トンボノート
No.698. ミヤマカワトンボ.2019.6.20.

早いもので,気がついたら明日は夏至.間もなく日長が短くなり始める時期になりました.トンボも折り返し点にやって来た感じです.今日はミヤマカワトンボを見に行ってきました.あちこちでパラパラ見かける普通種ですが,まとまっているところへは,ちょっと足を伸ばさなければなりません.産卵はお昼以降が普通ですので,ゆっくりと出かけました.

▲ミヤマカワトンボのオス.
▲ミヤマカワトンボのメス.

ミヤマカワトンボはあちこちで見かける割には,産卵している姿を見ることが少ないように思います.一方ニホンカワトンボ,アオハダトンボ,ハグロトンボなどは,たくさん産卵している姿を,割合に簡単に目にすることができます.普段はあまり考えないのですが,よくよく考えると,同じカワトンボなのにちょっと不思議な感じがします.これはおそらく,潜水産卵を通常の産卵モードにしているためだと思われます.今までの数少ない観察で,ミヤマカワトンボはすべて潜水しましたし,潜水した後,水面から見えないような位置に入り込み,隠れてしまうのです.ですから,潜水するところを見ない限り,見つけることが非常に困難になってしまいます.

▲交尾後,産卵行動に入るやいなや,頭から潜ってしまったミヤマカワトンボのメス.
▲潜ってしまうと,水面の波もあって,非常に見にくくなる(これは見やすいのを選んだ).

今日は現地には11:00少し前に入りました.ミヤマカワトンボは,オスもメスも流れに止まって,時々飛んでは小昆虫をつかまえて摂食活動をしています.よく観察してみると,オスとメスはランダムに止まっているのではないようです.オスはきちんと縄張りを持っているようで,他のオスに対する排他行動が見られます.そしてその縄張りの中や周囲にメスが止まっています.オスがホバリングしながら近づいても交尾拒否姿勢をとって,交尾は許しません.でも,メスは,オスから逃げることなく,時々オスの周囲を飛んだりして,むしろ気を引くようなそぶりを見せます.オスは反応してホバリングして近づきますが,やはり交尾はできません.

▲写真のようにオスのそばにメスが止まっていることが多い.
▲縄張りオス.時々翅を開く.
▲オスの縄張りの中の小石に止まっているメス.

アオハダトンボの観察でも感じたことですが,ある時間が来ると突然メスに産卵衝動が起きるように見えます.じっさい,近くに止まって,オスがしきりに気にしているメスの1頭が,突然交尾を許しました.それまで,オスのモーションには肩すかしを続けていたメスがです.

▲ミヤマカワトンボの移精行動.タンデムになったらまずは移精行動を行う.
▲交尾.
▲オスが離れたた後のメス.腹部先端をこすりつける動作をよく見かける.
▲そして潜水産卵を行う.

このメスはこのあと,すぐに潜水産卵に入りました.きょうはこの1組だけが交尾・産卵に至りました.他のカップル?は,結局メスが交尾を許すことなく,終わってしまいました.今度は水中カメラを持っていきたいと思います.

さて,この川には,まだニホンカワトンボが生き残っていました.もう老熟してボロボロな感じです.このあたりはかつて,ニホンカワトンボ(オオカワトンボ)の5つの型がすべて見られることで有名でした.今日の観察でもその片鱗,無色翅型オスがいました.

▲ニホンカワトンボ,橙色翅型オス.f.nawai
▲ニホンカワトンボ,淡橙色型メス.f.nawai
▲ニホンカワトンボ,無色翅型オス.

あと,アオハダトンボが1頭だけ止まっていました.近くに生息場所があるのでしょうか.

▲アオハダトンボのオス.これ1頭だけが見られた.

普通種でもなかなか手強いミヤマカワトンボでした.もう一度チャレンジしたい感じです.アップロードしたミヤマカワトンボのビデオにリンクしておきます.