今日は,近場を回って,この時期のトンボの状況を見に行きました.8月後半というのは,そのときが最盛期というトンボが意外と少ないのです.夏のヤンマなどはそろそろ終盤の時期に入ります.といってもまだまだ飛んでいますけど...コシアキトンボやチョウトンボももう終盤です.ショウジョウトンボは二化目が出ているくらいの時期です.ギンヤンマやシオカラトンボはもうずっと最盛期が続いています.
実はこの時期に最盛期を迎えるトンボの一つがタイワンウチワヤンマです.ウチワヤンマしかいない地域では今でもウチワヤンマが元気に活動していますが,兵庫県南部では,この時期のウチワヤンマはかなり見るのが難しくなってきました.
▲2022.8.15. 鳥取県にて.今でもウチワヤンマが元気に活動している.▲
成果がなかったのでブログでは報告していませんが,この8月15日に兵庫県北部へタイワンウチワヤンマの進入調査に行ってきました.そのとき,上の写真のようにまだ池ではウチワヤンマが元気に活動していました.
▲タイワンウチワヤンマ.暑いのでほぼ垂直な腹部挙上姿勢をしています.▲
一方,兵庫県南部のタイワンウチワヤンマが入り込んでいる池では,ウチワヤンマはもうほとんど姿を見ることがありません.タイワンウチワヤンマが入り込んでいない池では姿を見ることがありますが...
さて,今日の第一の目的は,タイワンウチワヤンマの産卵観察です.例年,個体数の多い淡路島へ行くのですが,手近で済ませようという魂胆です.この池では数回タイワンウチワヤンマの産卵を見ていますので,観察できる可能性は高いです.ただ,池の周辺がどの場所も同じようで,産卵に来るポイントが分かりません.そういうことですので,池の周囲を移動しながら観察しました.すると,メスがうまく目の前に入ってきました.
▲産卵に入ったタイワンウチワヤンマのメス.矢印は糸を引いている卵.▲
ストロボの接触点がちょっとおかしく,うまく光らなかったので逆光で影になってしまいました.腹端から糸を引いて卵が着いているのが分かります.糸はほとんど写っていませんけど.タイワンウチワヤンマはウチワヤンマと違って,結構動き回って打水するので,今日はほとんどピントが来ませんでした.
産卵はきょうはこれ1頭だけでした.あとは,クロイトトンボ,チョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボ,ギンヤンマなど元気に活動していました.
さて次はタカネトンボです.タイワンウチワヤンマの産卵は午前が多く,タカネトンボは午後です.ということで昼食をとって移動しました.現地で2時間近く過ごしましたが,残念ながらまだタカネトンボは姿を見せてくれませんでした.オオシオカラトンボだけが元気に飛び回っていました.
▲オオシオカラトンボの交尾と産卵.▲
タカネトンボは9月に入ってからにした方が良さそうです.時刻は14時を過ぎました.コシボソヤンマが産卵に来る時刻です.実は昨日もコシボソヤンマを見に行ったのです.1頭のメスが産卵しているのを見たのですが,場所が気に入らないのか,すぐにどこかへ姿を消しました.今日はそのリベンジも兼ねています.流れに入って産卵しそうな朽ち木を見て回りますと,1頭のメスが飛び上がって木にとまりました.どうも最近足下がおぼつかなくなって,川を歩くとふらつきが大きく,バシャバシャやってしまい,産卵しているトンボに先に気づかれて飛ばれてしまいます.
▲私の気配に反応して,産卵をやめて飛び上がり,木に止まったコシボソヤンマ.▲
しかしこれはよくある動きです.経験上20分で産卵を再開します.過去何度か同じ経験をしています.本当に不思議なくらい20分で再開するのです.時刻は14:50.したがって産卵再開は15:10になります.コシボソヤンマから目を離さず.20分待つことにしました.待っている間,足下を1頭のコシボソヤンマらしき個体が飛びましたが,見失いました.まあ,このメスを待つのが確実です.
15:06,羽を小刻みに震わせ始めました.これは飛び立って産卵を再開する前兆です.15:09,飛び立ちました.メスからはずっと目を離しませんでしたので,飛ぶコースが手に取るように分かります.飛び立った朽ち木の方に少し大回りをするように飛んでやってこようとしています.そのときでした.もう1頭のコシボソヤンマが木陰から飛び立ち,このメスを追うように飛びました.メスは逃げるように小さく旋回しましたが.オスに見事に捕まり,連れて行かれました.
やっと産卵の再開かと喜んだのもつかの間,オスにお持ち帰りされるとは...ついていません.でも考えようによっては,これは初めてのコシボソヤンマ生態の観察になりました.今までコシボソヤンマのオスがメスが産卵しているすぐそばを飛んでも,全くメスに気づかないシーンばかり見てきました.今日初めてオスがメスを連れ去るところを観察できたのです.これは,コシボソヤンマの出会い場所が産卵場のある流れであることを示す一例になります.そう納得して,観察を終えました.このオス,多分さっき足下を飛んだ個体だと思います.
ということで今日の観察は終えることにしました.帰り道,秋を待つマユタテアカネがひっそりと止まっていました.
▲木陰で秋を待っているマユタテアカネメス.▲