新 トンボ歳時記
No.348. 兵庫県北部へ 2012.5.5.

今日は早朝から兵庫県北部へ出かけてきました.今年はあまり出る機会がないと考えているので,確実に晴れるときしか遠出しないことにしています.予報では昼から曇ってくるとのことで,晴れている間にと思い,朝駆けしました.ねらいはコサナエです.まずは昨年コサナエの幼虫を採ったところへ出かけました.

第一の観察地

8:30くらいに到着し,丹念に水際を見て回りましたが,コサナエの羽化殻や羽化中の個体は見つけることができませんでした.周辺も探してみましたが,シオカラトンボが羽化していたり,ハラビロトンボの未熟な個体などが見られただけでした.コサナエはまだ水の中にいるのかもしれないと思い,幼虫をすくって見ましたけれど,全く網には入りませんでした.でも思わぬものが網に転がり込みました.久しぶりのネアカヨシヤンマです.まだF-1齢幼虫です.

残念ながらコサナエの姿がなかったので,次の場所に移動することにしました.この地を離れるときにウスバキトンボの摂食飛翔を見ました.今年の初見ですね.

次の観察地は,昨年オオイトトンボを観察した公園です.ここには無数のシオヤトンボが飛んでいました.昨年夏に訪れたときには,シオカラトンボとオオシオカラトンボが無数にいました.シオカラトンボ属3種が数多く生息する場所だということが分かりました.これらは極めて普通種ではありますが,個体数が多いということは,何にもまして現在では貴重です.本当にトンボがあふれるほどいる場所が無くなっているからです.

すぐ横の細流には,ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボが混じって飛んでいました.面白かったのは,アサヒナカワトンボの透明翅型オスが,ニホンカワトンボの橙色翅型オスを追尾して飛び回っていたことです.同種の場合,一般的には橙色翅型の方がなわばりを持って強いといわれています.これは異種だからなのでしょうか,どうも兵庫県の透明翅型アサヒナカワトンボは,なわばりを持つ意識が強いように感じます.

さて,普通種に気を取られていましたが,本命のコサナエ探しに行くことにしました.行く途中,あちこちでシオヤトンボが産卵しているので,どうしても立ち止まってカメラを向けてしまいます.シオヤトンボも,オオシオカラトンボと同じように,腹端で水をかき,水滴を前方に飛ばして産卵する,飛水産卵を行っています.

シオヤトンボの産卵もそこそこに,コサナエのいそうな池に向かいました.すると,突然コサナエ属の三連結が道を横切りました.三連結はよく写真に撮られているのですが,私がカメラを持っているときに目の前に現れたのは初めてです.いやラッキーでした.

幸先のよいコサナエとの出会いで,ここにコサナエがいることを確信しました.少し歩くと,未熟なメスが道路横の木の葉の上に止まっていました.帰り道にはオスも止まっていましたので,まずは合わせてここに掲げておきます.

目的の池につくやいなや,コサナエが飛び回っています.またオスがメスをたたき落としてつかまえて交尾態で飛び去るのも見ました.ということで,腰を落ち着けてコサナエの繁殖活動を観察することにしました.オスは止まってメスを待つというよりは,頻繁に飛び立ち,岸辺に沿ってホバリングをしてパトロールしています.突然メスが入ってくると,オスは目ざとく見つけて,交尾態となって飛び去ります.交尾態になったペアは,一気に樹上へ上がってしまいます.

メスも次々に産卵に入ってきて,停止飛翔産卵をしています.ほとんど腹部を動かすことなく,水面上15〜30cmくらいのところでじっとホバリングしています.とにかくオスが多いのですぐに交尾態になって連れ去られてしまいます.たくさん産卵を見た割には,写真が少ないことに帰ってから気づきました(笑).

11:30ころになると産卵も一段落したようです.もっとここにいたい気もしましたが,今日は欲張ってもう一箇所,ヒラサナエを見たいと考えており,一息ついたところで移動することにしました.

午後から曇ると言っていたとおり,少しずつ雲が空に浮かび始めました.この3年ほど,ヒラサナエを見に来るときはいつも曇り空なので,何とか,かっと晴れているときに未熟な成虫の写真を撮りたいと思っていました.

というわけで,ぎりぎり間に合い,緑の葉に止まる黄色がきれいなヒラサナエ未熟個体の写真が撮れました.この後空模様は下り坂になっていきましたので早々に引き揚げ,帰り道では雨に遭いました.まあ実質5時間足らずの駆け足観察でしたが,今日は成果があった一日といえました.