No. 1000. 渋い色彩のキトンボとオオキトンボ.2024.11.20.

キトンボとオオキトンボの季節になりました.繁殖シーズンからいうとオオキトンボはもう終わりの時期です.しかし,11月下旬頃のオオキトンボは茶色になってとても渋いのです.これは多分赤色の色素が出てきて,もともとの黄褐色と混じってそう見えるのではないかと思っています.またキトンボの方も,特にメスが濃い緑茶色になるので,他のトンボでは味わえない色合いになります.これはよく晴れた日でないと写真の色が出ないので,今日はそれを撮りに行くことにしました..

ちょうどこのブログも1,000回目を迎えましたので,私の好きな茶色のトンボたちを載せることにしました.同じく茶色で好きなのは,先日紹介したコバネアオイトトンボも含まれます.このトンボにもゲスト出演してもらいました.「私の好きな色彩を持つトンボ」として1,000回目のブログを飾ることにします.


▲キトンボのメス.赤くならずやや緑がかった茶色が渋く感じます.▲


▲これは上とは違うメスの個体.地色が明るい黄色なのでこのような色彩になる.▲


▲キトンボがなぜこんな色彩かは紅葉した葉に止まればわかる.▲


▲オスは翅は黄色くてきれいでも腹部が赤く,やや渋さには欠ける.▲

今日行った先では,キトンボは,オスが2頭メスが2頭見られました.

次はオオキトンボです.オオキトンボはオスの方が渋い色になります.11月下旬頃になるとこの茶色の傾向がはっきりと出てきます.10月の下旬ですと,まだ薄黄色でもう一つ渋さには欠けています.老熟するほどいい色が出てくるのですね.


▲オオキトンボのオス.同じ個体.赤銅色とでもいうか,オオチャトンボだ.▲


▲これは上とは別の個体.他に類を見ない色彩である.▲


▲メスは少し緑味を帯び,これもまた渋い色彩である.▲

秋深くなると,赤色または黄褐色のトンボが増えてきますが,キトンボとオオキトンボは鮮やかな緑茶色や茶色になります.年間を通じてこの時期だけにしか見られないトンボの色彩です.そしてコバネアオイトトンボ.オオアオイトトンボもかなり茶色味を帯びた色になりますが,やはり,胸部の薄緑色が茶色と妙に合うんですね.


▲コバネアオイトトンボの茶金色個体.2024.11.12. ▲

ということで,私が惹かれている色のトンボを紹介しました.

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最後にニュースを一件.きょうシオカラトンボのテネラルな個体を見つけました.最近の気温上昇で,生活史の季節的な枠組みが乱されるのではないかという心配をずっとしています.こういう尋常じゃない時期のトンボ出現はやはり最近の気温上昇が原因だと思います.このシオカラトンボはきっと子孫への遺伝子を残さずに短い生涯を終えるのでしょうね.


▲以前にも11月にシオカラトンボを見たことがあるが,...▲

さて,1,000回を突破したトンボノートですが,健康が続く限り発信を続けていきたいと思っています.今後ともよろしくお願いします.

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No. 999. ナニこれ?コバネアオイト.2024.11.12.

今日は,県内で活動されている若いトンボ研究家の案内で,コバネアオイトトンボを見に連れて行ってもらいました.コバネアオイトトンボは私の知っている産地からは次々と姿を消し,県内で見ることがもうかなり難しい状態に追い込まれていました.

とあるため池の前で10:00に待ち合わせて,まずそのため池でマイコアカネを観察しました.池は前回観察に来たときよりかなり水が落ちていました.数は減っていたようですが,まだマイコアカネはいくつか飛んでいました.気温は車の外部温度計で16℃.日は射していますがまだひんやりとする感じで,トンボたちの活動は鈍かったです.他にはオオキトンボが1頭飛ぶのを見ました.またこの池では初めてとなるヒメアカネも見つけました.


▲ヒメアカネのメス.第一の池.▲

次に,目的の池にコバネアオイトトンボを見に行きました.時刻は11:00ころです.この池はヒメガマを中心とした植生の池で,湿地状の部分があり,そこにカンガレイが生えていました.池の開水面は少ないですが,コバネアオイトトンボがいてもおかしくない環境でした.もう絶滅しましたが,かつてマダラナニワトンボとコバネアオイトトンボが共存していた池と,湿地状の部分は雰囲気が似ていました.


▲コバネアオイトトンボのメス.生殖器を清掃しているようだ.▲

コバネアオイトトンボは軽く10頭以上はいました.これで,兵庫県のコバネアオイトトンボの生息する池は,私の知る限り,3つ目となりました.


▲さまざまな色合いを見せるコバネアオイトトンボのオスたち.▲

気温が十分上がりきらないためか11;00を過ぎてもまだ産卵活動を始める個体は見られません,オスはあちこち飛び回り,ときどきオス同士が出会うと簡単な闘争劇を見せてくれます.しばらく待つことにしました.そんなとき,タンデムで飛ぶ個体を見ました.ヒメガマの群落の中の方に飛んでいき,泥深そうなので追跡はためらわれ,指をくわえてみているだけでした.12:00を過ぎたとき,交尾態を発見しました.いよいよ産卵活動を始めるようです.


▲カンガレイに止まって交尾をするコバネアオイトトンボ.向こうはヒメガマ群落.▲

しばらくすると交尾を終了し飛び立ちましたが,これもヒメガマ群落の方に飛んでいきました.コバネアオイトトンボは,通説では,産卵管が華奢なので,カンガレイやサンカクイ,クログワイなどの柔らかい組織を持つ植物体に産卵すると言われています.当サイトのビデオなどでは,ヒメガマに産卵するコバネアオイトトンボを紹介しています.ヒメガマにも産卵することはあるようですが,今回のペアについては見失ったので,それは確認できませんでした.次第に湿地ではメスの姿が目立つようになりました.


▲他に類を見ない茶色と薄緑色のコントラスト,複眼は深緑色.▲

その後特に変化もなく,カンガレイに産卵する姿もありませんので,12:30ごろには昼食をとって次の場所へ移動することにしました.ここもコバネアオイトを見たことがあるとその方が言っていた場所です.着くなりオスのコバネアオイトトンボが足下に止まっていました.


▲池に着くなり姿を見せたコバネアオイトトンボのオス.▲

コバネアオイトトンボはいましたが,この池は広範囲にヒメガマの群落が存在するだけの池でした.もっとも水落しをしていたので,浮葉植物の残骸があちこちにあったことから考えると,満水時には結構いい感じの池なのかもしれません.カンガレイ,サンカクイ,クログワイといった,コバネアオイトトンボの産卵植物は見当たりません.ところが,この池に,コバネアオイトトンボの産卵ペアがいくつも見られたのです.

▲産卵するコバネアオイトトンボたち.すべてヒメガマに産卵している.▲

ナニこれ!?

驚きを隠せませんでした.こんなヒメガマだけが生えているような池にコバネアオイトトンボがたくさんいて,みんなヒメガマに産卵している.「何と言うことでしょう」某テレビ番組のナレーションが聞こえるようでした.こんなヒメガマの池にコバネアオイトトンボが生息しているとなると,コバネアオイトトンボ探しの方針を根本的に見直さなければなりません.

コバネアオイトトンボがヒメガマに産卵するときは,すべてではありませんが多くの場合,ヒメガマの葉の傷んでいるところをねらったり,また枯れ葉に,メスは産卵管を突き立てるように見えます.


▲葉が褐色に変色し傷んでいるような部分に産卵しようとするメス.▲

ヒメガマは,産卵するコバネアオイトトンボにとってはかなり難敵のように思います.コバネアオイトトンボの産卵する場所選択は,メスに主導権があるようです.場所が気に入らなければメスが先に飛び立ってオスはそれにつられて飛び立ちます.これらの観察記録は当サイトのビデオをご覧ください.

この池では,交尾態やタンデムで飛び回るペアもいました.


▲その他のコバネアオイトトンボのペアたち.▲

今日はいい勉強になったのと同時に,先入観が怖いものだということをまたもや思い知らされました.力が抜けたという感じです.そのほか,単独の個体もたくさんいました.


▲「この茶金色に薄緑色の色彩には気品を感じさせられる」とは私だけか?▲


▲上とは全く異なる緑金色のコバネアオイトトンボのオス.▲


▲茶金色をしているコバネアオイトトンボのメス.▲


▲オス(上)とメス(下)の顔のアップ.▲

さて,今日の観察では,少数のアオイトトンボ,オオアオイトトンボも見られました.そしてもう一つアオイトトンボ科のトンボを見ました.秋のアオイトトンボ科は3種ですが,4種目として,オツネントンボに出会ったのです.


▲アオイトトンボの生き残り.▲


▲コバネアオイトトンボに混じってオオアオイトトンボも見られた.▲


▲これもアオイトトンボ科,オツネントンボ.ゆっくりと冬を越してください.▲

アカトンボもいろいろと生き残っていました.3つの池で見たのをまとめておくと,アキアカネ,ナツアカネ,マユタテアカネ,マイコアカネ,ヒメアカネ,リスアカネ,キトンボ,オオキトンボでした.今日訪れた3つの池にはすべてマイコアカネがいました.コバネアオイトトンボは言うに及ばず,最近減ったマイコアカネがまだたくさん見られたことは特筆に値します.今日の池は兵庫県で重要なトンボ生息地といえるでしょう.


▲マイコアカネたち.▲

それにしても,今日は,ナニこれ?コバネアオイトでした.

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No. 998. 午後の散歩とトンボの生き残り.2024.11.11.

11月も中旬を迎えました.今週は最高気温23~24℃の日が続きそうで,とても11月中旬とは思えません.アカトンボたちはどうしているだろうと,午後の散歩がてら,午後休みのトンボたちの状況を見に行ってみました.ねらいの種はオオキトンボです.

3ヶ所を回りました.最初の場所では,10月に多く見られたコノシメトンボやマユタテアカネが減少しており,ごく少数のアキアカネなどが見られただけでした.


▲やはりキトンボはやって来ていた.この場所には来ると思っていた.▲


▲リスアカネはもうボロボロ.▲


▲アキアカネは数頭いた.▲


▲コノシメトンボは産卵しているペアも観察した.▲

ここではオオキトンボを確認できませんでしたが,それらしいトンボが地面に止まるのを見ました.ここは公園で,ちょうど止まったところに人が歩いて行き,飛んで逃げてしまいました,確認できなかったのが残念です.これがオオキトンボだとすると,今年3例目で,この公園でも繁殖活動をしている可能性が高まってきました.

2つ目の池は神戸市内にある池です.ここは結構オオキトンボが集まってくることが多い池です.着いてしばらく歩いてみましたが,トンボは何もいません.しばらく探してようやくオオキトンボの姿を確認しました.


▲腹部の茶色味が増してきた晩秋のオオキトンボのオス.▲

オオキトンボは11月の後半になると腹部の茶色味が増し,私の好きな状態になります.不思議なもので,1頭見つけるとすぐにもう1頭見つかりました.しかしこちらは敏感で,近づくことすらできませんでした.少し場所を変えてみると,また1頭見つけました.


▲上とは違う個体.翅の汚れなどで判別できる.▲

その場所では,また別のオオキトンボが飛び立ちました.これは敏感で近づけませんが,遠くから撮影して確かめるとメスの個体でした.メスはそのあとにも見つけましたが,翅が破れており,先のメスと同一個体であることが分かりました.


▲オオキトンボのメス.メスの腹部は茶色というより緑っぽくなる.▲

関東のトンボ屋に,兵庫では池にオオキトンボしかいないことがよくある,と言うと「そんなことあるの?」と返されます.この池でもまたその状態かと思いましたが,最後にアキアカネを2頭見ました.オオキトンボだけの池ではありませんでした.


▲アキアカネのオス.▲

写真を見て思ったのですが,オオキトンボは,自分の体色に近い者褐色の背景に止まっていて,アキアカネは緑の背景に止まっているのが面白いと感じました.結果,オオキトンボは少なくとも3オス1メスの4頭いたことになります.

3つ目の池には,アカトンボが1頭いただけでトンボが全然いませんでした.

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No. 997. 北部へ飛来種を見に行ったが.2024.11.4.

今日は兵庫県北部へ飛来種を見に行きました.結果はだめでした.飛来種どころか,アキアカネ自体も非常に数が少ない印象でした.それ以外のトンボもポツポツ見られただけで,北部と思えないくらい閑散としていました.


▲ネキトンボのオス.▲


▲ナツアカネ.ナツアカネはそこそこ見られた.▲


▲リスアカネのオス.まだ生き残っていた.▲


▲キトンボ.▲


▲アキアカネ.正午頃,特定の場所では数が見られた.▲


▲白い点は摂食飛翔するアキアカネの集団.▲


▲特定の場所にはアキアカネは集まっていた.▲

もうトンボのシーズンも終わりに近い感じでした.13:00ごろに,キトンボの産卵を見ました.キトンボの産卵を見ると,ますますトンボシーズンも終わりだなと感じます.


▲連結産卵をするキトンボのペア.▲

このペアは,途中で連結を解消し,メスの単独産卵に移行しました.オスは周辺を飛びながら産卵警護を続けました.


▲単独産卵するキトンボのメス.▲

このメスは朽ち木に腹端を打ちつけたあと,そこに一時静止して休憩?をしていました.


▲腹端を打ちつけたあと,産卵基質に一時的に静止した.▲

北部の調査は,今年はこれで終わりになりそうです.

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No. 996. スナアカネを探しに行ったが… 2024.11.3.

先日ベニトンボを見たので,スナアカネが来ていないか探しに行きました.しかし来ていたのはタイリクアカネとアキアカネ,そしてウスバキトンボだけでした.それもあまり数が多くない感じでした.


▲タイリクアカネたち.▲

アキアカネは一時非常に少なくなりましたが,こんな海岸近くの公園にまで来ていたのを久しぶりに見ました.


▲アキアカネとその産卵.▲

天気は良かったですが,あまりトンボがいない公園でした.

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