No. 901. オグマサナエの活動を見に行った.2023.5.2.

そろそろオグマサナエが産卵活動を開始するはずだということで,今年羽化を観察した池に様子を見に行くことにしました.朝,池の堰堤を歩くと,たくさんのコサナエ属のトンボが飛んでいました.ここはなかなかいいところですね.集水域に田畑がないので,おそらく水に薬品や過剰な栄養塩が流れ込まず,水がよい状態に保たれているのでしょう.

飛び交うコサナエ属の正体を確かめようと近づくと,ほとんどがフタスジサナエでした.羽化を観察に来たときはオグマサナエとタベサナエだけだったのですが,その後フタスジサナエが羽化してきたのでしょう.明らかにまだ十分成熟していない,淡色部が黄色の個体ばかりでした.遅れて羽化したことは間違いありません.


▲池の堰堤を飛び回るフタスジサナエたち.まだ十分成熟していない.▲

中にはオグマサナエが混じっていて,それらは淡色部が淡いグリーンをしており,成熟を感じさせる個体でした.


▲フタスジサナエに混じってオグマサナエも堰堤で活動を始めていた.▲

少し池のまわりを歩いて観察を進めると,オグマサナエは,オスたちが池に出てメスを待ちながら繁殖活動を始めています.今日のこの状態は,見事にオグマサナエとフタスジサナエの出現時期がずれていることが表現されていました.そこで次に,オグマサナエの繁殖活動を観察すべく,もっともメスがやって来そうな場所に陣取ることにしました.


▲今日の観察ポイント.▲

産卵は,写真のように,池に覆い被さるような広葉樹の存在する場所で行われることが多いのです.ここが産卵ポイントで間違いないことは,この場所に異常に密度高くオスが集まっていることからも明らかでした.ちょっとオスたちの顔ぶれを並べてみましょう.


▲産卵ポイントと思われるところに集まっているオグマサナエのオスたち.▲

待っていると,10:30ごろに,メスが入りました.しかしこれだけのオスが待ち構えているのです.2秒としないうちに連れて行かれてしまいました.ここはいい場所ですが,メスがオスがたくさんいることを学習してしまうと,きっとここを避けるか時間をずらして産卵に来るようになってしまうでしょう.産卵に適した立体構造の場所ですが,写真に撮るには良くないかもしれません.

少し移動して別の場所も見てみました.ぱらぱらと.別の場所でも,オスが止まってメスを待っている姿が見られました.


▲池のあちこちにオグマサナエのオスがメスを待っているのが観察できた.▲

やはり元の場所がいいようなので,戻ってしばらく待ちましたがメスはやって来ません.本当は雨後の晴れだった昨日がよかったのでしょうね.所用があってくることができなかったのが残念です.そうそう,この場所には,水に落ちて瀕死の状態のタベサナエのメスがいました.ここにはタベサナエも産卵にやって来るようですね.


▲水に落ちて瀕死のタベサナエのメス.救助して陽の当たるところに止めておいた.▲

ということで,今日は別の池に観察に入ることにしました.この時期はいろいろなトンボが出てくるので忙しいです.今年,ヨツボシトンボとトラフトンボの姿をまだ見ていないので,それらを探しに行くことにしました.今年春一番にオツネントンボを観察にいった池へと転進しました.


▲オツネントンボは,老熟していたが,まだ数頭飛んでいた.▲

トラフトンボが1頭だけ飛んでいました.岸に近づかないので,遠くを飛ぶ姿を証拠写真に撮っておきました.


▲トラフトンボ.▲

ここでは,ヨツボシトンボが2頭いて,時々激しいバトルをやっていました.じっと待っていると岸に止まったので,パチリ.


▲ヨツボシトンボのオスたち.▲

そんなとき,メスが産卵に入ってきました.1頭のオスが交尾をし,警護を始めました.メスは激しく移動して産卵するので,写真にはほとんどなりませんでした.


▲警護するオス(上)と産卵するメス(下2枚).▲

この池ではクロイトトンボが次々と羽化していました.春が本格的に始まったようです.

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No. 900. コサナエ産卵始まる.2023.4.28.

昨日の兵庫県南部のコサナエ属はまだ本格的な繁殖活動まであと一歩という感じでした.今日は北部へ調査のついでにコサナエの状況を見に行きました.いましたね.もうすでに十分成熟したオスたちが10頭近く池に出ていました.


▲コサナエのオス.淡色部が薄緑色になって十分成熟している.▲


▲コサナエのオスの探雌飛翔.メスを探しに時々飛んで周辺を見回っている.▲

池のまわりを歩くと,メスが産卵もしていました.その後にもメスが入ってきましたが,オスに追われて池を出て行きました.今日は2頭の産卵を見ました.


▲池の岸部分で産卵するコサナエのメス.▲

しかしここの個体群,まだ未熟な個体もいて,池周辺で摂食していました.本格的な繁殖活動はもう少し後でしょう.


▲ホソミイトトンボを捕獲して摂食中の未熟なコサナエのオス.▲

ここでは,結構たくさんのホソミオツネントンボが繁殖活動をしていました.今日のメスはどれも青く,やはり褐色のメスは時間が経ったら青くなるのでしょうか.


▲ホソミオツネントンボの産卵.メスはどれも青色をしていた.▲

さて,流れの方に移動すると,たくさんのニホンカワトンボが流畔の草や枝に止まっていました.メスも混じっていましたが,産卵は見られませんでした.もう十分繁殖期に入ったと言えるでしょう.


▲もう流れに出てメスを待っているニホンカワトンボたち.▲

さて,実はここに来る前に,調査で2カ所回ってきました.2番目の場所では.アジアイトトンボが交尾していたり,ホソミオツネントンボが飛び回っていたり,そして,そこではシオカラトンボが何頭か処女飛行に飛び立ちました.クロスジギンヤンマが産卵にもやってきていましたが,すぐにいなくなりました.


▲飛び回るホソミオツネントンボ.▲


▲アジアイトトンボの交尾.こちらも繁殖活動を始めたようだ.▲


▲シオカラトンボの羽化.▲

さらに写真にはなりませんでしたが,最初の場所でウスバキトンボを見ました.兵庫県の北部で4月28日にウスバキトンボを見るのは結構珍しいように思います.その他には,シオヤトンボ,シオカラトンボ,ホソミオツネントンボ,アサヒナカワトンボ,ハラビロトンボが見られました.

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No. 899. コサナエ属の状況.2023.4.27.

そろそろコサナエ属のトンボも産卵活動に入るのではないかと思い,フタスジサナエの産卵の観察を目的に出かけました.現地に入ったのは9:30ごろでした.オスは1,2頭水辺にいました.しかしすぐに姿を消し,少し待ってもオスは水辺で活動しません.そこで,草地を探索してみましたら,まだまだコサナエ属は未熟な状態のものが多く,繁殖活動はもう少し先になりそうな感じでした.先日来の低温で,ちょっと成熟が遅れているのかもしれません.

それにしても今年はたくさんのコサナエ属が草むらで活動しています.多くはタベサナエです.ここは,今年はタベサナエが多いようです.


▲あちこちで飛び回っているタベサナエたち.▲

次から次へとカメラを向けていくのですが,フタスジサナエとオグマサナエが見つかりません.今年はフタスジサナエの数が少なく感じます.やっとのことで木の柵に止まるフタスジサナエと,地面に止まるオグマサナエを見つけました.


▲やっと見つけたフタスジサナエのメス.▲


▲オグマサナエは例年ちょっとだけ見つかるだけなので,こんなもの.▲

まあ,この場所では例年通り,コサナエ属3種が育っていました.よかったよかった.

さて,産卵がまだ少し早いようなので,この後どうしようかと思案しました.今のコサナエは草むらで群れていて探しやすいので,神戸市内のコサナエ調査に転進することにしました.

■神戸のトンボ調査No.2

まず30年ほど前よくオグマサナエとフタスジサナエを見に行った田園地帯へ行ってみました.ここは下の写真を撮った場所で,コサナエ属のトンボが地面にベタベタとよく止まっていました.

最近の例にもれず,田畑の横の道路などではトンボの姿が全く見られなかったのですが,棚田の一番奥の高いところにある池まで足を運びましたら,フタスジサナエがそこそこの数飛んでいました.まだ生き残っていたのですね.オグマサナエの方は残念ながら出会えませんでしたが,大型のコサナエ属のトンボも飛んだので,よく探せば見つかるかもしれません.


▲1991年4月27日,ちょうど32年前,同所で撮影したオグマサナエ.▲

まだ羽化期が始まってあまり日が経っていない感じで,地面よりは池の横の草地を飛んでいました.処女飛行に飛び立つ個体もいました.


▲No.06:フタスジサナエ.まだ未熟な個体がそこそこの数見られた.▲

それ以外には,ハラビロトンボ,シオカラトンボ,シオヤトンボが見られました.


▲No.07:ハラビロトンボ.オスメス各1頭が見られた.▲

32年経っても生き残っていてくれたのが嬉しくて,オグマサナエを探しに,神戸市の東の果てまで行ってみました.兵庫県南東部に比較的オグマサナエが多いからです.少しそれらしいところを歩いてみましたが,残念ながら,フタスジサナエが1頭と,クロイトトンボがいただけでした.


▲No.08:クロイトトンボ.他に1頭羽化して飛び立ったのがいた.▲

そしてついでに,少し移動して,ニホンカワトンボを確認に行ってきました.ここは今でも時々来るところで,30年以上ニホンカワトンボが棲み続けているところです.


▲No.09:ニホンカワトンボ.▲

ということで,今日は終わりました.

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No. 898. 某里山公園にて.2023.4.21.

今年は今までと違いいろいろなことをやってみようと思っています.このWebページのタイトルである「神戸のトンボ」について,この一年間でどれくらい出会えるか,約30年ぶりに試してみようと思っています.現在まで神戸市域には94種の記録がありますが,市内絶滅したと考えられる5種と飛来種9種を除いて,80種類がまだどこかに生息していると考えています.このうち神戸市レッドリストAランクのネアカヨシヤンマ,アオサナエ,ホンサナエ,ムカシヤンマについては,私にはもう生息情報がなく,出会えるかどうか全く分かりません.

さて,今日は北区にある某里山公園に行ってみました.ここは,整備される前,2009年に一度調査したことがありますが,整備後に行くのは初めてです.もう十分植生など環境は安定していると思いますので,どのくらいのトンボが集まってきているか興味があります.今日は成虫越冬種がテーマです.


▲No.01:ホソミイトトンボ,オスが2つの池で確認できた.▲


▲No.02;ホソミオツネントンボ.3,4頭いたように思う.2つの池で確認できた.▲

成虫越冬種としては,オツネントンボが見つかりませんでした.次は各地で羽化が始まっているコサナエ属です.ただ,今日2時間以上園内を歩き回りましたが,全く姿を確認できませんでした.コサナエ属は別の場所を攻めないといけませんね.

シオカラトンボ属では,シオカラトンボとシオヤトンボがいました.シオヤトンボはそこそこの数が見られました.


▲No.03:シオカラトンボ.▲


▲No.04:シオヤトンボ.湿地が多いせいか未熟な個体を含めたくさんいた.▲

園内を流れる流れでは,たくさんのアサヒナカワトンボが羽化していました.


▲No.05:アサヒナカワトンボ.まだ未熟な個体がほとんど.▲

この公園に隣接する地域は,かつて私が神戸のトンボを調べたときによく訪れたところです.ヨツボシトンボ,フタスジサナエ,オグマサナエなど,春のトンボが結構見られました.その場所はもう潰れてしまっています.そういったところから避難移動してくれていることを期待しています.もう少し季節が進んだらまた来てみたいと思っています.今日はとりあえず普通種5種でした.

最後に今日のゲストはジャコウアゲハです.


▲草地を飛ぶジャコウアゲハ.▲

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No. 897. 兵庫北部へ羽化の状態を見に..2023.4.20.

今日はまだ4月20日です.年によってはトンボ観察を始めたばかりというところってこともあります.ところが今年はすでに9回目の報告.報告していないときもありますので,観察に出たのは12回です.過去のブログの記事を見れば分かりますが,20日ごろはやっとフタスジサナエが羽化し始める時期です.本当に今年は驚きの早さです.

さて今日は,そんな状況なので,北部の方はどうなっているのだろうとトンボ出現の様子を見に行ってきました.あまり構えず,ドライブを兼ねてといった気分で行きました.出現状況を見るのでいつもの場所へ行きました.まずはホソミオツネントンボが多いところ.たくさんとまではいきませんが,そこそこのペアが産卵をしていました.単独オスもいました.


▲ホソミオツネントンボの産卵活動.▲

ホソミイトトンボもいましたが,すばしこく動き回っていて写真にはなりませんでした.毎年見かけますが,ホソミオツネントンボのメスで青みが全く出ていない個体が産卵しています.これはやがて青みが出てくるのか,それとも,このままなのか,ちょっと気になるところです.

さて,シオヤトンボはもう繁殖活動の最盛期と言ってよいような状況でした.あちこちでオスが飛び回り,交尾が見られ,メスは産卵活動をしていました.


▲シオヤトンボのオスと産卵するメス.▲

コサナエの羽化が見られたらなんて淡い期待を持ってきました.去年は4月19日で少し遅かった感じで,あちこちに羽化殻が付いていて,1頭だけ羽化していました.今年は,羽化殻の姿が見られません.まだ羽化していないのではなく,相当前に羽化して羽化殻が水辺からなくなったということでしょう.それを確かめるために未熟なコサナエを探しに歩き回りました.目撃したのは1オス2メスで,2メスを写真に撮りました.オスは水辺にこそ出ていませんが,結構活発に飛んでいました.それなりの日齢が進んでいるように思えました.


▲多分この一週間の間に羽化したものと思われる.コサナエのメスたち.▲

次はカワトンボの羽化状況を見に行きました.ニホンカワトンボはたくさん羽化していて,あちこちひらひらと飛んでいました.アサヒナカワトンボを探しに上流の方に行かなかったので,ニホンカワトンボに混じって止まっているのを見ただけで終わりました.林縁で過ごさず単独で川の畔の草に止まって,もうすでに成熟している感じのニホンカワトンボもちらほら見られました.


▲林縁の草地で過ごすニホンカワトンボの未熟なオスメスたち.▲


▲アサヒナカワトンボも腹部先端に粉を吹き始めている.▲

ここのカワトンボたちは出現が毎年結構早いので,こんなものだろうという感じでした.そして次はシオカラトンボ.シオカラトンボは5頭が草地を飛び回っていました.そのうちの1頭は,腹部にうっすらと粉を吹き始めていました.


▲シオカラトンボのオス.▲

こんな感じです.これで,今年ははや14種を目撃しました.あと川へ出向いて,ダビドサナエやホンサナエを確認に行こうと思っていましたが,なんか今日はちょっと歩いても息が上がってしまい,非常に疲れを感じました.ということで中止.これ熱中症までは行かなくても体温の上昇によるものかもしれません.今日は車外温度計で28度ありましたから.

観察途中,毒蛇さんたちに会いました.彼らも暑いのか,マムシなどだらーんと伸びていました.ヤマカガシはまだ若い小さな個体です.ゲストに紹介しておきます.それにしても最近はマムシを見ることはほとんどなくなりました.


▲マムシさん.尾部が急激に細くなってツチノコ状に見える.ほかの蛇を食べた?.▲


▲ヤマカガシさん.二匹の毒蛇がすぐ近くを這っていた.▲

ということで,結構たくさんの生き物に出会えた観察行でした.

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