No. 960. ムカシトンボを見に行ったが少ない.2024.5.14.

そろそろムカシトンボの時期なので,今日は源流域へ出かけていきました.そういえば,川のトンボをまだ本格的に調べていません.近いうちにアオサナエやヤマサナエも産卵活動を始めるでしょうし,アオハダトンボやキイロサナエも羽化してくるでしょう.いよいよトンボの季節も力強く前進を始めたみたいです.

さて,ムカシトンボですが,いるにはいました.のべ10回ぐらいはオスが飛ぶのを見ましたが,実際は同じ個体で,せいぜい1,2頭がいただけのような気がします.そしてメスは全く飛ばず,今日の観察は失敗でした.オスの飛び方は探雌的で,同じ場所を旋回する摂食飛翔と違い写真に撮ることも難しい状況でした.たった1枚だけなんとかピントが来ていましたが,そのコマだけストロボが光らず真っ黒.調整してもうまくいかないので,いた証拠として白黒写真であげておくことにしました.


▲メスを探して飛ぶムカシトンボのオス.レトロな写真の感じがする.▲

ムカシトンボとセットなのはヒメクロサナエやクロサナエですが,こちらはまだ繁殖活動開始には若干早いという感じです.例年5月下旬に本格化します.でもオスたちはもう川面に降りてきて早く繁殖活動を始めたいというような雰囲気が感じられました.到着と同時に降りてきたのがクロサナエでした.ただこれ一回だけでした.


▲到着して腰を下ろし,「あっサナエだ」と気づいたのがクロサナエのオスだった.▲

この観察地では,ヒメクロサナエよりはクロサナエの方が若干産卵活動が早く始まりますので,今日出会えるかもしれないと,希望が持てました.あと,ヒメクロサナエは何度か降りてきて,楽しませてもらえました.今年はこちらの方が発生個体数が多いのかもしれません.


▲流れに降りてきたヒメクロサナエのオス.▲


▲音もなく川面に降りてくるヒメクロサナエのオスたち.▲

ヒメクロサナエのオスは,薄暗い川面にひっそりと止まることもありますが,だいたいは木漏れ日の当たる場所に止まっています.ただ,数分とどまるだけで,すぐに樹上へ上がってしまいます.なお,ヒメクロサナエのメスが,産卵場所のようす見でしょうか?,1頭降りてきて葉の上に止まり,すぐに飛び去りました.


▲ヒメクロサナエのメス.ようす見にでも降りてきたのだろうか?.▲

この場所には,13時過ぎまで,3時間ほどいました.結局,たいした成果が得られず,ここを離れることにしました.今日は雲一つない晴天で,気温も春らしくちょうどよかったのに,トンボたちの活動はもう一つというところでした.ムカシトンボの産卵痕も探しましたが,見つかりませんでした.まだ産卵活動を始めていないのでしょうか.また出直す必要がありそうです.そのときはサナエの産卵にも出会えるかもしれません.

待っている間,アサヒナカワトンボたちは飛び回って,産卵基質をのぞき込み,探雌活動をしていました.私のズボンに止まって休むヤツもいました.私は石か!.


▲私のズボンに止まって休むアサヒナカワトンボ.▲

さて,午後からは場所を移動し,まずはヒラサナエのようすを見に行きました.今年はヒラサナエの発生個体数が少ないようです.ここの個体群は小さく多分他から隔離されているので,こうやってときどきボトルネックになるような個体数減少が起きると,遺伝的多様性が低くなるのではないかということが心配になります.


▲ヒラサナエは午後が産卵の時間だが,まだ交尾をしていた.▲

そのあと,先日パスしたホンサナエの産卵を見に行くことにしました.これは夕方の観察になりますので,まず遅い昼食をとって,それから流れや池を一つのぞいて時間を潰すことにしました.ニホンカワトンボがたくさんいましたが,15:00,産卵活動は終わっているようでした.シオヤトンボは交尾をしていました.


▲シオヤトンボの交尾.▲

昼下がりの池にはやはり活動するトンボの数が少なく,クロイトトンボが飛び回っているだけという感じでした.そんな中,クロスジギンヤンマが1頭,あちこちの草陰をのぞき込みながら産卵メスを探して飛んでいました.まだ時間は1時間ほどあったので,飛翔写真を撮る練習をすることにしました.最近ちょっと腕が落ちてきているような感じがするので,結構素早くまた草陰をのぞき込むためにランダムな動きをするクロスジギンヤンマは格好の相手です.


▲急旋回して草陰に入ろうとするクロスジギンヤンマ.▲


▲196回シャッターを切って,うまく撮れたのは5枚(うち4枚を提示)だった.▲

約200枚ほど撮って5枚ほどなんとかピントが来ていましたので,成功率は2.5%ほどですね.コヤマトンボのなかまやオニヤンマ・ミナミヤンマのなかまを見に行くときには,最低でも50回ぐらいはシャッターを切れということでしょうか.まあ1000回くらいシャッターを切れば気に入るのが撮れるかもしれません.もっとも相手がそれだけ飛んでくれたらの話ですけど.

ということで,17:00が来たのでホンサナエの活動を見に行くことにしました.現地では,オスがまだ2頭,静止したり水面を飛んだりして活動していました.この季節の17:00は,太陽は傾いていますがまだ十分明るいです.ただ,午前中が好きな川のサナエトンボのなかまがこんな時間まで活動していることが面白いです.ちゃんとオスたちは知っているのですね.ただそんなオスたちも,17:30を過ぎたあたりで姿を消しました.


▲日が傾き影が長くなった.17:16.ホンサナエのオス.▲

18:30まで待ちましたが,メスらしい(暗くて確認不能)のが3回飛んだだけで,私の手の届くところに止まることはありませんでした.今日は昨日までの雨の影響か水が濁っており水量も増えていたので,砂底が目視できない状態でした.それが原因かどうかは分かりませんが,メスらしい個体はいつもの場所を通り過ぎるだけでした.

ということで,今日は目的が達成できなかった1日になりました.こんな日も結構たくさんあるものです.

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今年初見のトンボたち
No.25. ムカシトンボ.オス.
No.26. ヒメクロサナエ.オス・メス.
No.27. クロサナエ,オス.
No.28. ヒラサナエ,交尾.

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No. 959. フタスジサナエの産卵.2024.5.10.

この三日間ほど曇りで低温の日々が続きました.今日は快晴.気持ちいいものです.春のトンボたちに会いに,また出かけてきました.今日のターゲットは,トラフトンボの卵塊形成とフタスジサナエの産卵です.

先日成虫の状況調査をした場所へ出かけてきました.ところがトラフトンボの数が減っていました.池を飛んでいるのが全部で2頭だけ.これでは交尾態が飛ぶのを見るのも難しそうな感じがしました.一方で小さな流れにはヤマサナエが5,6頭出てきており,ときどき追いかけ合いをしていました.今日うまくいけばヤマサナエの産卵に出会えるかもしれません.が,まずはフタスジサナエです.曇天が続いたので産卵意欲の高いメスが多いのではないかと思います.結果的には6頭のメスが産卵しているのに出会いました.


▲今日の1頭目の産卵メス.オスがいるせいかすぐに止まってしまう.▲


▲今日の3頭目のメス.突然飛び立ってホバリングしたのでオスかと思えばメス!.▲


▲3頭目のメス.このメスもよく止まる.▲


▲3頭目のメス.このメス複眼がちょっと変に輝いている.▲


▲4頭目のメス.実はこれら3頭はみな同じポイントで産卵している.▲


▲4頭目のメス.よくホバリングするメスだった.▲


▲4頭目のメス.体をひねって卵を岸の方に向かってばらまく.▲

今日はどういうわけか同じ場所で産卵に出会いました.じっとそこで待っているわけではなく,結構歩き回りながら,探したのですが,どういうわけかそこを通るたびに産卵しているのに出会いました.やはりメスにも場所の好みがあるのでしょうか.ただ私が見ても他と環境的に大きく違うようには思えませんでした.なお,2頭目は別の場所で出会いましたが,すぐに産卵を終えて飛び去りました.


▲6頭目のメス.そろそろ引き上げようかと思っているときに出会った.▲


▲6頭目のメス.岸の手前から撮ったので上からのアングルばかりになった.▲

5頭目のメスも帰り際に見ましたが,これもすぐに飛び去ってしまいました.それにしても曇天のあとの晴天,たくさん産卵を見ました.見ていないところでもやっていたはずですから,数はもっと多かったと思います.

そんなわけで,観察は大成功でした.あとこれら以外に出会ったトンボたちを紹介しておきましょう.


▲5,6頭が流れに出ていた,ヤマサナエ.▲


▲例によって,驚かせると飛び上がってホバリングして様子をうかがう.▲


▲シオカラトンボたちもたくさん活動をしており,だんだんと数が増えている.▲


▲ヨツボシトンボは数が減り始めた気がする.先日より少ない印象だった.▲


▲クロイトトンボは非常にたくさんいた.でもイトトンボは全部クロイトトンボ.▲


▲クロスジギンヤンマのメス.執拗に追いかけ回したせいか,すぐにいなくなった.▲

さて以上です.次のターゲットはヤマサナエの産卵になりそうな雰囲気です.来週は晴れの日が続きそうで,ゆっくりとメスと根比べしましょう.

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No. 958. ヨツボシトンボの産卵活動.2024.5.5.

今日のターゲット観察種はヨツボシトンボです.以前よく観察に出かけていたヨツボシトンボの池が工事によって完全に改修され,しばらく水のない状態で置かれ,現在植生も何もない池になってしまいました.2020年にそこでビデオを撮ったのが最後で,新しいヨツボシトンボの観察場所を探していました.今回見つけた場所はヨツボシトンボが10~20頭ほど飛んでいて,十分繁殖活動観察が期待できるところです.


▲ヨツボシトンボのオス.10頭以上が飛び回っていた.▲

朝の8:30頃に現地に入り,観察を始めました.9:00過ぎ,対岸にメスが入りました.あちらにすればよかったかとちょっと後悔….しかしすぐに私の待つ側にもメスが入りました.岸に沿ってヒメガマが刈り取られ,細い水路のようになっているところです.メスはここに入るという勘が当たりました.


▲ヨツボシトンボの交尾.飛びながら十数秒で終わる.▲

産卵メスに近づいていきましたが,動き回り,まだ撮影できる状態ではありません.すると,案の定オスに見つかり交尾を強要されました.ラッキーだったのは目の前で,しかも植生があって他からは見えない場所なので,ほぼ同じ位置で停止飛翔しながらの交尾でした.普通は他のオスに追われ交尾状態のまま飛び回り,しかも十数秒で交尾を解消するので,撮影はとても困難な対象なのです.交尾が終わると産卵を再開しました.


▲メスはオスが交尾を解いたあと産卵を再開した.▲

しばらく産卵を続けていると,多分別のオスが,再び交尾を強要しました.ヨツボシトンボは,オスの多い池ではこうやって何度も異なるオスに交尾をされながら産卵を続けます.もうメスも織り込み済みなのでしょうね.ほとんど産卵に影響を与えることもなく,さらに産卵を継続しました.ただ,今度はヒメガマの植生内にもぐり込むようにして産卵を始めたので,撮影はここまでとなりました.


▲再び交尾をされるメス.ここもヒメガマの陰になる場所で,停止飛翔していた.▲


▲ヒメガマの植生内にもぐり込んでいった産卵メス.▲

今日は合計4回,メスを見ました.もっとも1時間ほどトラフトンボの観察に時間をとったので,もっと来ていた可能性はあります.この場所はヨツボシトンボの観察にはよい場所であることが判明しました.

ヨツボシトンボで早々に成果が得られたので,次はトラフトンボの卵塊形成観察といきましたが,こちらは交尾態で飛ぶペアすら見ることはありませんでした.オスたちは池に出て飛び回っていたのですけど...


▲池を飛び回るトラフトンボのオス.▲

これ以外には,フタスジサナエやクロイトトンボがたくさん活動していましたし,ヤマサナエが姿を現していたり,ギンヤンマ,クロスジギンヤンマ,ニホンカワトンボなどが見られました.


▲フタスジサナエは非常にたくさんいたが,今日は産卵を目にしなかった.▲


▲早々にヤマサナエが流れに出てきていた.5月中旬には産卵が観察できそうだ.▲


▲今までここであまり見た記憶がないが,ニホンカワトンボもいた.▲

クロイトトンボは,この池でも次々と羽化個体が飛び立ち,一方ですでに成熟した個体が繁殖活動を行っていました.しかしクロイトトンボ以外のイトトンボは姿を確認できませんでした.


▲羽化して飛び立ったあとのクロイトトンボ.▲


▲昨日若いメスには気品があると書いたが,粉を吹く前の若いオスも気品がある.▲


▲クロイトトンボのタンデム.トンボよりジュンサイを食うハムシの類いが多い.▲

クロイトトンボのタンデムを撮った葉の上には,ハムシ類でしょうか,たくさんくっついて葉を食べていました.こういう小さな虫たちがたくさんいるからトンボの数も多いのでしょう.この池がきつい薬剤を使っていない証拠です.見た目は汚く見えるかもしれませんが,これが自然の姿です.

といった感じで今日の観察を終えました.2時間ほどの観察でしたが,成虫出現調査のおかげで効率よく観察が出来たようです.交尾態で飛ぶトラフトンボを見られなかったのが残念でした.

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No. 957. オグマサナエの観察.2024.5.4.

この二日間成虫の出現状況を調べ,今後の観察の方向性を決めることができるようになりました.まず最初は,オグマサナエの産卵場所を突き止めることから行うことにしました.オグマサナエについてはすでに2ヶ所ほど産卵場所を突き止めています.今回は今年羽化を見た池でそれを探そうと思います.


▲今日の観察ポイント.背景にほぼまっすぐ落ち込む岸壁が存在する.▲

オグマサナエは,池のまわりに大なり小なり樹木があって,その陰になるようなポイントで,かつ池の岸辺が急勾配になって水面に落ち込んでいるような微小環境を好んでいるように感じます.今年羽化を見た池にも,一角にそのような微小環境があります.そこに目星を付けて待つことにしました.上の写真には,そういった場所に止まるオグマサナエのオスが写っています.


▲私が着いたとき,日当たりのよい場所にフタスジサナエが1頭いただけだった.▲

現地に入ったのが10:00ごろです.池岸には,日当たりのよい場所に止まるフタスジサナエのオスが1頭見られただけでした.まだコサナエ属のオスは活動を開始していないのでしょうか.池はトンボたちの喧噪がなく,とても静かです.まあ待つしかないでしょう.

と腰を下ろして観察ポイントに目をやると,メスが池岸に向かって動いている姿を確認しました.まだ気持ちの準備すらできていないタイミングです.近づいていきましたが,初めのうちピントを合わせるのに手こずり,時間をロスしました.メスは少し移動し産卵を続けています.やっと私の集中力も目覚めてきて,手応えのあるシャッターを切り続けましたが,いかんせん,産卵はもう終わりを迎えたようです.背中の構図を数枚撮った時点で,メスは飛び去りました.


▲私に背中を向けて産卵するオグマサナエのメス.▲

撮影後写真を検討すると,オグマサナエでした.到着時のトンボのいない状況にちょっと油断したようです.12:00まで待ちましたが,結局産卵メスはこの1頭だけでした.ここが産卵ポイントだということはメスの登場で明らかですが,オスたちもよく知っているようで,そのあと何度もその産卵ポイントが見える位置にやって来て止まりました.


▲追い払っても追い払っても,この場所に戻ってくるオス.▲

最初の写真のオスと上の2枚のオスは,多分同じ個体だと思います.オスがいると産卵に来たメスを持って行かれるので,毎度のことながらトンボのオスとのなわばり争いを繰り広げました.しかし何度驚かせて追い払っても,しばらくするとこの場所に戻って来るのです.このポイントへの執着心が強いことが分かります.このポイントへは少なくとも2頭のオグマサナエオスが訪れました.


▲上の一連の写真とは異なる個体のオグマサナエオス.淡色部の色が異なる.▲

ここ以外の池岸は日当たりがよくなっていて,そこにはオグマサナエではなくフタスジサナエばかりが止まっています.そして私の見ているポイントにはフタスジサナエは入ってくることがありませんでした.微妙にオスの待つ場所がこの2種では異なるようです.ちなみにフタスジサナエのオスは10:30頃から数が増えました.


▲日当たりのよい池岸に止まるフタスジサナエのオス.▲

こういう感じで今日の観察を終えました.もう一つ別の池,先日タベサナエの産卵を見た池に行ってみましたが,こちらも静かでした.オスが1頭日向でメスを待っていました.「悪天候後の晴天続き3日目は産卵個体が少ない」というジンクスが当たったようです.


▲日向でメスを待つタベサナエのオス.▲

私の持っているオグマサナエの産卵場所に対する経験値がまた少し積み上がったように思えました.明日もまた晴れそうです.明日の課題は何にしようか...

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No. 956. 成虫出現状況調査 北部.2024.5.3.

今日も昨日に引き続き,成虫の出現状況を調べに行きました.今日は兵庫県北部の方の出現状況です.南部のコサナエ属がしっかりと活動を始めていたので,北部の方に分布するコサナエの状況を見るのが一つの目的です.

さて,まず最初は,ホンサナエの生息地を訪れました.今年の状況はどうでしょうか.川に入ると,早速,オスが飛びました.水面を素早くジグザグに飛びます.体はスマートとはいえませんが動きはそれに似合わず敏捷です.


▲今日最初に出会ったトンボ,ホンサナエのオス.▲

川を歩くと,さらにオスがあちこちから飛び立ち,全部で6,7頭はいたように思います.激しく追尾をして,若い個体は活動が活発です.


▲活発に飛び回るが,結構同じところに戻ってきて止まる.▲

私が近づくと敏感に感じ取り飛び立ちます.自分が止まっていた場所が気に入っているのか,私のまわりをうろうろと飛んでいます.少しすると諦めたのか,水面をホバリングして飛びます.夕方によく見せる飛び方です.


▲水面を飛び回るホンサナエのオス.▲

しかししばらくすると止まり場所を変えて,一休みします.葉っぱに止まるより地面の方が好きなようで,砂州に止まったり,石を積んだ護岸に止まったりします.


▲地面に止まるのが好きなホンサナエ.▲

今日夕方までねばればメスの卵塊形成が見られるかなと思いましたが,今日は成虫の出現状況調査で,できるだけ多くの種類のトンボの状況を調べることが目的ですので,止めました.

次は本命のコサナエです.コサナエのいる池に向かいました.コサナエのオスは池にたくさん出ていました.20頭ぐらいはいたでしょうか.時刻も10:30ぐらいで,産卵にはちょうどよい時間帯です.


▲池に出て,メスを待っているコサナエのオス.▲


▲木漏れ日のある日陰でメスを待つコサナエのオス.▲


▲池岸から伸びたシダの葉に止まるコサナエのオス.▲


▲驚かせると飛び立ってしばらくホバリングする.▲

池の周囲を歩いて産卵メスを探しました.ほどなく,池岸で産卵しているメスを見つけました.産卵するコサナエは結構動き回るので,写真に撮りにくい相手です.


▲今日の産卵メス第一号.割合短時間で飛び去った.▲

産卵は集中するので,気を引き締めて次のメスを待ちました.しばらくすると同じところにまたやって来ました.最初の個体は驚いて逃げたようで,ひょっとしたら同じ個体かもしれません.こちらも短時間で産卵を終えました.


▲体をねじって卵を飛ばす.腹端に付く卵塊と,落下する卵が写っている.▲

このあと産卵に来なくなりましたので,場所を変えてみました.ホソミオツネントンボがまだまだたくさん活動していますし,オオイトトンボも飛び回っています.コサナエのオスも岸辺でメスを待っています.イトトンボたちを観察していると,産卵メスが入ってきました.ここは陽が当たっているので,撮影には好条件です.


▲草の中に入り込んで産卵するコサナエ.▲

ということで,コサナエたちは例年通り,ゴールデンウィークに産卵活動をたくさんやっていました.

コサナエを観察しているときに,未熟なヤマサナエが私の前に姿を見せました.これは私が探して見つけたのではなく,向こうから飛んできたのです.「私を忘れないでください」てな感じで,しばらく写真が撮りやすいように静止してから飛び去っていきました.それもオスとメスが1回ずつです.


▲ヤマサナエの未熟なオスとメス.黄色が鮮やかで美しい.▲

沖縄で見たヤエヤマサナエに比べると黄色の部分が少し小さく,黑っぽいサナエトンボですが,未熟期は黄色が鮮やかです.オスは特に成熟するとくすんだ緑褐色になりますから.そうそう,この池に来る前に,もう一つ『「私を忘れないで」出現』のサナエトンボと出会いました.アオサナエです.時期的には少し早い感じがしますが,ホンサナエに混じってときどき姿を現しますので,こんなものかもしれません.


▲突然目の前に現れて,写真を撮ったら遠くへ飛んでいったアオサナエのオス.▲

なんか今日はトンボたちのサービス精神に支えられている感じです.さて次はここへ来たもう一つの目的であるオオイトトンボです.オオイトトンボも最近南部ではあちこちで姿が消えたり個体数が減少したりと,なかなか見るのが難しいトンボです.ここには割合にたくさんいますが,昔に比べたら相当減っている気がします.今日のオオイトトンボはほとんど岸に近づかず,池の真ん中ばかりで活動していました.ですから,ぎりぎり写真を撮って,超トリミングするしか手がありませんでした.


▲唯一1mぐらい近くにやって来たオオイトトンボのオス.▲

オオイトトンボはほとんどがオス単独で飛び回っているばかりでした.11時を過ぎたあたりから,ポツポツタンデムのペアが見られるようになりました.


▲オオイトトンボの移精行動.セスジでは見たことがあるがオオイトでは初めて.▲


▲3mぐらい離れている.まだ小さなヒシの葉に止まって交尾.▲


▲4mぐらい離れている.産卵するペア.上の写真とは異なるペアである.▲

最近のデジタルカメラは本当に性能が向上したと感じます.上の産卵の写真などはほとんどドット・バイ・ドット(つまり6048×4024ピクセルの画像から640×480ピクセルを切り取った)ぐらいまでトリミングしているのですがなんとか見られますものね.

オオイトトンボより数が多かったのがホソミオツネントンボ,それに混じって少しだけいたのがホソミイトトンボ,当然成虫越冬の彼らは今も活動の最盛期です.クロイトトンボは次々羽化して飛び立つのが見られました.キイトトンボも羽化し始めていたようです.ただ白い体の個体は見間違いが起きる可能性があるので,また後日確認することにします.なおクロイトトンボの方は若いメスを見ました.


▲ホソミオツネントンボはまだたくさん活動をしていた.▲


▲ホソミイトトンボは数は少ないが繁殖活動最盛期という感じであった.▲


▲クロイトトンボのメス.クロイトトンボの若い個体はオスメスとも気品がある.▲

なお,この池で観察中,ずっとクロスジギンヤンマが飛び回っていました.2頭いたようですが,1頭は池に入ってくるとすぐに追い出されていました.産卵メスは写真に撮りやすいのですが,パトロールオスは苦労してやっと1枚というところです.


▲池をパトロールするクロスジギンヤンマのオス.▲

さて,調査のテーマ種はクリアできましたので,残りのトンボたちを紹介しておきましょう.シオヤトンボは例によってあちこちを飛んでいました.ハラビロトンボの未熟な個体が散見されました.シオカラトンボもいました.


▲シオヤトンボのオス.▲


▲ハラビロトンボの未熟オスと未熟メス.▲

さて,コサナエの池での観察は十分できましたので,あと近くの細流に入ってアサヒナカワトンボを見つけて終わろうと思いました.ニホンカワトンボの方は,ホンサナエの川にもたくさん飛んでいましたし,完全に繁殖活動期に入っています.ただ,今日は産卵を見ることができませんでした.


▲ニホンカワトンボは,オスもメスもたくさん流れに出ていた.▲


▲アサヒナカワトンボも薄暗い流れで繁殖活動を始めていた.▲

ということで,好天に恵まれ,たくさんのトンボたちに出会うことができました.今年は兵庫県北部も南部も,順調にトンボたちに出会えているような気がします.あとムカシヤンマに出会えていれば完璧でした.ということで,初見のトンボたちをまとめておきましょう.

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No.17. コサナエ.オス・メス・産卵
No.18. ヤマサナエ.オス・メス
No.19. ホンサナエ.オス
No.20. アオサナエ.オス
No.21. オオイトトンボ.オス・メス,産卵
No.22. クロスジギンヤンマ.オス
No.23. ハラビロトンボ.オス・メス
No.24. アサヒナカワトンボ.オス・メス,交尾

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