神戸のトンボたち
K070. タイリクアカネ Sympetrum striolatum imitoides
交尾.2009.11.7.,神戸市須磨区.
交尾.2009.11.7.,神戸市須磨区.
 タイリクアカネは,神戸市近郊では大阪湾から瀬戸内海にかけての兵庫県南部,また和歌山県の海岸地方で多数の記録があります.以前西宮の学校のプールで,1000頭を越す幼虫が発見されたりして,新聞紙上をにぎわしたこともありました.
 今から25〜35年前の文献を見ると,本種の生態には不明な点が多かったようですが,トンボ研究家の方々の努力で,秋に海岸地方に見られることが明らかにされました.ただ,最近はかなり海岸線から離れた地域,例えば市内では六甲山地の麓あたりで,兵庫県下では加東市あたりでも見つかるようになり,かつての定説は少し見直さねばならないようです.この現象はアキアカネの減少と軌を一にしているように感じています.
 本種がどのような生活をしているかはまだ謎につつまれているといっても良いと思います.明らかになっていることは,10月中旬から下旬になって,海岸地方の水たまりを求めてやってくることと,未熟な成虫はどうやら山の中腹の樹林で生活しているらしいことなどです.この未熟な時期の個体がほとんど見つかりません.一度8月に,摩耶山から六甲山牧場への道路上で,オスが地面に降りてきたのを目撃したことがありました.
 海岸近くの公園に池などがあれば,5〜6月頃注意してみてみてください.タイリクアカネのヤゴがたくさん発生していることがあります.
 神戸市には六甲山があり港があり,これが神戸市の一つのシンボルです.夏を六甲山で過ごし秋に海岸に現れる本種は,ある意味で神戸市にの街にマッチしたトンボであるように思います.