トンボ観察記
No.540. オオキトンボの観察.2016.10.2., 6.

10月2日,6日と,オオキトンボの観察に出かけました.オオキトンボは結構早くから池に出てきています.早い時期のオオキトンボはまだ黄色みが薄く,どちらかといえば黄緑がかっています.遅い時期のオオキトンボが赤茶色になるのとは対照的です.まず2日,池をのぞいてみますと,もうオオキトンボがやってきていました.

1002-001▲コンクリート護岸の池に止まるオオキトンボのオス.

ここはヒシがびっしりと生えたコンクリート護岸の池なのですが,その護岸壁の水際に産卵をしていました.オオキトンボといえば,水落をした池の水際に産卵するというのが典型的なのですが,こんな産卵をやられると,この絶滅危惧種何を考えているのだろうと思ってしまいます.

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1002-003▲コンクリート護岸の水際に「打泥?or打石?」産卵するペア.

しばらくすると,交尾態になったペアが,池の護岸堤の上に飛び上がってきました.産卵に来たメスを捕まえたのでしょうね.写真を撮ってみると,まだ胸側部や腹部に白っぽい色が残る,やっと成熟したばかりのようなメスでした.まだオオキトンボとしては時期が少し早いのでしょうね.

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1002-005▲交尾.メスの胸側部がまだ白っぽく,成熟したばかりのような個体である.

場所を変えて,いつも観察している池に行きました.こちらは,最近の雨のせいか満水状態.曇っても来ましたので条件が悪く,簡単でしたが引き上げることにしました.

続いて,6日.昨日通り過ぎた台風一過でしょうか,よく晴れていました.この日は遠方から来客があって,オオキトンボについてお話をしながら観察に出かけました.先日の池に行きましたところ,やはり池にはオオキトンボが出ていて,オスだけで10頭ほどがいたように思えます.

1006-003▲2日と同じように池に出ているオス.

この日もやはり,コンクリート護岸壁に産卵をしていました.今回は単独産卵をオスが警護するという形でした.

1006-004▲コンクリート護岸の水際で打水産卵する単独メス.

オオキトンボは絶滅危惧種ですから,それなりに環境選択がシビアなのかと考えがちですが,実際は,この池のように,水の濁った,ヒシがいっぱい生えた,コンクリート護岸の池にやってきて毎年のように産卵しているのですから,何がこのトンボを減らしているのか,本当にわかりません.今日もこの池では,絶滅危惧種,それもランクの最も高いT類のトンボ「だけ」が飛んでいたのです.本当に不思議なくらいほかのアカトンボ,ナツアカネ,アキアカネ,マユタテアカネ,コノシメトンボなどはまったく姿がありません.これをどう解釈すればよいのでしょうか.いや,「だけ」はウソで,キトンボがいましたね.こちらは産卵もやっていました.

1006-013▲オオキトンボ以外の唯一のアカネ類,キトンボの交尾.

さて,今日は先日満水だった池にも出かけてみました.ここにもオオキトンボがいました.オスがホバリングしており,交尾態が飛びあがっても来ました.そしてそのあと産卵です.最初は連結産卵.

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1006-009▲満水なので,植物が生えている水際での打水産卵.

個体数が少ないせいでしょうか,この連結産卵のペアは,やがて離れ離れになって,オスが飛びながら警護する単独産卵に変わりました.

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1006-012▲珍しく警護飛翔をともなう単独産卵.

来客はナニワトンボも見たいとおっしゃるので案内すると,そこにもオオキトンボがいました.まだ若くて,黄緑色の感じが残る個体です.この色彩のオオキトンボが私は好きです.老熟した赤茶色も渋いんですけどね.

1006-002▲黄緑味が残るオオキトンボの若いオス.

6日は,一日中池を回って,オオキトンボを17頭ほど見ましたが,それ以外のアカトンボは,ナニワトンボ2頭,リスアカネとマユタテアカネ数頭,キトンボ3頭だけでした.本当にアカトンボはどこへ消えたのでしょう.晴れた秋の日,田園地帯を回ってもたったこれだけの成果です.オオキトンボだけが目立つ世界!!??