今日はヤブヤンマを見に行きましたが,結果はオスが数回飛んだだけで,メスの産卵には出会えませんでした.徐々に徐々にではありますが,10年ぐらい前には普通に見られたトンボが見られにくくなってきている感じがします.消えたわけではないので,個体数が減ってきていることの表れではないかと思います.トンボの減少をある種の農薬の影響と考える議論が盛んですが,私はそういう薬剤の影響が少ないと考えられる場所へ出かけることが多く,最近感じる減少は原因が違うように感じます.
さて,気温は35℃を超えていますが,ヤブヤンマの観察は日陰で待つことですので,風さえ吹いていれば比較的楽なものです.正午前後に2時間半ほど観察をしました.しかし木の枝に止まっているメスを探すようにオスが飛んできただけでした.水たまりでは,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,ウスバキトンボが飛んでいました.また日陰にはリスアカネがもうなわばりを形成しているように見えました.
▲オオシオカラトンボ.▲
▲産卵をするオオシオカラトンボのメス.▲
▲暗い林を背景に,止まったり飛んだりするウスバキトンボ.▲
▲日陰で活動を始めているリスアカネ.▲
シオカラトンボのあるメスはとても面白い産卵行動を見せてくれました.オスの数が非常に多いので,メスは普通に打水産卵すると,次々にオスに邪魔されて産卵ができないのでしょうか.そういうことをメスがまるで認識しているかのように,カオジロトンボで見たようなちょっと打水しては止まる,ということを繰り返していたのです.
▲シオカラトンボは数が多く,一つの枯れ枝に4頭のオスが止まっている状態.▲
▲2頭のオスがひっつくようにオオシオカラトンボと一緒に止まっている.▲
▲シオカラトンボの交尾もあちこちで行われている.▲
▲止まって,ちょっと飛んで打水し,また止まる.▲
▲止まっているメスのシオカラトンボ.▲
▲飛び立ったメス.▲
▲跳び上がったメス.▲
▲打水するメス.▲
▲打水したらすぐに止まる.▲
産卵様式は遺伝子に刻み込まれた戦略かというと,それほど固定的ではなく,状況に応じて可塑的に変更できる戦術も持っているということが分かります.ある種のトンボの産卵様式を網羅的に挙げていくことも大切ですが,普段行われない産卵行動を生み出したとき,そのまわりの状況を考えてそれを解釈するということが重要ではないかと思いますし,さらに最も普通に見られる通常の産卵様式が何故その形なのかということも考えてみると面白い知見が得られるかもしれません.
----------
今日初めて登場したトンボ
No. 54. ウスバキトンボ,オス.