No. 1035. 急に思い立って西表島へ.2025.7.16-17.

思うところがあって,西表島へ調査に行ってきました.何しろ急だったので,飛行機やホテルがとれる日程ということでこの日になりました.前後それぞれ1日は移動日になっています.あまり計画性がなかったためか,大型美麗種にはお目にかかることはありませんでしたが,いたトンボたちの観察がゆっくりと出来ました.ただ,春から初夏にかけて行ったときと比べて,トンボの個体数が「著しく」減っていました.夏に入ると端境期にでもなるのでしょうか.一部のトンボをのぞいて本当に何もいないという感じでした.

そんな中でまず観察したのは,サイジョウチョウトンボです.驚いたのは,チョウトンボのように,山道の上空を群れて飛んでいたことです.こういう姿は相当に個体数が多くないと見ることができないと思うのですが,...数が増えているのでしょうか?


▲サイジョウチョウトンボが樹冠の上を群れて飛んでいた.メスの雑種らしいのも(中)いる.▲

一方で止水にも飛んでおり,オスに警護されて産卵するメスがいました.サイジョウチョウトンボの,雑種ではない純粋なメスは初めて見ました.チョウトンボのように打水産卵をしていましたが,すぐにオキナワチョウトンボに追われて退場していきました.


▲翅胸背面に黄褐色条が出ていないので純粋個体だと思われる.▲

次に観察したのは,ホソアカトンボの産卵です.前回来たときに産卵を見ているので,今度はねらって撮れるでしょう.ホソアカトンボは初夏に来たときに比べても,それほど数が減っている感じはしませんでした.年中だらだらと発生しているのでしょうかね.


▲ホソアカトンボのオスたち.南のトンボという感じがする.▲

産卵は二例ほど見ました.やはり薄暗いところなので,メスの姿は見えません.勘で位置を決めての撮影です.メスは腹部の中程から先をわずかに曲げ,水滴を飛ばして産卵しているようです.いわゆるオオシオカラトンボ的な産卵です.ですからメスは何かの対象物に向き合うようにして定位します.


▲岸や何かの対象物に向かって定位し水滴を飛ばす.▲

ホソアカトンボを観察していると,オオメトンボが飛び始めました.オオメトンボもすぐ近くで産卵を始めましたので,途中からこちらに気をとられて,観察対象を変更しました.それがよかったようで,産卵を3例観察しました.このトンボは,オスがものすごい速さで薄暗いところを飛び体も真っ黒なので,写真に撮るのは至難の業です.結局のところ,数百枚シャッターを切ってたったの1枚だけなんとか見られるのが写っていました.


▲頭部がちょっとアウトフォーカスだったが,なんとかオオメトンボと分かる写真が撮れた.▲

オオメトンボというのは,体が黄褐色をしているという認識がありましたが,写真のオスはもうほぼ真っ黒状態です.オスに対しメスは,浮遊物などに往復飛翔して産卵しますので,まだねらいがつけやすいです.今回撮った写真を見ると,打水している瞬間と,浮遊物に卵を貼り付けていると思われる瞬間が写っていましたので,腹端を水に濡らしてから浮遊物に卵を貼り付けるのか,それとも水面上・水面下どちらにも貼り付けるのか,ちょっと分かりません.なんせ暗くて速いので目視確認は不可能です.


▲一例目の産卵.浮遊木の水面上の位置をたたいている.▲


▲同じく一例目の産卵.浮遊木の際の水面をたたいている.▲

上の写真では,浮遊木の水面上の位置をたたいているのがわかりにくいですが,たたいた拍子に腹部先端が少し外側に曲がっているので,腹部が当たっていることが分かります.


▲二例目の産卵.浮遊木の水面上の位置をたたいている.▲


▲同じく二例目の産卵.浮遊木の手前の水面をたたいている.▲

二例目の産卵でも,水面をたたくのと,水面上の浮遊木表面をたたく場合の両方が観察できます.こちらの写真の方がはっきりとしています.

次は三例目の産卵です.この個体は上記2個体と違って,体が茶褐色をしています.そして上の2個体より腹部が太いように見えます.まさかコフキオオメトンボではないと思うのですが,真っ白なトンボは飛んでいませんでしたし,翅の付け根に褐色斑が見られますので,やはりオオメトンボでしょう.どうも見慣れないトンボは,写真だけでは同定に不安を覚えてしまいます.


▲三例目の産卵.若いメスだろうか.下の写真では翅の付け根に褐色斑が見える.▲

さて,写真には撮れませんでしたが,川の調査に入ったときミナミトンボが産卵する姿を見ました.行ったり来たりしながら水しぶきを上げて打水産卵していました.また水面上をパトロールするオスの姿も見ることができました.そして嬉しいことに道路上を摂食するオスに出会うことができました.ただこれもまた非常に速く飛ぶので,ほとんど写真になりませんでした.


▲ミナミトンボのオス.道路上を行ったり来たりして摂食をしていた.▲

あと本当にトンボが少なく,オキナワチョウトンボ,リュウキュウベニイトトンボなどが産卵活動を行っていました.コフキショウジョウトンボはふつうに見られました.アカスジベッコウトンボはオスがメスを追いかけ回しているのを見ましたが,翅がボロボロのもいて,シーズンの末期のような感じでした.そんなトンボたちを少し紹介して今日の記事を終わっておきます.


▲コフキショウジョウトンボ.これは数はそれほど減っていなかった.▲


▲ボロボロのアカスジベッコウトンボ.去年来たときよりも数が顕著に減少していた.▲


▲ヤエヤマオオシオカラトンボ.コフキショウジョウトンボに混じって飛んでいた.▲


▲コナカハグロトンボ.川の調査では数が多かった.他はアカナガイトトンボぐらいであった.▲

さて,また明日から地元のトンボを見に行くことにしましょう.

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