Mo. 932. ヤンマ探し.2023.8.3.

いやはや,最近の暑さには降参というところです.しかし8月に入り,夏のトンボの最盛期になりました.暑さに負けず出かけるときが来たようです.夏のトンボといえばヤンマ類,そしてオナガサナエやナゴヤサナエ.ちょっと頑張って,このあたりを攻めることにしました.ただ最近のガソリン代の高騰,おいそれと遠方へ何回も出かけることが難しくなってきました.ということで,今日は兵庫北部へ,ナゴヤサナエ,ヤブヤンマ,ネアカヨシヤンマ,マルタンヤンマ,そしてついでにヒヌマイトトンボの様子を見に,一気に出かけることにしました.

まずはナゴヤサナエが健在かどうか,...ちょっと到着が遅かったせいか,トンボは何も飛んでいませんでした.気温はすでに35℃,シオカラトンボでさえ日陰を飛んでいました.負けずに次のヤブヤンマへ.しかしヤブヤンマの産卵場所は水が干上がっており,これではやって来ません.連日のこの暑さですから仕方ありません.連続アウトを食らいました.仕方なく次はヒヌマイトトンボを様子を見に行きました.しかしヒヌマイトトンボの姿は全く見えずでした.もう時期が遅いのでしょうかね.消えてなければいいのですが.アジアイトトンボが2頭飛んでいただけでした.これで3タテを食らいました.


▲あまりに暑いせいか,アジアイトトンボも葉の裏の日陰に止まる.▲

次はネアカヨシヤンマです.こいつは枯れた湿地に産卵に来るので,多分大丈夫でしょう.いつもの場所へ行って,午後2時を待ちました.にわかに雲が出てきて日差しが遮られ,少し暗くなりました.やって来ました.今日は2時6分前でした.空が暗くなったからかな? 今日は2頭産卵に入って来ました.最初に入ってきた個体にはなかなか近づかせてもらえず,撮れた写真は1枚だけでした.


▲この個体は若いメスだ.乾いた土の上で,イノシシの足跡に産卵する.▲

この個体は,あまりに追いかけ回したせいか,すぐに出て行ってしまいました.ただその後も時々戻ってきては遠いところで産卵していました.

比較的近寄らせてくれたのがもう1頭のメスです.


▲ウォーリーを探せでなく,ネアカを探せだ.どこにいるか分かりますか?▲

初めのうちはこの個体も,近づくとすぐに飛び立ってしまう感じでした.しかしだんだんとこちらが何もしないことに安心したのか,近づいてストロボを焚いても逃げなくなりました.かなり老熟しているようで,複眼も少し透き通った感じがなくなりつつあります.


▲最初はこんな感じで,近寄りにくい状態であった.▲


▲イノシシの足跡に産卵するのが好きだ.▲


▲やっと近づいても逃げなくなった.▲

さて,あまり長時間いて,彼女たちの邪魔をしてもいけないので,30分ほどでここを離れることにしました.次はマルタンヤンマを黄昏時に観察することです.早い目の夕食をとって,目的の新規開拓している場所に行きました.まあ,バッキー(ウスバキトンボ)とシオカラがうじゃうじゃ飛んでいました.ギンヤンマがその間をすいすい飛びます.

でも19:00まで頑張りましたが,全くマルタンヤンマは飛ばず,それどころか,ヤンマは,ギンヤンマ1頭,オニヤンマが1頭通り過ぎるように飛んだだけでした.暗くなるにつれバッキーとシオカラは1頭,また1頭と上空に舞い上がり,山の方に飛んでいきました.今日の眠りにつくのでしょうね.普通種といえども,これだけたくさんいて,いろいろとパフォーマンスを楽しませてくれると,退屈はしませんでした.

最近は黄昏飛翔も数が減っているように思えます.新規開拓をしても,全然飛ばないか,数頭通り過ぎるだけという感じです.やはりよく飛ぶと分かっている場所へ行くしかないのでしょうか.

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No. 931. 薮の中にヤンマを探す。2023.7.30.

あまりに暑い日が続くので,しばらく自宅にこもっていました。ただ,いよいよ夏のトンボの本番が到来しましたので,まずは薮の中のヤンマを探しに行きました。


▲カトリヤンマのオス.▲

まず見つけたのはカトリヤンマでした.きれいなオスで,もう複眼が透き通っていました.もう1頭見かけましたが,こちらは素早く飛び去ってしまいました.

幸先はよかったのですが,後が続きません.ヤブヤンマもマルタンヤンマも姿がありませんでした.一瞬の通り過ぎもなしでした.時刻がちょっと遅すぎたか,13:30ごろでしたから.

暑い中,林の中には,ヒメアカネの未熟な個体があちこちで飛んでいました.

▲ヒメアカネのオスとメス.秋を待っている.▲

あと,数が多かったのはオオシオカラトンボとコシアキトンボでした.オオシオカラトンボを紹介しておきましょう.


▲オオシオカラトンボのオスとメス.▲

下の写真は,ヤブヤンマが産卵する場所で,しばらく待っていたときのものです.

もっとも暑い昼下がり,早々に引き上げることにしました.おしまい.

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No. 930. ヤブヤンマの産卵.2023.7.22.

今日は,一番暑い14:00過ぎ,トンボたちはどうしてるかなと,日当たりのよい池に見に行くことにしました.いやはや夏のトンボたちは元気です.ギンヤンマ,コシアキトンボ,チョウトンボ,ショウジョウトンボ,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,クロイトトンボなど,日向でビュンビュン飛んで活動をしていました.普通種ばかりですが,たくさんいると,何か嬉しいです.ギンヤンマだけ紹介しておきます.


▲数が多くて池には入れないのだろうか,道の上を飛ぶギンヤンマのオス.▲

さて,一通り夏のトンボたちを見た後,今日の目的であるヤブヤンマを探しに行きました.ここは前から目をつけていたところで,昨年は姿を見ることができませんでしたが,今年はどうでしょうか?

林の中の薄暗い池に着くと,オオシオカラトンボに混じって,ヤブヤンマのメスが産卵にやってきていました.時刻は15:53です.兵庫北部ではだいたい正午前後に産卵に来るのですが,ここはかなり遅い午後に産卵活動をしていますね.


▲割合敏感で,ストロボを炊くと,すぐに場所を移動するヤブヤンマのメス.▲

追いかけながら撮影を続けていますと,もう1頭いました.2頭がもつれ合うように飛んだあと,もう一頭の個体が入れ替わるように私のそばで産卵を始めました.


▲やはりこちらも結構敏感に飛び立っては移動する.▲

草の陰などに入り込んで産卵することが多く,なかなか写真に撮りにくい感じでしたが,しばらく撮影を止めて観察を続けていると,このメスは私の方に飛んできて,私を隠れ蓑にするように私の足下に入り込んで,真下で産卵を始めました.私を危険な生物とは認めていないみたいです.


▲私の近くで産卵を続けるヤブヤンマのメス.▲

ここが近場でヤブヤンマの産卵が確実に撮れる場所であれば,兵庫北部まで行かなくてすみます.ただ,去年は不発に終わっていますので,数が少ないのかも知れません.今日はついていただけかもしれないので,黄昏飛翔を見に来てそれを確かめることにしました.

18:30に同じ場所に出かけました.約1時間黄昏飛翔を観察しましたが,ヤブヤンマがのべ5回ほど,マルタンヤンマが1頭通過していっただけでした.


▲通過していったマルタンヤンマのメス.▲


▲ヤブヤンマの飛翔.▲

まあ,この飛び方からいえることは,飛ぶ場所が違うのか,あるいは個体数が少ないのかのどちらかです.近いので,またぶらっと見に来ることにします.

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No. 929. ヒメサナエの観察。2023.1.17.

満を持してといいますか,今日は日付的にヒメサナエの観察にもっとも適した時期ですので,ヒメサナエの観察に出かけました。熱中症危険情報が出ていますが,だいたい本種は山中の日陰の川でじっと座って観察するので,ほとんど問題はありません。


▲ヒメサナエのオス.▲

「満を持して」などという書き出しをすると,たいがいあまりよくない結果が出ているのですが,全くその通りで,今日見かけたヒメサナエは,写真のオス1頭,そして飛び去る小型のサナエ1頭だけでした。昨年と同じ場所へ行ったのですが,昨年の賑わいはまったくありませんでした。さらに流程に沿って少し範囲を広げて探しても見つかりません。明らかに激減しています。上の写真の成熟状態から見て時期を間違っているとも考えられません。

ヒメサナエの幼虫期間は2年と考えられています。昨年はたくさんいたので来年また同程度出てくれば,この奇数年(今年が2023年なので)の繁殖個体群が著しい減少をしていると考えることができるかもしれません。生活史に興味がある私にとっては非常に興味深い現象に出会ったといえます。

この繁殖場所付近は大規模工事が行われたので,その工事が奇数年繁殖個体群の繁殖活動の時期または若齢幼虫の時期に大きな影響を与えたということが考えられます。というのは,この幼虫は川を流下することが知られており,実際この川で羽化殻が採れるのはずっと下流です。したがってまだ流下を始めていない小さな幼虫は繁殖場所にとどまっていて工事の影響を受けることが考えられます。

どのような形で影響したかは分かりませんが,とにかく来年の状況を見て,さらに再来年の状況を見て,判断するのがいいようです。もし増減が年毎に繰り返されるような状況が見られたならば,これは非常に面白い事例になります。トンボの生活史には年齢群分割という現象があるので,1ないし3年で羽化する個体もあると仮定すると,この状況は次第に平坦化されてくる可能性もあります。

ヒメサナエがいなかったことは残念でしたが,面白い研究テーマが見つかるかもしれません。

さて,まだ時間があったので,ヤンマの状況を見に行きました。そろそろ薮の中でトンボを探す季節になり始めているからです。結果はカトリヤンマのメス1頭を見つけただけでした。


▲薮の中に止まっていたカトリヤンマの未熟なメス。▲

ストロボを炊くと飛び立ちましたが,この場所が気に入っているのか,周辺をぐるっと回って戻ってきました。今日は暑いので,温度が適している微小環境の場所を感じ取っているのかもしれません。


▲舞い戻ってきたカトリヤンマ(上).その後1時間以上止まり続けていた(下).▲

いよいよ夏本番,夏のトンボたちを探しに行く季節が到来しました。熱中症と闘いながら観察を続けることになりそうです。今日も実はヤンマを探しているとき,妙に呼吸数が上がり,身の危険を感じました。皆さんもお気をつけください。

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No. 928. 神戸のトンボたちは… 2023.7.7.

梅雨の中休みとでもいうべき晴れが続いた,7月4日,6日,7日とフィールドに出てトンボを見に行きました.4日は,昨年6月末に早くもヒメサナエがたくさん集まって産卵をしていましたので,それを確認に出かけました.6日は神戸のトンボ調査で,かつてトンボがそれなりに見られた川へ出かけました.

ところが,4日はまだヒメサナエは1頭のみで,他にはコオニヤンマが1,2頭,ミヤマカワトンボが数頭見られました.まだヒメサナエは早かったようで,昨年に比べると出現が遅くなっているようです.というより,昨年が例外的に早かったのかもしれません.いつも7月の中旬ごろにヒメサナエを観察に行ってましたから.


▲7月4日のヒメサナエ観察はまだ早かったか.唯一のヒメサナエ.▲

これはこれで致し方ないと諦めて帰りました.そして6日に神戸のトンボ調査を行いました.オナガサナエやオジロサナエがよく羽化していた川で,ハグロトンボやニホンカワトンボもたくさんいました.その他,コオニヤンマ,キイロサナエ,ヤマサナエなども見られた川です.神戸市内でグンバイトンボが唯一たくさんいた川でもあります.


▲調査した神戸市内の川で,6月下旬には,かつてよく見られたオジロサナエ.▲


▲グンバイトンボの市内屈指の産地で,もたくさん見られた.▲


▲キイロサナエも羽化していた.▲

まあ,4日のことがあったので,端境期でトンボはあまり見られないかもしれない,と思いながら,流れをのぞいたり,流れの横にある薄暗い道を歩いて,トンボたちとの出会いを期待しました.たとえ端境期でも,ハグロトンボの未熟な個体は,流れのそばの薄暗い道にはよく潜り込んでいます.少なくともそれを期待したのでした.


▲この川にもきちんとハグロトンボはいたのだ.▲

しかしです.1時間以上川に沿って歩いたり川をのぞいたりしたものの,出会ったトンボは,コオニヤンマ1頭,ハラビロトンボ1頭だけでした.


▲7月4日,止まっていた,No.28:コオニヤンマのオス.▲


▲この場所にはあまりに合わないハラビロトンボのメス.▲

ハグロトンボも薄暗い道には全く姿がありません.本当に恐ろしいほどトンボがいません.シオカラトンボもいないのです.


▲調査した川の景観とハグロトンボを期待して歩いた流れに沿った道.▲

写真で分かるように,環境は,昔,神戸のトンボを調べていたときとほとんど変わっていません.かつてトンボがたくさんいたこの川はどうなってしまったのでしょう.調査しているときにちょうど草刈りをしている地元の方に話を伺うことが出来ました.「翅の黒いトンボは見たことがないが茶色のトンボは見た」とか「ここはまだホタルがいる,先日も見に来ている人がいた」とかいうお話でした.茶色い翅というとニホンカワトンボかミヤマカワトンボでしょう.

この川の上流には川を挟むようにゴルフ場があります.また水田地帯もあります.薬品によるトンボの減少の可能性が考えられる地勢になっています.でもゲンジボタルが生き残っているという点にちょっと合点のいかないものを感じました.ただ田植えの6月ごろは,ゲンジボタルは水から出ており,蛹または成虫のステージです.

ただ一つ,今がちょうど川のトンボの端境期になっており,トンボが見られない原因と考えられます.決着は幼虫調査しかありません.ただ今は幼虫が小さい時期なので,これは後日の話になります.そこで,今日7日,確実にトンボがいる川へ,端境期である今の状況を見に行くことにしました.


▲今日7日に出かけた川の景観.ツルヨシが茂っていて上の神戸の川と似ている.▲


▲ハグロトンボを期待して歩いた川に沿った薄暗い道.▲

できるだけ同じような環境ということで,川にはツルヨシが繁茂し,川に沿った薄暗い道のある場所を選びました.ここは毎年アオハダトンボを見に来る場所で,今年は来ることが出来なかったところでちょうどよい機会でもありました.

結果は歴然としていました.こちらの川に沿った薄暗い道には,ハグロトンボがたくさんいて,私が歩くとあちこちから飛びたちました.端境期だからこそ,未熟なハグロトンボはこういった薄暗い道の中に潜り込んでいるのです.なんかほっとしました.


▲薄暗い道や川沿いの竹林に潜り込んでいたハグロトンボたち.▲

川面に出てみると,数はもう減っていましたが,アオハダトンボがまだ活動をしていました.さらに次の川の主役たちであるコオニヤンマやオナガサナエも姿を見せていました.ただ昨年も感じましたが,かつてたくさんいたグンバイトンボは姿が見られませんでした.


▲まだ生き残って活動していたアオハダトンボたち.▲


▲次の川の主役,オナガサナエも出てきていた.▲


▲コオニヤンマも川に姿を見せ始めている.▲

確かに川で見られるトンボは数がとても少なく,今は初夏のトンボと盛夏のトンボの端境期であることが感じ取れます.しかし,初夏の生き残りがいたり,気の早い夏のトンボが出てきていたりして,それなりに川が生きている感じがします.

また川とは関係ありませんが,川沿いの道ではオオヤマトンボのメスが摂食飛翔をしていました.また時々止まったりもしました.


▲川沿いの道で出会ったオオヤマトンボのメス.▲

6日に行った神戸の川には,このような川のトンボの移り変わりの風景も,コオニヤンマが1頭ぽつりと止まっていたこと以外,まったくの沈黙状態でした.

前にも書きましたが,このサイトは「神戸のトンボ」と題して公開しています.神戸には94種類のトンボの記録があります.国家戦略としての生物多様性のモデル地域でもあります(した,と過去形の方がいいのかな?).なのにこれほどまでに昔の姿がなくなってしまったのはなぜなのでしょう?

風景は昔と大きく変わっていないところが多いのです.ここで紹介した川の写真でも,どこにでもある自然豊かな川の風景です.30年前にはそれなりにトンボがそこで見つかりました.でも今はそこにトンボ一匹飛んでいない.30年の間に開発が進んで環境が変わったのではないのです.私が歩いた道は「太陽と緑の道」というハイキングコースです.自然を味わうことの出来る市民の憩いの場所なのです.非常に複雑な気分です.

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