トンボ歳時記
No.116. キトンボの観察. 2009.10.11.

今日は朝起きたら雲一つない快晴.予定通り兵庫県西部へキトンボを観察に行きました.昔数多くいた池はかなり状況が変わっているので,少し早く出かけて,様子を見ることにしました.9:00過ぎに現地入りし,池を一周したのですが,アオイトトンボとアジアイトトンボ,そしてキトンボが1頭だけいました.他のアカトンボは皆無,あとはウスバキトンボが飛ぶだけでした.

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▲第一候補の池にいた,ただ1頭のキトンボ.

キトンボは,時間が経って暖かくなってくるとどこからともなく現れてくるので,1頭いるということは望みがないわけではありませんが,あまりにも寂しいので,プランBを実行することにしました.時刻は9:50,次の場所へ行くのには少し苦しいところです.とにかく最短コースを通って移動しました.


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▲上:池の風景,満水で岸辺にキトンボが「普通に」産卵できるところがない.
 下:池の真ん中で打水産卵するキトンボたち.

10:30頃に到着した第二候補の池は満水でした.キトンボが産卵するような環境は水の下になっています.第三候補はないので,ここで頑張ることにしました.少しするとネキトンボ数ペアが産卵を始めました.そんなときキトンボのタンデムが通り過ぎたので奥の方に移動し,藪をかき分けて池に入ると,たくさんのキトンボがすでに池を訪れていました.なんと,池の中央付近の水面で打水産卵をしています.

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▲池のど真ん中で打水産卵を続けるキトンボのペアたち.
 逆光で撮ると水面に映るトンボの姿がきれいに写り込む.

キトンボの産卵は,いったん打水して腹部先端の卵塊に水をつけ,続いてそれを垂直な泥面に貼り付けるような二段階形式ですが,ここでは泥面の環境が水没しているので,産卵方法を切り替えているようです.観察している分にはおもしろいのですが,写真は遠くてものになりません.1ペアが,やっと近くで打水産卵をしてくれて,それらしい写真が撮れました.打水の瞬間はものになりませんでした.

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▲やっと近くで打水産卵しに来てくれたキトンボのペア.池面に空が映っている.
 下左:ネキトンボとの異種間交尾.下右:ネキトンボ.

キトンボと混じり合うようにネキトンボもたくさん産卵したりオスがパトロールしたりしています.キトンボのメスが単独で池に入ると,ネキトンボのオスがさっと連結して,上空へ舞い上がり異種間交尾になりました.これは3回くらい見ました.結構普通に起きているようです.

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▲唯一通常?の産卵をしたペア.
 下左:打水した後のメスの腹部先端.卵塊に水滴がついている.

そんな中,池の一番奥の薄暗い所で,1ペアが,普通の産卵をしているのを見つけました.腹部先端を水に浸け,それを石の上に貼り付けています.キトンボのメスは,産卵の時に腹部先端をほぼ直角に上方に曲げ,同時に産卵弁を下方に曲げて,水滴がそのくぼみに付きやすいような独特のスタイルをします.そっと近づき,シャッター切りましたが,シャッター速度を合わし忘れ,低速だったために,ストロボを炊いたにもかかわらず残像のようにぶれが残ってしまいました.突然のことでちょっとあわててしまいました.

今日はたくさんのキトンボに会いましたが,接近遭遇したのは結局この1ペアだけでした.キトンボは一年の最後を締めくくるトンボで,いよいよ今年のトンボ観察も終わりが近づいてきました.あと,タイリクアカネ,カトリヤンマ,コバネアオイトトンボなどとの出会いが残っている程度です.