新 トンボ歳時記
No.356. サラサヤンマの観察 2012.5.24-(2).

今日の本命調査は,サラサヤンマの観察です.サラサヤンマはオスは結構あちこちで飛んでいるのを見ることができますが,産卵の写真を撮るのは結構骨が折れます.今日は過去の成功体験を思い出して,以前に一度産卵を見たことのある生息地にやってきました.

現地に入ったのは11:00ころでした.オスはすでに湿地というより草地の上でなわばりを形成して飛んでいます.サラサヤンマのなわばりは,草地の上などを少し広い範囲(5m内外)で行ったり来たりしながら,バリングを交えてパトロールするタイプのものと,湿地の中にある水のない小規模な(1,2m前後)くぼみのすぐ上を行ったり来たりして,時々静止したりしながらパトロールするタイプのものがあります.今日は,日向や木漏れ日の射す木陰で,少し高い位置を5mくらいの範囲を飛ぶタイプのなわばりオスが多く見られました.

ここは草が多いせいか,ほとんどが前者のパターンのなわばりでしたが,1箇所だけ日陰になって土も湿っているような場所があって,ここに1頭のオスがなわばりを形成していました.地面すれすれのところを右へ左へ向きを変えて飛んで,なわばりをパトロールしていました.もちろん時々止まります.

こういうなわばりを形成しているオスの写真は撮りやすく,素人向けです.動きが小さくホバリングも多いからです.観察していると,人間を怖いとも思わないのか,長靴に静止することもありました.さらにそれだけにとどまらず,カメラのレンズの縁にまで止まる始末です.これにはまいりました.

さらに,草がまばらに生えて土が多く見えている場所を占有するオスもいました.特にくぼ地になっているわけではありませんが,多分メスが土の見えるところを好むというオスの直感があるのでしょうね.

さて,今日の本命は産卵メスの観察です.12:00を過ぎた当たりから,メスの姿を見るようになりました.しかしながら,メスは次々とオスにさらわれていきます.オスが要所要所に陣取っていますので,なかなか産卵を間近に見ることができません.メスが入ったと思ったら,オスにさらわれて,高い梢で交尾をします.

15:00過ぎまでに,5頭のメスがさらわれ,目の前で産卵をしたのはわずか2頭でした.1頭目は近づく前に保険として遠くから撮影するために焚いたストロボ1発で飛んで逃げてしまい,近寄ることすらできませんでした.2頭目は,またストロボで逃げると思ったので,1枚だけでよいから良いアングルの写真を撮ろうと慎重に近づいていったときに逃げられ,シャッターも切れない状態でした.時刻も15:30になり,もう諦めようかと思いましたが,オスにさらわれたメスは産卵意欲があるはずだから,必ずオスがいなくなったころにやってくる,との信念で夕刻まで待つことにしました.するとどうでしょう.予想は的中し,16:00を過ぎたあたりから,メスが少し頻繁に入ってくるようになりました.

ここのサラサヤンマは人を恐れないのか,メスもしきりに私の足元に近寄ってきて,長靴に止まるや,産卵を始めました.以前ミルンヤンマでもそういったことがありましたが,まあ,長靴に何か産卵を誘引する要素でもあるのでしょうかね.

メスはできるだけオスのいないところを選んで産卵しているようでしたが,オスもそう簡単には引き下がりません.目ざとくメスを見つけて,たたき落とし上に乗って強引にタンデムを形成します.

こちらもサラサのオスと競争でメスを確保して写真を撮ります.オスとメスの間に割り込むようにしてオスの目につかないようにしながら,メスをオスのいない方に追いやりながらの撮影です.16:30を過ぎて,最後に入った2頭のメスが,結構パフォーマンスをしてくれて,なんとかサラサヤンマの産卵の写真を撮ることができました.

最後におまけ付きで,サラサヤンマが生きた植物の葉に産卵「しよう」とするシーンを見ることができました.

ということで,今日は,最後の最後に何とか目的を達成することができました.めでたしめでたし.