トンボノート
No.956. 成虫出現状況調査 北部.2024.5.3.

今日も昨日に引き続き,成虫の出現状況を調べに行きました.今日は兵庫県北部の方の出現状況です.南部のコサナエ属がしっかりと活動を始めていたので,北部の方に分布するコサナエの状況を見るのが一つの目的です.

さて,まず最初は,ホンサナエの生息地を訪れました.今年の状況はどうでしょうか.川に入ると,早速,オスが飛びました.水面を素早くジグザグに飛びます.体はスマートとはいえませんが動きはそれに似合わず敏捷です.


▲今日最初に出会ったトンボ,ホンサナエのオス.

川を歩くと,さらにオスがあちこちから飛び立ち,全部で6,7頭はいたように思います.激しく追尾をして,若い個体は活動が活発です.


▲活発に飛び回るが,結構同じところに戻ってきて止まる.

私が近づくと敏感に感じ取り飛び立ちます.自分が止まっていた場所が気に入っているのか,私のまわりをうろうろと飛んでいます.少しすると諦めたのか,水面をホバリングして飛びます.夕方によく見せる飛び方です.


▲水面を飛び回るホンサナエのオス.

しかししばらくすると止まり場所を変えて,一休みします.葉っぱに止まるより地面の方が好きなようで,砂州に止まったり,石を積んだ護岸に止まったりします.


▲地面に止まるのが好きなホンサナエ.

今日夕方までねばればメスの卵塊形成が見られるかなと思いましたが,今日は成虫の出現状況調査で,できるだけ多くの種類のトンボの状況を調べることが目的ですので,止めました.

次は本命のコサナエです.コサナエのいる池に向かいました.コサナエのオスは池にたくさん出ていました.20頭ぐらいはいたでしょうか.時刻も10:30ぐらいで,産卵にはちょうどよい時間帯です.


▲池に出て,メスを待っているコサナエのオス.


▲木漏れ日のある日陰でメスを待つコサナエのオス.


▲池岸から伸びたシダの葉に止まるコサナエのオス.


▲驚かせると飛び立ってしばらくホバリングする.

池の周囲を歩いて産卵メスを探しました.ほどなく,池岸で産卵しているメスを見つけました.産卵するコサナエは結構動き回るので,写真に撮りにくい相手です.


▲今日の産卵メス第一号.割合短時間で飛び去った.

産卵は集中するので,気を引き締めて次のメスを待ちました.しばらくすると同じところにまたやって来ました.最初の個体は驚いて逃げたようで,ひょっとしたら同じ個体かもしれません.こちらも短時間で産卵を終えました.


▲体をねじって卵を飛ばす.腹端に付く卵塊と,落下する卵が写っている.

このあと産卵に来なくなりましたので,場所を変えてみました.ホソミオツネントンボがまだまだたくさん活動していますし,オオイトトンボも飛び回っています.コサナエのオスも岸辺でメスを待っています.イトトンボたちを観察していると,産卵メスが入ってきました.ここは陽が当たっているので,撮影には好条件です.


▲草の中に入り込んで産卵するコサナエ.

ということで,コサナエたちは例年通り,ゴールデンウィークに産卵活動をたくさんやっていました.

コサナエを観察しているときに,未熟なヤマサナエが私の前に姿を見せました.これは私が探して見つけたのではなく,向こうから飛んできたのです.「私を忘れないでください」てな感じで,しばらく写真が撮りやすいように静止してから飛び去っていきました.それもオスとメスが1回ずつです.


▲ヤマサナエの未熟なオスとメス.黄色が鮮やかで美しい.

沖縄で見たヤエヤマサナエに比べると黄色の部分が少し小さく,Kっぽいサナエトンボですが,未熟期は黄色が鮮やかです.オスは特に成熟するとくすんだ緑褐色になりますから.そうそう,この池に来る前に,もう一つ『「私を忘れないで」出現』のサナエトンボと出会いました.アオサナエです.時期的には少し早い感じがしますが,ホンサナエに混じってときどき姿を現しますので,こんなものかもしれません.


▲突然目の前に現れて,写真を撮ったら遠くへ飛んでいったアオサナエのオス.

なんか今日はトンボたちのサービス精神に支えられている感じです.さて次はここへ来たもう一つの目的であるオオイトトンボです.オオイトトンボも最近南部ではあちこちで姿が消えたり個体数が減少したりと,なかなか見るのが難しいトンボです.ここには割合にたくさんいますが,昔に比べたら相当減っている気がします.今日のオオイトトンボはほとんど岸に近づかず,池の真ん中ばかりで活動していました.ですから,ぎりぎり写真を撮って,超トリミングするしか手がありませんでした.


▲唯一1mぐらい近くにやって来たオオイトトンボのオス.

オオイトトンボはほとんどがオス単独で飛び回っているばかりでした.11時を過ぎたあたりから,ポツポツタンデムのペアが見られるようになりました.


▲オオイトトンボの移精行動.セスジでは見たことがあるがオオイトでは初めて.


▲3mぐらい離れている.まだ小さなヒシの葉に止まって交尾.


▲4mぐらい離れている.産卵するペア.上の写真とは異なるペアである.

最近のデジタルカメラは本当に性能が向上したと感じます.上の産卵の写真などはほとんどドット・バイ・ドット(つまり6048×4024ピクセルの画像から640×480ピクセルを切り取った)ぐらいまでトリミングしているのですがなんとか見られますものね.

オオイトトンボより数が多かったのがホソミオツネントンボ,それに混じって少しだけいたのがホソミイトトンボ,当然成虫越冬の彼らは今も活動の最盛期です.クロイトトンボは次々羽化して飛び立つのが見られました.キイトトンボも羽化し始めていたようです.ただ白い体の個体は見間違いが起きる可能性があるので,また後日確認することにします.なおクロイトトンボの方は若いメスを見ました.


▲ホソミオツネントンボはまだたくさん活動をしていた.


▲ホソミイトトンボは数は少ないが繁殖活動最盛期という感じであった.


▲クロイトトンボのメス.クロイトトンボの若い個体はオスメスとも気品がある.

なお,この池で観察中,ずっとクロスジギンヤンマが飛び回っていました.2頭いたようですが,1頭は池に入ってくるとすぐに追い出されていました.産卵メスは写真に撮りやすいのですが,パトロールオスは苦労してやっと1枚というところです.


▲池をパトロールするクロスジギンヤンマのオス.

さて,調査のテーマ種はクリアできましたので,残りのトンボたちを紹介しておきましょう.シオヤトンボは例によってあちこちを飛んでいました.ハラビロトンボの未熟な個体が散見されました.シオカラトンボもいました.


▲シオヤトンボのオス.


▲ハラビロトンボの未熟オスと未熟メス.

さて,コサナエの池での観察は十分できましたので,あと近くの細流に入ってアサヒナカワトンボを見つけて終わろうと思いました.ニホンカワトンボの方は,ホンサナエの川にもたくさん飛んでいましたし,完全に繁殖活動期に入っています.ただ,今日は産卵を見ることができませんでした.


▲ニホンカワトンボは,オスもメスもたくさん流れに出ていた.


▲アサヒナカワトンボも薄暗い流れで繁殖活動を始めていた.

ということで,好天に恵まれ,たくさんのトンボたちに出会うことができました.今年は兵庫県北部も南部も,順調にトンボたちに出会えているような気がします.あとムカシヤンマに出会えていれば完璧でした.ということで,初見のトンボたちをまとめておきましょう.

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No.17. コサナエ.オス・メス・産卵
No.18. ヤマサナエ.オス・メス
No.19. ホンサナエ.オス
No.20. アオサナエ.オス
No.21. オオイトトンボ.オス・メス,産卵
No.22. クロスジギンヤンマ.オス
No.23. ハラビロトンボ.オス・メス
No.24. アサヒナカワトンボ.オス・メス,交尾