No. 848. ヒロシマサナエ.2022.6.20.

この土日はよく晴れましたが,外出していてトンボ観察にはいけませんでした.その代わりといっては何ですが,外出の帰途広島県に寄って,ヒロシマサナエを見に行ってきました.この時期はもうヒロシマサナエも終わりに近い時期ではないかと思います.ただわざわざ神戸から見に出かけるというのも少し躊躇するトンボなので,ついでに見に行くのが経済的で一番です.天気が危うかったのですがかろうじて持ちました.

現地の湿原に着いたのが10:00ごろ.そのあと2時間ぐらいかけて探し回りました.初めのうちは全く見つからず,やはり時期的に遅かったかなどと思ってしまいました.1時間以上探し回って,やっと集まっているところに出くわしました.まず見つけたのがメスでした.湿原の木道の際に止まっていました.全部で3頭見つけました.水の流れのあるところから離れていますし集まっていますので,一種のねぐら的な場所なのでしょう.こういうポイントを見つけられるかどうかが,発見成功の鍵になるようです.


▲木道を歩いていて最初に発見したメスの最初のショット.▲


▲少しずつ移動してパフォーマンスを見せてくれる.▲

ついでとはいえ,とにかく遠く離れたところにやってきているので,いろいろな角度から写真を撮りました.経験から,だいたい1頭いるとかたまっていることからまわりを探すと,すぐに2頭目が見つかりました.


▲腹部横の淡色斑の違いから,別個体であることが分かる.▲


▲これも腹部横の淡色斑の違いから別個体だと分かる.▲

メスを見つけたので,次はオスを探しに行きました.実はこの少し前に,湿地の細流のところで1頭のサナエトンボが樹上に飛び立ったのを見ていたので,オスは流れのそばでメスを待っている可能性が高いと判断し,その場所で少し待ちました.しかしオスは現れず,もう諦めて帰り道に着きましたら,明るい広場のようなところにオスが休んでいました.空が大分曇ってきましたので,こういう明るいところに集まっていたのかもしれません.


▲散策路の際に止まっていたヒロシマサナエのオス.▲


▲写真を撮ると,うっとしいのか,ちょっとずつ移動して止まり場所を変える.▲

写真を撮っていると,妻が少し先のところでもう1頭のオスを見つけました.オスも集まっているんですね.ただ,オスとメスは別の場所に集まっているところが面白いです.近縁のヒラサナエは,ほとんど隣り同士になるくらい一緒に過ごしています.ただ,ここの生息地はやたら広いので,狭い生息場所のヒラサナエとは行動が違うのかもしれません.


▲2頭目のオス.翅が破れているので,別個体だと分かる.▲

ヒロシマサナエとヒラサナエはとてもよく似ています.淡色斑がヒラサナエに比べて小さいせいで,若干ヒロシマサナエの方が黒っぽい感じが強いです.オスの場合は,尾部付属器の形が違います.メスは産卵弁を見るようですが,これは写真には撮れませんので,顔のアップを載せておきます.


▲ヒロシマサナエとヒラサナエのオスの尾部付属器の形態の相違.▲


▲尾部上付属器はヒロシマサナエの方がより上部に反り,淡色斑はより小さい.▲


▲ヒロシマサナエのメスの頭部と胸部.▲

今日は朝のうちは日が射していたのですがすぐに曇り空になり,トンボの活動も不活発で,繁殖活動は見られませんでした.

その他のトンボとしては,アサヒナカワトンボのオスで,橙色翅型で不透明斑のあるタイプが活動していました.これは兵庫県では見られないタイプです.


▲不透明斑のある橙色翅型のアサヒナカワトンボのオス.▲

こういう個体をみると,兵庫県ではすぐにニホンカワトンボとしてしまいそうです.そこで,兵庫県のニホンカワトンボと並べて比べてみました.写真だけ見ると,絶望的なほどよく似ています.ただアサヒナカワトンボの方が翅脈が粗く感じられますので,前翅の基部から結節までの,前縁脈と亜前縁脈の間の横脈数を数えてみますと(写真からはそこしか数えられないので),ニホンカワトンボでは29本,ここのアサヒナカワトンボでは22本と,後者の方が少ないことが分かります.ただ,この翅脈の粗さの違いは,全日本的には成立しない個体群もいるという報告を受けていますので確実なものではありません.しかし,各地で出されている図鑑の写真で調べてもかなりよく成立しているように見えますので,いちおう参考として掲げておきます.


▲ニホンカワトンボとアサヒナカワトンボの橙色不透明斑オス.横脈数の違い.▲

なお透明翅型のオスもいて,橙色翅のオスがそれを追いかけ回していました.ちなみにこの個体の,前翅の前縁脈と亜前縁脈の間の基部から結節までの横脈数も22本です.


▲透明翅型のオス.腹部の白粉が基部と先端部にしか出ないタイプ.▲

あとはシオヤトンボがいただけで,静かな湿原でした.


▲シオヤトンボのオス.▲

観光を兼ねた観察で,2時間ほどの散策でした.

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