No. 1038. ミヤマサナエを見に行った.2025.7.30.

今日は,兵庫県では非常に見るのが難しいミヤマサナエを友人の案内で県外に見に行きました.生息環境を見て,兵庫県で産地を見つける参考にしようと思っています.朝早い方がいいということで,早朝に家を出て,現地に入ったのは7:00過ぎでした.準備をして川に入りました.するとほどなく,メスが水面を飛びました.7:30ごろです.その後,11:00ぐらいまで,次々とメスが入ってきて産卵し,オスも活発に活動し,退屈しない半日を過ごすことができました.


▲石の上に止まってメスを待つミヤマサナエのオス.▲


▲ひょいと姿を現し,石の上に止まったミヤマサナエのメス.▲

メスは水面近くを水面に対して平行に飛び,少し高度を下げて間欠打水するというような産卵をします.ただメスはとても速く飛ぶので,最初はとても写真に撮れる気がしませんでした.いつもなら飛ぶトンボはマニュアルフォーカスで撮りますが,今日はオートフォーカスで撮ることにしました.写真のように飛ぶところが浅いので,こういうときは,トンボをファインダーの上半分に入れるようにして撮ると,割合成功する確率が高いのです.


▲産卵するために水面近くを高速で飛ぶミヤマサナエのメス.▲


▲あちこち飛び回るミヤマサナエの産卵メス.▲


▲間欠的に打水するミヤマサナエのメス.▲

ミヤマサナエは静止して卵塊をつくり,打水するといった動作を繰り返します.ただ静止する時間は20秒あるかないかといったところで,止まってから近づいていってはまず間に合いません.


▲川の中の石に止まって卵塊をつくる.▲


▲卵塊をつくったあと,飛び立って,再び産卵飛行を行う.▲

ここのメスはヒトを人と思っていないようです.川の中に立って撮影しているので,メスからは石と同じ物体に見えるのでしょうか.産卵途中に止まりに来て卵塊をつくります.


▲私の胴付き長靴に止まって卵塊を形成している.▲

メスが産卵に入ると,オスがそれを放っておくはずがありません.何例かメスに飛びついて水面にたたき落とし,タンデムを形成して連れ去るのを見ました.


▲オスがメスをつかみ水面に落ちたところ.上がメス下がオス.▲

オスは,最初は数が少なかったですがだんだんと多くなってきたようです.あちこちに止まってメスを待つ姿が見られるようになりました.


▲おちこちに止まるオスたち.▲

実はこのオスたちもヒトを人と思っていないところがあります.足下をくるくる回るように飛び,止まりたそうにします.実際,足や,カメラや,胴付き長靴や,背中や,帽子など,いろんなところに止まります.極めつけは,止まりそうに飛んでいるときに手のひらを差し出すとそこに止まるのです.まるでペット状態ですが,これにはもう笑うしかありませんでした.


▲差し出した手のひらに止まるオス.(撮影:友人)▲

いやはや楽しい半日でした.

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No. 1037. ギンヤンマとナツアカネ.2025.7.27.

今日は兵庫県の北部へ,いくつかのトンボの状況を調べるために出かけてきました.まずはヤブヤンマ.生息地に入ったのは正午ごろです.産地は最近の雨の少なさと高温で水が涸れていました.こうなるとヤブヤンマは絶望的です.そこで転進し,ヒヌマイトトンボの状況を見に行きました.気温は36℃.炎天下のヨシ原は地獄的でした.しかしヒヌマイトトンボは全く姿が見られませんでした.消えてなければいいのですが.

いずれにしてもトンボ調査これで2連敗.次はネアカヨシヤンマ.いつも14時ごろに産卵に来ます.しかしこれも,時期的にまだ少し早いこともあってか,3連敗.3時ごろまで待って次に行こうかと思っていたとき,1頭のヤンマのメスが入りました.地面に止まって産卵をしています.しかしネアカヨシヤンマではありません.近づいてみますと,なんとギンヤンマのメス,それもオス型のメスでした.


▲湿った地面で単独産卵するギンヤンマのオス型メス.▲

これはある意味ネアカヨシヤンマより珍しい生態的観察だといえそうです.ギンヤンマはいろいろな産卵基質を用いることが知られています.しかし水のない泥土に産卵するのは比較的稀です.次に単独産卵すること.水があってオスが飛び回っている池ではたいがい連結産卵です.


▲同じ日別の場所で見た連結産卵.単独オスがまわりを飛び回っていた.▲

この場所は水のない天水湿地.水がたまっているときにはギンヤンマもやって来ますが,草原状態のこの状態ではオスはふつう活動しませんので,メスは安心してのんびりと産卵できます.そして最後がオス型のメス.これはそれほど多くはない多型の一種です.いわば三拍子そろった感じです.

このメスの産卵場所を見ていると,ネアカヨシヤンマと同じで,イノシシの足跡に産卵することが多く,そこで産卵を始めると落ち着いて長い時間産卵を続けます.産卵は30分以上続きました.ギンヤンマのメスも,本当は単独で産卵したいというのが,本音なのでしょうね.それにしても,外気温は37℃になっていましたが,日向で産卵するギンヤンマ,頑張りますね.


▲イノシシの足跡に産卵するギンヤンマ.▲

ということで次です.先日県外へナゴヤサナエを見に行きましたが,今日は夕方に県内のナゴヤサナエを見に行く予定です.まだ時間的には早いので,ちょっと小川や池にトンボを見に行きました.そのとき,珍しいものを見ました.ナツアカネの集団避暑です.

ナツアカネが夏の間どこにいるのかについての知見は,アキアカネほどはっきりしていません.私もずいぶん昔に未熟な個体がたくさん集まっているのを見たことが一度あるだけです.


▲日陰に集団で止まるナツアカネの未熟個体.▲

これらは,羽化してまだ間がないことは確かですが,羽化直後というほどでもありません.また写真には撮れませんでしたが,腹部が赤味を帯びている個体も1頭見かけました.場所は特別なところではなく,林縁の日陰で風通しがよく,私が37℃の外気温の中で立っていても涼しく感じるようなところです.


▲ナツアカネが集まっていた林縁の笹原.この林床に止まっている.▲


▲オス・メス入り交じって,低い位置に静かに止まっている.▲

数を数えてみると,上の写真の範囲で30頭以上でした.以前にこういった集団を見たときには,後日にはすべて姿を消していましたので,この集団も一時的なものかもしれません.また来たときには探してみたいと思います.ナツアカネは,とある生息地でまとまって羽化した場合,羽化してしばらくはこのように涼しい林縁・林床に集まって過ごしたあと,分散してばらばらになって過ごすのかもしれませんね.

あとナツアカネの観察をしているときに,キイロサナエがこの日陰に飛び込んできました.7月下旬という遅い記録です.


▲キイロサナエのオス.▲

さて最後のナゴヤサナエですが,18:00まで待ちましたが,全く飛びませんでした.気温はまだ35℃.本当に老体には命がけの観察です.今日は目標とするものは全敗,外道で成果がありました.

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No. 1036. ナゴヤサナエを見に行った.2024.7.24.

今日はナゴヤサナエを見に行きました.県内へ行こうかとも思いましたが,思い切って県外へ出かけてみることにしました.現地へは8:20ごろに着きました.川面をながめると,オスが数頭飛んでいました.やはり朝早くから活動しているのですね.ここは個体数は多そうです.


▲川の真ん中あたりを飛ぶナゴヤサナエのオス.▲

あちこち移動して探してみましたが,最初の場所が一番多く飛んでいました.9:30あたりになると,飛んでいたオスが止まり始めました.面白いことに同じところにやって来て止まるんですね.たまたまかもしれませんけど.


▲同じところへ集まってきて止まるという不思議な習性がある.▲

撮影を終えるときに草の茎を投げてみますと,7頭飛び立ちました.写真以外にもまだいたのですね.午前中はメスの姿を見ることができませんでした.

さて,次に,高い山に上がってみることにしました.暑いので避暑も兼ねています.山に上がると,ミヤマアカネがいっぱい飛んでいました.周りに流れや池などないように思えるのですが,どこかにあるのでしょうね.ミヤマアカネはあまり移動しないトンボ(だと思っています)ですが,まさか麓から上がってきているのではないでしょう.


▲ミヤマアカネのオスとメス.まだ未熟な状態だ.▲

オニヤンマも久しぶりに道路の上空を往復し摂食している姿を複数見ました.最近オニヤンマも減っている感じがしますものね.


▲摂食飛翔するオスと,道路に止まっていたオス.▲

これ以外には,オオヤマトンボが道路上を行き来して摂食するという,あまり見たことのない行動を観察しました.ウスバキトンボは非常に数が多く,高い山で群れ飛んでいるのは,ここから遠方へ飛び立っていくのでしょうか?

ナゴヤサナエの生態を観察できたので,今度は県内のナゴヤサナエの確認に行ってみることにします.

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No. 1035. 急に思い立って西表島へ.2025.7.16-17.

思うところがあって,西表島へ調査に行ってきました.何しろ急だったので,飛行機やホテルがとれる日程ということでこの日になりました.前後それぞれ1日は移動日になっています.あまり計画性がなかったためか,大型美麗種にはお目にかかることはありませんでしたが,いたトンボたちの観察がゆっくりと出来ました.ただ,春から初夏にかけて行ったときと比べて,トンボの個体数が「著しく」減っていました.夏に入ると端境期にでもなるのでしょうか.一部のトンボをのぞいて本当に何もいないという感じでした.

そんな中でまず観察したのは,サイジョウチョウトンボです.驚いたのは,チョウトンボのように,山道の上空を群れて飛んでいたことです.こういう姿は相当に個体数が多くないと見ることができないと思うのですが,...数が増えているのでしょうか?


▲サイジョウチョウトンボが樹冠の上を群れて飛んでいた.メスの雑種らしいのも(中)いる.▲

一方で止水にも飛んでおり,オスに警護されて産卵するメスがいました.サイジョウチョウトンボの,雑種ではない純粋なメスは初めて見ました.チョウトンボのように打水産卵をしていましたが,すぐにオキナワチョウトンボに追われて退場していきました.


▲翅胸背面に黄褐色条が出ていないので純粋個体だと思われる.▲

次に観察したのは,ホソアカトンボの産卵です.前回来たときに産卵を見ているので,今度はねらって撮れるでしょう.ホソアカトンボは初夏に来たときに比べても,それほど数が減っている感じはしませんでした.年中だらだらと発生しているのでしょうかね.


▲ホソアカトンボのオスたち.南のトンボという感じがする.▲

産卵は二例ほど見ました.やはり薄暗いところなので,メスの姿は見えません.勘で位置を決めての撮影です.メスは腹部の中程から先をわずかに曲げ,水滴を飛ばして産卵しているようです.いわゆるオオシオカラトンボ的な産卵です.ですからメスは何かの対象物に向き合うようにして定位します.


▲岸や何かの対象物に向かって定位し水滴を飛ばす.▲

ホソアカトンボを観察していると,オオメトンボが飛び始めました.オオメトンボもすぐ近くで産卵を始めましたので,途中からこちらに気をとられて,観察対象を変更しました.それがよかったようで,産卵を3例観察しました.このトンボは,オスがものすごい速さで薄暗いところを飛び体も真っ黒なので,写真に撮るのは至難の業です.結局のところ,数百枚シャッターを切ってたったの1枚だけなんとか見られるのが写っていました.


▲頭部がちょっとアウトフォーカスだったが,なんとかオオメトンボと分かる写真が撮れた.▲

オオメトンボというのは,体が黄褐色をしているという認識がありましたが,写真のオスはもうほぼ真っ黒状態です.オスに対しメスは,浮遊物などに往復飛翔して産卵しますので,まだねらいがつけやすいです.今回撮った写真を見ると,打水している瞬間と,浮遊物に卵を貼り付けていると思われる瞬間が写っていましたので,腹端を水に濡らしてから浮遊物に卵を貼り付けるのか,それとも水面上・水面下どちらにも貼り付けるのか,ちょっと分かりません.なんせ暗くて速いので目視確認は不可能です.


▲一例目の産卵.浮遊木の水面上の位置をたたいている.▲


▲同じく一例目の産卵.浮遊木の際の水面をたたいている.▲

上の写真では,浮遊木の水面上の位置をたたいているのがわかりにくいですが,たたいた拍子に腹部先端が少し外側に曲がっているので,腹部が当たっていることが分かります.


▲二例目の産卵.浮遊木の水面上の位置をたたいている.▲


▲同じく二例目の産卵.浮遊木の手前の水面をたたいている.▲

二例目の産卵でも,水面をたたくのと,水面上の浮遊木表面をたたく場合の両方が観察できます.こちらの写真の方がはっきりとしています.

次は三例目の産卵です.この個体は上記2個体と違って,体が茶褐色をしています.そして上の2個体より腹部が太いように見えます.まさかコフキオオメトンボではないと思うのですが,真っ白なトンボは飛んでいませんでしたし,翅の付け根に褐色斑が見られますので,やはりオオメトンボでしょう.どうも見慣れないトンボは,写真だけでは同定に不安を覚えてしまいます.


▲三例目の産卵.若いメスだろうか.下の写真では翅の付け根に褐色斑が見える.▲

さて,写真には撮れませんでしたが,川の調査に入ったときミナミトンボが産卵する姿を見ました.行ったり来たりしながら水しぶきを上げて打水産卵していました.また水面上をパトロールするオスの姿も見ることができました.そして嬉しいことに道路上を摂食するオスに出会うことができました.ただこれもまた非常に速く飛ぶので,ほとんど写真になりませんでした.


▲ミナミトンボのオス.道路上を行ったり来たりして摂食をしていた.▲

あと本当にトンボが少なく,オキナワチョウトンボ,リュウキュウベニイトトンボなどが産卵活動を行っていました.コフキショウジョウトンボはふつうに見られました.アカスジベッコウトンボはオスがメスを追いかけ回しているのを見ましたが,翅がボロボロのもいて,シーズンの末期のような感じでした.そんなトンボたちを少し紹介して今日の記事を終わっておきます.


▲コフキショウジョウトンボ.これは数はそれほど減っていなかった.▲


▲ボロボロのアカスジベッコウトンボ.去年来たときよりも数が顕著に減少していた.▲


▲ヤエヤマオオシオカラトンボ.コフキショウジョウトンボに混じって飛んでいた.▲


▲コナカハグロトンボ.川の調査では数が多かった.他はアカナガイトトンボぐらいであった.▲

さて,また明日から地元のトンボを見に行くことにしましょう.

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No. 1034. ナニワトンボの未熟個体探し.2025.7.14.

6月12日以来,ずっとナニワトンボの未熟個体を探しに出かけていました.例年であればアオハダトンボやヒメサナエなどを見に行く時期なのですが,それらをすべてキャンセルしてこれ一本に絞った探索を続けました.生息地の池を訪れ,枝先を見て回ります.今日は到着と同時にやっとナニワトンボを見つけましたが,なんと,もう青白い粉を吹いていました.実はこの場所は6月12日以来で,今までは別の場所へ行っていました.


▲ナニワトンボのオス.もはや粉を吹いている.▲

その後も丹念に探しましたが,ナニワトンボ自体が見つかりません.しかしリスアカネが結構たくさん止まっていました.リスアカネとナニワトンボはだいたいセットですから,これがたくさんいるということは,可能性は十分あります.しかしリスアカネも,すでに腹部が赤くなっている個体もいて,ちょっと時機を逸したかなと思ってしまいました.


▲リスアカネたちもすでに羽化をしていて,腹部が赤い個体もかなりいた.▲

1時間以上探索しても見つかるのは粉を吹いた青白いオスばかりです.6頭ほど見かけました.ダメかと思ったとき,遠くの樹間に止まる未熟個体を見つけました.


▲池に張り出した木の枝の中に止まるナニワトンボのメス.▲

しかしこれはメスです.オスの未熟な個体が見たかったのです.しばらくこの個体を見ていると,飛び立って姿を消しました.池の反対側へ行ったかもしれないと思い,移動しました.そして慎重に木の枝の先を探すと,いました.オスが,それも2頭,さらにメスが1頭も.ほぼ同じ場所に止まっていました.


▲ナニワトンボの未熟個体.上2つはオス,下がメス.▲

枝の高い位置に止まっているので,どうしても見上げたようなアングルになります.いつも思いますが,1つ見つけると,次々に目に付くようになるのが不思議です.1時間以上見つけることができなかったのに.そこで,もう一度戻りつつ,青白い粉を吹いたオスがいたあたりを丹念に探しました.すると,本当に不思議,次々と見つかります.


▲上からメス,オス,オスの未熟なナニワトンボ.▲

いずれも見上げるようなアングルですが,一番最後のだけは目の高さに止まっていました.といってもいずれも水面に延びた枝先なので,近づくことができません.ただ一番下の個体は摂食でしょうか,時々飛んで止まり直しますし,一番近い距離に止まっています.そこで,なんとかふつうの高さのアングルの写真を撮れるよう待つことにしました.オス君との我慢くらべです.そしてついにチャンスが訪れ,飛んで止まった瞬間に横を向き,写真をテイクすることができました.


▲腹部背面が黒みを帯び,粉を吹き始めようとしているのかもしれない.▲

粉を吹いている個体がすでにいることを考えると,未熟な個体を見ることができるのはとても短い間のような気がします.あと1週間もすれば,全部粉を吹いているかもしれませんね.いずれにせよ,ずっと心のどこかにくすぶり続けていたナニワトンボの未熟個体の探索,やっと答えを出すことができました.

全然別の話ですが,6月4日にキイロヤマトンボを探しに行った時に見た,コヤマトンボのように見えた個体が実はキイロヤマトンボだったことも判明し,いまのところ最近調査していないトンボの調査に成果が出ており,やっと気持ちが晴れたような気がしています.

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▲2025.6.4. キイロヤマトンボ.兵庫県北部.▲

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