No. 965. トンボは次の季節へ,状況調査.2024.5.29.

トンボの季節が過ぎのステージに移り変わろうとしています.夏のトンボの登場です.今日は春のトンボの生き残りと,夏のトンボの出現状況を見に行きました.今後の生態観察の方針を立てるためです.2ヶ所の池に出かけてきました.まずは春の生き残りから.


▲ヨツボシトンボ.数は非常に減って,わずかに生き残りがいた.▲


▲ヤマサナエ.まだもう少し続くだろうが,一時期より減少して今日は1頭だった.▲


▲フタスジサナエ.産卵.まだもう少し頑張るつもりかな?▲

次は,春のトンボと同じぐらいに現れてはいるが,これからが本番のトンボたち.


▲どうしてこんなにどこにでもいるのか不思議.シオカラトンボ.▲


▲ショウジョウトンボは夏の終わりに2化目が出るからまだまだこれからだ.▲


▲クロイトトンボも2化目が出るトンボ.秋口までは出現が続く.▲


▲ギンヤンマもずっと前から飛んでいるが,登場は今日が初めて.▲

以上,私が通季種と呼んでいるグループでした.次はこれから出現してくる夏のトンボたちです.もうすでに成熟して活動しているのがほとんどでした.


▲コフキトンボの複眼が黒い成熟オスと若いメス.▲


▲コシアキトンボ.活動しているオスと羽化しているメス.▲


▲ウチワヤンマ.2頭活動をしていた.▲

いずれも普通種ばかりですが,季節は着実に次へ進みつつあるようです.今年はムカシヤンマを見ずに過ごす可能性が出てきました.早く見に行かないと.あぶない.

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今日初登場のトンボたち
No.34. ギンヤンマ.産卵
No.35. コフキトンボ.オス・メス
No.36. コシアキトンボ,オス・メス
No.37. ウチワヤンマ.オス

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No. 964. クロサナエなどを見に行った.2024.5.26.

今日は,先日行ってまだ少し早いと感じた,源流域のサナエを見に行きました.クロサナエとヒメクロサナエがねらいです.天候は晴れ,風がやや強い状態.風の強さが原因しているかどうかは分かりませんが,今日はオスのサナエが降りてくるのを全く見ませんでした.目の前を一瞬飛んだのが2回だけ.ただクロサナエは2回産卵にやって来ました.


▲クロサナエ,1頭目の産卵.▲

▲産卵するメスのクロサナエ.▲


▲産卵する2頭目のクロサナエ.▲

だいたい12:30くらいまで待ちましたが,この2頭だけでした.つまり今日見た源流域のサナエは,一瞬通り過ぎたのが2頭とこの産卵メスが2頭の,合計4頭だけでした.少ないなと思います.またムカシトンボは今日は全く姿がありませんでした.数が多かったのはアサヒナカワトンボで,あちこちで追尾飛翔を行っていました.1頭のメスが少しだけ産卵の行動をとって飛び去りました.


▲水しぶきを浴びながらの産卵行動.アサヒナカワトンボ.▲

このあと,サラサヤンマを探しに行きました.もう彼らも元気に活動する時期になっているでしょう.飛翔ポイントでは1頭のオスがせわしなく行ったり来たりして飛んでいました.珍しく,ガンガン陽の当たる場所を飛んでいました.結構動きがランダムで速かったのですが,先日のクロギンを使った練習の成果が出たようです.


▲陽の当たる明るい湿地で往復飛翔を続けるサラサヤンマのオス.▲

昼下がりには,あちこちで情報が耳に入っているハッチョウトンボの確認に行きました.もう出ていました.オスなどは十分成熟し,水辺に出ていました.


▲ハッチョウトンボのオスとメス.▲

あとアオイトトンボの羽化個体が草の中に止まっているのを見ました.いよいよ秋のトンボの出現です.季節が進んでいくのは早いです.


▲羽化直後のアオイトトンボ.▲

源流域の標高の高いところではアサヒナカワトンボの活動が非常に活発でした.しかしハッチョウトンボを見に行くため平地に降りてくると,アサヒナカワトンボはほんのちらほら,あれほどいたニホンカワトンボは完全に姿を消していました.コサナエも非常に数が減っていますし,ヒラサナエももう終わりの時期みたいに貧弱になっています.


▲コサナエはまだ5月なので,普通ならもう少し数は多いと思う.2頭だけだった.▲


▲ヒラサナエは老熟を感じさせるオスが,数頭いただけだった.▲

今年のトンボの出現はどうもイレギュラーな感じが拭えません.出現が遅れているように思えるのですが,一方で早く姿を消してしまったように見えるニホンカワトンボやムカシトンボ.まだ生き残りがいてもおかしくない時期です.もう少し観察を進めて,率直な感想をどこかでまとめておきたいと思います.今日はここまでです.

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今年初見のトンボ
No.31. ハッチョウトンボ.オス・メス
No.32. サラサヤンマ,オス
No.33. アオイトトンボ,オス

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No. 963. 奄美大島を訪れました.2024.5.24.

急に思い立って,5月21日から23日までの3日間,奄美大島へトンボを見に行ってきました.先月沖縄県へ出かけていっていろいろなトンボを見てきましたが,奄美大島というのは,沖縄県のものと亜種関係にあるものも含めて,独特の種類のトンボが棲息しています.それらを見に行くことを目的に出かけてきました.

「急に思い立って」といっても飛行機などの手配がありますので3週間ぐらい前ですが,やはり梅雨入り直後の時期で雨の心配が当初からありました.それが見事に的中し,3日間ともほとんど日は射しませんでした.それどころか,2日目の22日などは,沖縄・奄美は警報級の大雨.名瀬(奄美市)で24時間で146mmの雨が降りました.

もちろんここまで来たのですから,雨の中トンボ探しに出かけました.出かけるときには,ワイパーを最高速にしても前が見えないくらいの雨が降っていました.ところが9:30ごろにピタッと雨は止み,晴れこそはしませんでしたが,曇の天候になりました.奄美の梅雨はスコールのように降ってピタッと止むような降り方をするとネットに書いてありましたが,まさにその通りでした.が,当然のことながら,トンボの姿は全くありませんでした.川は増水して茶色の水が流れていましたので,川に入ることなどできません.


▲増水して茶色の水がゴウゴウと流れる川.9:00ごろ.雨はまだ降っていた.▲

これはもう最終日の明日もだめだな,とこの時期を選んだことを若干後悔しました.しかし奄美の自然は兵庫県とは違います.茶色の水が流れていた川は,その日の午後には水量が下がり,水の色も薄緑色に変わっていたのです.


▲14:00ごろ,もう水位が下がり,水に透明感が増し,色も薄緑になった.▲

豪雨の時に兵庫県の山地の川の様子を見たことがないので,こちらでも同じなのかもしれませんが,とにかくこの川の水の引き方には驚かされました.翌23日は,水量は多いものの,水は透明で川は普通の様相を呈していました.いやはや驚きの初経験でした.

なお初日21日は,14:00ぐらいまで雨は降りませんでした.昨日まで晴れていたこともあって,ロケハンを兼ねたトンボ観察時に,いくつかのトンボを見ることはできました.そして最終日23日は,予報では午後から雨でしたが結局帰るまで雨は降らず,ときどき日が射すぐらいで気温も高く,昨日の雨で閉じ込められていた鬱憤を晴らすかのようにトンボたちも結構たくさん出てきたように感じました.

今回はそんなで,見た種類を全部記録する暇がありませんでした.この時期に観察に来たのはターゲットがあるからで,天候の関係でそれを探すのに時間を割いてしまったからです.ただ現地で,なんと知人の関東のトンボ屋さんの一行に出会い,たくさんの目で探したこともあって,効率よくトンボを見つけることができました.時々あることですが,関東と神戸の知り合いが奄美大島で出会うとは世の中は狭いです.

前置きが長くなってしまいましたが,今日は五十音順に,観察できたトンボたちを紹介していきましょう.一部を除いて,すべて23日の観察になります.

◆アオビタイトンボ Brachydiplax chalybea flavovittata

沖縄県に行ったときには見つけられなかったトンボです.見たのはオスだけですが,そこそこの数がいました.


▲アオビタイトンボのオス.まだ若くて美しい.▲

これといった活動は見ることがありませんでした.

◆アマミサナエ Asiagomphus amamiensis amamiensis

アマミサナエは今回のメインターゲット種です.オキナワサナエの原名亜種で,いわゆるヤマサナエ的なアジアサナエ属のトンボです.このトンボの一番の特徴は複眼の色にあります.アジアサナエ属のトンボの複眼は通常深い緑色をしています.しかしアマミサナエは青緑色をしているのです.非常にエキゾチックで,これは一見の価値があります.


▲青緑色の複眼を持つアマミサナエ.オス.▲


▲アマミサナエのオス.全部で2個体.▲

よく晴れておれば川面に降りてきてメスを待つ行動をとるのですが,さすがに今日は川に降りてきている個体はありませんでした.たくさんの人の目で探したので,合計3頭のオスが見つかりました.最初の1頭はスギの葉に止まる個体でした.


▲スギの葉に止まるアマミサナエのオス.最初に見つけた1頭.▲

◆アマミトゲオトンボ Rhipidolestes amamiensis amamiensis

次も「アマミ」を冠に持つトンボです.アマミトゲオトンボ.トゲオトンボのなかまはおそらく移動性が少なく,隔離された状態になりやすいのでしょう.南西諸島から九州・四国にかけて,種分化が進んでいます.学名に亜種名が付いていますが,徳之島に亜種トクノシマトゲオトンボ R. a. tokunoshimensis が分布しています.

沖縄県に行ったときには,トゲオトンボのなかまの成熟したメスが全く見つからなかったので,今回はそれを見つけることも目標です.次に登場するアマミルリモントンボは初日にその姿を見ましたので,そのときに見られなかったアマミトゲオトンボが次のターゲットでした.

実は,トゲオトンボならば雨が降っても林の中にいるから見つかるかもしれないと,22日の豪雨の中で結構探し回りました.しかし笑い話になりますが「木を隠すなら森の中」というあれですね.斜面や沢のようなところはどこもかしこも水が流れているので,どれが普段水が涸れていないトゲオトンボの棲息している流れなのかが分かりません.完全な失敗でした.23日は,それまで晴天の続いていた21日に水があった沢に入って探索しました.やはりそこにはちゃんといました.


▲アマミトゲオトンボのオスたち.▲

トゲオトンボは,暗い林の中にいる真っ黒なトンボで,とても見つけにくいのですが,飛ぶと何かが動いたというふうに目に映るので見つかります.最初の1頭を見つけるとあとは割合たやすく見つかります.

さて,オスは見つかりましたが,問題はメスです.かなり急な沢ですので手をつきながら上ることになりますので,ハブが怖い.しかし勇気を振り絞って(大げさですがそんな感じでした)慎重に登っていくと,メスがいました.流れに出ていたので産卵する可能性がありますが,今日は生態観察ではないので,止まっているのを撮影するだけにしました.


▲アマミトゲオトンボのメス.同一個体.▲

やっとメスを見つけることができました.ハブにも出会わずめでたしめでたし.あと,別の場所でも,細流にぽつんと止まっているオスを見ることができました.


▲比較的明るい細流に止まっていたアマミトゲオトンボのオス.▲

◆アマミルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis amamii

「アマミ」を冠したトンボの3種目です.あとアマミヤンマというのがありますが,これは夏以降のトンボです.やはり奄美大島に来た目的は「アマミ」を冠したトンボたちです.アマミルリモントンボは,あちこちの流れ,それも本流から細流に至るまであちこちで見ることができました.

沖縄にいるリュウキュウルリモントンボ C. r. ryukyuensis が原名亜種で,こちらが奄美亜種になっていて,奄美大島とその周辺の島々に分布しています.リュウキュウルリモントンボのようにオスの腹部先端が黄色くはないので,ちょっと艶やかさは少ないです.


▲アマミルリモントンボのオスたち.▲


▲黒化型と言ってよいような,腹部にほとんど斑紋がないアマミルリモントンボ.▲

オスの中には,腹部にほとんど淡色斑が出ない個体がいて,黒化型と言ってよいような感じです.こちらの方が全体の黒色が締まって,水色が目立ち,美しさが倍増するように思えます.オスは,羽化してしばらくの間は,淡色斑が黄色で,別種かと思うほどです.この時期のオスはまた別の感じで美しいです.そして黄色の部分を隠すように水色が出てきます.


▲羽化直後のアマミルリモントンボのオス.▲


▲未熟なアマミルリモントンボのオス.▲


▲黄色の上に水色が重なり始めたテネラルなオス.▲


▲淡色斑の発達が悪い黒化型.水色が広がり始めたオス.▲


▲水色になった成熟オス.▲

アマミルリモントンボもメスを探し続けてかなり時間をかけました.しかしながら,羽化直後のメスは見つかったものの,成熟したメスが見つかりませんでした.オスは結構簡単に見つかるので,探す場所が悪いのかもしれません.


▲アマミルリモントンボのメス.いずれも羽化直後.▲

◆オオハラビロトンボ Lyriothemis elegantissima

先月沖縄県で見たときは,未熟期の黄色い個体でした.今回見たのは腹部が赤くなりつつあるようなまだ若い個体でした.腹部の黄色い個体もいた,と別の人が言っていたので,やはりこれからの出現ということになるのでしょうか.


▲腹部は赤と黄色の混じった橙色に見える.オオハラビロトンボのオス.▲

◆オキナワオオシオカラトンボ Orthetrum melania ryukyuense

トカラ列島以南久米島にまで分布するオオシオカラトンボの亜種です.沖縄県でも見ました.このメスを見たいのですが,今回もかなりの探索をしましたが,オスばかりでした.オオシオカラトンボのメスってたいがいどこかに止まっているのが普通なのですが.見つかりません.


▲翅基部の褐色斑と腹部先端の黒斑がオオシオカラトンボに比べて小さい.▲

◆オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix

オキナワチョウトンボはまだ出始めのようです.未熟な個体が空き地を飛んでいました.私が見たのはオスでしたが,翅が黒いオキナワチョウトンボを見たと別の方が言っていましたので,これは多分メスでしょう.チョウトンボの類いはこれからでしょう.


▲オキナワチョウトンボのオス.▲

◆コシブトトンボ Acisoma panorpoides panorpoides

湿地状の滞水によく見られる南のトンボです.奄美諸島が北限になっています.いわば分布境界のコシブトトンボ個体群ということです.このトンボも産卵活動を見たことがありません.一度ゆっくりとこういった普通種の観察をしてみたいものです.どうしても南へ来ると数の少ないトンボを追いかけてしまいます.


▲コシブトトンボのオスとメス.オスはイトトンボを食べている.▲

コシブトトンボのオスの食べているイトトンボは,別のコマを見ると尾部下付属器が長く突き出ているように見えるので,おそらくコフキヒメイトトンボでしょう.ただ,コフキヒメイトトンボそのものは私は見ていません.今回はイトトンボをじっくり探す時間がありませんでした.そういえばアジアイトトンボをチラッと見たのですが,江平(2023)では,定着不明種になっていました.やはりきちんと写真を撮っておかないといけません.

◆シオカラトンボ Orthetrum albistylum speciosum

今回は,イトトンボにまではちょっと手が回らなかったものの,シオカラトンボはきちんと記録しておきました.こちらのシオカラトンボの成熟メスの色が妙に明るい色できれいなのが気に入りました.


▲シオカラトンボのオス.非常にたくさんの数が見られた.▲


▲淡色部が薄緑がかって,複眼の緑とマッチしている.シオカラトンボのメス.▲


▲シオカラトンボの未熟なメス.こちらはよく見る色彩だ.▲

◆タイリクショウジョウトンボ Crocothemis servilia servilia

タイリクショウジョウトンボはシオカラトンボに次いでたくさんいたトンボです.こちらは産卵活動をするメスも見ました.


▲タイリクショウジョウトンボのオス.▲


▲産卵に飛び回るタイリクショウジョウトンボのメス.▲

◆ハネビロトンボ Tramea virginia

沖縄県に入ると,ハネビロトンボよりヒメハネビロトンボの方を多く見かけます.というかハネビロトンボを見つけるのが意外と難しい.その点奄美大島では飛来以外はハネビロトンボがいるだけですので,ある意味安心して写真を撮ることができます.


▲ハネビロトンボのオス.▲

オスが現れる前に,メスが単独で打水産卵しているのを見かけました.ただ少し離れたところなので,写真に撮るのは難しい状態でした.


▲単独打水産卵するハネビロトンボのメス.▲


▲ハネビロトンボは,午後になるとよく止まる.▲

◆ベニトンボ Trithemis aurora

ベニトンボもたくさんいましたが,オスが飛び回っている割にはメスの姿が少なかったように思えます.先月たくさん記録したので,今日はいた証拠写真ていう感じです.


▲ベニトンボのオス.やはりこのケバケバしさは南国のトンボである.▲

◆リュウキュウギンヤンマ Anax panybeus

今回の観察地にはリュウキュウギンヤンマがそこそこ飛んでいました.先日クロスジギンヤンマで飛んでいるトンボの撮る練習をしたのはまさにこのためだ,てな感じでずいぶんシャッターを切りましたが,曇で暗いのと飛ぶのが遠いのとで,あまりいい出来ではありませんでした.ただ,1回だけ木に止まったのを偶然目にしたのがよかったです.また産卵にもやってきたのですが,すぐいなくなりました.


▲何か餌を捕まえたのか,木にとまったリュウキュウギンヤンマ.▲


▲池の上をパトロールするリュウキュウギンヤンマのオス.▲


▲空き地の上空で摂食飛翔をするリュウキュウギンヤンマのオス.▲


▲短時間産卵に入ったリュウキュウギンヤンマのメス.▲

リュウキュウギンヤンマの産卵メスはとても敏感にこちらの動きに反応し,ちょっと嫌気が差すと私から離れていって,ついには池から出ていきました.

◆リュウキュウトンボ Hemicordulia okinawensis

リュウキュウトンボは今回出会いを予定していなかったトンボで,出会えたことが非常に嬉しかったです.しかもかなり接近して観察が出来ました.これは私があまりその生態を知らなかったことが大きな原因だと思います.幼虫採集の経験から流水性であることくらいは知っていましたが,どんなところをどんなふうに飛び,どんな繁殖活動をするのか見たことがなかったのです.今回まずいきなりの出会いがリュウキュウトンボの産卵でした.

先に紹介したタイリクショウジョウトンボの産卵を観察しているときに,突然黒いトンボが入って来て連続打水産卵を始めたのです.シオカラトンボかと思いましたが色が違います.本当に影のように真っ黒.とにかくシャッターを切り続けましたが動きが速く手に負えそうにありません.やっと1枚だけトンボの確認ができる写真が撮れました.


▲まず最初に出会ったのが産卵するリュウキュウトンボのメスだった.▲

次に川の上を飛ぶリュウキュウトンボを見つけました.行ったり来たりしながら一定の空間を飛んでいます.少し離れたところを飛んでいるのですが,ときどき近づくことがあるので,その瞬間を期待して写真を撮り続けました.


▲川の上を飛ぶリュウキュウトンボのオス.2頭見られた.▲

まあ以前採集はしたことはあるものの,初めて接近観察したリュウキュウトンボの成虫なので,このくらいできたら満足というところでしたが,まだこのあとラッキーが続きました.14:00を過ぎることから,最初産卵を見た場所で,オスが2頭ほどパトロールしながら飛ぶようになりました.こちらの方が流れの幅が狭いので,写真には撮りやすいので,しばらくねばることにしました.


▲パトロールするリュウキュウトンボのオス.▲

なかなかピントが来ないなどと思っているとき,突然1頭のオスがメスを捕まえタンデムになり交尾を始めようとしています.「産卵に入っていたのか?」とちょっと残念な気持ちになりましたが,この交尾ペア,すぐ近くの草むらに止まりました.ただ対岸なので水の中を渡るしか近づく方法がありません.ちょっと深そうで長靴の中に水が入るのを覚悟しなければなりません.


▲対岸の草むらで交尾を始めたリュウキュウトンボのペア.▲

何枚かシャッターを切って渡ろうかどうか迷っているとき,風が吹いてこのペアが飛ばされました.遠くへ行ってしまうかと思われたとき,なんと逆にこちらの岸に飛んできて目の前に止まったのです.


▲こちらの岸に来て止まった交尾ペア.▲

角度が悪く交尾ペア全体にピントが来ないと思いながら写真を撮っていますと,やがて交尾が解消されました.ああ終わったかと思ってトンボたちを見ていると,またまたあり得ないようなラッキーが起きたのです.交尾を解かれたメスが私の目の前でホバリングして飛び始めたのです.まさに「私を撮って」とでもいうような感じです.こんなことがあるでしょうか?


▲目の前でホバリングするリュウキュウトンボのメス.▲

写真の鮮明さから,かなり近いことが分かるでしょう.1mも離れていません.沖縄県へ行った時も,最後の最後にオキナワサナエのメスが目の前に現れて,しばらくの間逃げることもなく私が撮影するに任せていたときと同じような状況に思えました.あのときもこのときも,これでぎりぎり最後というような時間帯でした.

◆リュウキュウハグロトンボ Matrona japonica

リュウキュウ・・・というトンボが続きます.次はリュウキュウハグロトンボ.これはまたきれいなトンボなのですが,残念ながら,まだすべて未熟な状態でした.沖縄県ではもう成熟した個体もいましたが,こちらは同調的に羽化したのか,たくさんの個体がいたにもかかわらず,すべてまだ翅が茶色のものばかりでした.


▲まだ未熟なリュウキュウハグロトンボたち.▲

◆リュウキュウベニイトトンボ Ceriagrion auranticum ryukyuanum

リュウキュウ・・・の最後はリュウキュウベニイトトンボです.草原で休んでいました.


▲リュウキュウベニイトトンボのオス.▲

別の産卵ペアも見ましたが,対岸でしたので,諦めました.

以上16種類を記録できました.イトトンボをもっと真剣に探す時間があれば,あと,2,3種は増えていたと思います.ミナミヤンマなど大型のトンボたちはこれからでしょう.

まあ,雨にたたられた遠征でしたが,沖縄などは雨が降っても止めばトンボが飛び出てくるという32年前の経験則はまだ健在のようでした.

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 963. 奄美大島を訪れました.2024.5.24. はコメントを受け付けていません

No. 962. ヨツボシトンボの休息場所?.2024.5.18.

今日は川のトンボなどの出現状況を見に行くことにしました.「など」とついたのは,ついでにサラサヤンマやムカシヤンマの出現状況も見ておこうと思ったからです.結論から言うと,ムカシヤンマやサラサヤンマのいる谷は,今年はめちゃくちゃトンボが少ないように思えました.1時間半以上,水田や池,流れのある谷筋を歩いて,ヤマサナエ3頭,シオカラトンボ数頭,シオヤトンボ数頭,ホソミオツネントンボ2頭,アサヒナカワトンボ1頭,ニホンカワトンボ1頭,オグマサナエ1頭,フタスジサナエ1頭しか見ませんでした.

そこで,川に転進.アオハダトンボやアオサナエの出現状況の確認です.川はまだ静かでしたが,それでも少数のアオハダトンボ,ミヤマカワトンボ,アオサナエなどが川に出ていました.


▲まだ数は非常に少なかったが,アオハダトンボが出始めていた.▲


▲あわせて,ミヤマカワトンボも飛んでいた.▲


▲アオサナエは強い日差しのもと,腹部挙上姿勢で暑さをしのいでいた.▲

ということで普通ならこれでおしまいというところなのですが,今日は興味深いものを観察できました.この川に行く途中の道で,ヨツボシトンボが集まっている場所に遭遇したのです.時刻は13:00前後です.ここには何度か来ていますが,こういう状況は初めてです.もっとも今までは5月末に来ていて,ヨツボシトンボはもう終わりの時期でしたけど.

場所は,川に沿った農道で,その横には休耕田があって雑草が生えています.休耕田の上空にはギンヤンマも飛んでいて摂食活動をしています.その休耕田の獣よけの柵や電線に並んで止まっていたのです.そしてときどき上空に飛んで摂食しています.アカトンボなどではよく見る風景ですが,ヨツボシトンボでは初めてです.しかもこの近くに,ヨツボシトンボが好むような抽水植生が茂る池はありません.Googleの地図や衛星写真で見ても,半径1km内にはないようです.彼らはどこから来たのでしょう.


▲休耕田の柵に止まるヨツボシトンボたち.これらはすべて異なる個体.▲

以上5枚の写真を見てお気づきでしょうか.そう,すべてメスなのです.成熟したメスがこれほど集まっているということは,この場所はメスの休息,そして摂食場所なのではないでしょうか.驚かせると,すぐ横の山の斜面に茂る樹林の方に飛んでいきますので,ねぐら(夜を過ごす場所)はこの樹林なのかもしれません.オスはいないかと探しましたが,オスもいるにはいました.


▲同じ場所にオスも1頭だけいた.▲


▲少し離れた場所にもオスが1頭見つかった.▲

以前オナガサナエも同じようにオス・メスが集まっている場所に遭遇したことがあります.こういう目にしたことがない光景に出会えるのは,繁殖活動ばかり追いかけている普段の観察とは違った目的を持って出かけているからでしょう.私のトンボ観察もまだまだ偏っているなど感じた次第です.

最後に今日は事故に遭ったトンボたちを見ました.最初の谷筋ではヤマサナエのペアが一緒に車にひかれて死んでいました.アオサナエのいた川の近くでは,羽化不全でしょうか,飛べないアオサナエが地面に落ちていて,瀕死の状態でした.アリが攻撃を始めていました.


▲恋の最中に事故に遭ったのでしょうか,何ともかわいそう.ヤマサナエ.▲


▲アオサナエの羽化不全?それとも事故?.▲

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今日初見のトンボたち
No.29. アオハダトンボ,オス・メス
No.30. ミヤマカワトンボ,オス

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 962. ヨツボシトンボの休息場所?.2024.5.18. はコメントを受け付けていません

No. 961. フタスジサナエのメスたち.2024.5.17.

今日は,9:00-11:00,14:45-15:30と,2回ヤマサナエの産卵を見に行きましたが,不発でした.途中はフタスジサナエに切り替えて観察をしました.さすがにオスの姿もだんだんと少なくなり始めており,あちこちにぽつんと止まっているのを多く見かけました.オスが減り始めると不思議とメスが目につき始めます.今日は,休むメス,ちょっと変なメス,産卵メスの三者に出会いました.


▲まずは休むメス.フタスジサナエ.▲

成熟したメスに,産卵以外で出会うのはあまり多くはありません.まずは地面に止まって休むメスを見ました.次にちょっと変なメスです.このメス道を歩いていたら飛び立ち,池の水面で2回ほど打水(水飲みかもしれない)をして,岸に戻って草に止まりました.


▲水面に出て打水し,岸辺の草に止まったフタスジサナエのメス.▲

よく見ると腹端に卵塊が見えています.これは産卵を開始するかと待つことにしました.しかし一向に産卵をはじめません.いったん飛び立ちましたが,産卵するかと思うと,草にもつれ込むように飛んでまた止まりました.端から見るとうまく飛べない未熟なトンボのような動きです.


▲まだ腹端に卵塊が残っている.▲

しばらく様子を見ていますと,腹部を曲げ,後ろ脚で腹端をごそごそいじっています.何をやっているのだろうと興味が先に立ちシャッターを切るのを忘れてしまいました.実は腹端の卵塊を脚でこすり落としていたのです.ちょっと珍しい行動でしたね.記録できずに残念です.


▲腹端に卵塊がなくなっている.腹部第10節もまっすぐになった.▲

その後どうするか見ていると,すぐ横で別のメスが産卵をしているのを見つけました.このメス上下動が激しくて写真に撮りにくい動きをしていました.


▲産卵するフタスジサナエのメス.▲


▲体をひねって卵塊を飛ばす直前.▲


▲産卵は続く.▲

と,こんな感じの一日でした.ヨツボシトンボ,トラフトンボも活動をしていましたが,だんだんと池の春のトンボも数が減っているように思えます.今賑やかなのは川でしょうか.ヤマサナエの個体数も今年は少なそうですし,こちらはこれくらいにして,川のトンボ観察に方向転換するときが来たかもしれません.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 961. フタスジサナエのメスたち.2024.5.17. はコメントを受け付けていません