続 トンボ歳時記
No.588. ミヤマカワトンボの産卵観察.2018.5.20. Part-2.

さて,アオハダトンボなどの予備調査が終わったので,先日ダビドサナエの産卵を見に行った場所で,今度はミヤマカワトンボの産卵を見ようと,立ち寄りました.川では,相変わらずオスどうしが往ったり来たり,追飛行動を行っています.

▲相変わらずオス同士の追飛行動は,往ったり来たり,延々と続いている.

産卵観察には,産卵意欲のあるメスに出会う必要があります.メスはいても,産卵意欲がないメスは,まったくオスを相手にしません.下のメスは産卵意欲のないメスです.カワトンボのなかまはオスメスがいっしょに生活していますから,産卵意欲があるかどうか,オスが知る何らかの信号があると思うのですが,よく分かりません.

▲メスのミヤマカワトンボ.産卵意欲のないメスではどうしようもない.

さて,今日は幸い,オスと一緒に並んで止まっているメスを見つけました.オスは腹部先端を上に曲げ,腹面の白い部分を目立たせ,メスを刺激しています.メスはそのまわりを飛び回ります.ただ,このペアは,私が見つけたときには,多分交尾は終わっていたのだと思います.

▲産卵意欲のあるメスを見つけたオスは,腹部先端を上げてメスを刺激する.メスは水面近くを飛び回る.

オスが飛び回るメスを追いかけます.岸近くまで追い詰めたとき,メスが流れに垂れ下がっている植物に止まり,産卵を始めました.ミヤマカワトンボは通常朽木に産卵しますが,これはなんとまあ柔らかい,細い草であることよ.しかも頭を沈めて潜水しようとしているのか?

▲岸の方にメスを追い詰めていったオス.

▲メスは止まり,この細い草の葉に産卵を始めた.ときどきこのように翅を開く.

▲頭を水に浸けて,潜ろうとでもしているのだろうか.

さすがにここは気にくわないのか,すぐに産卵をやめて,川の中央の石の上に止まりました.腹部が濡れたせいでしょうか,ペタッとへばりつくような止まり方です.オスは少し向こうの石の上に,メスと同じ方向に向いて止まりました.メスに背を向けてはいますが,メスの気配を伺っているようすはありありです(と私が感じています).

▲腹部を石にペタンとつけるようにして止まるメス.

▲オスは少し前方の石の上に止まってメスの様子をうかがう.

またメスが飛び立ちますと,オスが追飛します.今度はメスは石に産卵!?しようとするような姿勢を取りました.オスはそれを確かめてすぐ上に止まりました.

▲石に産卵!? まさかね.多分格好だけです.

でも,これは長続きしません.メスはすぐに移動し,流木に産卵を始めました.オスは少し離れた横側で警護というか監視しています.

▲流木に産卵するメス.やっとミヤマカワトンボの産卵らしいスタイルを見ることができた.

▲産卵しているメスを警護するオス.左下の方に止まっている.

メスはまた飛び立ちました.産卵基質が気に入らないのか,私の撮影が気に入らないのか,ちょっと落ち着きがありません.そして,小さな木の枝に産卵をしました.

▲メスが飛ぶたびに追いかけていくオス.警護って大変だ.ほかのオスに取られちゃ元も子もないからね.

▲今度はなんとまたか細い枝に産卵するのだろうか.このメス止まるものをもうちょっと選んだらいいのに.

しかしこれも長続きせず,かなり向こうの方へ一気に飛んでいきました.どうやら,私の撮影が気に入らないようです.陰に入るとストロボを炊いたりしますから.でも,私も今日のねらいがこれですから,譲るわけにはいきません.執拗に追いかけていきます.少し離れた流れの中程の流木に止まったのが見えました.そしてすぐに体を水の中に沈めていきます.潜水産卵を始めたようです.

▲潜り始めた産卵メス.これを今日は待っていたのだ.

▲翅以外は水中に没した.通常はこれからが長いのだが,すぐやめてしまった.

潜水したら落ち着いて産卵を続けるだろうと高をくくっていましたが,すぐにやめて,反対側の岸の上に止まってしまいました.私が殺気だっていたのでしょうか.

▲しばらく対岸に止まっていたメス.このあと一度産卵行動を取ったが,すぐにやめて飛び去った.

このあと,もう一度産卵をしようとしましたが,私が,キッと動いたのを見て産卵をやめ,意を決したように,私が追いかける意欲を失うほどに,上流の方へ飛び去っていきました.今日はここまでです.あといくら探しても,産卵意欲のあるメスは見つかりませんでした.

まあ,落ち着いた観察はできませんでしたが,いろいろと場所を変えてくれたおかげで,写真はいろいろな場所で撮れて,むしろよかったかもしれません.