No. 1019. 兵庫県北部調査モード(2).2025.5.14.

今日の調査目的は,源流部のトンボの出現状況確認です.ムカシトンボがそろそろ飛ぶころなのでそれを見に行くことにしました.天気は快晴で気温も高く観察には申し分ない状態です.

しかしムカシトンボはオスが3頭飛んだだけで,まだ賑やかさがありませんでした.いつも一緒に見られるヒメクロサナエやクロサナエの姿は一切なし.転進したヒラサナエも未熟なメスが1頭だけ.すべてのトンボについてまだ成熟が進んでいないようです.


▲まだ羽化直後と思われるヒラサナエのメス.▲

兵庫県北部については,今年はトンボ季節が若干遅れているように感じます.さらに標高の高い池に出向きましたが,全くトンボの姿がありませんでした.あまりに手応えがないので,平地に下り,コサナエやオオイトトンボの状況を見に行きました.


▲コサナエは,数が減っていたが元気に活動を行っていた.▲


▲羽化直後のオオイトトンボ.▲

オオイトトンボは羽化直後の個体が見られ,羽化が続いているようでした.春一番のオオイトトンボは一斉に羽化してたくさんの個体が水面を飛び回るものですが,だらだらと羽化が続いている感じに見えました.ホソミオツネントンボはまだ頑張っていました.こちらは例年も遅くまで繁殖活動をしているのでこんなものでしょう.


▲さすがに個体数は減ったが,まだ繁殖活動を続けているホソミオツネントンボ.▲

今日最後は,ホンサナエの夕刻の活動観察にしました.ホンサナエは体躯ががっしりとしたトンボで,見かけ以上に高速に縦横無尽に飛ぶ戦闘機のようなトンボです.暖かい春の夕方を土手に座ってホンサナエたちの活動を眺めて過ごす,こんなことはあと何年ぐらい続けられるのか,そんなな感傷に浸ってしまいました.実は私の寿命よりもここのホンサナエが消える方が早いような気がしています.さて,観察は16:00頃から始めました.


▲まだ明るい夕方の川面を飛ぶホンサナエのオス.▲


▲16:39,石などに止まることが多いホンサナエだが,草に止まった.▲

少し来たのが早かったのですが,気にせずのんびりと観察を続けました.二日間動き回ってやや疲れがたまったようで,こんなときにはのんびり観察がいいです.やがて時刻が進み夕刻の雰囲気が漂ってきました.それでもホンサナエのオスたちは,変わらず飛んだり止まったり,本当によく働く勤勉ものです.


▲17:10,夕方の日差しを背に受け,腹部をやや持ち上げ滑るように飛ぶオス.▲


▲16:57,時々メスのように飛んできて止まるがすぐに飛べるように臨戦態勢.▲


▲17:13,飛び続けるホンサナエ.日陰に入ると背景は真っ暗.▲

いい時刻になりましたが,なかなかメスは入って来ません.オスの個体数が多くはないのでメスも個体数が少なく,あまりやってこないのかもしれません.時々ですが17:30を回ったあたりから,水面を一直線に飛ぶホンサナエを見ました.オスは追いかけますが,捕まえることができません.そしてオスはまた止まります.この間のように私の横に止まるオスがいました.二人で仲良くメスを待ちます.


▲赤い夕日を浴びながら私のすぐ横に止まってメスを待つオス.最短距離撮影.▲

オスたちは,動くものがあれば飛び立って追跡し,オス同士が出会えば追尾しています.18:16に太陽が山陰に沈んでもまだ飛んでいます.しかしやがてオスが飛ぶ姿が見られなくなりました.山へ帰ったかと思っていると,水面を超高速で一直線に飛ぶホンサナエが現れました.するとどこかに止まっていたのですね,2頭のオスがそれを追いかけました.でも相手は逃げ切ったようです.面白いことにこんなことがあったあと,オスたちは水面をきびきびと飛び始めました.一気に活気づいた感じです.「メスが来るかもしれないぞ,そのときが来たぞ」というオスの感情が感じられる行動です.そんなとき,交尾態になったペアが目の前を横切り一気に上空へ飛んでいきました.本当にメスが来たようですね.18:28でした.


▲18:28,メスをゲットし,山の方に飛び去っていくホンサナエのペア.▲

残念ながらこのオスは,私の横に止まっていたオスとは違いました.彼は17:40ごろまで水面を飛んでいましたが,姿が見えなくなりました.本当に帰ったか付近を見回ったときでした.すぐ先でメスが水面を旋回して打水しました.どこかで卵塊をつくっていたようです.でもこれが最後の打水だったようで,姿は消えました.観察は19:00で終え,現場を後にしました.結局メスを身近に見ることはありませんでしたが,久しぶりにのんびりとトンボ観察が出来,気持ちは充実していました.

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