トンボ歳時記総集編 6月−8月

日陰でひっそりと過ごすイトトンボ
写真1.樹林に囲まれた植生豊かな池.

 モノサシトンボはイトトンボとしては大型です.早いものでは5月頃から羽化が行われ,7月から8月にかけて繁殖活動が多く観察でき,その後10月はじめまで生き残り成虫の姿が見られます.どちらかというと日陰が好きなトンボで,樹林に囲まれたうす暗い池や,明るい池では木が茂っているあたりに集まっています.川には生息しないトンボですが,夏など,渇水で川の水が伏流したりすると,残された水たまりにやって来ることもあります.
 未熟なモノサシトンボは,脚が赤く斑紋も水色をしていなくて,別種かと思うような色彩をしています.幼虫も独特の形態で,尾鰓が非常に長く,腹部とほぼ同じ長さがあります.羽化殻もすぐにそれと分かります.羽化した成虫は,池周辺の樹林や下草の中に入りこんでしばらくの間生活しています.

写真2.左:6月11日,中:6月10日,右:6月9日.尾鰓が長い羽化殻(左).メスの脚や半音の一部は朱色をしている(中),少し体色が変化してきたメス(右).

 成熟すると,オスは淡色部の斑紋が薄緑色になり,さらに成熟が進むと鮮やかな水色になります.メスは成熟しても薄緑色のままですが,老熟すると青みが出てくることがあります.オスは水際の草陰に止まってメスを待っていて,メスを見つけるとタンデムになり,交尾に至ります.

写真3.左:8月1日,右:7月25日.鮮やかな水色の斑紋が出ている成熟オス.水際の草などに止まっていメスを待つ.
写真4.左:8月1日,右:6月24日.日陰に止まるタンデムになったモノサシトンボ(左)と,日陰の水辺で交尾をしているペア.

 タンデムになり,交尾を済ませたペアは,産卵場所をさがしに飛び立ちます.水面を連結態で飛び,ときどき停止飛翔も行います.飛びながらオスがメスの上に立ち上がるような姿勢をすることもあります.

写真5.8月1日.伏流した河川水たまりでの産卵場所探し.あちこち飛び回って産卵場所をさがすペア.私が追いかけているので逃げている部分もある.
写真6.8月1日.産卵できそうな基質を見つけると,タンデムで静止する.まわりに産卵しているペアがいないためか,やや警戒しているようである.

 モノサシトンボは,通常生きた植物体に植物内産卵を行います.歩哨姿勢をとるのが普通で,その姿勢をとるイトトンボに多く見られるグループ産卵もよく見られます.水面上をはう植物の茎や,水面にたおれた葉,浮葉などに産卵します.葉の表側にも裏側にも産卵するようです.

写真7.7月5日.隣り合って産卵をしているモノサシトンボのペア.
写真8.7月31日.腹部を水中に沈めて産卵をするモノサシトンボのペア.
写真9.8月1日.水面に落ちている葉に産卵しているモノサシトンボのペア.
写真10.8月2日.倒れた水生植物の葉に産卵するモノサシトンボのペア.

 モノサシトンボは8月後半になると数を少しずつ減らしながらも,10月に入るまで生き残っています.8月下旬に結構若い個体が見られることもあり,これらが生き残っているのかもしれません.

写真11.9月16日.体色も濃くなって老熟した感じがするメス(左).もうオスがいないからか,珍しく単独で産卵しているメス(右).