トンボ歳時記
No.047. トンボの産卵場はオオクチバスの餌場. 2009.5.2/1.

今日は朝から薄曇りでしたが,暖かく穏やかな天気だったので,春のトンボをねらいに小野市の池に行ってきました.到着は7:45am.着いたときにはトラフトンボが3頭ほど水面上を広く飛び交っているだけでした.8時過ぎからぽつぽつとヨツボシトンボが姿を見せ始め,9時頃にはもう,トラフトンボやヨツボシトンボのオスがあちこちで追いかけ合いをするようになりました.

写真を撮り歩いていると,ヨツボシトンボの羽化個体が,あちこちから飛び立ちましたので,用心して足下を探すと,案の定,1頭のメスが,スゲの葉につかまって羽化していました.

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▲スゲの葉につかまって羽化するヨツボシトンボのメス.

まだ幼虫が残っているかもしれないと思い,早速すくってみました.ショウジョウトンボとノシメトンボのようなアカネ類の幼虫ばかりが入りましたが,1頭だけヨツボシトンボの幼虫が採れました.最近神戸市周辺では,ヨツボシトンボの幼虫が確実に採れるところがほとんどないので,持ち帰り,自宅で写真におさめました.

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▲ヨツボシトンボの終齢幼虫.兵庫県小野市産.

そうこうしているうちに,池が騒々しくなってきました.メスの登場です.トラフトンボがメスをゲットし,交尾態で飛び回り始めました.卵塊を作るところの写真を撮りたかったので,メスがいいところでとまることを願いながら,飛ぶ姿を追いかけていました.まあ,うまくいくときは本当にウソのように,交尾を解かれたメスが,草地の足場のよいところに止まり卵塊を作り始めました.

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▲トラフトンボが卵塊を作っているところ.

写真を撮り終えると,また別のトラフトンボが水面近くを交尾態で飛び回っています.今度はビデオで撮影しようと,目で追い続けました.「あっ」という間のことでした.オオクチバスガジャンプ一撃,その交尾態のトラフトンボに飛びつき,メスを口の中に!.オスはかろうじて逃げたようです.それから5分もしないうちにまたトラフトンボの交尾態.「まさか,...」と思いましたが,今度もオオクチバスがジャンプして,2匹とも口の中に!

次はギンヤンマが連結態で産卵に訪れました.産卵しようと水面の植物にとまった瞬間.またもやオオクチバスがメスをパクリ!

静かな池は,産卵に訪れたメスの殺戮の場だったのです.こういった光景は時々見かけはするのですが,わずか15分ほどの間に立て続けにやられたのは始めて見ました.しばらく観察を続けていると,イトトンボの類があちこちでジャンプによって食べられているのが分かりました.

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▲タンデムのイトトンボをジャンプして捕食するオオクチバス(速度×0.56)

こうなったら,「殺トンボ」の現場をビデオに収めるしかない,とプログレッシプビデオの登場です.ビデオを構えてわずが5分でその現場を押さえました.まあ,こんなにかんたんに撮れるくらい,数多くオオクチバスに捕食されているということです.白矢印の先に見えるタンデムになって飛んでいるイトトンボ,おそらくクロイトトンボを,水面から飛び出てわずが15分の1秒で口の中に入れ,その後15分の1秒で口を閉じています.飛び出て水中に戻るまで15分の8秒の出来事です.何度か目を凝らしてみると,イトトンボがバスに気づいて逃げようとするが間に合わず,食べられてしまう瞬間が見えると思います.

外来魚による生態系の破壊,本当に深刻でいやな問題です.今日はわずか半日足らずの間でしたが,こんなことが,毎日毎日あちこちの池で繰り広げられているとすると,ものすごい数のメスが食われていることになります.トンボが減るのも無理ないことのような気がします.ビオトープではたくさん羽化するクロスジギンヤンマを,最近ため池で見かけない原因はこれかな? と感じました.水面で産卵するクロスジギンヤンマなど,オオクチバスに食べてくださいと言っているような感じですね.本当にオオクチバスを池に放さないでくださいと,祈るような気持ちです.

なんだか憂鬱になって,その池を後にし,三田の方に移動することにしました.

記録:ホソミイトトンボ,アジアイトトンボ,クロイトトンボ,トラフトンボ,ヨツボシトンボ,ギンヤンマ,ショウジョウトンボ幼虫,ノシメトンボ幼虫,ヨツボシトンボ幼虫.トラフトンボ羽化殻,ヨツボシトンボ羽化殻.