新 トンボ歳時記
No.425. アオハダトンボの観察 2013.6.30.

今日はお昼前後に暇があったので,アオサナエをねらいに,三田の方まで出かけてきました.アオサナエは全く姿を現しませんでしたが,アオハダトンボが今年はたくさん飛んでいました.以前浚渫してツルヨシがほとんどなくなってしまったところがほぼ完全に復活していて(写真下),アオハダトンボの繁殖環境に適した状態になったのでしょうね.

0630-001

現地に着いたのはだいたい11:30ころでした.空は時々日が射しますが,だいたいは曇基調でした.川に入ると,ヨシの間からアオハダトンボが一斉に舞い上がりました.まあこの場所にアオハダトンボがいることは,いわば周知の事実ですので,あまり気にもしませんでした.

0630-002

それより,グンバイトンボも時期なので,その産卵を探しました.オスはヨシの間を飛び回っていますので,時刻から見ても,多分産卵している個体はいるものと思われました.ヨシの間をていねいに覗いてみると,夏のサナエトンボの羽化殻が見つかりました.コオニヤンマにオナガサナエ.特にオナガサナエは羽化殻の数が多かったです.コオニヤンマはもう成熟した成虫も飛んでいて,アオハダトンボをしきりに追いかけていました.そうです.アオハダトンボも老熟してくると,コオニヤンマの餌食になっていき,そして姿を消していきます.と,そんなことを考えていると,ヨシの隙間からオジロサナエの羽化個体が飛び立ちました.本当に季節は夏に移りつつありますね.

0630-003

さて,少し川を歩くと,グンバイトンボたちが産卵をしていました.産卵する場所に好みがあるのか,狭い場所に数ペアが集まっていました.グンバイトンボのオスは,水面ぎりぎりのところで,水面に対して垂直に立ち上がって産卵をしますので,オス・メスにピントを合わせるには,カメラを水面ぎりぎりのところに置いて撮影しなければなりません.腕も肘も,服の袖も濡れます.カメラの下に手を入れて,小指を立てて,小指を水面の位置を計るセンサーにして,カメラの水没を防ぎながらの撮影です.腰にも負担がかかり,息も止めていますので,長く続きません.

0630-004

グンバイトンボもそこそこに,そもそもの目的はアオサナエですので,その姿を探して川の中を歩きました.しかしアオサナエは全く姿がありません.アオハダトンボばかりがやたら目立ちます.ひとしきり歩いた後,これだけアオハダトンボがいるのだから,今日はこれをチャンスと考えて,アオハダトンボの観察をすることにしました.12時を過ぎたころから空も晴れ基調に変わってきて,結構日が射すようになってきました.そして,そのころからアオハダトンボの繁殖活動も活発になってきたようでした.産卵メスの数が増え始めたのです.

0630-005

アオハダトンボの産卵は,カワトンボ科の普通の産卵ですから,あまり面白くありません.ただ,今日は水が澄んでいて,清流に暮らすアオハダトンボのイメージは出ました.太陽が射すと特に水が輝いて,その感じが強く出ます.でもアオハダトンボで面白いのはオスの行動です.今日はオスに焦点を絞って観察記録を取ることにしました.オスは,メスを求めて,また交尾メスを警護するために,そしてオスどうしがなわばり争いをするために,しょっちゅう飛び回ります.最初はこれを狙うことにしました.

0630-006

メスを追いかけたり警護したりするときの飛び方は,ホバリングを多く交えた緩やかな飛び方なのですが,オスどうしの闘争の場合は非常にすばしこく飛びますので,なかなか写真になりません.下の写真は,唯一一方のオスにピントがあったものです.向こう側に,このオスと対峙しているもう1頭のオスが見えます.

0630-007

さて,時間が経ってきますと,良いなわばり(産卵しやすい場所があるなわばり)を持つオスは,次々と交尾をして,メスを見守ります.多いときは7,8頭のめすを「囲っている」オスもいます.

0630-008

オスは,メスが飛び立つと,執拗に追いかけて,なわばりに止めようとします.また隣のなわばりオスが,飛び立ったメスに求愛をしようと,さまざまなモーションを仕掛けます.ですから,産卵しているメスのまわりには,しょっちゅうオスが近づいて飛び回ります.オスは近づいてメスに向かうときには,翅を正面に向くように開いて,体を大きく見せようとする姿勢を取ります.下の写真で確かめてください.

0630-009

メスが他のオスのなわばりから飛び出してきたり,産卵意欲を持ってオスのそばに入ってきたりしたときには,オスは,腹部先端を大きく上に反らして,腹部末端腹面の白いスポットを誇示し,メスの気を惹きます.

0630-010

メスがなかなかなびいてくれないのでしょうか?,そんな時,オスは究極のディスプレイ,「浮かんで流れる」を披露します.実はこれを以前から写真に収めたかったのですが,一瞬のことですのでピントが間に合わず今まで記録ができませんでした.今日は,上のオスの飛んでいる写真もそうですが,アオハダトンボにはオートフォーカスがよく効くことに気づいて,これで攻めた結果,何枚かピントが来た写真が撮れました.もっとも,今日は数が多いこともあって,何度も何度もこのディスプレイをやってくれたことも幸いしました.

0630-011

このディスプレイをするときには,後翅をやや水平になるように開き,水面に当てて浮かびます.腹部先端は上に反らせて,白いスポットを目立たせます.そして今日この写真を撮って初めて気づいたことですが,オスは肢を開いて水面に突き立てるような姿勢を取っています.

0630-012

メスを刺激し,メスがこれに応じると,だいたいメスは少し高いところへ止まります.オスは,背後からそっと近寄って,偽縁紋に着地し,するすると翅の前縁にそって下降し(上の写真),胸から頭部のところまで来ると,タンデムを形成しようとします.今日はこの一連のシーンも何組か観察できました.

0630-013

0630-014

ということで,今日は,アオハダトンボオスの行動記録を中心に取材し,お昼のひとときを過ごしました.コヤマトンボが足元を何度も飛び回り,だいぶんシャッターを切りましたが,広い川ではコースが定まらず,きょうは写真はダメでした.アオハダトンボはまだまだ産卵を続け,オスもメスを獲得しようと頑張っていましたが,私用のため,14:00で打ち切りました.でもまあ,なかなか充実した3時間でした.