No. 1014. トラフトンボの産卵.2025.5.3.

一昨日,久しぶりにトラフトンボが活発に活動しているのを見て,産卵のシーンを写真に撮ろうと,今日は他には目もくれずそれだけを求めて観察に出かけました.だいたいトラフトンボは10:00を過ぎたあたりから12:00ぐらいにかけて繁殖活動が活発になるので,朝はゆっくりと出かけました.産卵場所を探す交尾態は5ペアほどやって来ました.また池の上でメスを見つけて交尾になったペアも2ペアほど見ました.交尾は樹木の高いところで行われたため観察は出来ませんでした.産卵場所を探すペアのメスによる卵塊形成もまた,高いところへ上がってしまうようで,なかなかうまくいきません.この池と周辺のつくりがそのような行動を引き起こす構造になっているのかもしれません.

また,交尾が終わって,交尾態で産卵場所を探しに飛び回るペアも,なかなか近いところで旋回することがなく,しかもこの池ではすぐに姿が見えなくなってしまいます.池の周囲に木が生えているので追い続けることができず,なかなか難しい池です.

そんななか,1ペアだけが,視界の開けた場所で,産卵場所探しと産卵をやってくれました.まず産卵場所を決める行動です.このペアは本来の交尾は終了しています.


▲産卵ポイントを探し回り水面を飛び回る交尾態ペア.▲

水面に太陽光が射し,逆光のようになってくらい感じになってしまいました.池の中ほどを飛んでおり,ストロボの光も届いていないようです.


▲産卵ポイントが決まったようだ.そろそろメスを放す時が来た.▲


▲産卵ポイントの上でオスがメスを放し始めた.まだつながっているが交尾は切れた.▲


▲オスがメスを放した瞬間.下がオスで上がメス.▲


▲オスはメスに寄り添うようにして飛ぶ.本当は,多分逃がさないようにしている.▲


▲放されたメス(左)は卵塊形成に必要な水分を含ませるためか,必ず一度打水する.▲


▲打水したメス.実はこのメスはこのあともう一度打水した.▲

打水したメスは一気に樹木の高い位置に飛び上がり,見えなくなりました.卵塊形成はやはり見られませんでした.ただ,このメスは目の届くところで打水して卵塊形成に移行したので,多分ここに降りてくるでしょう.待つしかありません.

待つこと6分あまり.目の前に卵塊を付けたメスが産卵に訪れました.しばらく確認のため周辺を旋回します.


▲いっぱいにふくらんだ卵塊を腹部先端に抱え,打水ポイントを見極めるメス.▲


▲どうやら打水ポイントが決まったようだ.少しの間停止飛翔する.▲

トラフトンボの打水産卵は,チョンと打水する感じではなく,水面を引きずるように移動して卵塊を水中へと放ちます.放たれたカエルの卵のような卵塊は,水中の植物の茎などに絡みつきます.


▲放卵が始まりました.このあとこのままの状態で少し前に進みます.▲


▲少し前に進みました.体を起こし,そろそろ水面を離れる準備をしている.▲

毎秒6コマの連写をしていますので,2コマにしかこの状態が写っていませんので,長くとも3/6秒,つまり0.5秒程度で打水は終わったことになります.


▲打水が終わると急旋回して水面から遠ざかっていく.▲

一枚一枚の写真では連続性があまりはっきりとしませんので,上の4枚を重ねて処理してみました.


▲水面を少し引きずっていることが分かる.▲

こうやって卵塊を引き延ばすようにしてひも状にし,水中の植物の茎などに絡みつかせるのですね.


▲トラフトンボのひも状の卵.2013.5.6. 別の池にて.▲

今日は少し離れたところで産卵したので写真がもう一つ鮮明ではありませんが,なんとか説明できるほどに彼らの産卵行動が記録できました.

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