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今日は朝から雲が出ていて,あまりパッとしない天気でした.そこで家でいろいろなことをしていますと,だんだんと日差しが出てきました.空には薄雲がかかっており,太陽の力も弱く感じられますが,気温も上昇し,地面には影ができるくらいになっていました.こうなると,もうじっとしていられません.近くの定点観察池に,成虫越冬種,特にオツネントンボの活動を見に行くことにしました.
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この池は,3月の下旬に訪れたときには,大きく水を落としていました.先日のぞいたときにかなり水位が回復していたので,成虫越冬種なら来ている可能性があるということで,ここを選びました.昨年は何も見つけることができなかったのですが,例年であればどれかの成虫越冬種が見られます.池にはカンガレイやヨシの枯れた茎や葉が浮かんでいて,オツネントンボやホソミイトトンボに好適な産卵基質を提供しています.ヨシはまだ水面から10cmほど芽を伸ばしているだけでした.池に降りると,トンボが飛ぶ影が見えました.何か来ている,と,辺りを見回しますと,ホソミイトトンボが止まっていました.さらにすぐ横に,ホソミイトトンボの交尾ペアがいました.
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これは産卵しているペアもいるかも知れないと思い,池の周囲を歩いて探しました.ホソミイトトンボは池の一角にほとんど集中して集まっていました.と,足下をタンデムペアが飛びました.慎重に追いかけて,産卵を観察しました.
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最近動体視力が落ちてきたのか,飛び立ったペアがさざ波立つ水面を飛ぶと,まず間違いなく見失ってしまいます.上の写真ではっきりしましたが,上から見ると本当に見にくくなります.しばらくじっとしていると,産卵しているペアが2組いることが分かりました.
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ホソミイトトンボのようなオスが直立に近い姿勢をとることを,歩哨姿勢というそうです.まわりの敵を警戒して被食を避ける効果があるそうです.さらに,この姿勢は,他の産卵ペアを誘引する効果もあって,上の写真のようにかたまってグループ産卵することが多いようです.確かに観察していると,ペアが偶然で会うと,絡むように飛んで同じ場所で産卵しようとする行動が見られます.
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ホソミイトトンボを観察していると,オツネントンボとホソミオツネントンボが飛んでいるのを見つけました.どちらも来ているのですね.今日のねらいはオツネントンボですので,ホソミイトトンボにはこの辺でお別れし,オツネントンボを探しに,また池の周囲を歩いてみました.そうすると,ホソミオツネントンボの産卵に出会いました.
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ホソミオツネントンボは,通常,池に浮かぶ枯れ茎などには産卵せず,植物体の水面より高い位置に産卵をします.特に岸から水面に被さるように伸びる葉や茎が好きです.この池にはそういった環境があまりないので,毎年ホソミオツネントンボはいても数が少ないのです.ましてや産卵はなかなか見られませんでした.今日は写真のようなところで産卵していました.しかし長続きせず,別の場所を探すように飛び去ってしまいました.
結局これ以外は何も見つからなかったので,また元の場所に戻りました.すると,少し向こうにオツネントンボが単独で産卵しているのを見つけました.
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成虫越冬三種がともに同じ池で同じ日に産卵しているのを目撃することは,めったにありません.いてもそのうちの2種であることが多いのです.特にこの池は,水面上で産卵するホソミイトトンボとオツネントンボはよく見かけるのですが,ホソミオツネントンボは,今までオスが単独で飛んでいるといった程度でした.
このオツネントンボ,アメンボか何かに驚いたのか,飛んで,岸近くの枯れ茎に止まりました.
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すると,それを見ていたホソミオツネントンボのオスが,このメスに飛びかかりタンデムになろうと試みました.オツネントンボのメスは,翅を大きく広げて,タンデムを拒否しました.
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その後,このオツネントンボは姿が消えました.ひょっとしたら,下の写真のオスに見つかって連れ去られたのかも知れません.ホソミイトトンボはとっくに産卵を止めているようですし,今日はこの辺で終わることにしました.トンボシーズンは,やはり春に成虫越冬種の活動を見て始まるのが,一番すっきりとしますね.
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あと1週間ほどして,水生植物が芽吹いてきたら,もっとたくさんの成虫越冬種が集まってくるかも知れません.いやまったく家から近い観察地は楽でいいです.次はビデオを回します.