No.791. コフキトンボのようすを見に.2021.6.15.

今日も意外と晴れていたので,出かける予定をしていませんでしたが,近くの池にコフキトンボの発生状況を確認に行ってきました.コフキトンボは昨年ほど多くはありませんでしたが,ざっと見積もって,池全体で50個体以上いる感じでした.まあ,こんなものでしょうか.

▲コフキトンボのメスたち.▲

あと,ウチワヤンマも昨年の半分ぐらいはいたでしょうか.ただ動きはほとんどなく,交尾状態が一つと,交尾で飛び回っているのを見ただけです.目の届く範囲では産卵をしませんでした.

▲ウチワヤンマの交尾と交尾態での産卵場所探索.▲

あとは,コシアキトンボたちが元気に活動していたのと,オオヤマトンボが産卵にやって来ました.もうすっかりこの池は初夏の雰囲気です.

▲コシアキトンボの追いかけ合い.▲

▲オオヤマトンボの打水産卵.▲

次の予定は,今月下旬のキイロサナエです.晴れるといいですけど….

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No.790. 奇跡の一枚!.2021.6.10.

今日は,キイロサナエの発生状況を調べに行ってきました.ちょっと時期的に早いのですが,この数日の晴れ続きもいよいよ終わり,次の好天の予想がつかないので,行ってみることにしました.その他,ショウジョウトンボとオオイトトンボをセカンドターゲットとしました.ショウジョウトンボはビデオに撮りたいのと,オオイトトンボは,セスジイトトンボに刺激されて,クロイトトンボ属を見たくなったためです.

さてタイトルですが,「奇跡の一枚」というたいそう大げさなタイトルです(笑).でもそう言っても言いすぎではないと,私的には信じています.それはショウジョウトンボの観察の時,交尾の写真が撮れたことです.

▲ショウジョウトンボの交尾.連写していたので,実は2枚撮れている.▲

ご存じと思いますが,ショウジョウトンボのメスは動きまわって打水産卵します.そしてオスはそれを見つけると,急襲するように接近します.メスはすごいスピードで逃げます.オスが運良く(メスにとっては運悪く)捕まえたとき,ほんの数秒,すばしこく飛びながら交尾を行い,すぐにメスを放します.連写記録によると,この写真の交尾の場合は,交尾を始めたのが13:21’59″で,交尾を解いたのが13:22’02″,つまりわずか3秒間だけ交尾態になっていたのです.

つまり,このような写真を撮るには,この3秒の間に,トンボが目の前に来ること,それがファインダーに入ること,そのとき偶然にピントが合っていること(合わす時間はまずない),そのときシャッター速度を高速に合わせていること,シャッターが切れること,そして順光の位置であること.これだけの偶然が積み重ならないと写真になりません.こんな幸運,多分二度とないでしょうね.

▲産卵するショウジョウトンボ.このメスを上のオスが捕まえたのだ.▲

産卵していたショウジョウトンボは,上の1頭だけで,ビデオにはなりませんでした.

ということで,順序が後先になりましたが,キイロサナエの観察から始めます.9:30ぐらいに現地に入りました.もう気温は30℃を超えようかというぐらい高くなっていました.キイロサナエはいました.もう成熟して水辺に出てきていました.

▲水辺で活動しているキイロサナエのオスたち.▲

近くの休耕田の湿地では,ハラビロトンボがたくさん発生していて,オスたちが追いかけ合いをしていました.湿地には,ホソミオツネントンボやモートンイトトンボもいました.またヤマサナエが,キイロサナエを避けるように,少し離れたところに止まっていて,私が近づくと,逃げて樹上に上がって行きました.また老熟したシオヤトンボが産卵をしていました.前にオグマサナエのところでも書きましたが,老熟した独特の色彩が私は好きです.シオヤトンボのメスは無彩色になります.複眼もねずみ色に輝きます.金属製のフィギアみたいな,こんな渋いトンボはなかなかいません.

▲ハラビロトンボたちが湿地の上で追いかけ合いをして活動している.▲

▲ホソミオツネントンボのタンデム.このメスまだ褐色のままだ.▲

▲モートンイトトンボのオス.モートンイトトンボはたくさん発生していた.▲

▲地面に止まっていたヤマサナエのオスが,逃げて樹上に飛び上がった.▲

▲老熟したシオヤトンボの産卵.無彩色の渋い色彩のトンボだ.▲

あと,サラサヤンマが摂食飛翔をしていたり,樹林の中の湿地で縄張り飛翔をしていました.写真はすべて失敗.オオシオカラトンボとシオカラトンボも同じ場所で活動していました.

さて,時刻は11:00を過ぎました.多分気温は30℃を超えています.キイロサナエたちはいつの間にか水辺から消えていました.あまりに暑すぎるのかも知れません.日陰に1,2頭だけ残っていました.これでは今日はキイロサナエの産卵は期待できそうにありませんので,ショウジョウトンボやオオイトトンボをを見に行くことにしました.ショウジョウトンボは最初に紹介したとおりです.オオイトトンボは,交尾,産卵など,繁殖活動を始めていました.彼らはこの気温も何ともないのでしょうね.

▲オオイトトンボのタンデム.▲

▲オオイトトンボの交尾.上のタンデムの個体が交尾をした.▲

▲タヌキモに産卵するオオイトトンボのカップル.▲

イトトンボたちはやはり沈水植物が好きですね.組織がやわらかいからでしょう.オオイトトンボたちはタヌキモに産卵していました.最近ライブビュー撮影をやってみたい気持ちが強く,このオオイトトンボも試してみました.液晶モニターを引き出して上から見られるようにして,カメラを水面ぎりぎりに置いて撮ってみました.何か感じが違う写真になりました.カメラの位置が,水中から出る光の臨界角を超える位置になっており,水中のタヌキモが見えなくなって,水面に反射するオオイトトンボだけが目立つ写真になりました.

▲一つ上の写真と同じ場所で産卵している.▲

ここではもう一つ嬉しいおまけがありました.モートンイトトンボが池岸に集まっておりどうやらメスが産卵しそうなのです.そういえば,もう正午を回っており,産卵時刻になっています.

▲モートンイトトンボのオスとメスが集まっていた.写っていないがメスも3頭いた.▲

先ほどの湿地にもモートンイトトンボはいましたが,ここは開放的な植生で,産卵してくれたら写真に撮るには絶好のロケーションです.しばらく岸辺に座り込んでトンボの動きを見ていました.すると,止まっていた1頭のメスが,ハリイの茎に産卵するときのように腹部を曲げ始めました.

▲腹部を曲げて産卵のような動きを見せたモートンイトトンボのメス.▲

ほどなく,メスたちが(そう複数のメスです),水面にたおれたハリイに産卵を始めました.この産卵の恰好こそ,私のイメージするモートンイトトンボの産卵です.開放的な場所なので,カメラの位置も自由に決められ,これもまたラッキーでした.

▲倒れたハリイの茎に産卵するモートンイトトンボのメス.▲

モートンイトトンボのメスの色彩は独特の薄緑色です.大きく引きのばしてみると,とても美しい色です.イトトンボというのは小さくて野外でははっきりと見えないので,このように改めて観るとなんか新鮮です.さて,ここでもライブビュー撮影をしてみました.また,立ち上がったハリイの茎の根元に産卵する別の姿勢の個体も撮っておきました.

▲水面ぎりぎりライブビュー撮影.▲

▲立ち上がったハリイの茎に産卵するモートンイトトンボのメス.▲

最近イトトンボがいないことを嘆いてばかりいましたが,やはりいるところにはまだまだいてくれるので,ほっとします.これ以外には,キイトトンボ,クロイトトンボがいました.例によってクロイトトンボは個体数は多かったのですが,写真は少ないのです.

▲夏のイトトンボキイトトンボも,本格的ではないものの,活動を始めていた.▲

▲クロイトトンボたちもたくさん活動をしていた.▲

では,今日これ以外に記録できたトンボたちの紹介をして,今日の観察記を終えたいと思います.いたのは,モノサシトンボ,ハッチョウトンボ,ハグロトンボ,ムカシヤンマなどです.写真はありませんが,アジアイトトンボがモートンイトトンボに混じって活動しており,ギンヤンマやクロスジギンヤンマも飛んでいました.

▲水面ぎりぎりライブビュー撮影.モノサシトンボ.▲

▲ハッチョウトンボのオス.▲

▲ハグロトンボのオス.まだ羽化して間もない感じだ.▲

▲ムカシヤンマのオス.翅も白くなり,老熟している.▲

やはり6月は,新旧取り混ぜて,色々なトンボたちが見られる季節です.梅雨の合間の晴れ3連チャン,いささか疲れました.明日は休養します.

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No.789. 昨日の恐怖を晴らすため.2021.6.9.

昨日のトンボ調査は,恐怖そのものだと書きました.今日は昨日のような感覚は味わいたくないので,必ずトンボに出会えるところに行こうと決め,先日出会ったセスジイトトンボのいた川へ観察に行くことにしました.ここはグンバイトンボやアオサナエもいるので,うまくいけば産卵に出会えるかもしれません.いちおうねらいはセスジイトトンボとグンバイトンボに定めました.

現地に着いたのは9:50くらいでした.グンバイトンボやセスジイトトンボの繁殖活動は日が高く上がってからですので,これでも早いくらいです.ウェーダーに履き替えて,セスジイトトンボ産卵撮影用にビデオ機材もかついで,今日は本格的なコンテンツ作成で攻めることにしました.セスジイトトンボもグンバイトンボも,先日よりたくさん飛んでいました.アオハダトンボはやはり少なかったですけれども….まずはグンバイトンボから.

▲植物の茂っている岸辺に沿って,ツイツイと飛ぶグンバイトンボ.▲

▲オスどうしが出会うと,軍配状の足を開いて,威嚇する.▲

▲日向を飛ぶと,軍配状の白い脚が,陰になって目立たない.▲

11:10,1頭のオスがメスを捕まえタンデムになりました.移精行動は見なかったのですが,続いて交尾です.このオスあんまり上手でないようで何度もやり直して,やっと交尾に至りました.

▲1頭のオスがメスを捕まえ,タンデムになった.▲

▲メスを持ち上げ交尾しようとするも,何度も失敗してやり直していた.▲

▲やっとうまくいったようだ.▲

時間的にセスジイトトンボのタンデムが飛び始め,グンバイトンボの交尾が終わるまでじっと待てませんでした.で,知らぬ間に交尾は終わっていました.まあ,焦らなくても,その辺で産卵を始めるはずです.しばらくして探すことにしました.11:40,産卵しているペアを見つけました.これは多分先ほど交尾していたペアだと思います.

▲例によって歩哨姿勢で産卵するペア.▲

グンバイトンボの歩哨姿勢は,水面に対してほぼ直角に立ち上がるので,斜め上から写真を撮ったのではたいがいオスがピンボケになります.今回は,ライブビューを使って,水面ぎりぎりにカメラを置いて撮ってみましたが,あまりうまくいきませんでした.グンバイトンボの方はそんなこと気にせず,他のオスが近づいてきたら,翅をばたつかせ,軍配状の脚を広げて威嚇します.

産卵はこれ一組しか見られませんでしたが,オスはたくさん飛んでいました.前回来たときは,減少したのではないかと思うほど少なかったのですが,これだけ飛べば問題ないというくらいの数がいました.まあ,グンバイトンボはこれからですから.

さて,次はセスジイトトンボです.前回は久しぶりに出会えたうれしさでいっぱいでした.今日はたくさんいるうちに記録をきちんと撮っておく,という目的で機材を準備しましたので,まずは産卵のビデオ撮影を行いました.今日は全部で5,6組のペアが産卵していました.セスジイトトンボも,今年は数が多そうです.というか,イトトンボ類はこれくらい飛ぶのがふつうです.ビデオはまた後日公開します.

▲セスジイトトンボのオスは,よく見ると,水色がとてもきれいなトンボだ.▲

11:57,タンデムになったペアが,ワンド状になった水が滞留している場所にやって来ました.ここは水がほとんど流れていないので,アオミドロが浮かんでいます.先日のような,流れに洗われる草の方がきれいな感じがしますが,まあ贅沢は言っていられません.

▲ほぼ正午,セスジイトトンボの繁殖活動の始まりだ.▲

▲アオミドロにからめられたコカナダモに産卵をしているようだ.▲

その後数が増えてくると,あちこちで産卵する姿が見られました.産卵基質は,やはりコカナダモが好きなようです.沈水植物は組織がやわらかいからでしょうね.池では,アカミミガメなど外来生物に,沈水植物が完全といってよいほど食い尽くされてしまい,イトトンボが消えています.セスジイトトンボは川でも生活できるイトトンボですから,ここに生き残っているのでしょう.

▲コカナダモに産卵するセスジイトトンボ.▲

▲ライブビューで水面ぎりぎりの位置で撮影したセスジイトトンボの産卵.▲

ところで,今日は面白いものを見ました.セスジイトトンボの潜水産卵です.ムスジイトトンボ,クロイトトンボ,オオイトトンボの潜水産卵は見たことがありますが,セスジイトトンボは今日初めて見ました.完全に水没して産卵していました.

▲水没直前の産卵ペア.メスはすでに潜水している.▲

▲ペアが完全に水中に没した.翅や体に空気の層がついているのが分かる.▲

目的の2種が観察できました.きょうはこの2種にかかりきりでしたので,他のトンボはあまり追いかけていません.撮影できた分だけ簡単に紹介しておきます.まずはオドロキのホンサナエ.この川にはぽつんと止まっているホンサナエをよく目にするのですが,河床は基本的に石ころがゴロゴロという感じで,ホンサナエの好む砂泥底ではないのです.でも毎年のように見られるので,偶産というより,ここで生活しているとみた方が良さそうです.今日はメスでした.時期的にも遅い記録です.

▲ホンサナエのメス.岸辺の植物の中から飛び出してきた.▲

季節が入れ替わるように夏のトンボの羽化が続いていました.一番目立ったのはオジロサナエです.このポイントでは,夏にオジロサナエの姿を見たことがありませんので,繁殖活動はここではやっていないと思います.オジロサナエの幼虫は流下するという説があり,このたくさんのオジロサナエは,幼虫がこの川の上流からやって来て,羽化し,そして成虫は上流へ帰っていくのでしょう.一度この川の上流を探索してみる必要があるかも知れません.他には,コオニヤンマ,オナガサナエの羽化殻がありました.コオニヤンマは川にも現れました.

▲オジロサナエの処女飛行個体.▲

▲コオニヤンマの羽化殻.▲

▲オナガサナエの羽化殻.▲

その他の夏のトンボとしては,ハグロトンボの未熟な個体があちこち飛んでいました.

次はクロイトトンボ.ここは川なのですが,クロイトトンボは川でも平気なようです.セスジイトトンボより個体数が多いぐらいです.ここのクロイトトンボは純粋に川で生活しており,グンバイトンボにちょっかいをかけるくらい同所的に活動しています.クロイトトンボは池だけのトンボといってはいけないようです.

▲セスジイトトンボに混じって産卵活動を行うクロイトトンボ.▲

ここはヤマサナエが4月下旬に羽化するのですが,今年は非常に個体数が少ない感じです.今日も,オスが1頭現れただけでした.

▲ヤマサナエのオス.この個体は少し下流で,メスを待つような行動をとっていた.▲

さて,最後はアオサナエです.うまくいけば産卵観察などと思っていましたが,残念ながら今日も現れませんでした.この川には,この季節アオサナエがたいがいいるのですが,メスが来たのを見た記憶がありません.メスにはあまり好かれない場所なのでしょうか? まあ,オス君たち,正午頃の暑さで,垂直の腹部挙上姿勢をしていました.暑いのにご苦労様.

▲まっすぐ鉛直方向上に腹部挙上姿勢をとるアオサナエのオス.▲

ということで,13:40ごろ,観察を終了しました.気温は33℃でした.北風が吹いて夏のとは逆方向のフェーン現象です.川の中程でまだまだ頑張ってメスを待っているアオサナエ君にさよならを言って,引き上げました.やはり,生きている川でトンボと過ごすのが一番いいですね.ここが浚渫されたりしてなくならないことを祈るばかりです.

▲アオサナエ君,頑張ってください.▲

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No.788. 何もいない川は恐怖そのものだ.2021.6.8.

今日は朝からいい天気です.今日はトンボを見るというより,キイロサナエやキイロヤマトンボの過去の産地へでかけ,まだ見られるかどうかを調べることにしました.トンボ観察というよりトンボの状況調査です.

まずはキイロヤマトンボ.兵庫県のかつての有名生息地へでかけ,9:30から11:00まで飛ぶのをじっと待つという観察です.日射しがきつく結構つらかったです.結果は,10:00過ぎ,ヤマトンボ科のメスが下流から上流へ,そして少し後,上流から下流へ飛びました.次に10:20ごろ,ヤマトンボ科のオスが上流から下流へ飛び,目の前でUターンして上流へ飛び去りました.1時間30分でこれでおしまい.遠くて確認ができませんでしたので,コヤマトンボの可能性もありますが,飛び方はキイロヤマトンボのようでした.

かつては,10分とあけず,オスが往ったり来たりしていた川でした,本当に減ってしまいました.写真は撮れませんでした.他には,グンバイトンボのオス1頭が足下を飛んだのと,アオハダトンボのオス1頭が遠くの木の葉に止まっていたのと,シオカラトンボ1頭が通過しただけ.以上終わりです.まったくトンボがいないといってよい状態です.でもグンバイトンボとアオハダトンボがまだかろうじて生き残っていたのはよかったです.

次は気分を変えてムカシヤンマの産卵を見に行きました.しかしこれは全くの不発(想定内).昼食をとって,次はキイロサナエのかつての産地,私の研究フィールドだったところへ行きました.しかし,出会ったトンボは,田んぼに止まるシオカラトンボ1頭のみ,あとはまったくトンボの姿がありません.本当に何もいません.川岸を歩いてもトンボ1頭飛びません.幼虫をたくさんすくった素掘りの用水路も,U字溝に変えられていました.川の水はもやがかかったような濁りがあります.川面をのぞいてもトンボ1匹止まっていません.キイロサナエが何百といたあの時の姿が嘘のようです.見かけはそれなりなのですが….もう川が死んでいるような印象です.

▲景観としてはそれほど悪くはないが,本当に何もいない.▲

ここまでで14:00を過ぎました.結構歩き回って疲れましたので,アオサナエを見に行くことにしました.先日の工事が終わっていると観察がしやすくなりますので,状況の確認です.工事は終わっているようで,川にはアオサナエのオスが2頭,アオハダトンボが1オス2メス見つかりました.朝8:00頃家を出て,やっとトンボに接近遭遇できました.

▲アオハダトンボのメス.今年は数が非常に少ない.▲

▲アオサナエのオス.▲

今日最後は,サラサヤンマの産卵観察です.もう夕方になり,時刻的にはぴったり.移動し車を降りたときでした.空に黒い雲がかかり雷が鳴りました.そしてフロントガラスに水滴が….嫌な予感がし観察を中止.この判断は正解でした.数分後ものすごい夕立のような雨が降ってきました.天気予報通りです.ということで今日の観察は終わりにしました.

しかし,今日の二つの川で感じましたが,本当に恐ろしいくらいトンボがいません.いずれも1990年代のトンボの大産地でした.景観は今でもあまり変わっていません.小さな頃から虫に囲まれて育ってきた私にとって,穏やかな晴れの日に,植生豊かな川のそばを歩いて,何も飛ばないというのは,信じられない経験です.いつもトンボのいるところをねらって観察に出かけているので,まだトンボは生き残っているという印象が強いのですが,実態はまったく違っていました.今までこういった疲れるだけの調査は避けていました.しかし,今日,ちょっと本気を出して調査して,なんか,ゾッとしたものを感じました.

私は,仕事で,福島県第一原発事故のあった近くの南相馬市の小高区へ,事故後3年目に入ったことがあります.当時まだ避難指示解除準備区域で,住民の方々は避難して自宅には帰っていませんでした.そこを車で走ると,信号は点灯し,町並みはそのままの姿で残っているのですが,まったく人がいないのです.だれも歩いていません.町並みがあるのに人がいない…,今日の二つの川,特に二番目の川の印象が,このときの小高区に通じるものがありました.見かけの環境はほとんど変わらず残っているのにトンボがまったくいない,目に見えない恐ろしいものがそこに存在するような感覚です.小高区では線量計に示される放射能でしたが,ここに存在するものはいったい何なのだろう.やはりケミカルなのだろうか…,今こそ「沈黙の春」を思い起こすときかも知れません.

最後に,二番目の川の,昔日のキイロサナエの写真を掲載しておきたいと思います.

▲キイロサナエのタンデム.こんなのが,あちこちで見られた.▲

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No.787. ちょっと散歩.2021.6.6.

今日は天気もよくなかったので朝から家にいました.午後から青空が見えてきて,ちょっと遠出の買い物のついでに,夕方のトンボ観察をしました.行った場所に湿原があったので,そこでハッチョウトンボを観察しました.

▲ハッチョウトンボのオスとメス(未熟).

ハッチョウトンボのいる湿原でサラサヤンマが夕方の摂食飛行をしていました.おそらくメスを一日待って,今日のお勤めを終えた帰りなのでしょう.メスとは出会えたのでしょうか? 湿原の上を飛び回っていました.

▲夕方の摂食飛翔をするサラサヤンマのオス.▲

本当はムカシヤンマを見に行ったのですが,ムカシヤンマは目の前に止まっていたのを,あっと気がついた途端に飛ばせてしまって,それで今日の出会いはおしまいでした.たった一時間ほどの観察でしたが,まあ,サラサヤンマが元気で活動しているのを見て,ちょっと安心というところでしょうか.

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