K045. タベサナエ Trigomphus citimus tabei
若いオス.2023.5.3.,神戸市北区./神戸市RDB:
タベサナエは神戸市には少ないサナエトンボです.北区に記録が集中しています.神戸市での記録は池でのものばかりですが,市外では河川にも生息しています.市内では最近はすがたを見ていません.
北区の小さな砂防ダムで繁殖を確認しましたが,羽化する個体数もかなり少なかったですし,その他の各地でも同様です.数少ない産地の一つであったしあわせの村の入り口向かいにあった片倉池は埋め立てられ消滅しました.藍那方面一帯には点々といると聞いていましたが,2023年に初めてその藍那地域でタベサナエの姿を確認できました.本種は大きな河川から小さなため池・湿地にまで広い範囲の水域に生息していますが,神戸市内では池に生息する例が多いようです.
タベサナエは他のコサナエ属(フタスジサナエ,オグマサナエ)と同様,春早くから羽化します.北区では,4月の20日過ぎに,まだひんやりした天気の時に羽化するのを見ています.このころはまだまだ寒い日があって,下手をすると羽化に失敗する可能性があります.そのためか,タベサナエの幼虫は羽化が近くなると岸辺に集り,羽化のチャンスを常に狙っているようにみえることがあります.
北区の観察では,岸辺のすぐそば数10センチの所を,幼虫が行ったり来たりうろうろしているのがとても印象的でした.擬人的(ぎじんてき)にいえば,羽化しようかどうか迷っているふうにみえました.と突然,そのなかの1頭が意を決したように岸辺に上がってきて,定位(足場をかためてじっとすること)したかと思うと一気に羽化を始めました.14:10でした.この前に羽化していた個体の羽化に要した時間は2時間以上でしたので,この個体の羽化終了はおそらく16時を過ぎたであろうと思われます.ダビドサナエの羽化に要する時間がだいたい45分,ヤマサナエで1時間程度ですので,ここのタベサナエの羽化に要する時間は,気温のせいであると思いますが,非常に長いといえます.
観察例が少ないのではっきりしたことはいえませんが,すがたを消すのも早く,神戸市では6月上旬には見られなくなるようです.