トンボノート
No.667. トンボの生き残り調査(6) キトンボ産卵.2019.1.4.


▲産卵するキトンボ.1月4日産卵は自己記録更新.

今日は一日快晴の予報.安定した冬型の天気で,高気圧が張り出してきており,気温も上がりそう,ということで,元旦に続いて,キトンボを見に行ってきました.10:45に現地到着.まだ風がちょっと冷たく,トンボの姿はありません.消えたか? と思いながら,これで今年は終われるかな,などと,ちょっとほっとした気持ちも混じって,池の畔に座っていました.しばらく待ってもトンボが飛ばないので,もう一度水際を歩いてみますと,キトンボのオスが見つかりました.

▲11:00,オスが姿を現した.空気も暖かく感じられ,トンボも同じ感覚なのだろうか.

一つ見つかりましたので,また次回の観察ありだな,などと独り言をつぶやきながら歩いていますと,またオスの姿が見られました.11時ころに降りてくるんですね.体感温度でなんとなく出てくるタイミングが分かります.こうなると全部で何頭いるかが気になります.しばらくうろうろしてトンボを飛ばせると,少なくとも3頭のオスが出ていることが分かりました.写真でも,翅の破れで区別が付きます.上の写真のオスは,後翅の後縁に破れが見られませんが,以下の2枚は異なる場所に小さな欠けがあります.

▲左後翅の黒矢印の部分に欠けが見られるオス.
▲左後翅には破れがなく右後翅後縁に2カ所欠け(黒矢印)があるオス.

気温が上がってきたようで,ダウンジャケットが厚く感じられるようになってきました.毎年同じことを書いているんですが,ダウンジャケットやコートを着てトンボ観察というのが,なんか本当にミスマッチという感じがします.座っていると,池の中程をトンボが飛んでいます.水は冷たいのに,1回打水しました.メスでしょうか.写真の感じではそう見えます.

▲池の中央付近を飛ぶキトンボ.腹端に水滴が付いているみたいに見える.メスだろうか?

池岸のオスたちは,水際に止まってメスを待つような行動を取り始めています.そうこうしているうちに,タンデムのキトンボが入ってきました.産卵です.1月4日の産卵.自己記録更新です.公式記録1月7日まであと3日.今年は新記録を出せるかもしれません.時刻は11:30です.

▲水際に沿って移動しながら産卵をしていたタンデム.
▲打水の瞬間.副端部が水面を引き上げている.
▲打水の後の打泥.例によって,腹部を打ちつけて卵塊を飛ばしている.
▲合成写真(二重露出).連写機能と画像処理ソフトで,連続2コマの動きを重ねてみました.

この産卵ペアは2分ほどで飛び去ってしまいました.飛び去るといっても産卵を止めたわけではなく,池の中央部から対岸の方に飛んでいきました.私がカメラを向けたり近づいたりしたのが気に入らなかったようです.でも,また戻ってくる可能性は十分ですので,待つことにしました.11:41,戻ってきました.今度は,コンクリート張りの護岸に向かって産卵をしていました.水が落とされてなかったら近づけない位置でした.長靴ギリギリまで水に入って,記録を撮りました.

▲打水した直後.このあと,護岸の石に腹端を打ちつける.
▲打ちつける瞬間はピンボケでした.翅の破れから,先の産卵ペアと同一であることが分かる.
▲こんな産卵を見ていると,キトンボはどこでも生きていけるような感じがする.
▲止まっていたオスが産卵ペアを見つけ追いかけた.

止まっていたオスがこの産卵ペアにちょっかいをかけ,追いかけていました.まだまだ最盛期のような繁殖活動が行われていますね.やがてこの産卵も2分ほどで終わり,今度はメスが離れて,樹林の方へ帰って行きました.いちおう12:05まで次の産卵を待ち,何もなかったので,今日はこれで観察を終えました.

ところで,今日のメスは,1日のメスと同じ個体かどうかが気になりましたので.帰ってから写真を検討してみました.メスは大きく翅の破れがありましたので,それを目当てに1日の写真を見直してみました.

▲1月1日の単独産卵のメス.3カ所に顕著な翅の破れが見られる.
▲1月4日,今日のメス.同じ形の破れが見られる.同じ個体だ.

それぞれ,同じ色矢印をつけたところの破れの形がほぼ同じになっています.体色の黒っぽさも同様です.1日の単独産卵していたメスであることが判明しました.この寒さの中でも,中2日で,次の産卵が可能になっていることが分かりました.ということは,同じような安定した毎日が続けば,次は7日が狙い目です.明日はちょっと天気が崩れそうなので,8日かも.これが的中すれば,記録更新です.今日はここまで.