デジタルトンボ図鑑
アマミヤンマ Aeschnophlebia ishigakiana nagaminei (Asahina, 1988)
アマミヤンマ
♀,鹿児島県.1994.7.2. 幼虫採集,自宅羽化./ スケール:1.0cm. 100% on 150ppi.
<分類学的位置>
 トンボ目 Order Odonata
 ヤンマ科 Family Aeshnidae
 ミルンヤンマ属 Genus Aeschnophlebia

<分布> 
 日本特産亜種であり,奄美大島にのみ分布している.

<特記事項>
 原名亜種のイシガキヤンマ Aeschnophlebia ishigakiana ishigakiana は西表島に分布している(石垣島では1例の記録のみ).また別亜種の Aeschnophlebia ishigakiana flavostria は台湾に分布する.奄美大島における類似種としてはヒメミルンヤンマ Aeschnophlebia milnei naica がいるが,アマミヤンマは腹部各節の後縁にも黄色の斑紋があるので区別できる.

<属名変更に関して>
 2023年の2つの論文,Schneider et. al.,および Kosterin (2023) によって,日本産ヤンマ科のアオヤンマ属,ミルンヤンマ属,ヤブヤンマ属の属名変更が行われた.その解説は笹本・二橋(2024)に詳しいので,そちらを参照願いたい.ここでは,これら2編の論文や笹本・二橋(2024)の解説にしたがって,属名を変更する.なお和名に関しては従来通りのものが使用される.
 ところで,ミルンヤンマ属の変更された属名には,アオヤンマ属の属名であった Aeschnophlebia が用いられている.ことの詳細は笹本・二橋(2024)に書かれているが,極めて単純に言えば,Aeschnophlebia 属のタイプ標本が実はミルンヤンマであったということに起因する.トンボ研究家の皆さんには,この学名が浸透するまでの間,混乱のないようにしていただきたいと思う.


*Kosterin, O. E., 2023. Nomenclatural reconsideration of the genera Aeschnophlebia Selys, 1883 and Planaeschna McLachlan, 1896 (Odonata, Aeshnidae). Zootaxa 5353(5):495-500.
笹本彰彦・二橋 亮,2024.ミルンヤンマ属およびアオヤンマ属の学名変更について −その背景と歴史的経緯−.Tombo 67:103-110.
*Schneider, T., Vierstraete, A., Kosterin, O. E., Ikeneyer, D., Hu, F. -S., Snegovaya, N., Dumont, H. J., 2023. Molecular Phylogeny of Holarctic Aeshnidae with a focus on the West Palaearctic and some remarks on its genera worldwide (Aeshnidae, Odonata). Diversity, 15: 40pp.