No. 839. また一つトンボの観察地が打撃を...2022.5.29.

今日からは中流域のトンボ観察に切り替えます.まずはアオハダトンボ,グンバイトンボ,アオサナエの観察です,と,いつもの観察場所へ行きましたら,すっかり川の様子が変わっていました.


▲アオハダトンボの観察地の一つの川.重機で完全に平らにされている.▲


▲上と同じ場所のこれまでの状態.向かって右側の流れが埋め立てられている.▲

植生がほとんど剥ぎ取られ,堆積していた土砂が約50cmほど掘り下げられていました.二つに分かれていた流れは,向かって左側の一つだけを残して埋め立てられています.そして重機で平らにされていました.去年の夏に来たのが最後ですので,それ以降に工事がなされたようです.これでこの観察地も終わりか... ちょっとショックを受けながら,とりあえず生き残っているトンボたちを探そうと,いつもより広い範囲を捜索しました.

まず降りて見つけたのはアオサナエです.流れが全般に浅く平らになっていて,流れ全体が明るくなっているので,アオサナエ好みの状態になっているせいでしょうか,オスが10頭以上集まっていました.


▲アオサナエのオスたち.アオサナエは以前より多く集まっている感じがした.▲

これだけいればメスも来るかもしれないと思い楽しみにしながら探索を続けました.しかしアオサナエの嬉しい状況に反して,アオハダトンボ,グンバイトンボ,セスジイトトンボなど,植物内産卵をして,流れの植生内に幼虫が潜んでいるトンボたちの姿が全くありません.クロイトトンボがちょっと飛んでいるだけです.


▲植物内産卵をするトンボでは,まずクロイトトンボが見つかった.▲

水際を歩きながらさらに捜索を続けますと,水際から飛び立つコオニヤンマの処女飛行が見られました.続いて,オジロサナエの処女飛行も見られました.その後も処女飛行は数多く見られ,コオニヤンマは7頭,オジロサナエは6頭飛び立つのを観察しました.アオサナエにしても,コオニヤンマ,オジロサナエにしても,砂の中に潜り込んで生活している幼虫は無事羽化に至っているようです.


▲コオニヤンマの羽化.▲


▲オジロサナエの,処女飛行に飛び立って止まった個体.▲

川をよく見てみると,水の流れている部分は結構大きな岩も転がっていて,どうやら重機は,土砂が堆積している部分だけを掘り起こしたように見えます.それでサナエトンボたちは無事なのでしょう.その後もサナエトンボたちは次々に見つかります.


▲ヤマサナエ.2頭見つかった.▲


▲オナガサナエの羽化殻.▲


▲ホンサナエは3頭も見つかった.ここでは毎年のように見つかる.▲

ホンサナエのメスは,卵塊をつくるような動きをし,飛んで打水する行動も見られましたが,卵塊は見られませんでした.

ここで以前から見られたサナエトンボはすべてその姿を見ることができ,どうやら流れそのものに手がつけられていないことは事実のようです.しかし,均翅類のトンボの姿が見えません.が,いつもの場所からかなり離れたところで,やっと1頭のアオハダトンボを見つけました.


▲やっと見つけたアオハダトンボ.これ1頭だけしか見つけられなかった.▲

かろうじて生き残っていました.さらにグンバイトンボも1頭,セスジイトトンボも3頭(うち2頭はタンデム)見つけました.ほんの少しだけ生き残っているみたいです.


▲グンバイトンボのオス.同一個体.


▲セスジイトトンボのオス.▲

まだ付近の流程をすべて捜索したわけではありませんので,均翅類も生き残っているかもしれません.さらに上流の方には植生も残っているみたいですし,そちらへ避難しているかもしれません.しかしこの少なさは,ほぼ壊滅状態と言ってよいでしょう.特にアオハダトンボやグンバイトンボのような,他の個体群から孤立している種は,これだけ少なければ,アリー効果によってこの生息場所では絶滅するかもしれません.今後しばらくは目が離せません.

さて,ここの調査はこれくらいにして,もう一つ今日は行こうと思っているところがあります.掲示板によく投稿してくださるRONNIEさんからの情報で,私たちが共通に知っている池でムスジイトトンボが羽化したということなので,それを見に行くつもりです.ムスジイトトンボは,最近,たくさん集まっているところが少ないので,状況を知りたいと考えていました.結果は,たくさん集まっていました.ただオスばかりで,潜水産卵していないかと水中に目を凝らしたり,周りの草むらなどを探し回りましたが,メスは見つかりませんでした.


▲水面の浮遊物に止まるムスジイトトンボのオスたち.▲

よく見ると,中にセスジイトトンボも混じっていました.少し小型で,頭部と胸部の青の部分が,飛んでいるときにややうす緑色に見え,アオモンイトトンボみたいに感じられるのがセスジイトトンボでした.


▲セスジイトトンボのオス.眼後紋も大きく肩縫線に淡色部が入っている.▲

下の写真は,この池のムスジイトトンボと先の川で見つけたセスジイトトンボの比較です.上の写真と比べれば,セスジイトトンボとわかります.


▲ムスジイトトンボとセスジイトトンボの比較.▲

ということで,今日はショックを受けましたが,トンボたちの復活を望みたいものです.そういえば,よく出かけていたヒメサナエとオジロサナエの繁殖場所も少し以前に破壊されたのですが,ここもまた一度どうなっているか見に行くことにしましょう.

最後にゲストです.今日はイシガケチョウを見ました.温暖化で北上しているのではないかと言われているチョウです.翅の破れもない新鮮な個体でしたので,このあたりで羽化したのかもしれません.


▲今日のゲストは,イシガケチョウ.▲

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No. 838. 源流域の観察終わり.2022.5.28.

ムカシトンボ,クロサナエと源流域のトンボ観察が続き,今日はその最後のヒメクロサナエを見に行きました.今日は朝から活動が活発で,着いて1時間もしないうちに,メスが2頭,上流に向かって飛びました.オスも時々流れに降りてきたり,流れの上を旋回したり,ホバリングしたりして,メスを探しています.


▲ヒメクロサナエのオスは,時々流れに降りてきてメスを待っている.▲

しかしながら,12:30まで待機しましたが,産卵には来ませんでした.今年はヒメクロサナエには完全に振られてしまいました.代わりにクロサナエは,オスもメスも姿を見せてくれました.先日もそうでしたが,クロサナエは12:00前後に産卵にやってきます.


▲クロサナエのオス.ヒメクロサナエに混じって時々流れに降りてくる.▲


▲産卵にやってきたクロサナエのメス.▲

ということで,ほとんど報告することがありません.これで源流域の観察を終え,今度は中流域のトンボたちを追いかけます.アオサナエ,アオハダトンボ,グンバイトンボ,キイロサナエなどです.5,6月は本当に忙しい毎日です.

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No. 837. クロサナエが活動を始めました.2022.5.24.

今日は源流域のトンボのうち,クロサナエを見に行きました.雨の後の晴れ三日目で,ちょっと不安がありましたが,雨は一日だったし,クロサナエも繁殖活動を始めたばかりだろうということで,行ってみることにしました.

9時少し前に到着し,早速観察ポイントに位置取りしました.小型のサナエトンボが時々水面を飛びます.9:08には,クロサナエのメスも入ってきましたが,これは2,3回旋回してすぐに逃げてしまいました.9:30ぐらいまで,ヒメクロサナエと思われるオスが出入りしましたが止まることはありませんでした.その後動きがなくなりました.そこで少し流れに沿って歩いてみますと,ヒメクロサナエのオスが止まっているのに出会いました.まだ淡色部が黄色みを帯びていて,成熟したところという感じです.


▲流れの畔に止まるヒメクロサナエのオス.▲

▲ヒメクロサナエのオスは全部で3頭見かけた.▲

しばらく待ちましたが,トンボに動きがなく,だんだんと雨の後の晴れ三日目のジンクスが当たりそうな気配がしてきました.でも,11:05ごろ,クロサナエのメスが産卵に入りました.

▲最初に産卵に入ってきたクロサナエのメス.短時間で飛び去った.▲

11:27に,2頭目のクロサナエが入りました.さらに続いて,11:58ごろに3頭目のメスが入りました.いずれも短時間で産卵を終えて飛び去りました.これらはいずれも産卵が終わると,静止をしてから飛び去りました.


▲2回目に入ってきたクロサナエの産卵.▲


▲3回目のクロサナエの産卵.▲

3頭入ってくれば十分成果があったといえますので,次は,今年計画している「造成湿地」の調査に出かけました.調査の目的はサラサヤンマの存在確認ですがこれは見つかりませんでした.いたのは,ヤマサナエ,コサナエ,オオイトトンボ,ハラビロトンボなどでした.


▲コサナエのオス.川に止まっていた.▲


▲ヤマサナエのオス(上)とメス(下).▲


▲オオイトトンボの産卵.▲

調査が終わってからまだ時間がありましたので,サラサヤンマを見に行くことにしました.たくさんいれば,ちょうど産卵に来る時間帯なので,粘ってみようかと考えました.しかし,いたのは2頭のオスだけでした.湿地は乾ききっており,ちょっと状況はよくなく,あまり期待ができないので,30分ほどで終わりにしました.


▲薄暗いところで縄張り飛翔をしていたサラサヤンマのオス.▲


▲明るいところで摂食飛翔をしていた別のサラサヤンマのオス.▲

ということで,結構歩き回りましたので,疲れました.今日はここまでです.

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No. 836. 近所の公園で.2022.5.22.

今日はいい天気ですが,孫が来ていて,どこへも行けません.そこで,散歩という口実で,孫と一緒に近所の公園に出かけてきました.ここは,夏にタイワンウチワヤンマを見に来ることが多い公園ですが,この時期に行くのは,実は初めてです.何がいるのかそういう意味では楽しみです.

まずはシオカラトンボ,クロイトトンボ,ショウジョウトンボなどの普通種です.


▲シオカラトンボの警護産卵.▲


▲クロイトトンボの個体数は多かった.▲


▲産卵するショウジョウトンボのメス.▲

最近クロイトトンボもうじゃうじゃいるところが少なくなってきたので,たくさんいるのは嬉しいことです.スイレンの葉の上を飛び回っていました.そしてもう一つ嬉しかったのが,ヨツボシトンボが飛び交っていたことでした.ヨツボシトンボの次の観察地を探さねばと思っていたので,これくらい(10頭はいた)飛んでおれば,見ていて楽しむことができそうです.


▲ヨツボシトンボのオス.元気に追いかけあいをしていた.▲

そしてもう一つ,フタスジサナエがいたことです.2オス2メス見ました.うち1オス1メスはタンデムになって樹上へ上がりました.他は,産卵に来ていたメスと,水際でメスを待つオスです.


▲産卵にやってきたフタスジサナエ.▲


▲水辺でメスを待つオスのフタスジサナエ.▲

思ってもいないトンボに出会えて,来た甲斐がありました.こんなことでもなければ,今日などは絶対北部へ行っているでしょうね.この公園にも,面白いトンボたちが集まっていることがわかりました.

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No. 835. ムカシトンボを見に行ったが… 2022.5.19.

一昨日の午後あたりから天気が回復し,昨日も晴れ,今日は三日目の晴れの日です.こういう晴れの日が続いたときは,あまり繁殖活動が活発にならないのですが,明日からはまた下り坂になりそうなので,先日の続きで,ムカシトンボを見に行きました.

着いたとき,まず,産卵痕を探しました.それはすぐに見つかりました.写真を撮るにはちょうど都合のよいところに生えている蕗があって,ここに来ればいいと前回思っていたところなのですが,そこにびっしりと付いていました.他にも付いているところがあって,おそらく昨日一昨日の二日の間に一気に産卵に来たのでしょう.


▲いろいろなところに付いていた産卵痕.▲

ちょっといやな感じです.今日は産卵意欲のあるメスがもういないかも…,まあ,仕事の関係で来れなかったので仕方がありません,待つことにしました.9:30ごろにまずオスが飛びました.しかしメスを探すような飛び方ではありません.9:40ごろ,続いてメスが入りました.すぐ近くに止まったのですが,草陰になっていてカメラを向けることが非常に難しい位置です.案の定,ガサゴソやっていたら,すぐに逃げてしまいました.写真は1,2枚しか撮れませんでした.


▲ムカシトンボの産卵.▲

なんと,4時間ぐらい粘りましたが,今日はこれだけでした.オスが2回くらい飛びました.しかし探雌飛翔という感じではありません.晴れて気温も高いのですが,最初のいやな予感が当たりました.写真のムカシトンボの複眼が透き通っています.もう活動期も後半のようです.一昨日と昨日がピークだったのかもしれません.今年はタイミングが外れたかな…

ヒラサナエに転進しました.


▲ヒラサナエの交尾.▲

ヒラサナエもまだ若い感じです.今日処女飛行に飛び立った個体も見ました.ムカシトンボを待つ間も,クロサナエやヒメクロサナエが飛びましたけれども,これも,繁殖活動の飛び方ではなくビュンビュン行ったり来たりするだけでした.今年のこの山は春が遅かったのかもしれません.もう少し時間をおいてまた来ることにしましょう.

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