神戸のトンボたち
K043. ヒメクロサナエ Lanthus fujiacus
舞い降りてきて止まった未熟な♂,2011.6.4., 神戸市北区.
舞い降りてきて止まった未熟な♂,2011.6.4., 神戸市北区./神戸市RDB:
 ヒメクロサナエは,過去には神戸市に記録が見あたりません.1996年に北区の渓流で私が幼虫をはじめて発見しました(青木,1997).その後,メスの産卵,オスの飛来を同所で観察していますので,まことに細々と個体群が維持されているようです.また最近は六甲山頂近くで交尾が観察されたり,北区の別の場所で幼虫が確認されたりしています.
 このトンボは決して珍しい種類ではなく,兵庫県をはじめ各地の,標高の高いところにある渓流を調査するといくらでも見つかる普通のトンボです.こういった普通種といえるようなトンボが,一見自然が豊かな六甲山系の渓流にほとんど見られないということは非常に不思議なことです.
 私は,かつて六甲山がはげ山であった時代に渓流が長期にわたって枯れ,そのせいでこういった渓流性のトンボが六甲山には少ないのではないかと思っています.したがって本種を探すとしたら,ポイントは,あの時代にも森林が残され水が枯れなかったところだと思っています.そういう意味で,神戸市では歴史を物語る可能性のある貴重なトンボといえると思います.
青木典司,1997.神戸市でヒメクロサナエが見つかる.Sympetrum Hyogo 4:4.