No. 916. オオヤマトンボの産卵.2023.6.7.

今日は曇りの予報でしたが,天気予報が変わり,薄曇り的に晴れました.この時期の太陽は貴重ですので,いつもの池にウチワヤンマやコフキトンボやコシアキトンボの産卵を見に行くことにしました.


▲ウチワヤンマのオス.2頭だけ見た.▲


▲コフキトンボのオス.まだ複眼が黒くなく若い.▲


▲活動しているコシアキトンボがいる一方で,まだ羽化している.▲

ここ2,3年,ウチワヤンマやコフキトンボの活動時期が早まっている印象を持っていましたが,今年は少し遅れているようです.ウチワヤンマの個体数も少ないですし,コフキトンボもまだ若い個体しかいません.コシアキトンボは池面で活動している個体が少しはいましたが,まだ羽化が継続しているようでした.池岸の植生をきれいに刈り取っていたので,ちょっとトンボが集まりにくい感じはしました.しかしたぶん,まだ時期的にちょっと早いのでしょう.もう少ししてからが狙い目のようです.

そんな中で,オオヤマトンボのオスが2頭,池を周回して飛んでいました.


▲オオヤマトンボが池を周回するように飛んでいた.▲


▲目の前を行ったり来たりするオオヤマトンボ.▲

こうなると狙いを変更し,オオヤマトンボの産卵をターゲットにしました.今まで幾度となくオオヤマトンボの産卵を狙ってきましたが,どうも目の前で産卵を見る機会に恵まれませんでした.しかし今日はほぼ初めてと言っていいでしょう,オオヤマトンボに狙いを定めて,産卵メスが目の前に入ったというのは...


▲オスと同じようなコースでメスが進入してきた.▲

メスはオスと同じようなコースで飛んできたので,はじめはオスだとばかり思っていました.そんな感じでしたので,目の前を通り過ぎてから産卵を始めたとき,少し慌ててしまいました.


▲目の前を通り過ぎたとき,初めてメスだと気づいた.▲


▲目の前を通り過ぎてから産卵を始めた.慌てて産卵場所へ走った.▲

イメージとしては左右に往復しながら打水するので,横の位置から撮ればうまく撮れるのではないかと考えていました.でも実際は同じ位置で往復移動するのではなく,少しずつ移動しながら往復打水するので,こちらも移動しながら撮影することになり,ファインダーに入れるのが非常に難しく,半分以上視野から外れてしまいました.


▲まず岸辺に平行に飛ぶ.オオヤマトンボのメス.▲


▲続いて,体をいったん岸とは反対の方向にひねる.▲


▲打水するときは体を岸の方にひねり直す.水滴が岸に向かって飛んでいる.▲

オオヤマトンボのメスは,岸辺のラインに沿って平行に移動しながら打水しますが,打水の前にはいったん岸辺とは反対の方向に体をひねり,その後体を岸辺の方にひねり直すときに打水します.その結果水滴は,打水位置から岸辺の方に向かって飛ぶことになります.上の写真にはその様子をうまく捉えることができました.打水位置から岸辺に向かって水滴が飛んでいます.いままでビデオではこの様子を捉えることができていましたが,スチル写真では初めてです.今日一番の収穫でしょう.


▲その後も産卵は続いたが,...▲

その後も産卵は続きましたが,なんと,こんな時に限って周回オスがやってくるのですね.オスの写真を撮ろうと待っているときには全然来ないのに...オスはしっかりとメスを捕らえ,交尾態になりながら,池の外へ連れ去りました.やけくそでシャッターを切りましたら,逆光ではありましたがピントが来ていました.


▲メスはオスに見つかり,お持ち帰りされてしまった.▲

まだいつものトンボたちが出始めで静かな池でした.そのときに狙えるトンボを観察するという鉄則で,オオヤマトンボの記録を取ることができました.今日はここまで.

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No. 915. 今日はトンボがいるところへ行く.2023.6.4.

昨日があまりにも欲求不満がたまる調査でしたので,今日はトンボが確実に見られるところへ出かけることにしました.つまり例年出かけているところに行くということです.

まずは源流域へヒメクロサナエとクロサナエを見に行くことにしました.今年はクロサナエの姿をまだ見ていませんので,そちらがターゲットです.朝8:20ごろに現地に入り,12;20ごろまで4時間粘りました.しかし成果はほとんどありませんでした.今日の予報は晴れなのに,日が差していませんでした.観察地の上空に帯状の雲があって,その両側は青空.なんで私のいるところだけが曇っているのだろう... 半日肌寒い時間を過ごしました.

サナエトンボは天気に左右されます.一時,薄日が差して少し温かく感じる時間帯がありました.そのときトンボたちに動きがありました.今日のヒメクロサナエのオスは止まろうとせず,メスが産卵しそうなところをのぞき込むような飛び方をして,どこかへ行ってしまいます.メスも2回ほど飛びました.そのうち1回,メスは水を飲もうとしたのでしょうか水面に衝突しました.目測でも誤ったかな? そして体が濡れ,すぐ近くの葉に止まって休憩しました.


▲水に落ちて慌てて跳び上がったヒメクロサナエのメス.▲

今日もクロサナエには出会えず,もう下りてくる場所を変えたのかなぁ? 今年は,Davidius 属がこの場所にあまりいません.帰りに Davidius 属のヒラサナエをのぞき込みましたが,やはり2頭だけでした.


▲ヒラサナエもこの2頭を見ただけであった.▲

今年はトンボの出現時期が例年と違うのか,どうも例年通りに出かけても思った通りに思ったトンボに出会えないことが多いです.

ということで,午後は,池の方に行くことにしました.ちょっと流れをのぞいてみると,ニホンカワトンボのオスがメスの後ろに止まり,何かメスにアピールしているような行動が見られました,


▲ニホンカワトンボのオスとメス.▲

池にはイトトンボたちがいました.イトトンボが当たり前にいることに安堵感を覚えます.オオイトトンボ,クロイトトンボ,モートンイトトンボなどが活動していました.写真になりませんでしたが,キイトトンボも連結態で飛んでいました.


▲オオイトトンボの産卵,途中からメスが潜水した.▲


▲産卵するオオイトトンボたち.▲

ちょうどオオイトトンボの産卵時間帯だったようです.あちこちで産卵している姿が見られました.一方モートンイトトンボの方は産卵時間帯が終わったのでしょうか,メスも摂食ばかりしていました.


▲モートンイトトンボは今がシーズンである.▲

クロイトトンボの数が一番多かったです.池の水面近くを飛び回り,あちこちで産卵もしていました.


▲産卵するクロイトトンボたち.▲

モノサシトンボも日陰に止まっていました.


▲モノサシトンボのオス.▲

まだ早春のトンボも生き残っていました.トラフトンボがクロスジギンヤンマを追い散らしています.こっちの方が小さいのにクロスジギンヤンマは追いかけようとしません.


▲まだトラフトンボが飛んでいる.▲


▲ホソミオツネントンボの単独産卵.▲

ホソミオツネントンボも産卵していました.連結産卵が2組いましたが,面白いのは上の写真のメスの単独産卵です.6月ぐらいになると,ホソミオツネントンボの単独産卵も時々見られるようになります.オスがいなくなるのでしょう.ただ,なおここでは別の意味で興味深い写真なのです.それは体が褐色をしていることです.この早春のホソミオツネントンボの観察で,「まだ青くなっていない」という言い方で褐色のメスを紹介していました.そのときこの個体は青くなるのだろうかと疑問を呈しておきました.この時期まで青くなっていないということは,ホソミオツネントンボには青くならない個体がいるという言い方をしてもよいと考えます.

あとコサナエも1頭見かけました.次はこの時期のトンボたちです.まずはショウジョウトンボ.もうすっかり晩春から初夏に現れるトンボになってしまいました.もう一つはハッチョウトンボ.今年も元気に出ていました.


▲ショウジョウトンボのストメス.メスは産卵にやってきた個体.▲


▲ハッチョウトンボのオスとメス.▲

シオカラトンボが一番たくさんいました.未熟な個体から成熟個体,交尾,産卵など様々な活動が見られました.


▲活動するシオカラトンボたち.▲

今日はキイロサナエの姿を探すことも目的の一つでした.池を離れて草原に入って探しました.キイロサナエには会えませんでしたが,ヤマサナエがいました.また樹上に飛び上がったトンボがいて,体が見える位置ではありませんでしたので,翅が見るように写真を撮ると,その縁紋の細長さからムカシヤンマであることが分かりました.


▲ヤマサナエ.午後だったせいか,草原にたむろしていた.▲


▲葉の上に止まったトンボ.縁紋が細長いことからムカシヤンマである.▲

今日はトンボがたくさんいました.これが普通なのですね.かつての神戸もそうでした.ということで,今日はおしまいです.

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No. 914. 神戸のトンボ調査(8)2023.6.3.

台風一過,今日はお昼前からよく晴れたので,神戸市内のトンボ調査に行ってきました.3年前にいただいた情報で,サラサヤンマを見つけたというのがあったので,今日はそこへ行ってみることにしました.湿地のようなところがありましたが.残念ながらトンボはいませんでした.

そこで,周辺の池を順番に回っていくことにしました.しかし本当にトンボがいません.2時間半ほど歩き回って,シオカラトンボが10頭あまり,ギンヤンマが4頭ほど,そしてタベサナエが1頭でした.


▲老熟したタベサナエのオス.▲

30年ほど前に神戸市内の調査を盛んにやっていた頃,本当にタベサナエの姿がありませんでした.フタスジサナエばかりという感じでした.今年はこれで2カ所目です.前回見つけた場所とは山続きにはなっています.神戸でタベサナエが増えつつあるのでしょうか.

まあそれはいいとして,景色のいい田園地帯を歩いても,全くトンボがいないというこの状態,なんか本当に恐ろしさを感じます.このサイトを始めた頃は,神戸市内にはたくさんのトンボが見られました.今日来たところも,以前何度もやって来たことがあります.アオヤンマ,ネアカヨシヤンマ,ヤゴをすくえばマルタンヤンマなどが採れ,チョウトンボ,オニヤンマ,コシアキトンボなどが飛び交っていました.かつて「トンボ飛び交う街 神戸」というNHKの番組に出て神戸のトンボを紹介したことがありましたが,もうあの頃の面影は皆無です.

今はほとんど何もいません.下の写真は,今日調べた一つの池です.池の上流部に湿地が見えています.さらにこの上にも池があります.集水域には水田はありません.この景色の中にトンボが全くいないのです.いや,シオカラトンボはいました.2頭だけ.こんな田園地帯,全く信じられません.


▲今日調べた池の一つ,ものすごく見た目の環境はいい.▲


▲上の写真の上側にある池.イトトンボ1匹飛ばない.▲

さらにいくつかの谷筋の池に入ろうとすると,あちこちに「立入禁止」の立て札が立っています.最近よくニュースになる作物の泥棒でも入るのでしょうか? 入るなという根拠が何も書かれていないので,おそらく農家の方が入ってきてほしくないからなのでしょう.私有地ならそう書くはずですから.こんなこともあり,トンボを調べられません.神戸市内ではだんだんとトンボの調査がやりにくくなってくることを感じます.六甲山などでも,観光開発のせいでしょうか,あちこち立入禁止になっていますし,車を止めるのも駐車料金がいります.先日ムカシトンボを見に行ったときは,駐車料金や交通機関のお金で2,200円ほどかかりました.

このサイトのタイトルは「神戸のトンボ」ですが,なんか,神戸にはたくさんのトンボがいるという紹介ではなく,「トンボが衰退していく街 神戸」の記録になりそうで悲しいです.

ということで,今日は愚痴ばかりになりましたので,「観察記」ではなく「エッセイ」にしました.

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No. 913. 神戸のトンボ調査(7)2023.6.1.

今日は台風がやってくる直前の晴れ間,お昼頃から曇ってくることは必至なので,足下の自然を見ると言うことで,家から10分かからないところへトンボ観察に行きました.今年は神戸市内のトンボにどれくらい出会えるかということを一つの目標にしていますので,足下へもきちんと行ってみることにしました.わずかな隙間時間にはぴったりの調査です.


▲家から10分かからないところにある谷筋.▲

まずは,昔,黄昏飛翔を見に行った谷筋(上の写真)へ行ってみました.ところが「恐ろしい」ことにトンボが全くいません.本当に何もいないのです.道路の反対側にはきれいな水の流れる小川があり,感じとしてはヤマサナエなどが飛びそうです.荒れた天候の次の快晴の日,トンボは出てくるはずです.でもいない.本当に田園地帯は荒れていることが強く感じられました.

とにかく上流の方に上がっていきトンボに出会わないので引き返したとき,コサナエ属らしい影が樹上に飛び上がったのを見ました.正体は分からず.さらに少し行くと,やっとトンボを見つけました.シオカラトンボのオスです.見ているとメスが入り,交尾しました.


▲やっと見つけたシオカラトンボの交尾.▲

やがて交尾は解かれ産卵かと思いきや,このメスご覧の通り左前翅がほぼ失われています.そのせいか飛ぶことができず,水に落ち,這い上がってきました.オスの方は少し前に止まったままです.


▲メスは水に落ち這い上がった.オスは止まったまま.▲

たったこれだけですが,トンボがいただけでもよかった.帰り道,車に驚いて道路から飛び立ちサナエトンボがいました.緑の眼で黒と黄色の縞模様,地面にペタッと止まっていたこと,そしてその大きさから,多分ヤマサナエでしょう.いることはいたようですね.

このあと,反対側の谷へも入ってみました.いくつかの普通種がいました.


▲ハラビロトンボのメス.ハラビロトンボは数頭見られた.▲


▲No.17:オオシオカラトンボのオス.▲


▲シオヤトンボのオス.今日はシオカラトンボ属全種が一同に見られた.▲


▲フタスジサナエのオス.▲

谷筋に入っていったのは,期待はしていませんでしたが,オグマサナエに出会える可能性がゼロではないからです.10年ほど前,この近くでオグマサナエを見ていますので.

家のまわりにも普通種なら結構いるみたいです.

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No. 912. 神戸のトンボ調査(6)2023.5.27.

今日は晴れる予報で,以前から六甲山をハイキングしながら,ムカシトンボやその他のトンボを調べる予定にしていました.しかしこの2,3日の間に曇りベースに予報が変わり,どうしようかと考えました.来週は台風が接近するかもしれないし,ムカシトンボはもう時期的に引き延ばすことができないし,ということで,出かけることにしました.麓に車を止め,六甲山までは公共交通機関を使い,歩いて降りてくるというコースです.

ムカシトンボの生息する流れは,残念ながら曇天で気温が低い状態.これでは出てこないと思いながらも,1時間は待機しました.しかし天候の回復も望めず,10:30,現地を後にしました.ただ,フキが生えているところがあり,葉柄を調べましたら,産卵痕がありました.ムカシトンボは,まだこの地で生き続けているようです.


▲No.14:ムカシトンボ.流畔のフキの葉柄に見られたムカシトンボの産卵痕.▲

卵ですが,まあこれもムカシトンボに違いないので,カウントしておきました.ヒメクロサナエは全く動きがありませんでした.

今日は引き返さず,そのまま麓まで下ります.途中山道が川と交差するところがあり,そこで,ダビドサナエとミヤマカワトンボに出会いました.神戸市のトンボの再調査で,これらのトンボを見るためにわざわざ一日を潰して出かける必要がなくなりましたので,ラッキーでした.


▲No.15:ダビドサナエのオス.▲

ダビドサナエは最近本当に出会わなくなりましたが,こういう上流の環境へ出かけないからかもしれません.六甲山の渓流にはちゃんと居ました.少し日が差したのがよかったのでしょうね.


▲No.16:ミヤマカワトンボのメス.▲

あと,アサヒナカワトンボに出会いました.


▲アサヒナカワトンボのオスとメス.オスは脚がちぎれている.▲

山から下りると晴れてきましたので,帰りに,市外へアオヤンマの様子を見に行きました.アオヤンマは飛んでいましたが,すぐに池から出て行ったりして,落ち着きがなく,また午前中に来た方がよいような感じでした.いずれにしても今年も生き残っていました.

今日は山下りをして神戸のトンボ調査を行いました.

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