No. 899. コサナエ属の状況.2023.4.27.

そろそろコサナエ属のトンボも産卵活動に入るのではないかと思い,フタスジサナエの産卵の観察を目的に出かけました.現地に入ったのは9:30ごろでした.オスは1,2頭水辺にいました.しかしすぐに姿を消し,少し待ってもオスは水辺で活動しません.そこで,草地を探索してみましたら,まだまだコサナエ属は未熟な状態のものが多く,繁殖活動はもう少し先になりそうな感じでした.先日来の低温で,ちょっと成熟が遅れているのかもしれません.

それにしても今年はたくさんのコサナエ属が草むらで活動しています.多くはタベサナエです.ここは,今年はタベサナエが多いようです.


▲あちこちで飛び回っているタベサナエたち.▲

次から次へとカメラを向けていくのですが,フタスジサナエとオグマサナエが見つかりません.今年はフタスジサナエの数が少なく感じます.やっとのことで木の柵に止まるフタスジサナエと,地面に止まるオグマサナエを見つけました.


▲やっと見つけたフタスジサナエのメス.▲


▲オグマサナエは例年ちょっとだけ見つかるだけなので,こんなもの.▲

まあ,この場所では例年通り,コサナエ属3種が育っていました.よかったよかった.

さて,産卵がまだ少し早いようなので,この後どうしようかと思案しました.今のコサナエは草むらで群れていて探しやすいので,神戸市内のコサナエ調査に転進することにしました.

■神戸のトンボ調査No.2

まず30年ほど前よくオグマサナエとフタスジサナエを見に行った田園地帯へ行ってみました.ここは下の写真を撮った場所で,コサナエ属のトンボが地面にベタベタとよく止まっていました.

最近の例にもれず,田畑の横の道路などではトンボの姿が全く見られなかったのですが,棚田の一番奥の高いところにある池まで足を運びましたら,フタスジサナエがそこそこの数飛んでいました.まだ生き残っていたのですね.オグマサナエの方は残念ながら出会えませんでしたが,大型のコサナエ属のトンボも飛んだので,よく探せば見つかるかもしれません.


▲1991年4月27日,ちょうど32年前,同所で撮影したオグマサナエ.▲

まだ羽化期が始まってあまり日が経っていない感じで,地面よりは池の横の草地を飛んでいました.処女飛行に飛び立つ個体もいました.


▲No.06:フタスジサナエ.まだ未熟な個体がそこそこの数見られた.▲

それ以外には,ハラビロトンボ,シオカラトンボ,シオヤトンボが見られました.


▲No.07:ハラビロトンボ.オスメス各1頭が見られた.▲

32年経っても生き残っていてくれたのが嬉しくて,オグマサナエを探しに,神戸市の東の果てまで行ってみました.兵庫県南東部に比較的オグマサナエが多いからです.少しそれらしいところを歩いてみましたが,残念ながら,フタスジサナエが1頭と,クロイトトンボがいただけでした.


▲No.08:クロイトトンボ.他に1頭羽化して飛び立ったのがいた.▲

そしてついでに,少し移動して,ニホンカワトンボを確認に行ってきました.ここは今でも時々来るところで,30年以上ニホンカワトンボが棲み続けているところです.


▲No.09:ニホンカワトンボ.▲

ということで,今日は終わりました.

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No. 898. 某里山公園にて.2023.4.21.

今年は今までと違いいろいろなことをやってみようと思っています.このWebページのタイトルである「神戸のトンボ」について,この一年間でどれくらい出会えるか,約30年ぶりに試してみようと思っています.現在まで神戸市域には94種の記録がありますが,市内絶滅したと考えられる5種と飛来種9種を除いて,80種類がまだどこかに生息していると考えています.このうち神戸市レッドリストAランクのネアカヨシヤンマ,アオサナエ,ホンサナエ,ムカシヤンマについては,私にはもう生息情報がなく,出会えるかどうか全く分かりません.

さて,今日は北区にある某里山公園に行ってみました.ここは,整備される前,2009年に一度調査したことがありますが,整備後に行くのは初めてです.もう十分植生など環境は安定していると思いますので,どのくらいのトンボが集まってきているか興味があります.今日は成虫越冬種がテーマです.


▲No.01:ホソミイトトンボ,オスが2つの池で確認できた.▲


▲No.02;ホソミオツネントンボ.3,4頭いたように思う.2つの池で確認できた.▲

成虫越冬種としては,オツネントンボが見つかりませんでした.次は各地で羽化が始まっているコサナエ属です.ただ,今日2時間以上園内を歩き回りましたが,全く姿を確認できませんでした.コサナエ属は別の場所を攻めないといけませんね.

シオカラトンボ属では,シオカラトンボとシオヤトンボがいました.シオヤトンボはそこそこの数が見られました.


▲No.03:シオカラトンボ.▲


▲No.04:シオヤトンボ.湿地が多いせいか未熟な個体を含めたくさんいた.▲

園内を流れる流れでは,たくさんのアサヒナカワトンボが羽化していました.


▲No.05:アサヒナカワトンボ.まだ未熟な個体がほとんど.▲

この公園に隣接する地域は,かつて私が神戸のトンボを調べたときによく訪れたところです.ヨツボシトンボ,フタスジサナエ,オグマサナエなど,春のトンボが結構見られました.その場所はもう潰れてしまっています.そういったところから避難移動してくれていることを期待しています.もう少し季節が進んだらまた来てみたいと思っています.今日はとりあえず普通種5種でした.

最後に今日のゲストはジャコウアゲハです.


▲草地を飛ぶジャコウアゲハ.▲

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No. 897. 兵庫北部へ羽化の状態を見に..2023.4.20.

今日はまだ4月20日です.年によってはトンボ観察を始めたばかりというところってこともあります.ところが今年はすでに9回目の報告.報告していないときもありますので,観察に出たのは12回です.過去のブログの記事を見れば分かりますが,20日ごろはやっとフタスジサナエが羽化し始める時期です.本当に今年は驚きの早さです.

さて今日は,そんな状況なので,北部の方はどうなっているのだろうとトンボ出現の様子を見に行ってきました.あまり構えず,ドライブを兼ねてといった気分で行きました.出現状況を見るのでいつもの場所へ行きました.まずはホソミオツネントンボが多いところ.たくさんとまではいきませんが,そこそこのペアが産卵をしていました.単独オスもいました.


▲ホソミオツネントンボの産卵活動.▲

ホソミイトトンボもいましたが,すばしこく動き回っていて写真にはなりませんでした.毎年見かけますが,ホソミオツネントンボのメスで青みが全く出ていない個体が産卵しています.これはやがて青みが出てくるのか,それとも,このままなのか,ちょっと気になるところです.

さて,シオヤトンボはもう繁殖活動の最盛期と言ってよいような状況でした.あちこちでオスが飛び回り,交尾が見られ,メスは産卵活動をしていました.


▲シオヤトンボのオスと産卵するメス.▲

コサナエの羽化が見られたらなんて淡い期待を持ってきました.去年は4月19日で少し遅かった感じで,あちこちに羽化殻が付いていて,1頭だけ羽化していました.今年は,羽化殻の姿が見られません.まだ羽化していないのではなく,相当前に羽化して羽化殻が水辺からなくなったということでしょう.それを確かめるために未熟なコサナエを探しに歩き回りました.目撃したのは1オス2メスで,2メスを写真に撮りました.オスは水辺にこそ出ていませんが,結構活発に飛んでいました.それなりの日齢が進んでいるように思えました.


▲多分この一週間の間に羽化したものと思われる.コサナエのメスたち.▲

次はカワトンボの羽化状況を見に行きました.ニホンカワトンボはたくさん羽化していて,あちこちひらひらと飛んでいました.アサヒナカワトンボを探しに上流の方に行かなかったので,ニホンカワトンボに混じって止まっているのを見ただけで終わりました.林縁で過ごさず単独で川の畔の草に止まって,もうすでに成熟している感じのニホンカワトンボもちらほら見られました.


▲林縁の草地で過ごすニホンカワトンボの未熟なオスメスたち.▲


▲アサヒナカワトンボも腹部先端に粉を吹き始めている.▲

ここのカワトンボたちは出現が毎年結構早いので,こんなものだろうという感じでした.そして次はシオカラトンボ.シオカラトンボは5頭が草地を飛び回っていました.そのうちの1頭は,腹部にうっすらと粉を吹き始めていました.


▲シオカラトンボのオス.▲

こんな感じです.これで,今年ははや14種を目撃しました.あと川へ出向いて,ダビドサナエやホンサナエを確認に行こうと思っていましたが,なんか今日はちょっと歩いても息が上がってしまい,非常に疲れを感じました.ということで中止.これ熱中症までは行かなくても体温の上昇によるものかもしれません.今日は車外温度計で28度ありましたから.

観察途中,毒蛇さんたちに会いました.彼らも暑いのか,マムシなどだらーんと伸びていました.ヤマカガシはまだ若い小さな個体です.ゲストに紹介しておきます.それにしても最近はマムシを見ることはほとんどなくなりました.


▲マムシさん.尾部が急激に細くなってツチノコ状に見える.ほかの蛇を食べた?.▲


▲ヤマカガシさん.二匹の毒蛇がすぐ近くを這っていた.▲

ということで,結構たくさんの生き物に出会えた観察行でした.

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No. 896. ヤマサナエ一斉羽化.2023.4.16.

今日は天気予報では曇り,あまり天気はよくないようですが外は晴れ(これを書いている今でもまだ晴れ)ているので,近くの公園に散歩がてらトンボを見に行くことにしました.あまり期待しないで出かけたのですが,なんと,子供の遊び場として整備された小さな流れからヤマサナエが飛び出しました.


▲流れから飛び出したヤマサナエが,近くの桜の葉に止まった.▲

そこで,このヤマサナエが飛び出したあたりを調べてみました.すると,羽化殻が2つほどついていて,さらに,羽化途中の個体がいました.


▲処女飛行に飛び出したあたりで羽化しているヤマサナエ.▲

これはまだいるかもしれないと思い捜索範囲を少し広げてみました.すると,まだまだいました.翅を広げて飛び立とうとしている個体,流れの中央で藻の上に止まって羽化している個体,そして,今まさに背中が割れて体が出てきつつある個体が見つかりました.


▲水際で翅を広げていたヤマサナエのメス.▲


▲流れの中央で藻に乗っかる形で羽化しているヤマサナエのオス.▲


▲9:58’34″.今まさに背中が割れて体が出てきつつあるヤマサナエのメス.▲

今日は本当に特に期待することもなく来たのですが,大当たりでした.この公園には夏から秋にかけてはよく来るのですが,この季節にはほとんど来たことがなかったのです.まさかこんなところでヤマサナエに出会えるとは思いもしませんでした.しかもこんなにたくさん一斉に(実はまだまだ見つかるのですが後で紹介)羽化しているなんて....

せっかくのチャンスですから,殻が割れ始めた個体を最後まで観察することにしました.


▲10:01’57″.頭部が出た.▲


▲10:03’33″.体はやや前方に向かって出てくる.翅は抜け出て脚が抜けつつある.▲


▲10:04’56″.脚が抜け,脚を少し動かして,状況を確認する.▲


▲10:09’44″.休止期に入った.脚は側部にピタッとくっつける.▲

休止期に入ったので,ちょっとほかのヤマサナエにも目をやってみました.藻の上で羽化していた個体は翅を開きました.


▲藻の上で羽化していた個体は翅を開いた.▲


▲始めに羽化を見つけた個体も,だいぶん羽化が進んでいる.▲


▲水際で羽化していたメスも飛び立ち,タンポポの花柄に止まった.▲

さて,他のトンボに気をとられているときに,観察中の羽化個体は腹部を抜いてしまいました.腹部を抜く瞬間を撮ることに失敗しました.


▲10:18’54″.腹部を抜いた.▲


▲10:19’50″.翅を伸ばすステージに入ったようだ.▲


▲10:24’19″.翅が伸び始めた.▲


▲10:28’51″.翅はどんどんと伸びていく.▲

翅の伸長が始まり,観察も落ち着く段階にきたので,もう少し丹念に周りを見渡してみました.すると,まだいました.羽化不全の個体が2頭いました.


▲羽化不全のメス.左前翅が欠けている.▲


▲こちらも羽化不全のメス.前翅が両方とも半分ずつ欠けている.▲

羽化個体の継続観察に戻ることにしました.翅がさらに伸びて,腹部先端と同じくらいになりました.公園を散歩している人が,「何がいるんですか」と尋ねてきたので,「トンボですよ」と答えましたが,あまり興味なさそうに去って行きました.ヤマサナエの羽化もそう簡単には見られないのに...といっても一般の人には関係ないのかもしれません.


▲10:32’06″.翅はさらに伸長する.▲


▲10:34’42″.翅はさらに伸びて,腹部先端に到達した.▲


▲10:39’34″.翅はほぼ伸びきった.これから腹部の伸長が始まる.▲

観察していると,またヤマサナエが飛び立ち,林の方に飛び去りました.この個体は全く存在に気づかなかった場所から飛び立ちました.そこで,もう一度丹念に周辺を探索しました.すると,草に止まっている羽化個体を見つけました.


▲どこから飛び立ったか分からなかったが,草の中に止まっていた.▲

これ以外に,さらに離れたところで羽化殻を見つけました.思ったより広い範囲で羽化をしているようです.さて,継続観察に戻りましょう.


▲10:57’16″.かなり腹部が伸びた.▲


▲11:14’47″.かなり腹部も細くなり,上方へのそりも小さくなった.▲


▲11:15’21″.翅が開いた.▲

さて,いよいよ開翅しました.後は飛び立つのを待つばかりです.


▲11:17’02″.いよいよ飛び立つ直前.▲


▲11:18’06″.あまりよく写らなかったが,飛び立ったヤマサナエ.▲

ということで,今日の観察を終えました.観察前・中に飛び立ったヤマサナエの数は9頭でした.他に羽化殻が4個.10頭以上がここで羽化したことになります.昨日は雨風が強かったので,おそらくこれらの羽化殻も今日羽化した個体のものだと思われます.それにしても,今までの経験では,ヤマサナエの羽化は4月下旬ぐらいに始まっていたと思いますので,今年はやはり少し早い感じがします.

この個体群が,一昨年(幼虫成長には通常2年かかるので)たまたまやって来たメスの子孫なのか,ここで毎年羽化している,つまり生息しているのか,今日の観察では分かりません.ただこんな近くでヤマサナエの羽化が観察できたことが嬉しいです.今年はここでヤマサナエの産卵を「濃密に」記録できるかもしれません.

あと公園を一周しましたが,クロイトトンボが2頭ほど飛び立っただけでした.ここへはヨツボシトンボの羽化を期待してきたのですが,こちらはもう少し後のようです.

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No. 895. ホソミイトトンボを探しに行った.2023.4.13.

オツネントンボ,ホソミオツネントンボと,成虫越冬種の2種には出会いましたが,どういうわけかホソミイトトンボに出会えません.そこで今日はホソミイトトンボを探すことを第一目的としながら,他のイトトンボ類,アオモンイトトンボやクロイトトンボを探しに行きました.

まずはアオモンイトトンボから見に行きました.しかし,アジアイトトンボはたくさん飛んでいて,メスはもう体が緑色をしている個体もいるほどでしたが,アオモンイトトンボの姿は見かけませんでした.かわりにクロイトトンボがぼちぼち羽化を始めていました.


▲クロイトトンボのオス.粉を吹く前のクロイトトンボはコントラストよく美しい.▲


▲アジアイトトンボはたくさんいた.オス(上),未熟メス(中),成熟メス(下)▲

ここにはホソミイトトンボは見られませんでしたので,次の池に行くことにしました.そこでは,オツネントンボが3頭,ホソミイトトンボが2頭,アジアイトトンボが1頭活動していました.今年はオツネントンボによく出会います.年によって違うんですかね.


▲やっと出会ったホソミイトトンボ.▲


▲オツネントンボの産卵.▲

これ以外にもう一つ池をのぞいてみましたが,クロイトトンボが1頭飛び立っただけでした.昨年もよく嘆いていましたが,私の例年の観察地ではイトトンボ類が少ないです.

さて,お昼が近くなりました.未熟なコサナエ属が飛び交う姿を見て春を感じようと,例年3種がたくさん飛ぶポイントへ行ってみました.今日羽化したばかりの個体からこの数日間に羽化した個体まで,たくさんのコサナエ属のトンボがひらひら飛び交っていました.春ですね.しかしどういうわけか今日は全部タベサナエでした.木の上,草の中,地面と私が歩くと飛び立っていきます.全部で20頭以上いたでしょうか.


▲飛んでは止まる未熟なタベサナエたち.▲

湿地状の水たまりで羽化したのでしょうか.特定の場所にかたまっていました.あと10日もすれば繁殖活動が盛んに行われるでしょう.それにしても,フタスジサナエとオグマサナエは見なかったです.

今日はまだ4月13日.年によってはトンボ観察を始めていない時期でもありますが,すでに10種類のトンボに出会っています.そろそろまた川へ行かねばなりませんね.

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