■見分けのチェックポイント
羽化殻全長は16mm前後.クチクラは厚い.背棘は円丘状をしている.杉村ら(1999)は腹部第3節から第9節にまで,石田(1996)および尾園ら(2012)は腹部第6節から第9節にまで存在すると記載している.上図の個体では腹部第5節にも円丘状の突起が見られ,見方によって背棘存在の認識に差が出ているような状況である.しかし少なくとも腹部第6節から第9節にははっきりとした先端の丸い背棘が認められるといえる.側棘は腹部第7節から第9節にまで存在する.触角第3節はだ円形をしており,触角先端部が互いに向き合うように内側に向いている.前下唇は他のサナエトンボ科のものより細長い.
■分布と類似種
千葉県を除く本州,四国,九州に分布する.どの地域でも比較的分布は限られている.サイズの小ささや触角の形状,また前下唇が細長い点などから,他種と区別ができると思われ,類似種はいないといえるであろう.
■生態
河川の源流域から上流域に生息する.成虫は開けたところより川の両側に樹林が広がっているような場所でよく活動している.幼虫は流下するといわれており,実際成虫が活動している場所よりかなり下流で羽化する.ただ成虫の活動している場所でも少数の終齢幼虫は見つかる.底の砂礫に潜って生活している.オナガサナエと一緒に網に入ることがある.体色には,黒色,褐色,緑褐色などのものがある.