デジタルトンボ図鑑
アジアイトトンボ Ischnura asiatica Brauer, 1865
アジアイトトンボ
♂.加古郡.2001.6.17.(左),♀,加西市.2007.9.1.(右)./ スケール:1.0cm. 100%, 200% on 150ppi.
<分類学的位置>
 トンボ目 Order Odonata
 イトトンボ科 Family Coenagrionidae
 アオモンイトトンボ属 Genus Ischnura

<分布> 
 北海道,本州,四国,九州,南西諸島,小笠原諸島などに分布する.北海道など北の方では産地は局地化する.海外では,台湾,中国,朝鮮半島,ロシア(シベリアの一部)に分布している.

緑色型♀
未熟♀.加古郡.2001.6.17. / スケール:1.0cm. 100%, 200% on 150ppi.
<特記事項>
 ♂は腹部第9節が水色をしていて,背中側から見たとき腹部第8節が水色であるアオモンイトトンボ Ischnura senegalensis と区別できる.♀は未熟なときは胸側も腹部側面も赤橙色をしており,胸側だけが赤橙色のアオモンイトトンボと割合簡単に区別できるが,成熟が進んだ個体は胸側も腹部側面も緑褐色になって,アオモンイトトンボの成熟が進んだ個体との区別が難しくなる.

 アジアイトトンボとアオモンイトトンボの区別の際,眼後紋の形状の違いを用いる場合がある.この場合,アジアイトトンボ♀の眼後紋は成熟するにしたがって変化するので注意すること(図1参照).杉村他(1999)の絵解き検索及び本文解説,井上(2005)の絵解き検索,さらにさかのぼって石田他(1988)や浜田・井上(1985)などにおいてもこの眼後紋の変化にはふれておらず,未熟な場合の眼後紋(図1(1)) についてのみ記述されている.したがって,成熟した眼後紋が青い点の個体については,これら検索表や解説のどこにも一致しなくなるので注意を要する.なお,アオモンイトトンボ異色型♀についても同様の変化が見られる.

アジアイトトンボの眼後紋と後頭条の変化
図1.アジアイトトンボの眼後紋と後頭条の変化.
(1)未熟(赤橙色の個体):眼後紋は大きく後頭条とつながる.
(2)成熟途中(一部に橙色が残っている緑褐色の個体):眼後紋の中に青い点が出てくる.
(3)成熟途中(ほぼ完全に緑褐色の個体):眼後紋が青に変わり後頭条がかろうじて残る.
(4)成熟(緑褐色の個体):後頭条が消失し,眼後紋が青い点だけになる.

石田昇三・石田勝義・小島圭三・杉村光俊,1988.日本産トンボ幼虫・成虫検索図説.東海大学出版会.東京.
井上清,2005.絵解き検索による成虫の見分け方.トンボの調べ方 第2章:pp5-47.日本環境動物昆虫学会編.文教出版,大阪.
浜田康・井上清,1985.日本産トンボ大図鑑.講談社.東京.

<生体写真>
オスの生体写真

メスの生体写真

メスの生体写真