No. 841. ミヤマカワトンボの潜水産卵.2022.5.31.

今日は午後から晴れ.半日なのでダビドサナエの探索に行くことにしました.過去の記録地,私の以前に写真撮影したところなどを3カ所回りましたが,全くダビドサナエの姿がありません.もう時期的に遅かったのかもしれませんが,それでも,1,2頭は見つかっても良さそうなものです.というのもそんなに見るのが難しいトンボではないからです.ニホンカワトンボなどももう時期的には終わりですが,それでも少しは見つかります.


▲ニホンカワトンボのオス.3カ所目.▲

ちょっとこの頃ダビドサナエを見ることがないので,心のどこかで少し心配しています,かなり減少したのではないかなどと,...ヤマサナエやアオサナエなどは見つかりますので,サナエトンボが減っているという感じでもありません.


▲ヤマサナエのオス.1カ所目.▲


▲アオサナエのオス.3カ所目.▲

そんな中で,2カ所目,3カ所目の川にミヤマカワトンボがたくさん発生して活動していました.このトンボはお昼から午後に産卵することが多いので,川に転がっている枯れ枝や倒木を見て回りました.


▲ミヤマカワトンボのオス(上)とメス(下).▲

ミヤマカワトンボは夏のトンボというイメージが私の中では強かったのですが,最近はアオハダトンボと同じ春の終わりから初夏のトンボという感じがしています.今日はとにかくたくさん活動していました.2カ所目では産卵している個体は見つかりませんでしたが,同じ川の,より下流部の3カ所目で,2頭のメスが潜水産卵しているのを見つけました.ラッキーなことに翅の一部が水面から出ていたので発見に至ったのです.


▲1頭目の潜水産卵のメス.ミヤマカワトンボ.▲


▲産卵をやめて,少し顔を出し,流れに身を任せている.▲

1頭目は見つけたときに産卵し終わったタイミングだったのか,水底に止まるような仕草や,流れに身を任せるような仕草をしたかと思うと,私が位置を変えようと動いた瞬間に水から出て飛び去ってしまいました.ちょっと残念な気持ちになりましたが,うまいことに,少し向こうにもう1頭翅が水面に出ている状態のメスが見つかり,今日はついていると思いました.


▲木漏れ日の中で潜水産卵するミヤマカワトンボ.▲

潜水産卵している川のトンボを写真に撮ると,体の線がぐにゃぐにゃになるので面白いです.このように最初は翅の一部が水面から出ていますが,ミヤマカワトンボは横に寝るように姿勢を変えて,やがて翅全部が水中に没します.


▲少し体を横に倒し,翅も全部水面下に没した.▲

今度は慎重に移動して,もう少しいい位置から写真を撮ることにしました.できれば光が水の中に射している感じがいいので,逆光で体を横向きにねらえる位置がベストです.


▲狙ったような感じの写真になった.▲

今日はダビドサナエを探しに来たのですが,例によって,そこにいたトンボを観察するという鉄則で,最後はミヤマカワトンボとかなりの時間過ごしました.もちろんビデオにも撮りました.最近のカメラはビデオも撮れるので本当に助かります.

ところで,今日この場所へ来たのは,実はもう一つ理由があります.昨日書いたように,道路工事で潰れたヒメサナエやオジロサナエの産卵観察場所がどうなっているかを見に来たのです.結果は,ほぼ完全に改修されていました.


▲道路工事の関連工事によってコンクリートで三面張りにされてしまった.▲


▲2013年,同じ場所の状態.コンクリートタイル張りの古い護岸はそのまま.▲

護岸が崩れて,右斜面から湧き水が流れ込んでいるところが,オジロサナエの産卵場所になっていました.またその前の川の流れはヒメサナエの産卵場所でした.工事は5年ぐらい前から始まってやっと終わりました.産卵ポイントは改変されてしまっていますが,付近は意外と元の通りに復元されていて(最近の工事はかなり環境に配慮されていると感じた),この初夏にヒメサナエやオジロサナエを調査してみる価値はありそうです.

ということで,今日はここまでです.

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No. 840. アオヤンマの生存確認調査.2022.5.30.

今日は午前中は晴れるとのことでした.午後からは雨になる模様で,短時間で行える調査として,昨年姿が見えなくなったアオヤンマの確認に出かけてきました.昆虫の場合,一年で消滅を語るのは困難です.もっとも,見つけられなかったときは悲観的になるものですけど...

着いたのは9:00少し前.もう空は雲が全天を覆っていて,時々その隙間から日が射す程度になっています.生息地はコシアキトンボが摂食飛翔している以外,トンボの動きはありません.30分ほどしても全く飛びません.ただ,コシアキトンボではないようなトンボが時々樹木から抽水植物帯の方に降りてくるのが見えます.でも遠くの方で,種名が確認できません.仕方ないので,付近の池に避難していないか回ってみましたが,やはり姿はありません.

最後にもう一度最初の池に戻りました.すると,1頭だけアオヤンマと確認できるほど近くを飛ぶ個体がありました.生き残っていたようです.アオヤンマは生息地に張り付いたような活動をするので,天気のよい日に1時間も待っていると必ず姿を見ることができるトンボです.それが,これほど見つかりにくいのは,個体数が非常に少ないことを意味しているのだと思います.やはりこの場所では絶滅に近い状態であることは間違いないでしょう.翅の先が破け,見るからに末期的なイメージを漂わせるオスでした.


▲ただ1頭活動していたアオヤンマのオス.▲

昨日今日と,トンボの危うい状況ばかりをお伝えしています.でも,こうやって,一カ所,また一カ所とトンボの活動している場所が消えていくのです.生息地の消失,改変,また見た目の環境は全く変化ないのに消失,と10年以上も観察を続けていると,減少傾向を肌で感じることができます.ここのアオヤンマが生き残っていってほしいものです.

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No. 839. また一つトンボの観察地が打撃を...2022.5.29.

今日からは中流域のトンボ観察に切り替えます.まずはアオハダトンボ,グンバイトンボ,アオサナエの観察です,と,いつもの観察場所へ行きましたら,すっかり川の様子が変わっていました.


▲アオハダトンボの観察地の一つの川.重機で完全に平らにされている.▲


▲上と同じ場所のこれまでの状態.向かって右側の流れが埋め立てられている.▲

植生がほとんど剥ぎ取られ,堆積していた土砂が約50cmほど掘り下げられていました.二つに分かれていた流れは,向かって左側の一つだけを残して埋め立てられています.そして重機で平らにされていました.去年の夏に来たのが最後ですので,それ以降に工事がなされたようです.これでこの観察地も終わりか... ちょっとショックを受けながら,とりあえず生き残っているトンボたちを探そうと,いつもより広い範囲を捜索しました.

まず降りて見つけたのはアオサナエです.流れが全般に浅く平らになっていて,流れ全体が明るくなっているので,アオサナエ好みの状態になっているせいでしょうか,オスが10頭以上集まっていました.


▲アオサナエのオスたち.アオサナエは以前より多く集まっている感じがした.▲

これだけいればメスも来るかもしれないと思い楽しみにしながら探索を続けました.しかしアオサナエの嬉しい状況に反して,アオハダトンボ,グンバイトンボ,セスジイトトンボなど,植物内産卵をして,流れの植生内に幼虫が潜んでいるトンボたちの姿が全くありません.クロイトトンボがちょっと飛んでいるだけです.


▲植物内産卵をするトンボでは,まずクロイトトンボが見つかった.▲

水際を歩きながらさらに捜索を続けますと,水際から飛び立つコオニヤンマの処女飛行が見られました.続いて,オジロサナエの処女飛行も見られました.その後も処女飛行は数多く見られ,コオニヤンマは7頭,オジロサナエは6頭飛び立つのを観察しました.アオサナエにしても,コオニヤンマ,オジロサナエにしても,砂の中に潜り込んで生活している幼虫は無事羽化に至っているようです.


▲コオニヤンマの羽化.▲


▲オジロサナエの,処女飛行に飛び立って止まった個体.▲

川をよく見てみると,水の流れている部分は結構大きな岩も転がっていて,どうやら重機は,土砂が堆積している部分だけを掘り起こしたように見えます.それでサナエトンボたちは無事なのでしょう.その後もサナエトンボたちは次々に見つかります.


▲ヤマサナエ.2頭見つかった.▲


▲オナガサナエの羽化殻.▲


▲ホンサナエは3頭も見つかった.ここでは毎年のように見つかる.▲

ホンサナエのメスは,卵塊をつくるような動きをし,飛んで打水する行動も見られましたが,卵塊は見られませんでした.

ここで以前から見られたサナエトンボはすべてその姿を見ることができ,どうやら流れそのものに手がつけられていないことは事実のようです.しかし,均翅類のトンボの姿が見えません.が,いつもの場所からかなり離れたところで,やっと1頭のアオハダトンボを見つけました.


▲やっと見つけたアオハダトンボ.これ1頭だけしか見つけられなかった.▲

かろうじて生き残っていました.さらにグンバイトンボも1頭,セスジイトトンボも3頭(うち2頭はタンデム)見つけました.ほんの少しだけ生き残っているみたいです.


▲グンバイトンボのオス.同一個体.


▲セスジイトトンボのオス.▲

まだ付近の流程をすべて捜索したわけではありませんので,均翅類も生き残っているかもしれません.さらに上流の方には植生も残っているみたいですし,そちらへ避難しているかもしれません.しかしこの少なさは,ほぼ壊滅状態と言ってよいでしょう.特にアオハダトンボやグンバイトンボのような,他の個体群から孤立している種は,これだけ少なければ,アリー効果によってこの生息場所では絶滅するかもしれません.今後しばらくは目が離せません.

さて,ここの調査はこれくらいにして,もう一つ今日は行こうと思っているところがあります.掲示板によく投稿してくださるRONNIEさんからの情報で,私たちが共通に知っている池でムスジイトトンボが羽化したということなので,それを見に行くつもりです.ムスジイトトンボは,最近,たくさん集まっているところが少ないので,状況を知りたいと考えていました.結果は,たくさん集まっていました.ただオスばかりで,潜水産卵していないかと水中に目を凝らしたり,周りの草むらなどを探し回りましたが,メスは見つかりませんでした.


▲水面の浮遊物に止まるムスジイトトンボのオスたち.▲

よく見ると,中にセスジイトトンボも混じっていました.少し小型で,頭部と胸部の青の部分が,飛んでいるときにややうす緑色に見え,アオモンイトトンボみたいに感じられるのがセスジイトトンボでした.


▲セスジイトトンボのオス.眼後紋も大きく肩縫線に淡色部が入っている.▲

下の写真は,この池のムスジイトトンボと先の川で見つけたセスジイトトンボの比較です.上の写真と比べれば,セスジイトトンボとわかります.


▲ムスジイトトンボとセスジイトトンボの比較.▲

ということで,今日はショックを受けましたが,トンボたちの復活を望みたいものです.そういえば,よく出かけていたヒメサナエとオジロサナエの繁殖場所も少し以前に破壊されたのですが,ここもまた一度どうなっているか見に行くことにしましょう.

最後にゲストです.今日はイシガケチョウを見ました.温暖化で北上しているのではないかと言われているチョウです.翅の破れもない新鮮な個体でしたので,このあたりで羽化したのかもしれません.


▲今日のゲストは,イシガケチョウ.▲

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No. 838. 源流域の観察終わり.2022.5.28.

ムカシトンボ,クロサナエと源流域のトンボ観察が続き,今日はその最後のヒメクロサナエを見に行きました.今日は朝から活動が活発で,着いて1時間もしないうちに,メスが2頭,上流に向かって飛びました.オスも時々流れに降りてきたり,流れの上を旋回したり,ホバリングしたりして,メスを探しています.


▲ヒメクロサナエのオスは,時々流れに降りてきてメスを待っている.▲

しかしながら,12:30まで待機しましたが,産卵には来ませんでした.今年はヒメクロサナエには完全に振られてしまいました.代わりにクロサナエは,オスもメスも姿を見せてくれました.先日もそうでしたが,クロサナエは12:00前後に産卵にやってきます.


▲クロサナエのオス.ヒメクロサナエに混じって時々流れに降りてくる.▲


▲産卵にやってきたクロサナエのメス.▲

ということで,ほとんど報告することがありません.これで源流域の観察を終え,今度は中流域のトンボたちを追いかけます.アオサナエ,アオハダトンボ,グンバイトンボ,キイロサナエなどです.5,6月は本当に忙しい毎日です.

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No. 837. クロサナエが活動を始めました.2022.5.24.

今日は源流域のトンボのうち,クロサナエを見に行きました.雨の後の晴れ三日目で,ちょっと不安がありましたが,雨は一日だったし,クロサナエも繁殖活動を始めたばかりだろうということで,行ってみることにしました.

9時少し前に到着し,早速観察ポイントに位置取りしました.小型のサナエトンボが時々水面を飛びます.9:08には,クロサナエのメスも入ってきましたが,これは2,3回旋回してすぐに逃げてしまいました.9:30ぐらいまで,ヒメクロサナエと思われるオスが出入りしましたが止まることはありませんでした.その後動きがなくなりました.そこで少し流れに沿って歩いてみますと,ヒメクロサナエのオスが止まっているのに出会いました.まだ淡色部が黄色みを帯びていて,成熟したところという感じです.


▲流れの畔に止まるヒメクロサナエのオス.▲

▲ヒメクロサナエのオスは全部で3頭見かけた.▲

しばらく待ちましたが,トンボに動きがなく,だんだんと雨の後の晴れ三日目のジンクスが当たりそうな気配がしてきました.でも,11:05ごろ,クロサナエのメスが産卵に入りました.

▲最初に産卵に入ってきたクロサナエのメス.短時間で飛び去った.▲

11:27に,2頭目のクロサナエが入りました.さらに続いて,11:58ごろに3頭目のメスが入りました.いずれも短時間で産卵を終えて飛び去りました.これらはいずれも産卵が終わると,静止をしてから飛び去りました.


▲2回目に入ってきたクロサナエの産卵.▲


▲3回目のクロサナエの産卵.▲

3頭入ってくれば十分成果があったといえますので,次は,今年計画している「造成湿地」の調査に出かけました.調査の目的はサラサヤンマの存在確認ですがこれは見つかりませんでした.いたのは,ヤマサナエ,コサナエ,オオイトトンボ,ハラビロトンボなどでした.


▲コサナエのオス.川に止まっていた.▲


▲ヤマサナエのオス(上)とメス(下).▲


▲オオイトトンボの産卵.▲

調査が終わってからまだ時間がありましたので,サラサヤンマを見に行くことにしました.たくさんいれば,ちょうど産卵に来る時間帯なので,粘ってみようかと考えました.しかし,いたのは2頭のオスだけでした.湿地は乾ききっており,ちょっと状況はよくなく,あまり期待ができないので,30分ほどで終わりにしました.


▲薄暗いところで縄張り飛翔をしていたサラサヤンマのオス.▲


▲明るいところで摂食飛翔をしていた別のサラサヤンマのオス.▲

ということで,結構歩き回りましたので,疲れました.今日はここまでです.

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