所は,いずれもほぼ同じポイントなのです.前回もそうでしたが,特定のポイントへやってくる傾向が強いです.それは,石で体が隠れるような場所です.次の写真など,我々から見れば普通の川石なのですが,ヒメサナエの目線で見れば,断崖絶壁という感じで,川石に止まっているオスの視線を遮っているのがよく分かります.


▲10:20,大げさな言い方をすれば,グランドキャニオンを飛ぶ飛行機みたいだ.▲


▲10:20,打水の瞬間と言いたいところだが,このメス目測を誤ったのだろうか?▲

今回はうまく打水の瞬間を捉えることができました,といいたいところですが,腹端が水に浸かっていません.ちょっと珍しいシーンです.きっと打水ミスですね.

さて,この後はヒメサナエの産卵が途切れました.代わりにといっては何ですが,オジロサナエのオスたちの活動が活発になってきました.やはりこの場所,オジロサナエも気に入っているようです.私がここぞと目をつけている産卵ポイントにも,オスたちが入り込んで止まるようになりました.以前オジロサナエを観察していた場所と,よく似た行動をとっています.オジロサナエの産卵にも期待が膨らみます.


▲オジロサナエのオスたちが集まってきた.この場所を繁殖場所と認識している.▲

しかし,オジロサナエのメスの姿は全く見られませんでした.唯一見たオジロサナエのメスは,羽化して処女飛行に飛び立った個体でした.前回ヒメサナエの観察の時もメスの処女飛行を見ました.雄性先熟の傾向が著しいのかもしれません.


▲処女飛行に飛び立っていったん止まったオジロサナエのメス.▲

やはりオジロサナエは7月の後半が繁殖時期のようです.また,半月ほどして来ることにしましょう.そんなことを考えていると,ヒメサナエのメスが降りてきて石の上や枯れ木の上に止まりました.


▲時々降りて北はすぐに樹上へ帰って行くヒメサナエのメス.▲

このメス産卵する気がないのかと思ったら,このメスかどうかは分かりませんが,この後にヒメサナエのメスが産卵に入りました.場所は,先のメスが降りて止まったあたりです.


▲11:13,これは今までの全く違うポイントで産卵した.▲

このオジロサナエの集まる場所は,どちらかと言えば日陰になっていて,少し離れた日が当たっている場所にヒメサナエのオスたちが止まっています.彼らは日が当たるところが好きなのでしょうか.もちろん薄暗い日陰でも止まってはいるのですが.


▲もうお昼が近いせいか,オスたちは腹部挙上姿勢をとっていた.▲

ヒメサナエのオスたちを見ていると,いつの間にか,オジロサナエの姿が少なくなっています.10:00から11:00ぐらいが個体数が多くなるようです.私の方も,12:00を待って,ここを引き上げることにしました.観察中,コオニヤンマが顔を見せたのと,帰る途中,オジロサナエが樹上に止まるのを見ました.この習性があるので,流れの上空に広葉樹が枝を伸ばしているところがベストなのでしょう.


▲コオニヤンマの若いオス.可憐なサナエのいるところに獰猛なサナエが来る!.▲


▲オジロサナエは,驚くとすぐに樹上へと避難する.▲

今日はここまでです.

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No. 855. オオヤマトンボの産卵を狙ったが.2022.7.1.

今日もまたまた晴れ.週末は孫守があり,来週は台風の影響で曇りや雨.ならば今日連続で出て行くしかありません.今日のねらいはオオヤマトンボの産卵.これはなかなかそれだけを目的に行きずらい相手です.まあ,結局は,産卵に来ませんでしたけど.

まず出会ったのはコフキトンボ.交尾態が飛びましたので産卵を期待しましたが,だめでした.交尾から直後の産卵というのはパターンなのですが.メスは交尾が外れた途端どこかへ行ってしまいました.別のところでは成熟したオス同士が追飛行動を繰り広げています.暑さにも負けず強いトンボです.


▲今年はコフキトンボが少ないが,オスたちは頑張っている.▲

次いでコシアキトンボ.コフキトンボと同じくらいの数がいます.コシアキトンボたちの活動も暑さのもと,へたれずに元気です.


▲オスの追飛とメスの産卵.▲

本命のオオヤマトンボは,オスが1頭だけ池の周囲を飛び回っていました.メスと思われる個体は1回だけ通過しました.今日の池のトンボで,オオヤマトンボが一番暑さに弱いようで,10:00前にはこのオスも姿を消しました.


▲オオヤマトンボのオスがいつも通り池のまわりを飛び回っている.▲

結局今日一番活動的だったのは,ウチワヤンマでした.6ペアぐらいが交尾態で飛び回り,そのうち3ペアが私の目の届く範囲で産卵をしました.ウチワヤンマを狙って来たのならこれは大成功の部類ですが,不思議なものです.ただその日一番多く活動しているトンボを観察対象とするという鉄則で,また再び,ということにはなりますが,ウチワヤンマの観察に注力しました.


▲ウチワヤンマの交尾態での産卵場所探索行動.オオヤマトンボが干渉している.▲

まず上の交尾態で飛び回っていた1ペア目.これは特にどういうことなく,通常の産卵行動を見せてくれました.オスはつかず離れずでメスの産卵を見守っています.


▲メスを警護するオス.どうしてもいい位置に来てくれないのでオスだけ撮った.▲


▲警護されながら産卵を続けるメス.▲


▲9:26,最後までオスの警護で邪魔されることもなく,産卵を終えた1ペア目.▲

次のペアは9:56です.この前,9:30に1ペアが飛び回りましたが,どこかへ行ってしまいました.今日はこうやって結構続けて交尾態飛翔が入ってきました.このペアは,交尾を解いたところから観察できましたが,途中でアクシデントがありました.


▲オスが交尾を解いたら,メスは止まってしまった.▲


▲そのすきに横の位置に移動して産卵開始を待った.そして産卵を始めたメス.▲

なんか産卵する場所の背景になる枯れ枝が,ちょうどステージの大道具のように見えて,ちょっと面白い感じの舞台装置になりました.産卵は続きます.


▲順調に産卵を続けるメス.▲

ところが,撮影していると,妙なことが起きました.打水した状態でメスが飛び上がれなくなったのです.写真でははっきりしませんが,どうも卵に付いている糸が腹端に絡みついたのではないかと思えました.同じ場所でたくさんのメスが産卵しているようで,枯れ枝に糸が絡みついたようになっているせいでしょう.次の7枚は連写したものそして8枚目は少し間を置いたものです.普通なら一瞬で終わる打水の瞬間が,打水した姿勢のままの状態で止まっているのが分かると思います.右上に撮影時の時刻を入れています.


▲だ水して飛び上がろうとするが,…..▲


▲腹端に何かが引っかかっているようで,飛び上がることができない.▲


▲再び腹端が水面に着いてしまった.▲


▲もう一度飛び上がろうとするが,…..▲


▲腹端は水面に着いたまま.▲


▲腹端がちょっと上がった.たまらなくなって,たたんでいた脚を開きだした.▲


▲腹端に水の膜ができている.糸のようなものが着いているように見える.▲


▲思い切って向きを変えて飛び立った.糸を引いているのが分かる.▲

写真記録から,約8秒あまりこの姿勢で止まっていたのが分かります.このあと,このメスは慌てて飛んで逃げました.そのとき何かがパラパラと水面に落ちたように見えたかと思うと,魚の稚魚たちが我先にそれに食らいつく姿が観察されました.もっともこれは私の見間違いで,何の関係もないかもしれません.


▲白い点が二つ見える物体に食らいつく稚魚たち.▲

さて10:13,3ペア目はというと,これもまたちょっと変な感じの産卵でした.止まっているオスの下でメスが産卵を開始したらしいのです.らしいというのは,私も交尾態が解かれ産卵を始めた瞬間を見ていないからです.オスは警護をしていましたが,その警護オスは,静止していたなわばりオスに追いやられ,どこかへ行ってしまいました.しかしメスはお構いなしに産卵を続けました.


▲交尾相手ではないオスのなわばりの中で産卵を続けるメス.▲


▲シオカラトンボが産卵メスの様子を見に来たがかまわず産卵.▲

このなわばりオスはしばらく止まっていましたが,やがて直下でメスが産卵しているのに気づいたようで,交尾しようと近づいてきました.


▲メスは産卵をやめて静止した.▲

メスはこのオスが交尾相手ではないことが分かるのでしょうか.産卵をやめて止まってしまいました.そしてしばらくすると,数回産卵行動を行った後,逃げるように飛び去ってしまいました.上の写真でも分かるようにオスの近づき方が,1ペア目のオスのように一定の距離を置いて飛ぶのではなく,近づこうとしているような飛び方です.


▲メスは産卵を再開したが,オスはメスに近づこうとしているように見える.▲

ウチワヤンマの産卵もたくさん見ているといろいろなアクシデントが見られて楽しい限りです.トンボたちはこんなアクシデントに臨機応変に対応しながら,毎日を生活しているのですね.ウチワヤンマのオスは,今日は10mおきぐらいに止まっていたので,こんなことが起きたのでしょうね.

今日はブログ的には,ウチワヤンマの産卵という今年二度目の観察になりましたが,私的には楽しい観察でした.

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No. 854. ベニイトトンボの産卵.2022.6.30.

今日は県外へキイロヤマトンボを見に行きました.しかし時期が遅いからか,またはあまりに暑いためか,何頭かそれらしいのが飛んだだけで,成果がありませんでした.そこで,ベニイトトンボがたくさんいる場所へ案内してもらうことにしました.兵庫県のベニイトトンボはとても個体群密度が低いので,繁殖活動を観察するのが難しいのです.でもここならうまくいくかもしれません.気温はすでに35℃を超えているようですが,この暑さの中でも活動しているでしょうか?


▲日陰に止まっていたベニイトトンボ.▲

少し池のまわりを歩き回り,その一角で3ペアが繁殖活動をしているところを見つけました.単独オスもペアに時々干渉しながら飛んでいました.


▲池の一角で活動しているベニイトトンボたち.▲

タンデムから交尾にいたるペアが2組ありました.そのうち一つは交尾がなかなかうまくいかず苦労してやっとつながりました.


▲下のペアが,あまり交尾がうまくいかなかったカップル.▲

ベニイトトンボの産卵は,水面に浮かぶ植物の葉や茎にメスが止まって行われ,オスがメスの前胸をつかんでほぼ直立の歩哨姿勢をとります.モノサシトンボやグンバイトンボに比べるとオスは少し前傾姿勢ですが,これ,カメラを水面ギリギリに置いて撮らないとフォーカス面がトンボと一致しません.

▲少し前傾姿勢なので,斜め後ろからだとフォーカス面にトンボ全部が入る.▲


▲カメラを水面ギリギリに置こうとすると草が邪魔になる.▲

2組の交尾も終わり,それぞれ産卵を始めました.やはり近くで産卵するのが好きなようです.隣り合わせで産卵していました.グループ産卵的な行動が見られました.


▲両方にピントが来る位置には草があって,無理でした.▲


▲やっとカメラを置く場所に草がないような位置で産卵しました.▲

この暑さの中,産卵中のベニイトトンボたちはどんな顔をしているのでしょうか.オスとメスの顔をアップにしてみました.当然ですが,平気な顔をして産卵をしていました.このトンボ,暑さに強いです.


▲産卵中のオスとメスの顔のアップ.▲

この2組のカップルは,なかなか難しい位置でばかり産卵して手こずらされました.3組目のカップルは少し離れた,手前に遮るものがない位置で産卵していました.


▲暑いのでしょうか,ちょっと日陰になっているところで産卵していた3組目.▲

夢中で写真を撮っていると,あまりの暑さであることを忘れてしまいます.ローアングルにするためには,私も地面に転がったりもするのですが,知らぬ間に汗だく.このままでは日射病になってしまう(今は熱中症というのですね,年齢がばれそうです)感じがして,このあたりでやめました.帰り道,鮮やかな黄色のキイトトンボを見ると,なぜがほっとするのでした.


▲キイトトンボもたくさん見られた.▲

今日は車で移動する途中,車の車外温度計が,はじめて40℃を表示するのを見ました.今日は異常な暑さだったのですね.丹念に水分を補給しながらの活動で,なんとか最後まで持ちこたえました.


▲車の車外温度計が40℃を指した.▲

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No. 853. ヒメサナエの産卵.2022.6.28.

もはや梅雨明けになったと聞きました.4年前だったかは,7月はじめに雨が続き,大変な事態になった記憶があります.今年は逆に晴れ続き,多分水不足になるのではないかなぁ.トンボにとっても,特に湿地性の種は危機的状況になるかもしれません.

さて,今日はヒメサナエを探しに行きました.以前の観察地が改変されてだめになってしまったので,新たな産卵ポイントを見つけるべく,動き回る予定でした.ところが,非常に幸運だったのが,最初の場所でヒメサナエのオスの集まっている場所に行き当たったのです.


▲ヒメサナエのオス.これは実は一番最後に撮影したもので,腹部挙上姿勢.▲


▲ヒメサナエのオスたち.全部で10頭以上は集まっていたと思う.▲

これだけオスが集まっていたら,必ずメスは来るという確信が持てます.メスはオスから隠れるようにして産卵するので,まわりが石で囲まれたような場所がポイントです.さらに流れの上に広葉樹が広がっていると最高です.まさに行き着いたのはそういう場所でした.周辺を探索してから,この場所に腰を落ち着けました.時刻は10:30過ぎです.一番産卵にやってくる時間帯です.

ちょっと立ち上がったときに,少し離れたところにメスが入りましたが,これはオスに持って行かれました.やはりこれだけオスが集まっていると,見つからずに産卵するのは難しいようです.私は,ここだと思うポイントに腰を下ろし,オスを追い払いながら「なわばり」を確保しました.ヒメサナエのオスが近くに止まると石を投げて水しぶきを上げ,カエルが跳ねたように見せかけると,オスは飛んで逃げ,まずしばらくは帰ってきません.ヒメサナエのオスとのなわばり争いです(笑).

すると少し向こうにオオムラサキが水を飲みに降りてきました.トンボ屋の私にとって,オオムラサキはなかなか出会えないチョウですので,これはゲストに記録しておこうと腰を上げました.


▲オオムラサキが吸水に降りてきた.▲

ところが物事は重なるもので,オオムラサキの方に移動しているときに,私が目をつけたポイントにメスが産卵に入りました.こちらが本命ですので,あわてて,写真を撮りに戻りましたが,シャッター速度を落としていたので,ブレが出ました.


▲オオムラサキを撮るためにシャッター速度を落としていたので,ブレた.▲

やはり慌てるとだめですね.これが11:00ごろです.しかしこれで2頭産卵に入ってきました.手応えは十分です.今度は気を抜かずに待つことにしました.すると,どこからやってきたのか,オオムラサキが私の腕に止まりました.こんな近くで見たのは初めてです.翅が少し破れていて,先のとは別個体のようです.写真に撮ろうと思いましたが,逃げられました.この近くにエノキの群落でもあるのでしょうか.

すると次はヒメサナエのオスが腕に止まりました.なんか,もう私は完全に「石」状態です.さて,次のメスが入ってきました.まさに私が目をつけたポイントです.11:15です.しかし,今度は気を張り詰めすぎていたせいか,私が敏捷な反応をしたためにメスに感づかれ,メスは少し離れたところへ移動して産卵を始めました.


▲3頭目のメス.速い流れの上で産卵をしている.▲

このメスは非常に短時間で産卵を終えて飛び去りました.というか,オスに見つかったみたいな感じで飛び去りました.どうもうまくいきません.落ち着いてしっかりとピントを決めて撮りたいのですが,久しぶりのヒメサナエで,ちょっと舞い上がっていたのかもしれませんね.しかしこの時期のヒメサナエのメスは淡色部の黄色が鮮やかです.いつもは7月10日前後に来ていますので,少し黄色が褪せてきたような感じになっています.

さて,11:23,メスがやってきました.やはり同じポイントに入ります.かつての観察経験が生きていて,メスの気持ちが読めているのですね(と勝手に自己賛美しています).今度は今までの失敗を生かしてゆっくりと攻め,いい撮影結果が得られました.


▲11:23メスが入ってきた.腹端に卵塊が見える.▲


▲このメスも比較的短時間で産卵を終えた.打水の瞬間はピンボケだった.▲

今日のメスはどの個体も産卵継続時間が短いです.まだ若くて,卵巣の成熟が十分進んでいないせいかもしれません.ヒメサナエは,ここと決めた産卵ポイントでは,ホバリングして卵塊を作り打水する,というのをその場で繰り返しますので,写真を撮ると同じようなアングルのものばかりになってしまいます.

さて,その後産卵は途絶えました.産卵時間帯が終わったのでしょう.今日はここまでとしました.ヒメサナエといえば一緒にいるのがオジロサナエですが,今日はほとんどその姿が見られませんでした,というか,まだ羽化しているような状況でした.


▲唯一見られたオジロサナエのオス.まだ淡色部が白っぽく成熟したての感じ.▲


▲流れから飛び立ったオジロサナエのメス,処女飛行.▲

オジロサナエもまた産卵ポイントを探す必要があります.こちらは7月の中旬以降でしょう.これで今日の観察を終え,帰りにコフキトンボの発生状況を見に行きましたが,今年はやはり数が少ないようです.ウチワヤンマやコシアキトンボ,もちろんコフキトンボも,35℃の炎天下で活動をしていました.いやはや暑さに強いトンボたちです.


▲水田の電気柵のポールに止まるウチワヤンマのオス.水田をなわばりにしている.▲


▲ため池の余水バケで産卵するコシアキトンボのメス.▲


▲コシアキトンボの産卵.▲

ここの余水バケに産卵に来るシアキトンボは同じ植物体にばかり産卵をしているようで,卵が新旧とり混ざってひっついています.ちょっと気持ち悪い.


▲色の濃いものが古いもの,真っ白なのが,今の個体の卵.▲

ということで,今日は非常についていた観察になりました.たまにはこんな日もないと面白くありません.今日はここまでです.

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No.852. 日本のトンボが205種に.2022.6.26.

今年の「月刊むし」3月1日発行の613号に,「日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見」という記事が載りました(尾園他,2022).これは飛来記録ではなく「日本未記録種」の生息地発見記事です.

一昨年与那国島で発見されたサイジョウチョウトンボは,台湾から飛来したものであろうと考えられていて,すでに当地で繁殖していると考えられることから,定着したかもしれないという位置づけでした(小浜,2021).一方,チョウセングンバイトンボは複数の場所で生息が確認されており,幼虫も見つかっています.またこの種のグループには移動性の強い種がいないことから,「対馬が地続きだった時代から分布していた在来種!」である可能性が高いと述べられています(尾園他,2022).

ヒヌマイトトンボが1971年に日本で初めて発見されたとき,The Last New Dragonfly Species from Japan. 日本で発見された最後の新種のトンボ」と記載論文のタイトルに書かれていました(Asahina, 1972).その後香港でも同種が発見され,日本固有種ではなくなりました.今回のチョウセングンバイトンボは,すでに韓国などに分布している既知種ですので,日本での発見が世界初発見というヒヌマイトトンボとは位置づけが違いますが,それでも,まだ日本に飛来種以外の土着トンボが発見されたという点で,驚きを隠せません.

環境省は,このトンボを,種の保存法に基づく緊急指定種に指定しました.

日頃の観察で,このトンボは少しおかしいと感じたら,新しい分布種かもしれないという風に考えることも重要ですね.全日本記録トンボで205種,亜種を別々に数えると,224種類ということになります.当サイトの関連ページのリストもこれを加えて書き換えています.

<引用文献>
尾園暁・二橋亮・境良朗・日下部満,2022.日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見.月刊むし (613):2-7.
小浜継雄,2021.日本初記録のサイジョウチョウトンボ(和名新称)を与那国島で発見.月刊むし(601):34-36.
Asahina, S., 1972. Mortonagrion hirosei, the Last New Dragonfly Species from Japan. Kontyu, 40(1):11-16.

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