No. 966. ムカシヤンマを探しにいった.2024.5.30.

今年は兵庫県のトンボの状況を確認するために,少なくとも1回は兵庫県に分布しているトンボ種に出会うことを目標に動いています.今日はムカシヤンマを探しに行きました.6月中旬には出現時期が終わりになるので,急がなければならないトンボです.他のトンボを見に行ったときにぽつんと止まっているところによく出会うのですが,今年は全くそういう機会がありません.

今日行ったムカシヤンマのいる谷もそういうところです.この谷今年は異変を感じています.いつもなら結構たくさん見られるニホンカワトンボ,ヤマサナエ,シオヤトンボが非常に数が少ないのです.今日いつもの道を歩いて出会ったのは,シオヤトンボ1頭,シオカラトンボ数頭,ショウジョウトンボ1頭,ヤマサナエは1頭,サラサヤンマ2頭,ムカシヤンマ1頭でした.

この谷では,奥の方の水田は,以前休耕していました.この何年か再び耕作を始めています.その水田から流れ出る水が小川を流れていきます.そこにヤマサナエやニホンカワトンボが群れていたのですが,これがほとんど消えています.同じくこの水田下の道路脇の細流にシオヤトンボがよく飛んでいましたがこれも非常に少なくなりました.今日サラサヤンマ,ムカシヤンマ,ヤマサナエとで会ったのは,この奥の水田より上手です.観察事実だけを述べましたが,原因は想像するより他はありません.

さて,それでは出会った今日の目標種ムカシヤンマを紹介します.オスの姿は全くありませんでしたが,1頭見つけたのが産卵にやって来ていたメスでした.


▲水が染み出ている道ばたの草地で産卵するムカシヤンマを見つけた.▲

この場所は,先日の大雨の影響でしょうか,水がちょろちょろと流れていました.普段は湿気ている程度です.大雨のせいで今日は水が流れているのですが,ムカシヤンマはだまされているのかもしれません.晴れの日が続くと,ムカシヤンマの幼虫が暮らす環境にはならないような場所であると思います.


▲近づいて撮影した.▲

このメス割合に神経質で,私の動きやストロボの光をうっとうしく感じているように見えました.すぐに飛んで場所を変えました.


▲産卵場所をあちこち変えながら産卵を続けるムカシヤンマ.▲

場所を変えてもUターンしてまた同じ場所に戻ることもありました.産卵適所が少ないのでしょうね.私が見つけてから5分ほどで産卵を止めて飛び去りました.

ムカシヤンマの個体数自体が少ないので,産卵メスに出会えるというのは数年に1回あるかないかというところです.今日はそういう意味ではついていましたが,オスの姿が全く見られなかったのが残念です.

そのあと,サラサヤンマの摂食飛翔に出会いました.摂食飛翔はあまりホバリングをしないので写真には撮りにくい相手です.


▲農道で摂食飛翔をするサラサヤンマのオス.行ったり来たりの急旋回が多い.▲

摂食飛翔をしているに出会うのはいつもオスです.メスはどうやって摂食をしているのでしょうか.ちょっと考えたら不思議です.

さて少し進むと,今度は道の上でなわばりを張っているのではないかと思われるオスに出会いました.ホバリングを頻繁にし,さらに植物にぶら下がって止まるのです.これは摂食飛翔の飛び方とは異なります.農道ですので湿地ではありません.これも大雨の影響で水蒸気が立ち上り,サラサヤンマの偏光を感じる視覚に何か影響を与えているのでしょうか.先のムカシヤンマの産卵といい,大雨の後というのは,湿地性のトンボの行動に何らかの影響を与えているように感じました.


▲今度は長くホバリングするので写真が撮りやすい.▲


▲ホバリングを止めて低い位置に静止した.これはなわばりで見せる行動だ.▲

あまりしつこく私が近づくので,嫌気が差したのか,最後は高い木の上に避難しました.


▲最後は高い木の枝に止まった.▲

さて,探索目的は達成したので,この後は夏のトンボ出現状況調査に切りかえました.まずこの谷で見つけたシオヤトンボ.本当に数が少ないんです.そして小さな池ではホソミオツネントンボがいました.ただしこの池にはこれ1頭のみ.


▲シオヤトンボの老熟メス.複眼の灰色が渋い.▲


▲ホソミオツネントンボは毎年6月くらいまでは活動を続けている.▲

場所を変えることにしました.近くのもっと環境のよい池に行ってみることにしました.何がいるでしょう.全く予測が付きません.まず見つけたのが,モノサシトンボです.最近モノサシトンボに出会う機会が減っています.データを整理すると,見つかっている場所の数がレッドデータブックに載る種とあまり変わらないくらいなのです.調査が偏っているだけならいいのですが.


▲まだ羽化直後の個体がいたり,産卵していたり,いろいろなステージがいた.▲

アオイトトンボもたくさん羽化していました,が,どういうわけかメスばっかり.


▲アオイトトンボの羽化してから時間が経っていない個体たち.▲

そして一番驚いたのが,オツネントンボがまだ頑張っていたことです.なんと超高齢者のオツネントンボがまだ元気に交尾をしていました!.ここでは3月30日から産卵活動が開始されていました.


▲超高齢状態のオツネントンボの交尾.頑張って産卵してください.▲

あとはヨツボシトンボが2頭だけ飛んでいました.これ以外には,ギンヤンマ,クロスジギンヤンマ,トラフトンボなどを見ました.トラフトンボもオツネントンボに負けず頑張っていますね.これらは写真に撮れませんでした.


▲ヨツボシトンボはまだ頑張っている.若い感じがする個体だ.▲

最後に新分布の発見です.この池の近くに川が流れていますが,そこにアオハダトンボがいました.アオハダトンボの,この川での生息記録がありません.また季節適期になったとき一度調査する必要があります.


▲新産地発見のアオハダトンボ.▲

ということで,どちらかというと散歩がてらの調査でしたが,意外と収穫がありました.

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今日初出会いのトンボ
No.38. ムカシヤンマ.メス
No.39. モノサシトンボ.産卵.

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