デジタルトンボ図鑑
ミルンヤンマ Aeschnophlebia milnei milnei (Selys, 1883)
ミルンヤンマ
♂.神戸市.1997.8.30.(左),♀,神戸市.1997.8.30.(右)./ スケール:1.0cm. 100% on 150ppi.
<分類学的位置>
 トンボ目 Order Odonata
 ヤンマ科 Family Aeshnidae
 ミルンヤンマ属 Genus Aeschnophlebia

<属名変更に関して>
 2023年の2つの論文,Schneider et. al.,および Kosterin (2023) によって,日本産ヤンマ科のアオヤンマ属,ミルンヤンマ属,ヤブヤンマ属の属名変更が行われた.その解説は笹本・二橋(2024)に詳しいので,そちらを参照願いたい.ここでは,これら2編の論文や笹本・二橋(2024)の解説にしたがって,属名を変更する.なお和名に関しては従来通りのものが使用される.
 ところで,ミルンヤンマ属の変更された属名には,アオヤンマ属の属名であった Aeschnophlebia が用いられている.ことの詳細は笹本・二橋(2024)に書かれているが,極めて単純に言えば,Aeschnophlebia 属のタイプ標本が実はミルンヤンマであったということに起因する.トンボ研究家の皆さんには,この学名が浸透するまでの間,混乱のないようにしていただきたいと思う.

<分布> 
 日本特産種であり,北海道南部・本州・四国・九州,種子島,屋久島,トカラ列島中之島にまで分布する.本州周辺の離島にも分布している.
 南西諸島には近縁種である,ヒメミルンヤンマ Aeschnophlebia milnei naica,アマミヤンマ Aeschnophlebia ishigakiana nagaminei,イシガキヤンマ Aeschnophlebia ishigakiana ishigakiana,サキシマヤンマ Aeschnophlebia risi sakishimana などが分布しているが,本種とは分布域が重ならない.

<特記事項>
 純黒の地に黄色のストライプという色彩である.複眼が広く接しており,胸部に比して大きく見える.腹長50mm〜55mm程度で,他の同色系のヤンマに比べて小さい.オニヤンマ Anotogaster sieboldii とは,大きさが違うこと,オニヤンマは複眼が1点で接することなどで区別できる.河川上流域に生息するヤンマである.


ミルンヤンマ♀(前縁に褐色条の入った個体)
ミルンヤンマ♀(前縁に褐色条の入った個体).
高砂市.1997.8.3. / スケール:1.0cm. 100% on 150ppi.

*Kosterin, O. E., 2023. Nomenclatural reconsideration of the genera Aeschnophlebia Selys, 1883 and Planaeschna McLachlan, 1896 (Odonata, Aeshnidae). Zootaxa 5353(5):495-500.
笹本彰彦・二橋 亮,2024.ミルンヤンマ属およびアオヤンマ属の学名変更について −その背景と歴史的経緯−.Tombo 67:103-110.
*Schneider, T., Vierstraete, A., Kosterin, O. E., Ikeneyer, D., Hu, F. -S., Snegovaya, N., Dumont, H. J., 2023. Molecular Phylogeny of Holarctic Aeshnidae with a focus on the West Palaearctic and some remarks on its genera worldwide (Aeshnidae, Odonata). Diversity, 15: 40pp.

<生体写真>
オスの生体写真

メスの生体写真