トンボ歳時記
No.162. 兵庫県西部の川のトンボ調査(3). 2010.5.30.

さて,最後はアオハダトンボの繁殖活動です.昨年は東の方へ3度もアオハダトンボを観察に行きましたが,いずれも曇りの日で,パッとしませんでした.シャッター速度が遅くなるので,うまく撮れないということもあります.でも,今日はがんがんの快晴.天気的には言うことなしです.

ファイル 162-1.jpg
▲アオハダトンボのオス.

アオハダトンボのオスの,藍金色に輝く翅は,曇の日ではうまく捉えることができません.でも今日は晴れ,いい感じです.実を言うと,アオハダトンボを晴れの日に撮影するのは,20年ぶりくらいなのです.

ファイル 162-2.jpg
▲アオハダトンボのメス.
 下左:交尾しようとしても葉に引っかかってできないちょっと鈍くさいペア.

メスたちもきれいに成熟し,すぐにでも発情しそうな感じです.

川に入って歩いていると,ほどなく,産卵しているメスとそれを見守るオスに出会いました.

ファイル 162-3.jpg
▲産卵しているメスと,それを見守るオス.
 上:産卵しているのにさらに腹部先端の白色部を見せて刺激しているオス.
 中左:ときどき翅を開いて産卵する.中右:産卵を見守るオス.
 下:無心に産卵するメス.潜水産卵には至らなかった.

さらに探すと,メスを盛んに刺激しているオスを見つけました.これを以前から写真に撮りたかったので,これは真剣にねらいました.

ファイル 162-4.jpg
▲メスを刺激するオスの行動.
 (1) 少し離れたところからメスに見えるように腹部先端を反らし白色部を見せる.
 (2)(3) ゆっくりと後からメスに近づいていくオス.
 (4) 頃合いを見計らって一気にメスに向かって飛ぶオス.
   −メスは腹部を立てて拒否姿勢,これは失敗に終わった...
 (5) 逃げたメスの近くで,ふたたび腹部先端を反らすオス.
 (6) 腹部先端の白色部.
 (7) 一気に飛んで近づくが,またもメスに逃げられた.

オスが水に浮かんで流れるというディスプレイはこのペアでは見られませんでした.ちょっと残念でしたが,しきりにメスを追いかけ,交尾をしようとするオスの行動はたっぷりと観察できました.上へ上へ逃げていったメスですが,いよいよメスもその気になったようです.

ファイル 162-5.jpg
▲メスを捕まえて交尾,産卵に至る.
 (8) メスの斜め後方から白い偽縁紋めがけて飛びかかるオス.
 (9) まずは偽縁紋に着地.
 (10) 続いて前に移動して,メスの前胸部を尾部付属器ではさむ.
 (11) タンデムになったカップル.
 (12) メスを前に引き寄せ,移精行動に移る.
 (13) オスの移精行動.
 (14) 交尾.交尾は数分間で終わる.
 (15) 少し休んだ後メスは単独で産卵を始め,オスはそれを見守る.
 (16) 産卵を続けるメス.

今日はとても充実した一日でした.でも写真の整理に疲れました.