■見分けのチェックポイント
羽化殻全長23mm前後.通常,側棘は第8,9腹節に小さなものがあり,背棘はない.側刺毛は8,9本程度,腮刺毛は12,13本程度である.時に微小な背棘と見まがうような隆起(矢印)がいくつかの腹節にみられる場合があるものの,明瞭な背棘といえるものはない.なおヨーロッパ産のカラカネトンボ原亜種 Cordulia aenea aenea には通常第3−9腹節に背棘がある(Norling, 1997).♂の肛上片上には,写真の♀には見られない一対の丸い突起が,その先端近くに存在する.
■分布と類似種
北海道,東北地方,新潟,長野,群馬,栃木,富山,石川,福井,岐阜の各県に分布する.同じエゾトンボ科のホソミモリトンボやクモマエゾトンボにも背棘がないが,これらには側棘もなく,また外形も大きく異なる.範囲をトンボ上科に広げても,明瞭な背棘のないものは限られている.分布域内に背棘のない類似種はいないと言ってよいであろう.
■生態
写真は,岐阜県にある本種の本州最南東端の生息地である.こういった池の,水生植物の根際や植物性沈積物の間をすくうとよく採れる.北海道では羽化までに5年かかるというデータがある(Ubukata, 1980).