No. 927. ウチワヤンマの観察と.2023.7.3.

今年はいつものところへ通うというより,あちこちへ出かけることが多くなっていて,アオハダトンボなど,いくつかのメンバーに出会うことなくシーズンが過ぎていこうとしています.そんな感じが強かったので,今日はいつもの場所へウチワヤンマとコフキトンボの観察に出かけました.


▲ウチワヤンマのオス.今年はたくさんいるように見えた.▲

いつものこの池は今年はきれいに掃除されている感じがします.池にキショウブの葉の切れ端などがほとんど浮かんでいないのです.ですから,浮遊物に卵を貼り付ける,ウチワヤンマ,コフキトンボ,コシアキトンボのオスたちの活動が,ちょっといつもと違うように見えました.コシアキトンボは結構広い範囲を飛んでいるし,コフキトンボはキショウブが生えているところ(そこはさすがに切れた葉が浮かんでいる)にかたまっています.そしてウチワヤンマは,枯れ枝が水に落ち込んでいるところになわばりを形成していました.


▲ウチワヤンマが止まっているところの典型.羽化殻も付いている.▲

池に着いたのが9:00過ぎでしたが,すでに2組のウチワヤンマの交尾態カップルを目にしました.一組はすでに池を飛び回っている産卵場所探索状態で,もう一組は草原で交尾本番の真っ最中でした.


▲すべて同じカップルを追いかけた.一番下は至近距離で撮影した.▲

交尾本番のカップルには,最後はレンズの最短距離まで近づくことが出来ました.ウチワヤンマの交尾態は結構人が近づくのを嫌がるものですが,このカップルはちょっと違っていました.

そうこうしているうちに,もう一組の産卵場所探索カップルの方でしょうか,産卵場所を決めたような動きを示しました.枯れ木が水に落ち,そこにヒシの実が絡まっているような場所です.ヒシの実は,すでに他のウチワヤンマが産卵したせいか,繊維状のもので絡みとられているような感じに見えました.


▲産卵場所を決めた探索カップル.▲

やがて,ヒシの実に止まり,オスが離れて,メスが産卵を始めました.ここは手前の枯れ枝にピントを取られてうまく記録できませんでした.オートフォーカスの弱点ですね.産卵はいつもの通り,間欠的に腹端を浮遊物に打ち付ける様式です.


▲産卵を行うウチワヤンマのメス.▲

産卵が終わって,池の周囲を歩いてみると,さらに二組のカップルが産卵場所を探索して飛んでいました.これらは目の届くところでは産卵を始めなかったようです.キショウブの生えているところには羽化殻がいっぱい付いていました.今年はウチワヤンマの羽化数が多いように思えます.


▲団子状態のウチワヤンマの羽化殻.▲

コシアキトンボやコフキトンボは元気にあちこちで追飛行動を行っていました.これらの産卵は見ることが出来ませんでした.


▲コフキトンボの追飛.▲


▲コシアキトンボの追飛.▲

帰りに森林公園によって見ました.ヤンマが羽化していないかというねらいでしたが,まだ姿を見ることが出来ませんでした.チョウトンボが池の上をたくさん飛んでいて,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボ,ギンヤンマ,クロイトトンボなどが元気に活動しています.いまだにクロスジギンヤンマのオスも見かけました.


▲ショウジョウトンボのオス.▲

特にこれといったトンボもいないので,池の縁にしゃがみ込んで飛び回るチョウトンボをじっと眺めていました.チョウトンボはいつも多数の個体が乱れ飛ぶ姿を見ているので,今までなわばりを形成するとはあまり考えたことがなかったのですが,あるオスの行動を追いかけてみると,一定範囲を飛んでそこに進入してくる他のオスを追い払う行動を続けていることに気がつきました.個体群密度がそれを許すような状況だったのかもしれません.


▲私がじっと観察を続けたオス.▲


▲池のだいたい白い丸で囲まれた部分がなわばりと考えられる区域.▲

だいたい上の写真のような範囲を飛んでいます.白い丸の左下縁に写っているのは,その上のチョウトンボのオスの影です.時々メスが周囲を飛ぶとなわばり外まで追いかけていきます.

なわばりを形成しているチョウトンボは常に羽ばたき飛行しているので,かなりエネルギーを使うはずです.見ていると,時々岸に戻って草に止まって休憩するようです.しかし,その間他のオスがそのなわばりを奪うことはありませんでした.しばらく休憩すると,またなわばりに戻って飛翔を続けました.


▲上のチョウトンボと同じ個体.草に止まって休憩中.▲

合計20分ほど観察を続けましたが,その間なわばり内には基本的にこのオス1頭だけが飛んでいました.なわばり内にはタヌキモの浮かんでいる部分があって,これがチョウトンボの産卵場所になっているようです.

今日はこの公園でキイトトンボを見ました.


▲個体数は少なかったがキイトトンボがいた.▲

ということで,日差しが雲に遮られてきたので,今日の観察はここまでとしました.まだ遠征の疲れがとれていないようで,歩くと息切れがします.

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