No. 829. コサナエ属の活動と.2022.5.4.

今年の連休はよく晴れる日が続きます.晴れるとこの時期見たいトンボが立て込んでいるので,ついつい連日出かけてしまいます.昨日の疲れが出ていて体がだるいのですが,座って観察できる対象ということで,コサナエ属の産卵を見に行くことにしました.うまく3種とも見ることができればいいのですが...

まずはフタスジサナエねらいです.8:20に現地に入りました.本当はもう少し早いほうがいいのですが,朝起きることができませんでした.オスたちは程なく出てきました.このオスが出てくる前がいいのですけど.遅かったようです.


▲8:30ぐらいにはオスたちが続々と出勤してきた.フタスジサナエ.▲

しかしメスは2回入ってきました.1回目はすぐオスに見つかり,持って行かれました.やはりオスはあっちへ行ってもらおうと,枯れ枝でそこらをガサガサやって,追い払いました.その甲斐あってか,2回目の産卵はゆっくりと記録できました.ただこれも最終的には持って行かれました.


▲岸辺の草の上に産卵に入ってきたメス.フタスジサナエ.▲


▲少しずつ移動しながら産卵を続けるフタスジサナエのメス.▲

この2回目の産卵の前に,日陰の岸辺に産卵に入ったメスがいました.タベサナエです.こちらの岸辺は,急勾配の土手になっていて,そこに向かって産卵をしていました.


▲春の花のつぼみが見える草の茂みに向かって産卵をするタベサナエのメス.▲

タベサナエの産卵では,珍しく,卵が放出される瞬間が移っていました.これはコサナエ属ではなかなか写らない代物です.コサナエ属の卵は腹部を振った瞬間にバラバラになって四方へ飛び散るので,なかなかカメラに写らないのです.


▲コサナエ属トンボと放出された卵がこれほどはっきりと写ることは非常に珍しい.▲

さて,2種類の産卵を観察することができたので,次はオグマサナエです.この産卵とは本当に出会いが難しいのです.別に危険はありませんが「虎穴に入らずんば虎児を得ず」的な感じで次の池に出かけました.しかしやはりダメでした.オスは結構いるのですけどね.まあなんとかここで撮りたいので,後日また挑戦です.フタスジサナエは産卵に来ました.


▲オグマサナエのオスは,池の一方側に集中している感じである.▲

オグマサナエを待っている間に,トラフトンボの交尾態が飛びました.産卵ポイントを探しているようです.しばらく飛んでやっとオスがメスを放しました.急いでその付近に行きましたが,メスの姿はありませんでした.卵塊作りは高い木の上でやっているのでしょうね.それならば,降りてきて卵を産み落とす瞬間をねらうしかありません.


▲ぐるぐる周回して卵を産下した.打水の瞬間は没.▲

あとクロスジギンヤンマが産卵に来て,オスも少しの間飛んでいました.11時を過ぎてトンボの動きが鈍くなりましたので,疲れもあるので今日はここまでとしました.

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No.828. 続 ベッコウトンボを見に行った.2022.5.3.

今日はベッコウトンボの観察その2です.今日の観察場所は,掲示板に投稿してくださっている meme9090 さんが,ときどきベッコウトンボを報告してくださる場所と,多分同じところです.

今日は朝から穏やかな天気で,うまくいけば繁殖活動が見られるかもしれないと思いました.もちろんこの場所は初めて訪れるので,行ってみなければ分かりません.この場所にはお決まりの観察ポイントがあるようで,何人かのベッコウトンボ写真撮影の人が陣取っていました.あまのじゃくな私は,そこはやめて,自分の勘で別の場所に陣取りました.そこは,回っているときにメスが産卵しているのを見たからです.


▲ベッコウトンボがなわばりを形成している,このポイントで待った.▲

とにかくここは広いところで,池を一周するだけで結構時間がかかります.ここは地元では結構有名らしく,何人もの人がベッコウトンボを撮影に来ていました.自然観察会なども行われていて親子連れの子供たちがたくさん観察していました.

1時間ぐらい待ちましたが,結局,産卵には来ませんでした.ただときどきオス同士が,コシアキトンボのように並んでホバリングし,一気に追い払う行動をとっていました.面積が広大で個体群密度が低いので,オス同士の追いかけ合いもあまり頻繁ではありません.


▲ときどきオスが出会うと,並んでホバリングを始める.▲

10:00を過ぎるとあちこちにオスたちが止まるようになりました.かなり岸近くにも止まるようになって,接近して撮影できるようになりました.池を一周しながら,みつけたオスたちを次々と撮影していきました.


▲池の周囲を巡りながら,近くに寄れそうなオスたちを撮影した.▲

今日はメスに出会っていません.ただここはあまりに広いのでポイントが絞れません.そんなとき,私が陣取っているすぐそばで,観察会をやっている子供たちが草むらに止まっている何か見つけて,指導者の方にいろいろと説明を受けています.どうやらメスがいるようです.子供たちの集団が行ってしまってから,こっそりと見に行きますと,若いメスが止まっていました.


▲枯れたチガヤの草むらに止まっているベッコウトンボの若いメス.▲


▲上と同じ個体を角度を変えて撮影.▲

昨日見たベッコウトンボのメスは,もう成熟しきっていましたので,今日もそんな個体を想像していました.しかしまだ本当に若い個体のようです.複眼の色から見たら,まだ繁殖活動一歩手前という感じがします.例によって,チガヤの枯れ草の中に潜り込んで止まっていました.子供たちのおかげで現況が分かりました.未熟な個体を探すのならあまり苦労はありません.あと2頭見つけました.


▲ベッコウトンボのメス.下の個体は色が赤っぽかった.▲

お決まりのポイントで撮影していた人は,交尾態の写真が撮れたらしいです.あまのじゃくがよくなかったですね(笑).昨日も今日も,止まっているトンボばかりでした.でも今日はよく晴れていて,写真が映え,見たかったべっ甲色のメスも見られて,そういう意味では,当初の目的は最低限果たせたようです.

昨日はホテルでアップしましたが,今日は自宅です.明日からはまたコサナエ属かな...

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No. 827. ベッコウトンボを見に行った.2022.5.2.

今日は思い立って,九州まで車を走らせ,ベッコウトンボを見に行きました.兵庫県でベッコウトンボが消えてからもう20年近くが経とうとしています.久しぶりにべっ甲模様のメスを見たくなりました.家から高速道路を7時間ぐらいは走ったでしょうか.身体が今でも揺れています.現地に着いたのは14:00ごろ.風が強く,とてもではありませんが池の上を飛ぶなんてことはできそうもありません.


▲ヨシも樹木の枝葉も,風に吹かれて大きく曲がっている.▲

オスたちは岸の草むらの中に隠れるようにして止まっていました.近づくと飛んで逃げるのですが,風に飛ばされて動きが激しくランダムに飛ぶので,目で追いかけるのに失敗することも多くありました.それでも諦めず追いかけ回して,なんとか写真になりました.


▲ちょっと風がやんだときに木の枝の先に止まったオス.▲


▲追いかけ回してやっと接近できたベッコウトンボのオスたち.▲

オスは少なくとも3頭いました.同時に3頭が見えたからです.ちょっと数が少ないと思いました.もう終盤に近づいているのでしょうか.情報によると,昨年は3月に羽化した個体もあったとのことですから.

さてここまで来たのですから,次はメスです.時刻的にももう多分産卵にはきませんし,この風です.どこかに隠れているに違いありません.池の周辺で風が当たらなくて日が当たってぽかぽかしたところを探して回ってみました.しかし全く姿がありません.木の上にでも隠れているのかな,などと考えながら,最後に池の堤の上を探してみることにしました.ここは風がもろに当たり,歩いている私の足下がおぼつかなくなるほどの状態です.でもその風の中をメスたちが飛んで,いや,飛ばされていました.なんでわざわざこんな過ごしにくいところに集まっているのか,ベッコウトンボは変なヤツです.


▲堤の通り道(草が踏み倒されているのが分かる)に止まるベッコウトンボのメス.▲

ここはオスたちがいるところより風が強いので,一旦飛び立つと,もう風でもみくちゃにされてしまう状態です.飛び上がると吹き飛ばされ,大回りして戻ってきます.


▲草の中に止まるベッコウトンボのメス.▲

メスは4,5頭はいたと思います.上の写真は違う個体を選んで掲げたつもりですが,ひょっとしたら同じ個体がいるかもしれません.止まっている写真ばかりになってしまいましたが,今日は飛んでいる写真はムリというものです.

まあ家から7時間も走ってやってきたので,出会えただけでもよかったと思いました.ここのベッコウトンボ,今後も元気で生き続けてくれるといいと思います.ベッコウトンボ以外には,コフキトンボ,ショウジョウトンボ,シオカラトンボ,フタスジサナエがいました.今日はここまでです.この写真1枚何円ぐらいかかっているのだろう....

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No. 826. シオヤトンボの活動.2022.4.30.

今日はとある造成湿地の調査に出かけました.放棄水田を湿地に改造したところで,どんなトンボが集まってくるかを調査するのです.今日は成虫越冬種を見に行くことが目的で,それ以外はおまけというところ.しかし成虫越冬種は全く見られませんでした.いたのは,シオカラトンボ,シオヤトンボ,アサヒナカワトンボ,ハラビロトンボだけでした.

唯一繁殖活動を行っていたのはシオヤトンボでした.今日はオスにもちょっと焦点を当てて撮影してみました.


▲湿地で,倒木に止まって交尾しているシオヤトンボのペアを見つけた.▲


▲交尾を解いたがメスはそのまま静止していて,オスが産卵を催促している.▲


▲やがて,メスは,産卵を始めた.▲


▲オスは上空を飛んで警護する.飛びながら動き回るオス.▲


▲シオヤトンボの産卵.飛ばしている水が濁っていないのが不思議である.▲

今日は気温が17℃,風がどこか冷たいのです.快晴になったのは昼前からで,それまで少し寒かったぐらいですから,トンボたちの活動が鈍かったのかもしれません.

その後,ホンサナエを見に行きましたが,まだ出てきていませんでした.コサナエも見に行きましたが,1ペアだけがいました.変な感じで交尾していました.オスの連結部が外れたのですね.アクロバティックな交尾でした.


▲コサナエのアクロバティックな交尾.▲

ここには,あと,ヨツボシトンボがいただけでした.それにしても本当にトンボの姿が少ない一日でした.早期に羽化したトンボたちは,山の中ででも未熟な時間を楽しんでいたのかもしれません.ゴールデンウィークの後半になったら,出てくるでしょうね.それにしても成虫越冬種,もう消えたのでしょうか…..

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No.825. コサナエたちはまだまだ草原で遊んでいる.2022.4.28.

今日は快晴の一日だそうで,コサナエたちの成熟状況を観察に行きました.今年はフタスジサナエが早くから羽化していたので,産卵に来ることも期待しました.まずはタベサナエから...

▲タベサナエのオス.もう成熟して湿地に出ている.▲

▲タベサナエのメス.まだ複眼がちょっと濁っていて,成熟まであと一歩.▲

タベサナエは湿地の周辺にたくさんいました.オスは成熟している個体もいくらかはいましたが,メスはまだどれも成熟まであと一歩の状態に見えました.もっとも,成熟した個体は隠れているのかもしれません.たくさんの半成熟個体は草むらを行ったり来たりして飛んでいました.

▲まだ多くの個体が草むらで遊んでいる.タベサナエ.▲

未熟なタベサナエのメスとフタスジサナエのメスが,並んで止まっていました.

▲左がフタスジサナエのメス,右がタベサナエのメス.▲

次はフタスジサナエです.フタスジサナエは池の畔でもうたくさんのオスがメスを待って止まっていました.まだ未熟な個体もいますが,繁殖活動は一部で開始されたようです.

▲すっかりと成熟したフタスジサナエのオス.池の畔でメスを待っている.▲

▲メスの方はまだ半成熟的な個体が結構見られた.▲

しばらく産卵を待つことにしたら,合計3頭入ってきました.うち1頭はオスにつかまって道に落ちました.今日の産卵メスは2頭とも短時間で産卵を終えました.まだ成熟卵が多くないのかもしれません.久しぶりの飛翔写真であったこともあり,あまりうまく撮れませんでした.まだ草地で飛び回っているフタスジサナエも多く,本格的な産卵活動はもう少し先になりそうです.


▲産卵にやってきたフタスジサナエのメス.一番下は別個体.▲


▲産卵にやってきたメスをとらえて地面に押さえつけている.▲


▲タベサナエと同様に,まだ草地を飛び回っていた個体もいた.▲

この池には数は少なかったですが,オグマサナエも来ていました.メスは路上で未熟な個体に出会っただけでした.この池でも根気強く待てば,産卵活動が見られるかもしれません.本当にオグマサナエの産卵には出会うのが難しいと感じています.


▲オグマサナエたち.下のメスも大分複眼が透き通ってきている.▲

コサナエ属のトンボは,この産地では,今年は例年になく個体数が多いように感じます.あちこち飛び回る姿は春の息吹いっぱいです.本格的な産卵シーズンは,ゴールデンウィークの後半ごろでしょう.

コサナエ属に混じってまたこれも数が多かったのが,シオヤトンボ.すっかり成熟が進んで,多くのオスが白粉を帯び,湿地の上で激しくバトルを繰り広げていました.この成熟したてのオスの,灰青色の粉,マリンブルーの複眼,黒と黄色の胸側,橙色の縁紋,普通種ですがオシャレな色彩の組み合わせで,気に入っています.


▲成熟したてのシオヤトンボのオス.胸側に黄色と黒の縞模様が残るのがいい.▲

さて,この池での楽しい観察はこれくらいで終え,春の新出トンボを探しに行くことにしました.まず先日成虫越冬種をたくさん見た池に足を運んでみました.前にも書きましたが,ここはいつも春一番のシオヤトンボを見に来るところです.しかし今年はシオヤトンボの姿が全く消えていました.おそらく池の一方にある湿地状の彼らの生活場所が,水位の低下か何かで長期間干されていたのではないでしょうか.この池に連なる上段の複数の池も今年は水位が非常に低いのです.そのせいか,他のトンボの姿も全くありません.

成虫越冬種は冬の水位低下の影響を受けないのでたくさん集まっていたのでしょう.その成虫越冬種,今日はホソミオツネントンボが1頭いただけで,他は姿がありませんでした.もう繁殖活動期が終わったのでしょうか.今までの感覚ならゴールデンウィーク中頃ぐらいまでが繁殖活動の盛りだったように感じます.生物季節が早まっている感が強いです.そのことと関連あるようなことが,次の池でありました.ギンヤンマの産卵です.


▲ギンヤンマの単独産卵.翅はまだ輝いている若々しいメスだ.▲

4月中の産卵を見ることは今まではありませんでした.私的に,今までの最も早い記録は5月8日の産卵でした.掲示板にもギンヤンマが飛んでいる報告がありましたし,そこでは真っ赤なショウジョウトンボさえ5月25日に飛んでいたそうです.このメス単独で産卵していますが,交尾を経験しているのかなぁ.オスは全くこの地には姿がありません.

さて,最後は,アオモンイトトンボとアジアイトトンボの確認です.いつもの観察池に行きました.今年3回目になります.今日はやっと出会えました.まだ羽化したての個体がひらひら飛んでいたりして,ようやく羽化が始まったという雰囲気です.生物季節が早まったと書きましたけれども,ここのアオモンイトトンボとアジアイトトンボの出現は,例年より遅い気がします.


▲アオモンイトトンボ同色型メス.▲


▲羽化して間もないアジアイトトンボ.▲

撮影したアジアイトトンボで,腹部第9節の水色部分が少し他の腹節に広がっている個体を見ました.ちょっと珍しい斑紋異常です.


▲腹部第8節後縁と第10節にまで水色部分が広がっているアジアイトトンボオス.▲

あと,2番目に立ち寄った池で,ヨツボシトンボを1頭見ました.写真にはなりませんでしたが,最初の池ではトラフトンボが通過するのも見ました.ということで,新出トンボ5種,うち,写真は4種です.


▲最近はヨツボシトンボもうじゃうじゃいるところがなくなってきた.▲

明日はまた天気が荒れるそうです.あさって以降の観察になります.

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