No. 845. ウチワヤンマ繁殖活動始まる.2022.6.8.

最近ウチワヤンマの活動時期が早くなりました.このことは,タイワンウチワヤンマの記事の中で,データとともに示しています.今日はまだ早いかなと思いつつ,ウチワヤンマとコフキトンボを見に行きました.コフキトンボは今年は非常に数が少なかったですが,ウチワヤンマはもはや5,6頭のオスが,岸辺でメスを待っていました.


▲岸近くを時々飛んでパトロールするウチワヤンマのオス.▲


▲そして,岸辺の茎の先端に静止する.▲


▲これは少し離れたところに止まっている別のオス.▲

今日は,コフキトンボもコシアキトンボも数が少なく,池で飛んでいるのはウチワヤンマとオオヤマトンボという大型のトンボばかりという感じです.ウチワヤンマが止まっている前を時々オオヤマトンボが横切ります.すると必ずウチワヤンマは飛び立って,オオヤマトンボをちょっとだけ追尾します.


▲オオヤマトンボが横切ると,...▲


▲オオヤマトンボをちょっとだけ追尾するが,今回は隣のウチワヤンマも反応した.▲

たまたま写真を撮ろうとしたときには,隣のウチワヤンマもオオヤマトンボに反応し,飛び立ちました.すると,オオヤマトンボより,同種のウチワヤンマオスの方に闘争心がより強くわくのか,ウチワヤンマ同士のバトルが始まりました.尾部付属器を上に反らし,ウチワ部分を精一杯広げて,足も広げて今にもつかみかかりそうです.


▲にらみ合いが始まった.▲


▲にらみ合いは岸から離れても続いていく.▲

こんな感じでオスと戯れていました.すると,すぐ真下にウチワヤンマが止まりました.よく見ると,メスです.羽を小刻みに震わせて止まっています.まるでホンサナエが卵塊を作るときみたいな感じです.これは産卵するな,と直感しました.時刻は9:06です.結構早いかな.


▲メスが産卵に入ってきた.まずは岸辺で静止して何かをしているように見える.▲

通常産卵するメスは,オスと連結し交尾態になった状態で飛来し,産卵ポイントでオスに放されてから,オスの警護を受けながらその場で産卵を行います.今回のようにメスが単独で水域に入り,産卵を始めるのを見るのは初めてです.まだ繁殖活動期間のはじめの方なので,成熟オスの個体数が少ないためにオスに見つからず,池に入れたのかもしれません.少し待つと,ちょっと離れた「よく目立つ」ところで産卵を始めました.

▲岸から少し離れたとてもよく目立つところで産卵を始めた.▲

よく見ると,茎がちょっとだけ水面につき出ているあたりを腹端でたたいているようです.3枚目の写真ではその部分から糸を引いているのがわかります.

こんな目立つところで産卵すると,オスが見逃すはずがありません.少しすると,メスが産卵をやめて飛び立ちました.オスが来たのです.オスはものすごいスピードでメスを追いかけましたが,うまく捕捉できたのでしょうか?


▲調子よく産卵を続けていたが,...▲


▲突然メスが逃げ出したかと思ったら,...▲


▲オスがきっちりとやってきた.▲

さて,少し雲が多くなってきました.今日の天気は不安定だということです.たくさんの積雲が連なっていて,太陽が雲に遮られることが多くなってきました.などと,雲を見ていたので,オオヤマトンボが産卵に来たのに気づくのが遅れ,見つけたときにはもう終わっていて,チャンスを逃してしまいました.やはり集中しておかないといけません.そこで立ち上がって,周りをしっかりと見渡すようにしました.

10:16,少し先の方で,交尾態のウチワヤンマが,枯れ枝が浮かぶ水面ギリギリのところでホバリングしているのを見つけました.これは産卵を始めるサインです.脱兎のごとく駆け出し,ぎりぎり交尾を解くのに間に合いました.


▲産卵ポイントを決め,そのすぐ上でホバリングした後,メスを放す.▲


▲このメスはかなり長い間産卵をしていた.後半日が射したときのショット.▲

空は曇っていて,高速シャッターではISO感度が上がり,若干発色が悪くなります.しかしこのメスかなり長い間産卵を続けていました.気がつくと約4分,360回以上シャッターを切っていました.それでもまだやっています.おかげで後半は少し日が射した状態で撮れました.そこで,カメラをビデオモードにして,残りはビデオで記録しました.それでも1分以上は続いていました.つまり産卵は5分以上行われたことになります.


▲オスはほとんど最後までやや上空を停止飛翔して警護を行った.▲

▲続きはビデオでどうぞ.▲

ということで雲も多くなってきましたので,ここまでとして,あと,アオヤンマの探索に行くことにしました.そうそう,コフキトンボの写真を撮り忘れていましたが,コシアキトンボはきちんと撮っておきました.


▲コシアキトンボも飛び始めていた.▲

アオヤンマの探索ですが,最後の最後に立ち寄った池で,アオヤンマを見つけました.この池は古い池で,本当に25年ぶりぐらいにやってきました.入ることができないくらい荒れていて,外から眺めるだけでしたが,目の前をアオヤンマが飛びました.その後も数回顔を見せ,少なくとも数頭はいることは間違いありません.


▲午後3:00ごろになり,上空を飛び始めたアオヤンマ.▲

証拠写真だけでもと思いましたが,こんな写真しか撮れませんでした.腹部の太さからアオヤンマと見えるでしょうか? これで,兵庫県で,少なくとも2カ所生息地があることになりました.何が,といって,これが一番嬉しかったです.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 パーマリンク