No. 985. 沖縄県のトンボたち 晩夏2.2024.8.30-9.6.

沖縄県のトンボたち晩夏編2は不均翅亜目たちです.不均翅亜目の活動場所は写真を撮る位置から離れている場合が多く,またほとんどの活動において飛び回っているので,あまりパッとした成果がありませんでした.それでも不均翅亜目の活動の一端は紹介できそうです.

■イシガキヤンマ Aeschnophlebia ishigakiana ishigakiana (Asahina, 1951)

この時期に沖縄県に観察に来る大きな目的の一つが,ミルンヤンマ属との出会いです.沖縄県にはイシガキヤンマとサキシマヤンマの2種が分布していますが,今回私はサキシマヤンマの姿を見ることができませんでしたが,同行者はぶら下がりや飛翔を見たそうです.イシガキヤンマだけは,早朝の摂食飛翔と思われる上空を飛行する姿を観察・記録することができました.


▲早朝に上空を飛ぶイシガキヤンマのメス.▲

同行者の話によると,今年は数が少ないようで,1,2頭しか飛ぶ姿を見ることができませんでした.林の中のぶら下がりや産卵などには全く出会うことができませんでした.

■リュウキュウカトリヤンマ Gynacantha ryukyuensis Asahina, 1962

前回は産卵を観察・記録することができましたが,今回はときどき山道を飛ぶ姿が見られた程度でした.一度だけ,夕方の道の上で摂食飛翔をしているオスに出会いました.しかしとてもすばしこく写真に撮るのは無理なので,同行者に採集してもらって撮影しました.


▲胸部が緑色をしているきれいな個体だ.リュウキュウカトリヤンマのオス.▲

■ギンヤンマ Anax parthenope julius Brauer, 1865

沖縄県には,オオギンヤンマ,リュウキュウギンヤンマ,ギンヤンマが分布しています.私はまだオオギンヤンマに出会っていませんが,リュウキュウギンヤンマとギンヤンマは,飛んでいる姿でだいたい区別できるようになりました.今回は飛び回るギンヤンマのオス以外に,単独で産卵にやって来たメスを観察・記録することができました.まあ,地元で見るのとほとんど同じですが.


▲ギンヤンマの単独産卵.▲

■リュウキュウギンヤンマ Anax panybeus Hagen, 1867

リュウキュウギンヤンマは,観察地には度々訪れました.飛ぶのは不規則で速いので写真記録は難しいところですが,止まったりメスの産卵であればゆっくりと観察できます.奄美大島では,産卵メスが非常に敏感だったことを覚えています.しかしここでは比較的落ち着いて産卵していました.


▲ミズオオバコに産卵するリュウキュウギンヤンマ.▲

いくつかやって来たオスのうち,1頭が草むらに止まりました.やや老熟した感じで,暑さに参ったのでしょうか,草の中の日陰にしばらく止まっていました.


▲草むらの日陰に止まるリュウキュウギンヤンマのオス.▲

ギンヤンマやオオギンヤンマは連結産卵も普通に見られます.しかしリュウキュウギンヤンマは見た限りでは単独産卵をしているようです.

■タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax (Hagen in Selys, 1854)

タイワンウチワヤンマは,交尾,産卵,静止などを観察しました.面白かったのは,水田でなわばり静止をしているオスの存在でした.兵庫県下の観察では,ウチワヤンマが水田でなわばり静止をしているのを見ています.


▲水田でなわばり静止するタイワンウチワヤンマのオス.▲

■タイワンコヤマトンボ(幼虫)Macromia clio Ris, 1916

今回の遠征では,幼虫を調べる人が同行していて,タイワンコヤマトンボを採集しました.タイワンコヤマトンボは,かなり奥の方まで入り込まないと見られないのですが,比較的入りやすい川で見つかりました.写真を撮らせてもらいました.


▲タイワンコヤマトンボの幼虫.▲

パッと見ただけではこちらのコヤマトンボと区別つきません.

■ウミアカトンボ Macrodiplax cora (Brauer, 1867)

前回来たときには,ただただ静止しているだけのウミアカトンボでしたが,今回は交尾,産卵,なわばり飛翔など,静止以外の状態も観察できました.前回に比べると各個体とも成熟している感じが強かったです.


▲ウミアカトンボのオス.こういうアングルで止まることはあまりない.▲


▲腹部挙上姿勢で暑さをしのぐウミアカトンボのメスとオス.▲


▲静止するウミアカトンボのメス.▲

水面を飛ぶ赤いトンボは,初めのうちタイリクショウジョウトンボかと思っていました.しかしよくよく観察すると,多くがウミアカトンボでした.タイリクショウジョウトンボはあまり数が多くはありませんでした.


▲なわばり飛翔するウミアカトンボのオス.▲

交尾は飛びながら行われます.その際メスはウスバキトンボと同じように,翅をはばたかせていませんでした.したがって,タイリクショウジョウトンボのように飛び回るというより,ふわっと浮かぶ感じで交尾が行われていました.


▲ウミアカトンボの交尾.メスは翅をはばたかせない.▲

その後連結産卵に進みますが,こちらは写真が全くの失敗に終わりました.連結打水産卵でした.南大東島で見たときもそうでしたが,このトンボは枝の先に止まっているだけで何もしない感じにみえました.しかし普通に池などで交尾・産卵して繁殖活動をするのですね.ちょっと認識が新たにされました.これなら幼虫もすくえるかもしれません.

ウミアカトンボの繁殖活動というのは私にとっては想定外の観察になりました.

■サイジョウチョウトンボ Rhyothemis regia regia (Brauer, 1867)

前回の訪問でもサイジョウチョウトンボには出会うことができました.今回はさらに個体数が増している感じがしました.しかし一方で,変なトンボをたくさん見ました.これらはすべてオキナワチョウトンボとの雑種だと思いますが,雑種不妊になっていなければ,この付近のオキナワチョウトンボに「種間の」遺伝子汚染が広がっているのではないかと危惧されるほどです.まずは純粋のサイジョウチョウトンボと思われる個体を見ておきましょう.


▲雑種ではない純粋のサイジョウチョウトンボと思われる個体.▲

混血ではない純粋個体においては,写真のように,翅は,濃色部は青く輝き,透明部分は黄色みを帯びずに白色透明です.これは,オキナワチョウトンボのオスと,なわばりをめぐる闘争を頻繁に行います.


▲上と同じ個体がオキナワチョウトンボとなわばり争いをしている.▲

同様のバトルは,別の場所でも行われていました.


▲若干透明部分が黄色みを帯び,雑種の疑いもあるサイジョウチョウトンボのオス.▲


▲やはり頻繁にオキナワチョウトンボとバトルを行う.▲

バトルだけにとどまらず,オキナワチョウトンボのメスとの異種間タンデムも数例観察されました.日常的に異種間交雑が起きていることが印象づけられました.翅の模様はかなり違いますが,まるで同種のごとくの行動です.

次に紹介するのは,新種かと思わせるほど翅が真っ黒になった(おそらく)雑種のチョウトンボです.


▲真っ黒な翅の雑種と思われるチョウトンボ.▲

これは翅の輝きが青味を帯びていますのでサイジョウチョウトンボとオキナワチョウトンボの雑種だと思われます.その他の外観上の根拠は下の通りです.


▲種間雑種であることの,外観上の証拠.▲


▲純粋なサイジョウチョウトンボには,胸部背面に黄褐色の筋はない.2024年6月.▲


▲オキナワチョウトンボには胸部背面に黄褐色の筋が見られる.2024年6月.▲

このような真っ黒なチョウトンボはメスでも観察されています.一見すると,普通のチョウトンボのメスと見間違うくらいです.兵庫県を飛んでいたら,チョウトンボのメスとして処理されてしまうでしょう.


▲真っ黒な翅のチョウトンボ類のメス.まるでチョウトンボだ.▲

とにかくこのような変なチョウトンボがたくさん見られたのです.いろいろな外観上の変異を集めた北海道大学図書刊行会の「原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑」にも,これほどの黒い翅を持つオキナワチョウトンボは紹介されていませんので,これらはやはり種間雑種と考える方が妥当な気がします.同行者はこれと同じような個体を採取していますので,今後の分析が楽しみです.

しかし,これらの混血が今後どのような運命をたどっていくか,非常に興味が持たれるところです.交雑が進み,雑種不妊でなければ,オキナワチョウトンボの個体群の遺伝子は,かなり激しく汚染されてしまうことが予想されます.サイジョウチョウトンボはさらに北の離島でも確認されたと聞いています.

もしこの「種間の」遺伝子汚染がさらに広範に広がっていくと,これは大きな生物学上のトピックとなるでしょう.サイジョウチョウトンボが人為的に持ち込まれた外来種でないとすれば,こういったことが自然に進んでいくプロセスというのは,生物学上非常に希有な観察事例となるかもしれません.

■オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix Selys, 1887

あまりに変なトンボばかりに注意が持って行かれたため,純粋のオキナワチョウトンボの記録がちょっとしかありません.交尾・産卵は行われていました.


▲オキナワチョウトンボのオスとメス.▲

普通のオキナワチョウトンボを見ていると,なんかホッとする感じです.


▲産卵にやって来たオキナワチョウトンボのメス.▲

■オオキイロトンボ Hydrobasileus croceus (Brauer, 1867)

オオキイロトンボは2オス2メス観察できました.オスの探雌飛翔,メスの単独産卵,連結産卵です.しかし今回は写真記録は散々でした.非常に面白かったのはオオキイロトンボの卵塊が蛍光色の緑色であることです.シャッターチャンスは十分にあったのですが,全部アウトフォーカスでした.遠征の最終日だったので疲れがたまっていたのかもしれません.ちょっと見れそうなものだけ紹介しておきましょう.


▲探雌飛翔するオスのオオキイロトンボ.▲


▲蛍光緑色の卵塊をくっつけて打水する場所を探しているオオキイロトンボのメス.▲

■ヒメハネビロトンボ Tramea transmarina yayeyamana Asahina, 1964


▲水田横の枯れ茎の先に止まるヒメハネビロトンボのオス.▲


▲黄昏時に摂食飛翔するヒメハネビロトンボのオス.▲

ヒメハネビロトンボは,平地の各場所で観察できました.相変わらず水田横の枯れ枝に止まる個体が見られましたし,早朝や夕方に摂食飛翔する個体も見ました.しかし今回はなんとか産卵の観察・記録を行いたいと思っていました.ハネビロトンボは奄美大島で観察・記録に成功しましたので,ヒメハネビロトンボでもと思ったわけです.


▲タンデムで飛び回るヒメハネビロトンボのペア.▲

タンデムで入って来たペアがいました.あちこちで放卵を開始しました.見ていると,ハネビロトンボと同じように,打水の瞬間メスを放し,打水産卵したら直ちにメスを捕まえてタンデムを形成するといった感じです.うまく撮れたのがあったので紹介しましょう.全行程で1秒以内で終わります.


▲まずは打水場所を探す.メスの腹端には卵塊が形成され始めている.time:0”00.▲


▲オスがメスを放した.time:0”16.▲


▲メスが打水する直前.time:0″32.▲


▲メスが打水した,と同時にオスはメスをつかみに行っている.time:0″47.▲


▲オスはメスをつかみ,腹部を曲げて再連結しようとしている.time:0″64.▲


▲腹部先端でメスの複眼後部をつかんでいるオス.time:0″79.▲

奄美大島で訓練したので,写真の撮り方はバッチリでしたが,ピントを合わせるのがはやり難しかったように思いました.最後にもう一枚オスがメスに抱きつく瞬間を.オスがメスを守っているのか,逃がさないように捕らえているのか,トンボに聞くしかありませんね.


▲ヒメハネビロトンボのオスがメスにしがみつく.▲

■アオビタイトンボ Brachydiplax chalybea flavovittata Ris, 1911

今回の観察ではアオビタイトンボには2頭のオスに出会っただけでした.特に行動観察もなく飛んで姿を消しました.


▲薄暗い池に止まっていたアオビタイトンボのオス.▲

■アメイロトンボ Tholymis tillarga (Fabricius, 1798)

アメイロトンボは探せば見つかるトンボですが,朝と夕方に飛ぶので,その時に観察地に立っていなければなりません.今回はそれがうまくいきませんでした.ぎりぎり16時過ぎに飛ぶオスを記録できました.


▲アメイロトンボのオス.▲

■オオメトンボ Zyxomma petiolatum Rambur, 1842

オオメトンボは林の中の薄暗い池を飛びます.それも夕刻が近くなってからです.今回は16時過ぎに飛ぶオオメトンボを観察しました.ただ林の中の暗い池で敏速に飛び回るオオメトンボを確認するのは大変です.同所的にホソアカトンボがいますが,それより少し大きく見えるのと,飛び方が違うのでそれと推測できる程度です.

16時過ぎから産卵に入ってきました.浮かんでいる木切れなどに腹端を打ちつけて産卵するのですが,体が茶褐色で翅も黒っぽくけぶっているためか,トンボの姿は全く見えません.ただ浮遊木等に腹端を打ちつけたときに水面に波紋ができるので,そこで産卵しているのが分かるといったような状態です.もう波紋ができているあたりにピントを合わせ,やみくもにシャッターを切るだけといった撮影になりました.


▲卵を浮遊物に貼り付けるように産卵する.卵が蛍光緑色に光っている.▲


▲暗い池で産卵のために飛んでいるオオメトンボのメス.▲

よくもまあ3枚も一応オオメトンボと確認できる写真が撮れていたなと思います.トンボが見えないのに写真を撮るという経験はおそらく初めてです.

■コシブトトンボ Acisoma panorpoides panorpoides Rambur, 1842

コシブトトンボとはほんのわずかであっただけでした.湿地状の小さな池で産卵をしていました.打水(打泥)産卵でした.ただすばしこく動き回り,すぐに止めて止まるので,産卵の写真は撮れずじまいです.


▲コシブトトンボのオスとメス.▲

■ヒメトンボ Diplacodes trivialis (Rambur, 1842)

ヒメトンボは各地で見られました.その中でも水田で活動する個体が多かったようです.南の島では二期作が行われており,ちょうど今田植えの時期です.そのため水田には浅く水が張られ,明るい湿地になっています.そこにたくさんのヒメトンボが集まり,繁殖活動をしていました.ただ,道から遠いので写真記録はたいしたものは撮れませんでした.


▲水田やそのまわりで活動するヒメトンボのオス.▲

結局近寄れたのは,水田縁の草地に止まる個体や,その他の場所に見られた個体だけでした.


▲ヒメトンボの成熟オスと若いオス.▲

■アカスジベッコウトンボ Neurothemis ramburii ramburii (Brauer, 1866)

6月の訪問ではものすごい個体数がいて,他のトンボたちを圧倒するような存在感がありました.今回は少し数が減ったせいか,圧倒される感じはありませんでした.ただそれでも,池,川,溝,湿地など,およそ水のあるところにはどこにでもいて,さらに山道を歩くと未熟な個体やメスがいるといった感じでした.


▲山道で出会った未熟なオス.▲


▲池岸でメスがやって来るのを待つオス.▲


▲日当たりの良い湿地で静止するオス.▲


▲川のかなり上流でバトルするオスたち.コナカハグロトンボが飛んでいる.▲

沢の水が道路にあふれている場所があって,そこに次々に産卵にやって来て,交尾・産卵の写真記録を録るチャンスがありましたが,動きが非常に敏捷なせいで,全く写真になりませんでした.こういうことは結構珍しいことです.まぐれでも何枚かは写るものなのですが.1枚だけ証拠写真のようなものが撮れていました.


▲沢の水が道路にあふれている場所で産卵するアカスジベッコウトンボのメス.▲

■ウスバキトンボ Pantala flavescens (Fabricius, 1798)

ヒメトンボのところで,水田で二期作をやっていて水が張られていることを書きました.兵庫県などでは今のこの時期は収穫時期で水田に水はありません.ただ稲刈り前の水田の上にはたくさんのウスバキトンボが集まっている状況が観察できます.こちらは摂食飛翔で,これから遠くへ旅立つ準備なのでしょう.

しかし南の島では,この水田が彼らの絶好の繁殖場になっているようです.車で走っていると,あちこちの水田で交尾・産卵をしているウスバキトンボが観察できました.兵庫県などでは,同じような水田の状態になるのは5月から6月であって,その頃はまだウスバキトンボが少ないために,こういう姿がなかなか見られません.


▲水田で産卵しているウスバキトンボのペア.▲


▲水田で交尾しているウスバキトンボのペア.▲

まさに水田は,ウスバキトンボにとっての一時的水域ですね.

■ベニトンボ Trithemis aurora (Burmeister, 1839)

今回の観察では,ベニトンボの姿がほとんどありませんでした.4月に来たときはそこら中ベニトンボが飛んでいましたが,秋の入り口になると,数が減るのですね.このあとまた次の世代が出てくるのかもしれませんが,そのあたりはよく分かりません.違う季節に来るといろいろなことが分かってきます.


▲川のそばに止まっていたベニトンボのオスとメス.▲

■ホソアカトンボ Agrionoptera insignis insignis (Rambur, 1842)

ホソアカトンボの繁殖活動を観察するというのは,今回の密かな決意でした.オオメトンボの飛ぶような暗い池で生活しているので,写真に撮りにくいのはオオメトンボと全く同じです.今回の観察では,交尾・産卵を見ることができました.交尾はオスがメスを捕まえた後,いったん近くのものに止まります.しかし非常に短時間で,カメラを構えるともう飛んでいってしまっているという感じでした.こういう習性が分かっていれば,ねばって撮ることもできそうですが,残念ながら初見でした.


▲薄暗い池の中で,草につかまって静止しているオス.▲

メスが産卵にやってくるのは16時頃からで,しかもわずかの時間でした.16時頃になるとそれまで静止してときどき摂食するぐらいの動きだったオスたちが,突然あちこちを,ホバリングを交えて飛び回るようになります.オスたちもメスがやってくるのを知っているみたいです.

交尾を済ませるとメスは産卵を始めます.オスが警護する場面もありました.


▲産卵を始めたメス.右端に警護するオスが写っている.▲

産卵する真っ黒な体のメスの姿は,オオメトンボと同じで全く見えません.打水産卵しているので水紋が生じ,それがわずかな光のゆらぎによって見えるので,そこらあたりに目星を付けてピントを合わせてシャッターを切ります.オオメトンボにしてもホソアカトンボにしても,撮影を拒絶しているようなトンボですね.


▲産卵しているホソアカトンボのメス.▲

この夕刻のひとときを除いて,ホソアカトンボたちは,山道の高い木の枝のてっぺんなどに止まって過ごしています.

▲枝先に止まるホソアカトンボのメス.▲


▲山道沿いに止まるホソアカトンボのオス.▲

■オオハラビロトンボ Lyriothemis elegantissima Selys, 1883

オオハラビロトンボは,今年出かけた南方への遠征旅行で毎回出会ったトンボです.しかし不思議なことに,交尾や産卵の目撃数はゼロです.あちこちに止まっているのをよく見るのですが,私が産卵環境をよく分かっていないせいでしょうか.偶然目撃することすらありませんでした.今回も山道などに止まっている個体を見ただけです.


▲やや老熟の域にさしかかったと思われるオス.腹部の赤色が熟している.▲


▲こちらもやや老熟の域にさしかかったと思われるメス.▲


▲上のオスのもぐもぐタイムです.▲

■ハラボソトンボ Orthetrum sabina sabina (Drury, 1770)

ハラボソトンボは水田でたくさん活動をしていました.兵庫県でいえばシオカラトンボ的な位置づけになるでしょう.交尾や産卵も見ましたが,今回はあまり積極的に記録に動くことはしませんでした.ヒメトンボと同じで,ほとんどが水田の中で活動していたこともあり,接近ができなかったことが一因です.


▲水田で活動するハラボソトンボのオス.▲


▲水田に限らずその姿はいろいろな場所で見られる.▲

■ホソミシオカラトンボ Orthetrum luzonicum (Brauer, 1868)

これまでの遠征で出会うことができなかった,唯一残された沖縄県産シオカラトンボ属です.なぜ出会えなかったかはよく分からないのですが,今回は異なる場所で数頭と出会うことができました.繁殖活動などは観察できませんでした.


▲ホソミシオカラトンボのオス.まだ若い感じがする.▲


▲こちらは老熟したメス.腹部に青灰色の粉を吹いている.▲

■コフキショウジョウトンボ Orthetrum pruinosum neglectum (Rambur, 1842)

コフキショウジョウトンボは,オオハラビロトンボと同様に,過去の遠征で毎回出会うことができたトンボです.しかし,交尾・産卵を目の前で見たのは一度だけでした.それもほとんど終わった状態で,見つけたらすぐにメスはいなくなりました.今回は,アカスジベッコウトンボが産卵していた場所で,それに負けないぐらい何ペアも交尾・産卵をしていました.こちらは同じ場所で打水するので,写真には撮りやすい相手です.


▲警護産卵をするコフキショウジョウトンボ.▲


▲メスは低い位置を飛び,いわゆる飛水産卵を行う.▲

全身が橙色で複眼が薄緑色の独特の色彩をしたコフキショウジョウトンボのメスを,やっと接近して撮ることができました.時刻は13時過ぎくらいで,木陰で薄暗く,道路に沢の水があふれている場所です.30分ぐらいの間に次々とメスが入り,産卵の騒ぎが続いた後,嘘のようにピタッと産卵ショウは終わりました.どうもトンボのメスたちには産卵したくなる外的または内的条件というのがあるようですね.産卵ショウがピタッと止んだのは同所で産卵していたアカスジベッコウトンボも同じでした.


▲単独オスは,湿地状の部分があれば,その姿を見ることができる.▲

■ヤエヤマオオシオカラトンボ Orthetrum melania yaeyamense Sasamoto et Futahashi, 2013

以前の観察では,薄暗い湿地でのみその姿を見ることができたと書きました.それはオオシオカラトンボがいそうな湿地状の場所には,アカスジベッコウトンボとコフキショウジョウトンボが必ずいて,ヤエヤマオオシオカラトンボを追い払ってしまっているのではないかという推測でした.

今回はそれとは異なる場所でも見つかりました.ただアカスジベッコウトンボやコフキショウジョウトンボの数は少し減っているようにも見えました.そういう意味では,これらの間に種間競争があるという見解はまだ支持される可能性が残っています.


▲普通の湿地で見つかったヤエヤマオオシオカラトンボのメス.▲


▲山道の樹上に止まっていたヤエヤマオオシオカラトンボのメス.▲


▲山道を横切る川の,橋の上で見つけたオス.▲


以上で不均翅亜目の紹介は終わりです.かなりいろいろなトンボが見られたように思います.あとタイリクショウジョウトンボ,オオヤマトンボなどを見ましたが写真のいいものがありません.

最後にゲストを2種紹介しておきましょう.一つはサキシマハブ.とうとう出会ってしまいました.山道を歩いていた人が見つけて教えてくれたそうです.


▲サキシマハブ.ホンハブほどではないが,やはり怖い毒蛇である.▲

もう一つは,私の汗をたっぷり吸ったタオルを,塩分補給の吸水でしょうか?,イシガケチョウとキチョウ(タイワンキチョウ?)がとまってしきりに吸っていました.


▲汗水トラップですな.▲

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 985. 沖縄県のトンボたち 晩夏2.2024.8.30-9.6. はコメントを受け付けていません

No. 984. 沖縄県のトンボたち 晩夏1.2024.8.30.ー9.6.

今年最後の遠征です.沖縄県にトンボ仲間とともに観察に出かけました.今回はいろいろなトンボに出会うというよりは,トンボの生態を観察・記録することに重点を置いています.約1週間の滞在でしたが,トンボの数が意外と少なく,いくつかの期待の種にお目にかかることができませんでした.それは,サキシマヤンマ,ヒメキトンボ,などです.

前半は,均翅亜目を中心にまとめたいと思います.

■ヤエヤマハナダカトンボ Rhinocypha uenoi Asahina, 1964

ヤエヤマハナダカトンボは,6~10月まで,かなりの期間成虫が見られるトンボです.前回の調査で生息している場所は一つ確認できました.今回は,前回に加えて,もう一つの生息地を訪れ,なんとか繁殖・産卵活動を観察しようというわけです.

9月2日,一つ目の場所は,川のかなり上流の場所で,たどり着くのに相当難儀しました.ここでは繁殖活動こそ見ることはできませんでしたが,メスに出会うことができました.


▲葉上に止まるヤエヤマハナダカトンボのメス.▲

メスは腹部がややずんぐりとした感じで,産卵管がかなりがっしりとしたつくりになっていて,それを動かす腹部第8,9節がかなり太くなっています.


▲ヤエヤマハナダカトンボのオス.▲

オスも見られましたが,少し待っても,繁殖行動は行われませんでした.さらに上流に上り,そこにいたヤエヤマハナダカトンボを観察してから,再びここを訪れましたが,やはり産卵などは行われていませんでした.まあ,最初はメスに出会えただけでよしとしました.

9月3日,今度は前回見つけた場所へ行きました.到着したときオスが1頭見られましたが,産卵活動は午後なので,別の場所でマサキルリモントンボを観察してから,再びここを訪れました.見た感じではオスが止まっているだけでしたが,同行者が倒木の裏側で産卵しているメスを見つけました.時刻は13時過ぎです.すでに産卵をしていた状態だったので,産卵開始時刻はもう少しさかのぼることになります.


▲倒木の裏側で産卵するヤエヤマハナダカトンボ.▲

産卵している位置のまわりに岩があって,カメラを向けるのに苦労しました.なぜこんな裏側で産卵しているのでしょうか.まず同行者みんなの意見が一致したのは,オスから隠れて産卵するためということでした.たしかに,同じ倒木の表側にはオスが止まっていて,ときどき飛び立ってハメスを探すような動きを見せます.しかしメスの産卵している位置は,この飛び方では見つかりません.


▲メスが産卵しているのと同じ倒木の表側に止まるオス.▲

しかし私はもう一つの理由も考えています.それはこの倒木は結構堅い木で,水にも浸かっていなくて乾燥しているため,表側では産卵管を突き立てるのが困難なのではないかと思われるということです.裏側は水しぶきが当たるのか,黒く変色している部分があって,おそらくそこは腐食が進み,乾燥している他の部分より柔らかくなっているのではないかと考えられます.


▲裏側は黒く変色しており腐食が始まっているように見える.そこに産卵する.▲

コバネアオイトトンボでも類似の観察をしています.コバネアオイトトンボは,通常カンガレイやクログワイなどの柔らかい組織を持つ植物組織内に産卵します.しかしそういった植物が乏しい池ではヒメガマに産卵することがあります.そのとき,葉の虫食いによって表皮が柔らかくなっているような場所に産卵することがあり,そういった場所に当たるとしばらくそこで産卵を続けます.メスは腹部先端の感覚毛や産卵管などを使って,堅い葉や茎でも特に柔らかくなっているようなところを探り当て,そこに産卵するのではないでしょうか.体に比して強大な産卵管を有するヤエヤマハナダカトンボでも,やはり産卵管を突き刺しやすい倒木の特定部分をねらって産卵するというのは,あり得ることだと考えています.


▲倒木の裏側の,少し朽ちて崩れたような場所に産卵をしている.▲

産卵は14時を過ぎても行われ,14:30近くまで続けられました.産卵を止めたメスは葉上に飛び上がり,やがて姿を消しました.オスがそばにいましたが,特に反応はしませんでした.


▲産卵を止めて葉上に止まった産卵メス.▲

ヤエヤマハナダカトンボは,腹部第2節背面にスペード上の模様があるということを同行者が話していたので,翅を開いたときに上から写真を撮ってみました.すると見事なスペード模様が見えました.


▲腹部第2節にオレンジ色のスペード模様が見える.▲

ヤエヤマハナダカトンボは,産卵基質となる倒木を資源として,その付近の葉上に止まって暮らしていて,繁殖時間帯になるとオスが降りてくるようです.今回は交尾を見ることはできませんでした.

■コナカハグロトンボ Euphaea yayeyamana Oguma, 1913

コナカハグロトンボは,相変わらず流れにポツポツとみられました.しかし初夏に比べると明らかに個体数の減少が見られました.主に潜水産卵をするので,交尾している個体を見つけたら,産卵に至るまで追い続ける必要があります.同行者の話によると,流れに浸かっている木を持ち上げると,裏側に産卵しているコナカハグロトンボが着いていることがあると言っていました.今回は交尾までは見ましたが,産卵を観察することができませんでした.


▲流れに見られるコナカハグロトンボたち.▲

■マサキルリモントンボ Coeliccia flavicauda masakii Asahina, 1951

タイワンルリモントンボ C. f. flavicaudaの八重山諸島(西表島・石垣島)亜種です.今回はこの産卵を見ることが大きな目的の一つでした.前回来たときには,ぽつんと止まるオスを3頭見ただけでした.たくさんいるところを見つけるのが結構難しいトンボです.今回は数頭が集まっているところを見つけ,そこで合計3ペアの産卵が観察できました.


▲産卵するマサキルリモントンボ.▲

マサキルリモントンボは,薄暗い浅い流れによく見られます.水が湧き出してチョロチョロ流れていたり,川や水路の水があふれて山裾を流れていたりするような場所です.このオスの胸部側面の斑紋は緑色をしており前面の斑紋は水色をしています.また腹部先端は黄色で白い物差し目盛状の斑紋が腹部に並んでいます.メスは,胸部側面の斑紋が,産卵写真のように黄色または白色をしています.


▲マサキルリモントンボオスの胸部の斑紋.▲

リュウキュウルリモントンボやアマミルリモントンボでは,胸部側面の淡斑紋は青色をしているのと対照的です.


▲マサキルリモントンボの産卵.コケの表面にも産卵?▲

モノサシトンボの仲間では,オスは直立して歩哨姿勢をとりますが,マサキルリモントンボも例外ではありません.産卵基質は主に湿った朽ち木です.産卵しているペア以外にも,単独のオスが飛んでいました.


▲あまりに近づきすぎると飛び立ってタンデム状態で静止する.▲

マサキルリモントンボは,この場所以外にも,単独オスが止まっているのを何回か見ました.胸部側面の淡色斑の色が,上で拡大した緑色の個体以外に,水色,黄色のものがいました.成熟にともなって色が変化する可能性もあります.


▲胸部側面の淡色斑が水色のオス個体.▲


▲胸部側面の淡色斑が黄色のオス個体.▲

マサキルリモントンボは初夏に来たときよりは多く見られました.

■アカナガイトトンボ Pseudagrion pilidorsum pilidorsum (Brauer, 1868)

32年前に沖縄県に来たときには,たくさんのアカナガイトトンボが飛んでいるのを見ていましたが,今年の複数の訪問では,いないわけではありませんが,非常に個体数が少ない印象を受けました.今回は,数頭が集まっていて,産卵活動も見ることができました.アカナガイトトンボは普通種と考えられていますが,色彩はエキゾチックで,やはり南国のトンボとしては欠かせない存在です.


▲場所によっては,やはりこのようにぽつんとオスがいるだけの場所もあったが...▲

アカナガイトトンボの観察場所は,陽の当たる浅い砂地の流れで,水が透き通っており,アカナガイトトンボの美しさが際立つような舞台装置でした.交尾を見ることはできませんでしたが,オスが水面をホバリングするようにして飛び回っていました.ホバリングする姿は,今までにも何度か見ていましたが,写真に撮れるほど近くでやってくれたのはこれが初めてでした.


▲水面を飛び回るアカナガイトトンボのオスたち.▲

やがて,タンデム個体がここを訪れ,産卵場所を探して水面近くを飛び始めました.時には流れの畔の葉に止まって,様子をうかがうこともありました.


▲透き通った水の流れの上を飛ぶアカナガイトトンボのペア.▲


▲私が追い回すせいか,岸辺の葉に止まって様子をうかがうペア.▲

しかし,やがては水面に洗われるように浮かんでいる植物の葉に止まって産卵を始めました.台湾で見たアカナガイトトンボは,タンデムをたくさん見たにもかかわらず産卵ペアを観察できませんでしたので,おそらく潜水産卵をしているのだろうと考えていました.ここでのペアも,すぐに潜水しようとメスが潜り始めました.ただいかんせん,浅い流れなので,体を傾けて水に浸かるという感じになってしまいました.


▲流れに漂う植物の葉に止まって産卵するペア.▲


▲メスがするすると潜り始め,オスも半分からだが水に浸かっている.▲

アカナガイトトンボも他の歩哨姿勢で警護をするイトトンボ類と同様に,グループ産卵をする姿が見られました.オスが歩哨姿勢をとると,オスの止まる位置が必要ないので,密集して産卵しやすくなります.ホソミイトトンボやグンバイトンボでもよく見られます.


▲1ペアが2ペアに,2ペアが3ペアにと,グループ産卵が行われている.▲

歩哨姿勢をとる連結産卵は,真横から撮影するのが難しく,水面ぎりぎりにカメラを置いて撮る必要があります.今回もレンズやカメラが濡れないように注意しながら撮影しました.


▲歩哨姿勢をとるイトトンボは,真横からとるのは意外と難しい.▲

南国のトンボは,マニアックな見るのが難しいトンボも魅力的ですが,普通種でも,いかにも南国らしいトンボたちの活動する姿が見られるのは,また心がわくわくする充実感があります.

■リュウキュウベニイトトンボ Ceriagrion auranticum ryukyuanum Asahina, 1967

リュウキュウベニイトトンボは,今回1頭だけ止まっているオスに出会いました.特にこれといった活動を観察することはありませんでした.


▲今回は出会いが少なかったリュウキュウベニイトトンボ.▲

以上,均翅亜目のトンボたちの紹介でした.種類数は多くはありませんでしたが,結構中身の濃い行動観察が出来たように思います.限られた時間の中でこれらのトンボの活動を観察・記録できたので,自分的には成果があったと感じています.

次回は不均翅亜目の紹介です.

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No. 983. 薮の中にヤンマを探す.2024.8.8.

8月上旬はヤンマの季節.今日は「薮の中にヤンマを探す」をやってみました.「薮」といっても日陰になった山道を歩くだけなんですけどね.今日はあまりヤンマの姿は多くなく,エゾトンボ,それもメスにたくさん出会いました.


▲木の枝などにぶら下がるエゾトンボのオスたち.▲


▲エゾトンボのメスに3頭も出会えた.▲

薮の中では,13:00から14:00頃にトンボの活動が一番盛んになっていたように思います.止まっているトンボは,いつまでもじっとしている個体もいますが,結構動き回っています.やはり一番暑い時間帯に薮の中に避難しているようです.ちなみに外気温は35℃.


▲オニヤンマのオス.結構長いこと止まっていた.▲


▲薮の中で活動が盛んになるとこんな接近状態になることもある.▲

いわゆるヤンマ科のトンボは,マルタンヤンマとミルンヤンマだけでした.ヤブヤンマにはお目にかかれませんでした.


▲マルタンヤンマのオス.この場所からはすぐに飛び立った.▲


▲次に止まったところが結構低い位置だったので,いろんな角度で撮れました.▲

マルタンヤンマのオスは,複眼の青色がきれいです.ヤブヤンマのそれとはまたひと味違います.


▲マルタンヤンマオスの複眼.▲

マルタンヤンマのメスも探してみましたが,出会えませんでした.マルタンヤンマを観察中に,ミルンヤンマが少しずつ止まりながら通り過ぎました.


▲ミルンヤンマの未熟なオス.▲

観察を始めたのが11:15ころで,観察を終えたのが14:15ごろでした.薮の中での活動はお昼を過ぎ気温が最も高くなる頃に活発になり(つまりたくさん入ってくる)ました.最初はエゾトンボ以外何もいませんでしたからね.

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No. 982. ネアカヨシヤンマの確認.2024.8.7.

今日はネアカヨシヤンマの確認に出かけてきました.今日の兵庫県北部は北風が吹いていて,気温は31℃.昭和時代の夏を感じました.私の子供の頃の夏は,日向に出ると暑いのですが,日陰に入るとどこからか涼しい風が吹いてくるというのが普通でした.今日はぴったりその感じでした.気のせいか,トンボたちも元気に活動しているように見えました.日陰で観察するネアカヨシヤンマ,今日はほとんど汗をかきませんでした.

さて,ネアカヨシヤンマは,着いたとたん産卵個体に出会いました.13:15.14:00より早かったですね.


▲着いたとたん目の前の朽ち木に産卵メスが止まった.▲

この個体は結構敏感で,近寄らせてくれませんでした.広い範囲を飛び回って,湿地から出ていくこともありました.しばらく待つと戻ってきましたが...


▲やはりイノシシの足跡が好きなようで,そこで産卵する場合が多かった.▲

ネアカヨシヤンマ以外にヤブヤンマもやって来ました.ただ湿地の水が完全に枯れていて,ヤブヤンマのメスは産卵適所を探して飛び回るばかりでした.結局産卵せずに飛び去りました.やはりヤブヤンマは水面があるところでないと産卵しないようです.この場所には少し前まで水があったようで,それを覚えていたメスがやって来たのかもしれません.そういう意味では,このヤブヤンマの行動は興味深い観察だったと思います.

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今日初見のトンボ
No.61. ネアカヨシヤンマ,メス.

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No. 981. オナガサナエの確認.2024.8.6.

36℃越えの暑い日が続き,しばらく自宅にこもっていました.でもオナガサナエやヤンマのいい時期が終わってしまうので,今日は思い切ってオナガサナエの観察に出かけました.オナガサナエは日向で待つことになるので,暑い日は避けたいところですが,もうそろそろそんなことは言っておれない時期にさしかかっています.

現地に着いたのは9:00少し過ぎで,ちょっと出発が遅れました.産卵は終わる時刻です.車の外気温は31℃でそれほど高くない!?のですが,もうカンカン照りで日向にいるのがつらい状況です.川に入ってみると,オナガサナエのオスの姿が全く見えません.50mほど川に入って歩いてみましたが,いません.思わずこの場所から姿が消えたのかと思いました.いるのは,シオカラトンボ,ハグロトンボ,ギンヤンマなどです.彼らは暑さなどものともせず,繁殖活動をしていました.とりあえずしばらく待つことにしました.

10:00を過ぎた頃,やっと1頭のオナガサナエのメスが入ってきました.


▲産卵にやって来たオナガサナエのメス.▲

まだこの場所からオナガサナエが消えたのではないことが確認でき,ホッとしました.オスがいない理由は分かりません.暑くて早朝だけ活動して山に帰ったのかもしれませんが,分かりません.今年は,出会うべきトンボに出会える時期に見に行っても出会えないということがしばしば起きています.なんかちぐはぐなものを感じます.

あと,コオニヤンマも数が少なかったです.セスジイトトンボを見かけました.


▲いつもはコオニヤンマもなわばり活動をしているが,今日は少ない.▲


▲セスジイトトンボは盛夏には少なくなる傾向がある.▲

ということで,この暑さが続く毎日,トンボたちの行動も変化しているような気がしてなりません.息が苦しくなってきたので,熱中症にならないうちに退散することにしました.トンボ観察も命がけです(笑).

帰りに森林公園にヤブヤンマをのぞきに寄ってみました.ヤブヤンマには出会えませんでしたが,コノシメトンボの成熟途中のオスに出会いました.こういう色彩のコノシメトンボにはあまりお目にかかることがありません.


▲コノシメトンボオス.腹部が赤く胸部が黄色というリスアカネ的な色彩だ.▲

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今日初出会いのトンボたち
No. 59. コオニヤンマ,オス.
No. 60. オナガサナエ,メス.

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